人造人間キカイダー全話解説

第12話 残酷 魔女シルバーキャット

監督:北村秀敏
脚本:島津昇弌
シルバーキャット登場
 冒頭はダーク基地から始まった。
 ダーク破壊ロボットのシルバーキャットを召喚したプロフェッサー・ギルは、最近死去したルーブル元侯爵家から桜ヶ丘美術館に寄贈されたコレクションの中でも至宝である古代ムンガ帝国の秘宝の強奪を命じた。
 ムンガの秘宝とは、悪趣味なぐらいにキンキラキンの王冠で、(どういう原理なのかさっぱり分からんが)人造人間の能力増大に絶対必要な物とのことだった。それさえ奪えれば後の秘宝などどうなってもいいと言わんばかりのプロフェッサー・ギルの執着振りで、一般公開が行われるまでの後2日間の内に強奪するよう重ねて命じた。
 命を受けたシルバーキャット (人間体:水上竜子)は美術館に向かう山道を走る車を襲い、運転手の女性(松尾悦子)に憑依したのだった。

 場面は替わって、ダークの狙う桜ヶ丘美術館。そこにはミツ子とマサルが館長を訪ねて来ていた。警備員(角友司郎)はミツ子達がどういう用件で来たのかを誰何し、それに対してミツ子は「父のことで。」と答えるとあっさり通された。世界的な秘宝を警備しているのと、いかつい風貌の割には甘いチェックだな(苦笑)
 マサルが「随分警備が厳しいんだね。」(←どこがじゃ(笑))と言いながら姉弟が入場した直後、先程の車が門に差し掛かった。襲われた最前の女性は館長の娘で、父に弁当を持ってきたという彼女を警備員は顔パスで通した。視聴者はシルバーキャットが憑依しているのを知っているが、一般ピープルである警備員がこの状況で通してしまうのは仕方ないかな(苦笑)。

 場面は替わって館長室。そこでは館長(清水一郎)が光明寺姉弟にムンガの秘宝を披露していた。その存在はミツ子にとって父から聞かされた既知のもので、光明寺博士が何故それを知っているのか?と問う館長に、ミツ子は「専門的なことはよく分かりませんけど……。」と前置きした上で、

 「この宝石を振動体に利用するととてつもない増幅回路が出来て、人造人間の能力は今の何倍もの物が出来る可能性が有るらしいんです。」

 と説明…………充分過ぎる程専門的知識やんけ(笑)

 ともあれ、姉弟の考えでは、人造人間の研究材料として前々からムンガの秘宝に強い興味を持っていた光明寺博士が、秘宝の来日を知れば美術館を訪ねてくるかも知れない、と踏んでいた。
 その考えを受けて、旧知である光明寺博士の為に出来る限りの協力を約束し、その無事を祈る館長。成程、光明寺博士の人となりをさり気なく伝えるキャラクターと云える。

 するとそこへ不気味なドアの音を鳴らして館長の娘・ヨウコが入って来た。来訪者が娘と知って安堵しかけた館長だったが、ヨウコは館長が片付けようとしていたムンガの秘宝を自分が頂くと宣言。
 何を馬鹿なことを言うんだ?と訝しがる館長だったが、ミツ子は壁に映ったヨウコの影を見て気付くという、ベタな気付き方で(笑)ヨウコの正体を見破り、驚愕した。

 ダーク破壊ロボットの正体を見抜かれつつもシルバーキャットは「ダーク破壊部隊最強」を自称する強気でムンガの秘宝を強奪し、縋りついたり、非常ベルを鳴らしたりして抵抗する館長に爪飛ばし攻撃でダウンさせ、逃げようとした光明寺姉弟もアンドロイドマン達に捕らえさせた。

 姉弟が館外に連行されると警備員達は哀れにも全員倒されており、シルバーキャットは姉弟をムンガの秘宝共々プロフェッサー・ギルへの手土産にすると宣した。
 何故自分達を?と問うマサルに、キカイダーを誘き寄せる為と答えたシルバーキャットだったが、次の瞬間そのキカイダー=ジローのかき鳴らすギターの音が響き渡った(笑)。

 ダーク破壊部隊最強を自称するだけあって自信があるのか、シルバーキャットは即座に屋上のジローに飛び掛かり、ジローは前回同様ギターを得物に応戦したが、やはり人間体では分が悪かった。
 何故かなかなか変身しないジローが苦戦している間にアンドロイドマン達は光明寺姉弟を縛り上げて車に乗せ、時限爆弾まで設置していたが、任務を考えるならシルバーキャットが迎撃している間に姉弟と秘宝を持って逃走すべきだし、囮にすることを考えていた割には2人を人質にする考えが無いらしいのが笑える(苦笑)。

 ともあれ、ようやく変身しようしたジローだったが、それを見透かしたかのように悪魔の笛が鳴り響きジローは悶絶した。いつもならここでダーク破壊ロボットが余計な攻撃を仕掛け、その衝撃音で笛の音が途絶えるだが(苦笑)、今回笛の音を途絶えさせたのは、気絶から目覚めた警備員だった!
 気付いた警備員はすぐに非常サイレンを鳴らし、その音がプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音を遮断したのだった。うんうん、こういう名もなきキャラクターによる、普通の人間の出来ることでもってヒーローに貢献出来るシーン、シルバータイタンは大好きだ(笑)

 さて、ようやく変身を果たしたキカイダーとシルバーキャットの一騎打ちだが、いざロボット体同士で組み合うと「ダーク破壊部隊最強」の触れ込みは何だったのやらと言いたくなるほどシルバーキャットは弱かった(苦笑)。
 何とかムンガの秘宝だけでも奪い去らんとするも、ダブル・チョップを食らうや俊敏さが売りの筈の猫型ロボットでありながら足を引きずりつつ、捨て台詞を吐きながらアンドロイドマン達にも遅れながら敗走する体たらくだった。
 基地に戻ったシルバーキャットプロフェッサー・ギルから再度の奪還を命じられたのは言うまでもなく、次に失敗すれば電気分解に掛けるとの脅し付きだった。

 一方、窮地を脱したジローはミツ子・マサルを洞窟に身を隠すよう先導した。その途中、ジローの歩く音から足のネジが緩んでいることを察知したミツ子はそれを修理しながら父とともにジローを製造していた時のことを思い出し、改めてジローに良心回路を完全な物にした意図申し出たが、ジローは頑なに今のままでいいと返し、ミツ子を振り切るようにムンガの秘宝と共にサイドマシーンで去って行ったのだった。

 場面は替わってとある山道。そこでは例によって車の不調を愚痴りながら修理に四苦八苦する(何故か泥棒頬かむりをしている)服部半平がいた。
 金に汚い半平らしく、これまでいくらの修理費がかかっているのかとぼやいているところに一人の美女=人間体のシルバーキャットが現れた。当然その正体を知らない半平は鼻の下を伸ばして女性の求めるままに車を走らせるのだった(苦笑)。
 ただ、不自然な場所で下車したシルバーキャットがスカートをまくり上げて生足を晒したことに鼻の下を伸ばしつつも、そこに機械体を目撃するや異状を察知するだけの分別はある様だった(笑)。

 ともあれシルバーキャットが目指すは洞窟に隠れている光明寺姉弟で、一ツ橋館長の使いと偽ってムンガの秘宝を返してもらいに来たと告げた。これを受けてマサルはすぐにジローに連絡を取ろうとしたが、これはシルバーキャットを尾行して来た半平によってダークの回し者であることが暴露された。
 正体のバレたシルバーキャットは元の姿を現してミツ子とマサルを拘束するとそのまま拉致せんとしたが、そこに崖の上からキカイダーが現れた。
 元からキカイダーが現れればこちらの思う壺と見ていたシルバーキャットは光明寺姉弟の身柄をたてにムンガの秘宝を寄越すようキカイダーを恫喝。これに対してキカイダーは「渡す。」と言いつつ、王冠を半平の頭上に投げた。つまりは忍者として半平の持つ逃走能力に賭けたものだったが、人質そっちのけで冠を乗せた半平に殺到するシルバーキャット&アンドロイドマン達が間抜け過ぎ(笑)

 かくして最終決戦が始まった。
 シルバーキャットの格闘能力は緒戦より少しはましで、マウント・ポジションからパンチを食らいまくっても、ダブル・チョップを食らっても、然程のダメージを受けた風もないタフネスを見せたが、逆に肉弾攻撃も特殊能力(爪飛ばし・火球吐き)も有効だとなり得ず、いつものようにキカイダーの大車輪投げデンジ・エンドで勝負は決したのだった。

 そして最終場面にていつものようにジローはサイドマシーンを走らせ、1人でその場を去らんとし、ミツ子とマサルがそれを追わんとして半平の車に乗り込んだのだが、ミツ子はその車内に「光明寺」と刻まれたパイプを発見した。
 ストーリーの大筋に関連しないので触れていなかったが、半平がシルバーキャットに声をかけられる直前、実は光明寺博士は一時半平カーの中に(無断で)非難していた。
 肝心の姿を捕らえられない中、確かにそこを訪れた痕跡を見て父の名を叫ぶミツ子とマサル・‥‥………って第6話で自分の名前も思い出せず、手帳に記された電話番号に電話してたけど、パイプから自分の名前を推測することはできなかったのか?光明寺博士よぉ?!(苦笑)



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日