人造人間キカイダー全話解説

第14話 大魔神ギンガメが三怪物を呼ぶ

監督:畠山豊彦
脚本:長坂秀佳
ギンガメ登場
 冒頭、夜の街で機動隊員達が空飛ぶ円盤を前に右往左往していた。
 空飛ぶ円盤正体はダーク破壊ロボットのギンガメで、手足を甲羅内に引っ込めて回転しながら飛ぶ姿は丸でガ●ラだった。版権は大丈夫か (苦笑) ?
 状況の詳細は不明だったが、機動隊が駆け付けてきたぐらいだから、既になにがしかの破壊活動を行っていたのだろう。機動隊は拳銃以外にもガス弾や迫撃砲まで駆使してギンガメを砲撃したが、警察の武器がダーク破壊ロボット、ましてや堅固さに優れるであろう亀型ロボットに通用する筈もなく、吐き出されたトータスガスなる毒ガスを前に機動隊員達は瞬殺されたのだった。

 場面は替わってとある河原。そこでは父を探し求める日々には手が見えないことに疲れ切っていたミツ子をマサルが励ましていたのだが、そこに必死の形相で逃げ惑う半平が現れた。
 半平を襲っていたのはギンガメで、ギンガメが発する磁力線に半平は愛車ごと引き寄せられかけたのだが、いつものエンストが今回は半平を救った(苦笑)。

 場面は替わってとある山中。そこでは数多くの棺桶が並べられ、アンドロイドマン達が4人掛かりで持つ大きな組織旗を持ち出して何やら大掛かりな儀式を行っていた。
 前話における次回予告や状況からバレバレだったが(笑)、棺桶の中に眠っていたのは第1話から前話までに登場し、キカイダーに敗れたダーク破壊ロボット達、グレイサイキンググリーンマンティスオレンジアントブルーバッファローイエロージャガーブラックホースブルスコングカーマインスパイダーサソリブラウンレッドコンドルゴールドウルフシルバーキャットピンクタイガー達だった。

 特撮界においては、過去の怪人・改造人間・ロボットが大量に甦っても以前のような能力は持ち得ず、雑魚であることが定番なのだが、今話における大量復活はダークとしても相当力を入れていた物らしく、プロフェッサー・ギルは13体の破壊ロボット達はキカイダーに敗れた際の弱点を克服し、以前の3倍の力を得て甦ったものと呟き、復活を見守る途中何度も何度も頷いていた。
 まあ、過去の敵キャラが復活するのは良いのだが、その中にゴールドウルフが混じっていたのは頂けない、と思うのはシルバータイタンだけではあるまい。一口に敵キャラと言ってもその個性は様々で、主人公との絡みから同情の念を禁じ得ない者や、憎めない者もいる(←例え、任務上倒さざるを得ない相手であってもだ)。
 勿論生前(?)の性格を抹消した戦闘マシーンとして復活させたり、再会時の主人公の動揺を誘うのを目的としてそういう敵キャラを生き返らせるのなら大いに納得出来る。

 だが、3倍の能力を持って生き返ったダーク旧破壊ロボット達(←ギンガメは「新破壊ロボット」に分類されていた)は、戦闘意欲満々で、ギンガメを「後輩」として自分達(=「先輩」)に対する礼儀がなっていないと詰め寄る程個性は色濃かった(笑)
 それに対し、プロフェッサー・ギルは止めるどころか、ギンガメに戦闘能力を示せ、とけしかける始末。旧破壊ロボットの中で一番の古株であるグレイサイキングは「先輩の強さを見せてやる!」といの一番に突っかかったが、勿論敵ではなかった。
 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のロボット警官第5号・度怒り炎の介の台詞じゃないが、製造物って、(概して)後発の方が高スペックなんだよな(苦笑)。

 ともあれ、戦闘テストと言おうか、模擬戦闘と言おうか、1対13の戦いが始まった。この時点で、大量復活の意味は殆ど半減だな(苦笑)
 ギンガメの攻撃は初め次々と群がってくる旧破壊ロボットの先輩達を振り払う程度だったが、投げ飛ばされたサソリブラウンレッドコンドルが倒されたのを皮切りに、終いには甲羅からの掃射で次々と先輩達を倒していったのだった。
 それをモニターしていたプロフェッサー・ギルは「予想通りだ。」と非常に御満悦。旧ロボットが以前の3倍の能力を持ち、13体掛かりでギンガメに一蹴されていたのを見ると、単純計算で新破壊ロボットであるギンガメは旧破壊ロボットの39倍の戦闘能力を持つことになる。
 プロフェッサー・ギルが純粋に新型ロボットのスペック1本を期待していたのならこの御満悦振りも理解出来るが、それでも3倍の能力を持たせた存在を次々破壊する考えはシルバータイタン的には釈然としなかった(苦笑)。

 結局、旧破壊ロボットで生き残ったのはグリーンマンティスブラックホースオレンジアントの3体。プロフェッサー・ギルギンガメとその3体に行動開始を命じた。
 殆どテストの為に潰された10体の「先輩」は哀れにしても、生き返らせたことに意味がなかった訳ではない様で、3体には生前(?)なかった変身能力が与えられていた。
 グリーンマンティスは不敵にも光明寺博士に化け、同様にブラックホースはマサルに、オレンジアントはミツ子に化けた。だが、唯一の救いと言おうか、旧破壊ロボット復活に始まる一連の動きは半平によって目撃されていた。

 場面は替わってとある幼稚園前。先生に引率された園児達が帰宅しようとしているところをギンガメ率いるダーク一味が襲撃した。
 そこへいつものようにギターを鳴らしながら高所に登場し、「ダーク新破壊部隊のギンガメとはお前か?罪もない子供達に手を出すことは俺が許さん!」と息巻くジロー(←何で、名前知ってんの?)

 キカイダーとダーク一味の迎撃戦は単調な争いに終わり、ギンガメは特にその能力を見せもせずに撤収。その頃、半平はダークの目論見をジローに知らせんとしていてミツ子とマサルに遭遇した。慌てふためく半平はダークが光明寺姉弟に化けていることをジローに知らせなくては、と告げたが、眼前のミツ子とマサルこそがブラックホースオレンジアントの化けたそのもので、半平敢え無く気絶(苦笑)。

 一方、ギンガメ一味を追うジローだったが、その前にアンドロイドマン達に追われて救いを求める光明寺博士が現れた。
 視聴者的にはこの光明寺博士がグリーンマンティスの化けたものであるのはバレバレなのだが(笑)、それを知る由もないジローは即座にアンドロイドマン達を蹴散らし、サイドマシーンの助手席にその身を保護した。直後、アンドロイドマン達は雑兵にしては珍しく執拗な追跡を敢行したが、ジローは何とかこれを振り切った。
 ようやく安全と思われる場まで退いたジローは光明寺博士に自分が博士の作ったロボってあることを告げて記憶の回復を促した。それに対して偽光明寺は記憶がいまだ戻らぬ風を上手く装い、事情が分からないながらもジローに礼を述べた(振りをした)。

 すっかり油断したジローが偽光明寺の下車を補助すべく手を差し延べたところ、偽光明寺=グリーンマンティスはジローに身柄を押さえるやその正体を現し、更にはプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音が襲い掛かった。
 グリーンマンティスの急襲はあっさり振り切ったが、悪魔の笛による攻撃は執拗で、ジローは駆け付けたミツ子とマサルにも(自分が何をしでかすか分からないので)近寄らないように告げた。
 正常状態じゃないから、と告げるジローに、それゆえ近づくと宣したミツ子とマサルは最前のオレンジアントブラックホースが化けたもので、その正体を現すと追い付いて来たグリーンマンティスと共にジローに襲い掛かった。
 3体の再生破壊ロボットは、再生にしては珍しく(笑)生前の武器を駆使し、キカイダーへの変身さえままならないジローはいつにない苦戦を余儀なくされた。ギンガメを「後輩」と見做すだけあってか、3体の仲は良く、各々が波状攻撃を掛けてジローに休む暇を与えなかった。これも「再生」には珍しい傾向だ(笑)。

 だが、とどめを刺さんとしてオレンジアントによるアリジゴク攻撃が仇となった。
 地中に生き埋めにされたジローは、それによってプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音から逃れ得、キカイダーにチェンジした。
 そして死体を検分すべくブラックホースが土砂を払いのけたところにキカイダーはその姿を現し、3体の再生破壊ロボットと対峙したが、そこにギンガメが加わった。

 かくて、1対4の最終決戦が始まった。
 ここまでの展開は決して悪くなかった。再生破壊ロボット達が以前の能力を活かし、波状攻撃を掛けたり、キカイダーが変身を遂げたところでギンガメが加わったりした流れは理に適っていたと云える。
 だが、再生破壊ロボット達が以前の3倍の力を得て甦ったことや、ギンガメがその再生破壊ロボット達13体を圧倒した戦闘能力は無視されたと言わざるを得なかった

 まずオレンジアントダブル・チョップデンジ・エンドの連続攻撃に戦死した。
 ついでグリーンマンティスデンジ・エンドを食らって、そしてブラックホース大車輪投げデンジ・エンドの連続攻撃を食らって戦死した。この間、3体に以前の3倍の戦闘能力を得たと感じさせる善戦振りはついぞ見られなかった

 残る1体となったことをキカイダー告げられたギンガメだったが、「俺はそいつ等とは貫禄が違うぞ!」と啖呵を切ったが……………貫禄?「実力が違うぞ!」というなら分かるが、貫禄?何か日本語が違う気がするのはシルバータイタンだけか?(笑)

 そして「貫禄」(笑)が違う筈のギンガメも、初めこそギンガメバサミなる、亀らしからぬハサミ攻撃でキカイダーを苦しめたが、それも束の間だった。
 重い一撃を持つであろう数々の攻撃は、キカイダーに次々躱され、明らかに素早さでギンガメはキカイダーに劣っていた。そして終いには仰向けにされて起き上がれず狼狽えまくっていたところにデンジ・エンドを食らって最期と遂げたのだった。
 そこには13体の「先輩」達を次々になぎ倒した格の違いは微塵も感じられなかった。それに実際の亀って、仰向けにしても簡単に体を反転させられるのだが‥……(苦笑)。
 かくして満を持したであろうダークのキカイダー抹殺は失敗に終わった。コンセプトは悪くないのだが、背景で語られた強さが全く反映されていないことに不満の残る回であった。恐らくギンガメが他の10体を活かして共にキカイダーを襲撃したとしても戦闘展開に変わりはなかったのではあるまいか?再生怪人や集団攻撃を上手く生かすのが難しいのは百も承知なのだが。



次話へ進む
前話に戻る
『人造人間キカイダー全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

 最終更新令和元(2019)年一二月四日