人造人間キカイダー全話解説

第15話 キンイロコウモリ 呪いの陰

監督:北村秀敏
脚本:伊上勝
キンイロコウモリ登場
 冒頭、断崖の上にキカイダーが立っていて、襲い掛かるアンドロイドマン達との戦闘に入った。勿論アンドロイドマン達は次々に蹴散らされたのだが、そこにキンイロコウモリが襲い掛かった。
 コウモリ型ロボットらしく、飛翔能力を駆使して戦闘を優位に運ぶキンイロコウモリだったが、そのボディはストライプの数の違いを除けばまるでキレンジャーだった(笑)
 ともあれ、キカイダーを空中に持ち上げ、断崖下に叩き落すことで破壊に成功したキンイロコウモリ。ここまで来ると誰にでも推測可能だが、破壊されたキカイダーはテスト用ロボットだった。勿論テスト用とはいえ、それを一方的に破壊した戦闘能力は高く評価されるもので、実際プロフェッサー・ギルも「ほぼ満足のいくもの。」としていたが、偽物相手の一方的大勝利に期待する期待する視聴者は僅少だと思う(苦笑)。

 場面は替わってとある車道。そこでは服部半平が愛車を駆っていたのだが、例によって不調をかましていた。中から出て来た半平は車に花を添えて、10年振りにご先祖様の墓参りに行くから何としても動いて欲しいと懇願するのだった。
 成程、確かに花は菊の花で、墓参り用であった。10年も墓参りしていない非は置いておくとして、大事な墓参りゆえ正装していたのも分かるのだが、その服装はどうも見てもチャップリンのコスプレだった(爆笑)

 半平の趣味の悪さはさておき、嘆く半平の前に最前のテスト用キカイダーの首が飛んできた。それを見て、てっきりキカイダーが死んだものと思って号泣する半平の腕の中で首はアンドロイドマンのそれに代わった…………こりゃ、テスト用キカイダーに勝ったと言っても期待出来んな(苦笑)
 勿論、即座に首の変化に気付いた半平は、ダーク基地が近くにあるのでは?と訝しがったが、半平の活躍も期待出来なければ、残骸が簡単に人目に触れているダークの杜撰さにも期待が出来ないのであった(苦笑)。


 場面は替わって、ダーク基地らしき所に暗闇の中、1人の男(林ゆたか)が忍び込んでいた。数々の装置を解除して、秘密の隠し場所らしき所から『ダーク秘密計画書』なる書物を入手した男だったが、そこに警報装置が鳴り響いた。
 ダークに気付かれた男は基地の外にあった半平の車を使って(笑)脱出した。故障連発の半平車はこんな時に限ってスムーズに動いた(←半平もその事を愚痴っていた)が、忽ちアンドロイドマン達に包囲された。
 計画書の返還を強要するアンドロイドマン達だったが、そこにジローが登場した。男を庇いながらアンドロイドマン達を蹴散らす様子をモニタリングしていたプロフェッサー・ギルは悪魔の笛を吹き、苦悶するジローは崖下に転落した際に(何故かそれだけで)笛の音から逃れ、キカイダーに変身するや、その影響から完全に脱し、アンドロイドマン達を蹴散らした。
 この間、ナレーションはジローとダークの関係、良心回路と悪魔の笛の関係、そしてキカイダーの戦う目的を滔々と述べていた。途中から見始めた視聴者への説明だな(笑)

 そしてその頃、ナレーションが述べていた、キカイダーが探し求める光明寺博士は自邸の前に立っていた。記憶を失っても、自分に所縁のあるものに前々から引っ掛かりを覚えながら彷徨っていた光明寺博士は「光明寺」の名に導かれてそれとは知らずに自宅に戻ってきた訳だが、ダークに追われていることから来る強迫観念は尋常ではなく、終始警戒尽くしで行動した。
 勿論自宅内にも無断で入り(苦笑)、自室内で見つけたミツ子とマサルの写真に引っかかりを覚えるも、人の気配を察するやすぐに隠れてしまった。
 入って来たのは、写真にあったミツ子とマサルだった。2人は、もしかしたら父が記憶を取り戻して、自宅に帰っているかも知れないと思って様子を見に帰って来たのだった。
 前々から普段はダークの追跡を警戒して姉弟は自宅を離れていた訳だが、さすがに久々に戻った我が家とすぐには離れ難いらしく、マサルが今日はここに泊まろう、と提案するとミツ子も了承した。それは良いのだが、ミツ子が述べていた「ダークももう諦めたでしょう。」との根拠は何処にあったのだろうか?

 更におかしな展開は続いた。
 宅内に土足の後を見つけたミツ子はそれを父のそれと断じたのだが、(侵入目的とは言え)宅内に土足で入る光明寺博士も変なら、足跡があるだけで父のものと断ずるミツ子も変だった(そう思いたい気持ちは分かるのだが)。
 弾かれたように父の名を呼ぶマサルだったが、既に光明寺博士は逃げた後だった。その心境をナレーションが代弁していたが、理屈としては分かっても、いい加減間一髪で親子再会を逃すと云うワンパタ展開の連発は苛つくだけでしかないな(怒苦笑)

 そしてその夜。光明寺邸に別の闖入者が現れた。
 眠るミツ子とマサルに忍び寄るその影を怪しい奴と咎めてジローが襲い掛かり、その騒ぎに目を覚ましたミツ子が灯りを付けるや、姉弟は驚愕した。
 闖入者の正体は第3話にて死んだと語られていた光明寺タロー。つまり、光明寺博士の長男で、ミツ子とマサルの実兄だった。思わぬ再会に感激し、抱擁を交わす3人……………ん?確かジローって、亡きタローの姿を模して造られたのじゃなかったか?完全に別人だぞ?!(苦笑)。

 ともあれ、再会を喜ぶ3人の横で、ジローはどこか寂しげで、且つ明らかにタローを疑っていた。環境警備隊員としてダークに殺されたのでは?と訝しがるジローにタローはヘリで墜落して、気が付いたらダークの地下病院にいた、と釈明した。
 だがその夜、2人きりになったところでジローはタローを「本当の光明寺家の長男」として信用してはいない旨を告げた。タローはダークの手段を選ばない様からもそう思うのは無理も無い、としつつも自らの肉体を晒して人造人間ではないと言い張った。
 尚も信用しないジローは、「その皮膚の下に血の下にオイルが流れ、歯車が動いていないという証拠は?」と辛辣な疑念を投げ掛けた。確かにこれは死んだ筈の兄が生きていたと喜んでいたミツ子には聞くに堪えない台詞だったことだろう。半狂乱になって2人の間に割って入ったミツ子。

 ミツ子はタローが持ち出した前述のダークの計画書を持ってタローが本物である証拠と主張した。その計画書によると、ダークは東京埠頭からダークの新型アンドロイドが輸出されるとのことで、マサルはその計画を阻止せんとするタローへの協力をジローに求めた。
 だが、ジローは無言で、タローは(一応は)ジローが自分を疑う故、協力しないのは無理も無いとしたが、このやりとりもまたミツ子とマサルには耐え難いものだった。
 結局、ジローはミツ子・マサルの懇願に応じた様に笑顔を見せると、タローとがっちり握手を交わした。だが、この流れを見て、タローを完全に信用している(大人の)視聴者がいたとしたら、余程の善人か、騙され易い人だろう(苦笑)。

 Bパートに入り、東京埠頭にダークのトラックがやって来た。
 既に潜入済みだったタローとジロー(って、書くと『南極物語』みたいだ(苦笑))はトラックを確認し、後は一人でやると宣して高所からギターをかき鳴らした……………律儀と言おうか、流儀に忠実過ぎると言おうか……(苦笑)。
 だが、タローもまた単独で襲撃を掛けていた。さすがにアンドロイドマン達=雑兵は敵ではない様で、ジローに自分に構わず新型アンドロイドを破壊するよう告げたタローだったが、物陰に姿を消すや怒声を挙げた。
 怒声を聞いてじっとしていられないジローだったが、これを妨害するようにキンイロコウモリが声を掛けた。歴代破壊ロボット同様、ジローを「光明寺の人造人間」と呼ぶキンイロコウモリだが…………あ、合ってる(笑)……第1話に名前の出た連中とは明らかに後発だから、「光明寺の人造人間」という言葉に対して「お前もだろ!」とツッコめない(苦笑)。

 ともあれ、ジローを倒す為に様々な訓練を積んだと自称するキンイロコウモリはジローの両足を掴んで浮揚すると、その体を宙吊り状態にした。更にプロフェッサー・ギルの悪魔の笛がジローを苦しめたが、ナレーション曰く、ここでキンイロコウモリはミスを犯した。
 つまり、勝ちを焦ったキンイロコウモリがジローの体を宙吊り状態で振り回したことで、その風を切る音が悪魔の笛の音を遮断したという普段通りのくだらないものだったが、宙吊り攻めは笛の音より先に行われており、これをキンイロコウモリの「犯してはならないミス」とするのは筋違いだとシルバータイタンは思う(苦笑)。

 いずれにせよ、反動をつけて拘束から逃れたジローはキカイダーへの変身を遂げたが、勝負は避け、戦線離脱した。
 次のシーンで重症のタローを連れて光明寺邸に戻ったジローは、自分の油断でタローを負傷させたことをミツ子とマサルに詫びたが、二人はジローに対する不信状態に陥っていた。
 要するに、事態はジローが兄を疑ったことに起因すると見た故に、ジローにタローを任せられないとするもので、恐らくは意識の上ではジローに対する悪意というよりは、タロー不信への不快の念を抑えきれないと言ったところだろうか。
 姉弟はジローにタローを触らせない、と告げ、それに対してジローは力なく退室するしかなかった。

 ジローがひと眠りに入った一方で、別室ではタローが目覚めた。喜ぶミツ子にタローは、ジローの良心回路を完全にする、と告げて、ジローの設計図の在り処を尋ねた。
 元々ミツ子はジローの良心回路を完全な物にしたがっており、タローのことも疑っていなかったから、ギターの中にあることをあっさり話し、自分も手術を手伝うと申し出た。
 だが、タローは、ジローが手術されている姿をミツ子に見られるのを好まない筈だとして、その申し出を断り、兄の優しい気づかいにミツ子も表情をほころばせるのだった…………うーん……確かにこの展開って、人を騙すのに定石通りに運ばれている………。

 そしてジローの眠る寝室に忍び込んだタローは証言通りにギターから設計図を取り出すと、それに従ってジローの体から良心回路らしき部品を取り出すとそれを叩き付けて壊さんとした。
 だがそこにミツ子が部屋に入って来てその瞬間を目撃してしまったことですべては露見した。タロー(の姿をした者)は、良心回路がなくなれば、ダークに生まれし者はダークに還るとして、その良心回路を粉砕した。
 もはや悲鳴を上げるしか出来ない、それでも眼前の存在をまだ兄と信じたいミツ子は「気でも狂ったの?!」と悲痛の声を上げたが、偽タローは、兄弟再会という束の間を感謝しろと悪辣に告げ、キンイロコウモリの正体を現し、ミツ子とマサルを光明寺博士誘き出しの囮にするべく連れ去ると宣し、力なく抵抗しながら兄の生存に失望しつつあったミツ子に改めてタローは死んだことを告げた。

 だが、そこへギターの音色が鳴り響き、動けない筈のジローが立ち上がっていた。さすがに状況的に高所からの登場ではなかったが(笑)。
 そんな筈はない、と訝しがり、目の前の現実が受け入れ難くあったキンイロコウモリだったが、詰まる所、ギターに忍ばせていた設計図は細工を施した偽物で、キンイロコウモリが良心回路と思っていた物は「スペア部品の囮」とのことだった。
 完全に作戦が瓦解したキンイロコウモリは抱きかかえたミツ子をそのまま拉致して逃走するかと思われたが、屋外に出るや何故かミツ子を屋根上からキカイダーに投げつけてしまった。
 当然の様にミツ子はキカイダーに受け止められ、人質解放となってしまった訳だが、屋根上からキカイダーに投げられるミツ子の姿をコマ送りで追うとスカートの中身が‥‥………………いかん!辞めておこう……信じ難いことだが、この特撮房、女性や小さい子供も見ているらしい‥‥……下ネタは控えないと………(←何を今更)。

 かくして最終決戦が始まった。
 戦いの舞台は採石場に移り(笑)、アンドロイドマン達を蹴散らしたキカイダーは光明寺姉弟の兄への想いを踏み躙る悪辣振りへの怒りを露わにした。それに対して、キンイロコウモリ「ふざけるな!目的の為に手段は選ばず、だ!」と悪の組織の一員らしい開き直りを示したのだが………「ふざけるな!」って、別にキカイダーは怒りを示しただけで「ふざけて」はいないのだが………。
 どうも、前回のギンガメと言い、本話のキンイロコウモリと言い、新ダーク破壊ロボット達は日本語能力に問題があるようだ(笑)

 ともあれ、キンイロコウモリは飛行能力でキカイダーを翻弄し、コウモリフラッシュなる閃光攻撃でキカイダーを苦しめたが、決め手にはならず、いつものようにダブル・チョップ大車輪投げデンジ・エンドの三段攻撃を食らってこの世を去った。

 ラストシーンにて、ミツ子とマサルがジローを疑ったことを詫びつつその姿を探していた。ミツ子とマサルがジローの姿を追い、それを振り切るようにジローが一人走り去るのはいつものパターンなのだが、今回はタローの存在を巡って互いがそれぞれに傷ついたから、いつものワンパタが一際重いものだった。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日