人造人間キカイダー全話解説

第13話 ピンクタイガーの遊園地襲撃

監督:畠山豊彦
脚本:島津昇弌
ピンクタイガー登場
 冒頭、ダーク基地内にてプロフェッサー・ギルピンクタイガーに横浜ドリームランドに行くよう命じていた。そこには光明寺博士が作った旧式のロボットがいると云う。
 しかも光明寺博士がダークにその存在を隠していた特殊回路の秘密もあるとのことだった。
 カギを握る旧式ロボットの名は甚兵衛(多々良純)。赤鼻のピエロ然とした容姿で馬車を駆っている映像が基地内のモニターには映っていた。まずは甚兵衛を追求すべしとしたプロフェッサー・ギルだったが、もし3日以内にその秘密を獲得出来ない場合は横浜ドリームランド諸共甚兵衛を破壊せよとも命じた。
 前回のムンガの秘宝にも言えることだが、どうもプロフェッサー・ギルには最先端技術の独占への強い欲求があり、それ以上にその技術を他人に渡したくないとの欲求が併存しているようだ。

 ともあれ、命令を受けたピンクタイガーは早速横浜ドリームランドにやって来たのだが……………はっきり言って、カッコ悪い………頭でっかちで、虎の如き優美さが欠片もなく、鋭い牙がびっしり並んだ口も顔の半分を占める大きさが間抜け面にしてしまっている。
 そして侵入に気付いた警備員(柄沢英二)に「ダークの計画を見られたからには生かしておけない!」と言いながらこれを殺害したが、警備員が見たのはピンクタイガーの姿であって、「ダークの計画」なんて丸で見てはいないのだが、ま、そんなことをダーク破壊ロボットに主張しても意味ないか(苦笑)。
 いずれにしても警備員1人の口を封じて高笑いして悦に入っているピンクタイガー………小物感満載だな(苦笑)。

 時間は移って翌日。場所はそのまま横浜ドリームランドなのだが、例によって光明寺姉弟がやってきた(笑)。勿論来園目的は父・光明寺博士の手掛かりを求めてで、姉弟もまた甚兵衛を訪ねて来たのだった。
 同時に、これまた例によって服部半平(話に関係ないが、口髭を生やしていた)も来ていた。本業にてある人物の尾行を依頼されてとのことだったが、例によって愛車が不具合を起こし、途方に暮れていた(苦笑)。

 そんな半平を尻目に(笑)、ミツ子は甚兵衛を見つけ、話し掛けた。「甚兵衛さん」と敬称付で呼び掛けたところを見ると、光明寺博士制作のロボットでも、ジローと異なってどこか他人行儀だ。まあ、ロボット相手に敬語で接しているところがミツ子らしいと言えばミツ子らしいが。
 一方、甚兵衛もまたミツ子や光明寺博士のことを覚えていたが、その言動はどこかぎこちない。甚兵衛の言によるとどうも耐用年数の限界でスクラップ間近らしい。
 いずれにせよ、甚兵衛も光明寺博士の行方は知らなかったのだが、当の光明寺博士はすぐ側にいたのに互いが気付かなかった。さすがにこのパターン、多過ぎて苛ついて来たぞ(苦笑)

 勿論光明寺博士が横浜ドリームランドに来たのは偶然ではなく、例によって失った記憶の手掛かりを求めてである。最初はここに来たことが有るような気がする程度だったが、しばらくして1度や2度ではなく、何度も来ていることを確信するようになったから、記憶を取り戻す方向に動いてはいるのだろうけれど、決定力に欠けるようだった。
 その光明寺博士だが、程なくミツ子達を見送って自室に戻ってきた甚兵衛と鉢合わせた。勿論甚兵衛は相手が光明寺博士であることを認識し、その名を呼んだが、それでも光明寺博士は甚兵衛のことを思い出せず、何故自分がここに来たのかも分からなかったが、甚兵衛に何か大切な物を預けたことだけは覚えており、それを返すよう迫った…………相手が何者か知らないことを思うと随分強制的だな、光明寺(苦笑)。
 だが、その「大切な物」こそがダークの狙うもので、ピンクタイガーが急襲して来た。勿論即座に御都合主義でギターの音が鳴り響き、ピンクタイガーはジローと対峙したのだが、ダークから逃げなくてはならない自覚を保っている光明寺博士はピンクタイガーがジローに気を取られている隙に遁走。かくして今回もワンパタで両者はその距離を広げてしまうのだった。

 そしてピンクタイガー&アンドロイドマン達と大立ち回りを演じるジローだったが、そこに今回もプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音が襲い掛かった。ただ、今回のプロフェッサー・ギルはいつもの、「ダークに生まれし者はダークに還れ。」という念ではなく、「裏切者は制裁されなくてはならない。」の念で笛を吹いていた。
 あの〜プロフェッサー?(一応上辺だけの忠誠を誓っていた)光明寺博士やミツ子と違って、ジロー=キカイダーがダークに忠誠を誓ったことなどないので、「裏切り」は成立しないんですけど(笑)。

 野暮なツッコミはさておき、今回ジローが笛の音に苦しんだ時間はいつもに比べてかなり長く、途中ピンクタイガー達に良い様にいたぶられ続けた。悦に入ったピンクタイガーはジローをジェットコースターの通路上に置き、轢殺せんとしたが……………はい、皆さん、もう読めましたね(笑)?正解です(笑)、間近に接近したジェットコースターの走る音でギルの笛の音は遮断されました(笑)
 かくして変身を遂げたキカイダーとピンクタイガーの邂逅戦となったのだが、体格的にも猫科特有の優美さを欠片も持たないピンクタイガー (苦笑)は、これといった身体能力も示さず、タイガーリングなるバズソー付きの投げ輪もあっさり受け止められ、技名も高らかに口からのジェット噴射をキカイダーに浴びせたのも、単純な逃走用の煙幕に過ぎなかったという体たらくだった(失笑)

 だが、ピンクタイガーの任務は甚兵衛の保持する光明寺博士の機密を探り当てるか、それが不可能なら甚兵衛諸共機密を抹消することだから、必ずしもキカイダーと戦う必要がある訳ではない。
 そう考えると攻撃が通じない以上、キカイダーの目を逃れ、しっかりと甚兵衛を拘束していたピンクタイガーは全くの無能でもなさそうだ。
 ピンクタイガーは甚兵衛の回路を細工して行動不能に陥らせた上で光明寺博士の機密を白状するよう甚兵衛を拷問したが、甚兵衛は知らないの一点張りだった。どうやら甚兵衛は機密を持ちつつも彼自身はその事を知らないようだ。
 業を煮やしたプロフェッサー・ギルピンクタイガーは横浜ドリームランドに時限爆弾を仕掛けると甚兵衛は改めて拷問に掛けるべく場外へ連れ出した。

 この一連の動きを、逃げたと思われていた光明寺博士が目撃していた。さすがに何かを仕掛けるでもなかったが、甚兵衛から目を離せなかったところを見るとかなり重要な機密なのだろう。
 一方、ピンクタイガーに逃げられたジローも、甚兵衛の存在や、光明寺博士が来ていたことは認識しており、ミツ子に連絡を取ってその旨を伝えると、マサル・半平とも合流した。だが、拷問に掛けられた甚兵衛が助けを求める信号音(←制作者が同じ者同士で通じるらしい)を発するのを察知すると、ジローは単身発信源に向かったのだった。

 その頃、甚兵衛はピンクタイガーの拷問に苦しんでいた。拷問の衝撃は耐用年数の限界間近だった甚兵衛には耐え難いもので、実際に体の一部が断裂し始める程だった。
 だが、甚兵衛がジローに助けを求められた様に、ジロー側からも甚兵衛に意志を伝えることが可能で、ジローは光明寺博士の秘密を体内に収めている甚兵衛を必死に励ましながら拷問場へ向かった。
 アンドロイドマン達からジローが追まっていることを知らされたダークサイドでは直ちに迎撃態勢を取った。

 程なく、地雷原を突破して甚兵衛の下に駆け付けたキカイダーだったが、甚兵衛の体は限界に達しており、自分の体の中に光明寺博士から託されたものがあることと、横浜ドリームランドに爆弾が仕掛けられていることを告げ、子供達を助けて欲しいと懇願するや衣服を残してその体は瓦解した。
 甚兵衛の残骸の中から黒くて短い筒を取り出したキカイダーは、迎撃に来たピンクタイガーとアンドロイドマン達を蹴散らした。ピンクタイガーはろくに抵抗も出来ず、大車輪投げデンジ・エンドの2点セットを食らって戦死した。もしかすると、現状におけるダーク最弱の破壊ロボットかも知れない(苦笑)

 やがて横浜ドリームランドに戻ったジローは半平と共に甚兵衛の控室に駆け込むと起爆装置を解除し、横浜ドリームランドと来園者達を大惨事から守った。
 そしてラストシーン。光明寺博士が甚兵衛に託していた物が、特殊回路の計算式であったことを知ったミツ子とジローは、その数式をジローの体内に読み込ませ、ダークの手に落ちることを防ぐべく現物は焼却したのだった。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日