人造人間キカイダー全話解説

第17話 アカクマバチ 恐怖の人質計画

監督:永野靖忠
脚本:島津昇弌
アカクマバチ登場
 冒頭、ダーク破壊ロボットのアカクマバチが、ダーク特別航空隊、略してダーク特航隊なるアンドロイドマン達を前に任務内容を説明していた。その内容は環境破壊…………時代を感じるが、別に大気中や河川に異物を放出・流入すればそれだけで出来そうな気がする小スケールな破壊活動である(苦笑)。もっとも、標的とされた人々には洒落にならない話ではあるが。

 勿論、環境破壊自体は最終目的ではなく、ダークの最終目的は世界征服で、環境破壊はその手段であることがアカクマバチの口から述べられていたが、世界征服を成し遂げても、制服した地の環境が破壊されまくっていたら、そこからが大変だろうな(苦笑)。

 ともあれ、アカクマバチの号令一下、特航隊のアンドロイドマン達はアカクマバチのミニチュア人形に化けると町や森林に繰り出し、毒ガス撒き始めた。確かにこれは普通のアンドロイドマン達ではなかった。
 勿論、撒かれたガスを吸った人々は忽ち苦しみ出した。どうも人々はこの惨状を(ダークの存在を知らないと云うのもあるのだろうけれど)光化学スモッグ的な公害と見たようで、新聞はこの事件を大々的に報じ、公害対策委員会の大山委員長(徳大寺伸)はマスコミを前に、その解決に全力を尽くす旨をかなり強い口調で力説していた。
 ただ、何と言おうか、具体的な話は一切なく、この辺り、現実もフィクションも古今東西、お役所のやることは一緒に見えて仕方がない(苦笑)。ま、ダークの仕業であることすら掴んでいないのだから、意気込みしかないのも無理はないのだが。

 ただ、そんな意気込みだけでもダークには目障りな様で、プロフェッサー・ギルは大山委員長を目の敵にし、伊香保に向かっている彼の一人娘を拉致して人質とすることをアカクマバチに厳命した。

 失敗の折にはアカクマバチのみならず、特航隊員を消す意を露わにし、アカクマバチも隊員達に生還を期さない覚悟で任務を遂行するよう告げ、燃料も片道分しか支給しなかった。
 事ここに至って「特航隊」は本当に「特攻隊」になった。

 場面は替わって伊香保駅。
 そこには光明寺博士が彷徨っていた。例によって記憶の手掛かりを求めてなのだが、光明寺博士には伊香保に来たことがあるような感覚が残っていた。つまり光明寺博士が伊香保に来たのは「偶然」ではなく、大山委員長の娘・ユミコが伊香保に来た方が「偶然」だった訳だ(笑)。

 そしてバスに乗り、伊香保温泉に向かう光明寺博士(←いつも思うが、何かあるとすぐ逃げる博士は、路銀をどうしているのだろうか?)だったが、それを半平の愛車が追い抜いた。  勿論、車には光明寺姉弟が乗っていた。姉弟が伊香保に来たのは、伊香保が光明寺博士の故郷だからであり、なるほど、光明寺博士の記憶に伊香保があったのは充分に納得の出来る話だ。

 その後、半平車はマサルの子供じみたけしかけに応じてバスと妙なカーチェイスを繰り広げた果てに伊香保グランドホテルに到着した。ホテルの支配人は光明寺博士の親友とのことで、父の手掛かりを求めてのものだろうけれど、到着するや否やマサルと半平はボーリングに行ってしまった。
 呆れるミツ子だったが、そこへ旧友のサヨコが車でやってきた。ま、この後、サヨコが支配人の娘であることが判明するのだが、彼女の乗っていた車が左ハンドルなのは金持ちであるとの描写か?(笑)
 ともあれ、三年振りの再会を懐かしがるミツ子とサヨコだったが、大山委員長の娘・ユミコも伊香保を訪れていることがサヨコの口から語られた。
 そこへ支配人も現れ、再会を喜び合うミツ子達はユミコと再会にも期待を膨らませていたが、少し離れた屋上では、ミツ子とユミコが共にいることをアカクマバチがほくそ笑んでいたのであった。

 ボーリング場での再会を経て、ドライブに赴かんとした一行だったが、既にホテルはアカクマバチ達の監視下にあり、忽ちミツ子・マサル・半平・ユミコ・サヨコはアカクマバチと特航隊に襲われ、マサルは「人を気ち●いにする(アカクマバチ談)」という毒針に刺された。
 例によって屋上からギターの音が鳴り響き、ジローが現れたのだが、ほとんど言葉も発さず、飛び降りて着地した際には既にキカイダーに変身していたのが展開の急さを物語っていた。
 勿論、如何に特航隊とはいえ、アンドロイドマン達がキカイダーに抗し得た訳ではない。だが、彼等の襲撃は時間稼ぎにはなった様で、アカクマバチはキカイダーがアンドロイドマン達に手間取る間にミツ子・マサル・ユミコといった本来のターゲットの拉致に成功した。
 3人を拉致したアカクマバチは高笑いしながら湖畔の林を歩き去ったところでAパートが終わったのだが、そんな騒ぎのすぐ近くに居ながら、丸で気付かず無表情の光明寺博士が不気味だった(苦笑)。

 Bパートに入ると時刻は既に夜で、大山委員長がホテルに戻ってきたところだった。既に娘・ユミコがダークの手に落ちたことも、ダークが大山委員長の公害対策中止を求めていることも、伝達済みだった。
 大山委員長の本職は政治家の様で、例え娘の身が危うかろうとも国民の為の政策を捨てる訳にはいかないとの考えでいたが、光明寺姉弟も共に拉致されていることが委員長を苦悩させた(ちなみに交換条件に応じるか否かの回答期限は明朝6時)。
 ダークのアカクマバチは電話で博士に要求が伝わっているか?を確認し、ダークの意向に沿わなければ人質の命がないことも重ねて伝えて来た。

 その間、ジロー、半平、サヨコは徹夜でミツ子達を探していた。第11話以来となる方向探知機も駆使していたが、闇夜の林内、それも標的と距離があっては探知が出来ない様だった。
 だが、明け方近くに湖畔にマサルの紙飛行機を見つけたことと、ジモティのサヨコが近くに人の住んでいない山荘があることを証言したことで当たりつけたジローの方向探知機はようやくミツ子達の位置を掴み得た。

 そして夜明けはジロー達の苦心と同時にタイムリミットも意味していた。
 大山委員長に応じる気配なしとみたアカクマバチはダークの恐ろしさを見せると息巻いた。それは単純な殺害を意味するのではなく、既に気●い状態にされたマサル同様、ユミコも同様の状態にして父の元へ帰すことを意味していた。
 推測だが、ダークの目的はあくまで大山委員長の政策を封じることなので、短気に殺すのではなく、気●い状態のユミコを正気に戻すことをたてに改めて大山委員長を脅すという次善の策を考えていたのかも知れない。だとすると、ひっきりなしの高笑いがウザく、見てくれもダサいアカクマバチだが(笑)、特航隊を率いているだけのことは有るのかも知れない。

 ともあれ、隠れ家は既にジロー達の知るところだったために、救助の手はすんでのところで間に合った。ジローがアカクマバチと立ち回る間隙を縫って、半平とサヨコがミツ子達を救出した。
 勿論、そこにはアンドロイドマン達が立ちはだかったのだが、その攻撃に狼狽えつつも半平は3人のアンドロイドマンを撃退する奮闘を見せた。直後に伊賀忍者としての腕をどや顔し、サヨコに窘められていたが、ま、これは御愛嬌と云えよう。

 一方、その間アカクマバチと対峙していたジローは意外にもてこずっていた。
 一撃必殺の力を持つ、アカクマバチの両拳の毒針に及び腰になっていた状態で、なかなか変身に踏み切れずにいたが、ようやく変身する間隙を見つけた途端にプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音が襲ってきた。今回の笛の音はかなり執拗で、苦悶し、アカクマバチの攻撃をよけるだけで精いっぱいだったジローは湖畔に倒れ伏す始末だった。

 そしてその湖畔では、ボートに乗り込んだミツ子・マサル・半平・ユミコ・サヨコ達がアンドロイドマン達の追撃を振り切った‥‥………と思ったら、アンドロイドマンの1人が投げ縄でボートにロープを絡ませるとパラシュートを駆使して追撃を続行して来た。
 所謂、パラセイリング状態で、その異様な追跡に狼狽えた一行は運転手であるサヨコが必死にターンを繰り返して追撃を振り切ろうとしていたが…………普通にロープを切る・解くという発想がなかったことが激しく疑問だった
 湖上空に舞うアンドロイドマンは飛び道具で攻撃してきたが、しばらくしてからこの当たり前のことに気付き得たものか、半平がロープをナイフで切り落としてアンドロイドマンを湖上に落下せしめた。
 単純な成功に妙な程大喜びする大人4人だったが、次の瞬間湖岸でジローがピンチにあることに気付くとミツ子は父親譲りの頭の回転を見せ始めた。サヨコに湖岸への接近を要請すると、半平にも「腕の見せ所」と説いた。
 半平もそれでミツ子の言わんとするところを察したようで、最前切り落としたロープを投げるやジローを絡め取り、アカクマバチから引き離した。

 ジローの立場で見てみると、いきなり投げ縄で水中に引きずり込まれるというとんでもない仕打ちに見えなくも無かったが、アカクマバチと距離を取れたのは重要だったし、何より水中に逃れたことで悪魔の笛の音から逃れ得たことでキカイダーへの変身も叶った。

 かくして最終決戦が始まったが、時間の都合か(苦笑)、ここまでジローを苦しめたにしてはいざ格闘となるとアカクマバチはしばしの取っ組み合いを展開しただけでこれと言った善戦も見せず、いつもの3点セット(ダブル・チョップ大車輪投げデンジ・エンド)の前にくたばった。

 アカクマバチ及び特航隊のいつもと一味違った暗躍はなかなかに見応えがあったが、難を言えば最終決戦が呆気なく、アカクマバチ戦死後の動きは極めて不鮮明だった。
 マサルが正気に戻った詳細も不明で、30分の時間枠(←正確には25分も無い)ではこれが限界なのかな?



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日