人造人間キカイダー全話解説

第18話 クロカメレオン 幻の大強奪作戦

監督:永野靖忠
脚本:渡邊亮徳、島田真之
クロカメレオン登場
 冒頭、ニュースにて春日原子村から中山原子力センターに新開発核物質原子ウラトニウムの移管作業について報じられていた。
 「原子」という字が含まれる地名も謎なら、日本にそんな物質があるのも謎(第二次世界大戦中、日本でも原子爆弾の開発が進められていたが、国内にウランが無かったために断念している)だが、それはともかく、移管作業は「謎の集団」に襲われたものの、警備に当たっていた機動隊員達の奮闘で事なきを得たことが報じられていた。

 視聴者的には「謎の組織」がダークであることは丸分かりで、案の定、ダークでは任務に失敗したアンドロイドマン達を廃車に閉じ込めてそのままスクラップ機に掛けるという酷刑を以て見せしめとしていた。
 よくあるシーンと言えば、よくあるシーンなのだが、ここまでの展開で興味深いのは2点。
 1点は特撮作品にて極めて影の薄い警察(笑)がちゃんと活躍していること。実際、核燃料を悪の組織から守ったのは立派な活躍と云えよう。
 もう1点は処刑されようとしていたアンドロイドマン達が必死に命乞いをし、ロボットに近い存在と見えるアンドロイドマン達がかなり感情を見せていたことである。確かにアンドロイドマン達が完全なロボットで感情を持たないなら見せしめとしての極刑など必要なかろう。

 ともあれ、プロフェッサー・ギルは原子ウラトニウム強奪を断念しておらず、ダーク新破壊部隊クロカメレオンに手段を選ばずこれを強奪するよう命じた。
 カメレオンの保護色よろしく、虚空から現れたクロカメレオンは応諾の意を示すと再びその姿を消し、母体となった動物の能力を駆使した暗躍をしてくれそうではあったが、「まかせてちょーだい!」と口走るなど、前回のアカクマバチ同様、どうも喋り方がウザい(苦笑)。

 その頃、ミツ子・マサル・半平・サヨコは伊香保の地図を前に光明寺博士捜索作戦を練っていた。前回伊香保までやってきたものの、いきなり事件に巻き込まれて触れられずじまいだった光明寺博士捜索が続けられていた訳だ。
 作中、伊香保で光明寺博士を見かけたり、噂を聞いたりした訳でもなく、マサルは伊香保に父がいるかどうか懐疑的だったが、ミツ子に言わせると光明寺親子にとって伊香保はかなり思い出深い地とのことで、ローラー作戦続行が決められた。

 だが、ミツ子達が探索せんとしていた地区は、ダークが原子ウラトニウム強奪を目論む移送ルートと重なっていた。それがため、サヨコと顔見知りのガソリンスタンドで給油が出来なかったり、工事中を理由(←勿論偽り)に通行止めを食らったり、とその動きはかなりダークに阻害されていた。
 そのダークは今度こそクロカメレオン指揮の元、原子ウラトニウムを強奪せんとして、市村隊長(北原義郎)が警備するトラックをヘリコプターまで動員して追跡していた。
 そしてダークはミツ子と達を追い払った地点でガス弾を初め、飛び道具を駆使して襲撃を開始した。数々の時代劇や特撮番組で渋い役どころをこなして来た北原氏演じる市村隊長は拳銃を得物に抗戦した。やはりこの人が雑魚役になることはないか(笑)。

 だが、陣容も銃火器の力もダークの方が上で、奮闘空しく生き残ったのは市村隊長他1名のみとなり、隊長自身クロカメレオンに羽交い絞めにされ、残る1名も武装解除に応じざるを得ないところまで追い込まれた。
 だがそこに鳴り響くはいつものギター。高所から現れたジローはギターを得物にダークと大立ち回りを展開した。楽器を愛する心のない奴だ(苦笑)。
 ともあれ、ジローは市村隊長にウラトニウムとともに逃げるよう促し、市村隊長は自らハンドルを握ると部下と共に戦線離脱した。
 勿論それを簡単に許すダークではないのだが、ジローは次々とアンドロイドマン達を蹴散らし、クロカメレオンと1対1になるとキカイダーに変身した。だが、なかなかに戦闘に強いと見られたクロカメレオンだったが、保護色による姿隠しを駆使してしばらくキカイダーの目を眩ますと戦線離脱し、本来の目的であるウラトニウムを積んだトラックの追跡を優先した(←任務的には正しい行動である)。

 勿論キカイダーもこれを追い、トラック荷台の上を舞台として格闘戦が展開されたが、前述した様にクロカメレオンはなかなかに強かった。何度も叩きのめされ、組み伏せられたキカイダーは何とか一瞬の粋を突いて巴投げでクロカメレオンを撃退したが、相手は姿隠しを得意とするカメレオン型サイボーグで、安心出来る状態ではなかった。
 また、ほぼタイミングを同じくして(タンクを撃ち抜かれたために)トラックがガス欠を起こし、補助ガソリン10Lではすぐにガス欠に見舞われるのは目に見えていた。ただ、他に打つ手もないため、その量で行けるところまで行こうと云うことになったが、この間の会話で市村隊長は「キカイダー」の名を呼んで礼を述べていた
 ということはキカイダーの名は警察に認知されていると云うことだろうか?等身大の特撮ヒーローとしてはかなり珍しい例と言える。

 一方、クロカメレオンはこの間、離れた場所で様子を伺っており、彼等が給油を行うであろう場には既にダークの手が伸びていることをほくそ笑み、光明寺姉弟にターゲットをシフトした。
 工事現場関係者に化けさせたアンドロイドマンに「光明寺という人が大怪我をした!」と告げさせてミツ子とマサルを誘き出したのだが、慌てて駆け付けた姉弟はどこぞの橋の上に来ただけで、マサルが「お父さん、とうとう見つからなかった……。」とぼやいた………諦め早過ぎるぞマサル!!
 ミツ子もミツ子で、その場所で、親子三人でよく歌を歌った思い出を持ち出し、「赤とんぼ」を唄い出したのだが、(偽情報ではあるものの)父親は大怪我をしているのだから、病院関係とか、警察関係とか、訪ねるべき場は他にもあるだろうに歌を歌い、思い出に浸っている場合か?!

 だが、「嘘から出た誠」と云おうか、2人の歌声は光明寺博士本人の耳に入り、歌声と周囲の景色に記憶を揺さぶられた光明寺博士は(珍しいことに)自分の方から姉弟の(声の)方に向かった。

 だが、タイミングの悪いことに2人をダークが襲撃し、またも光明寺博士は逃げの行動に出ざるを得なかった。
 その頃、ガソリンスタンドではダークの罠がジロー達を襲わんとしていた。スタンド職員に化けたアンドロイドマンは「本庁からの連絡」と偽って市村隊長の部下を、悲鳴を聞いて駆け付けた市村隊長を襲い、クロカメレオンが市村隊長に成りすました。
 市村隊長は負傷の手当ても終わったとしてジローに再出発を促したが、部下がいないことで怪しさ丸出し(笑)。ツッコむ間もなくジローが部下のいないことを詰問したが、それに対する(偽)市村隊長の答えが「帰したよ。別の事件が起こったので。」と云う、説得力の丸で無いものだった(笑)。
 これまたツッコむ間もなく、原子ウラトニウム移送という重要任務を途中で離脱することがおかしいことをジローに察知されていた。

 ここまでの段階でも充分怪しいのに、スタンド職員に化けていたアンドロイドマンがいきなりスパナを得物にジローに殴りかかったことでスタンドがダークの罠の真っただ中にあることがモロバレとなった(笑)。 もっとも、ジローとアンドロイドマン達が戦う間隙を縫って偽市村隊長がトラックを走らせたのだから、全く無意味な行動でもなかったが。
 走り去るトラックを追わんとしたジローに火炎放射器まで駆使してなかなかの抵抗振りを見せたアンドロイドマン達だったが、如何せんたった2人では少しの時間稼ぎにしかならず、ジローは忽ち追いついた。
 そこでプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音に襲われたが、ジローを下敷きにせんとしてクロカメレオンが掌ミサイルにて起こした落石が笛の音を断ち、粉塵が晴れたときにはキカイダーがその雄姿を現していた。

 かくして最終決戦が始まったが、クロカメレオンはそれまでの善戦振りが嘘のようにキカイダーに対して劣勢に立たされた。よくあるパターンだが、理由なき弱体化振りはどうにかならんかのう?
 ともあれ、ダブル・チョップを食らったクロカメレオンは妙なボックスを取り出すと、崖上の十字架(爆弾付)に架けた光明寺姉弟をたてにキカイダーの動きを封じんとした。
 だが、キカイダーは特段怯んだ様子もなく、回転アタックなる攻撃でクロカメレオンを押さえ込むとクロカメレオンはボックスのスイッチを押すこともままならず、大車輪投げデンジ・エンドの連続攻撃でおくたばりになったのだった。
 やはり起爆装置で脅すなら、破れかぶれ攻撃に備えてデス・スイッチを使わないとね(←何のこっちゃ)。

 ラストシーンにて、いつもの様にジローは光明寺姉弟を振り切るようにサイドマシーンでその場を去ったのだが、作戦展開が細かい割には消化不良だった。
 原子ウラトニウムがジローの手で無事に届けられたことだけはナレーションで触れられていたが、市村隊長達の生死も不明で、伊香保における光明寺博士探索もこれと言って触れられずじまいだった。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日