人造人間キカイダー全話解説

第3話 呪い オレンジアントの死の挑戦

監督:北村秀敏
脚本:伊上勝
オレンジアント登場
 今回の舞台は静岡県伊東市。夜中、地中から飛び出したダーク破壊部隊第3の使者・オレンジアントプロフェッサー・ギルの笛の音を受けながらとある海岸の灯台を襲撃した(性能テストが目的らしい)。
 襲撃者にしてはやかましい音を立てる奴だと思っていたら、これは灯台守を誘き出す為で、その殺害と、灯台の破壊がスペックテストに入っていたらしい。

 異音に目覚めた妻に促された目を覚ました灯台守・道夫(山口暁)は、哀れにもオレンジアントの吐く蟻酸攻撃に殺され、灯台も破壊された。妻に逃げるよう告げる断末魔を挙げて息絶えた道夫………………ウルトラ警備隊の青木隊員と言い、ライダーマン結城丈二と言い、この時期の山口氏は非業な最期を遂げる役柄が似合っていたのだろうか? 

 そんな脅威が迫っていることも知らず、ジロー・ミツ子・マサルは海辺で焼き魚を傾けていた。魚はジローが捕らえたもので、こういうシーンがあると人造人間とはいえ、ジローが単に戦うだけの機械ではないのが見て取れてほっとする。
 一方で、人造人間であるジローは人間の様な食糧を必要とせず、胸部にカプセルの様な物を装着することでエネルギー補給としていた。初期ならではの描写である。他にもジローの世話を焼くミツ子に対してマサルが「見てられない。」としていたが、日常的に見えて、ジローという存在を様々に考えさせられる一コマでもあった。

 そんな団欒的な一時はマサルが海岸近くの岩場に打ち上げられた女性を発見したことで終わった。介抱されて息を吹き返した女性は冒頭でオレンジアントに殺された灯台守の妻で、その証言からダークは灯台周辺の街を丸ごと占領下におこうとしていたことが判明。驚いたミツ子が呼び掛けたときには、ジローは既に街中へ向かっていた。
 その街中ではオレンジアントが市民達を大勢強制連行しようとしていた。「何の権利有って…?」と抗議の声を挙げる男性に、優秀な人材をダークに協力させる為で、役立たずは皆殺しにすると答えた。目撃者はすぐに消そうとするくせに、機密はべらべらしゃべる奴が多いのはダーク破壊部隊の特徴か?(笑)
 ともあれ、これに恐慌を来たした一人の若者が「死ぬのは嫌だ!」と言って逃げ出したところを腕からの蟻酸攻撃を浴びせられ、背中から爆炎を挙げて死亡した。ダークの残忍さを示さんとの描写シーンなんだろうけれど、若者の行為が台詞とは裏腹に「殺して下さい。」と言っている様に思えてならなかった(苦笑)。

 ともあれ、惨殺を目の当たりにした人々が戦慄する中、一人の婦人が息子の名を呼んで狼狽えていた。おひおひ、そんなことしたらオレンジアントに逃げている奴がまだいるのを教えているようなもんだぞ、と思っていたら案の定、オレンジアントはアンドロイドマン達にまだ逃げている者の追跡を命じた。
 その対象となっていた少年・洋太(五島義秀)は、ホテル内を逃げ惑っていたが、アンドロイドマン達は大型ゲーム機の下に隠れた、チョット目を下にやれば見つかる稚拙な隠れ方の洋太を見つけられない始末(苦笑)。
 しかも、直後、服部半平がかましたくしゃみに気付くものの、木馬に跨る半平の頬を触りながら、「何だマネキンか…。」と言っていたのだから、アンドロインドマンの触感はかなりおかしい(笑)
 結局、半平が二度目のくしゃみをしたことで、その存在がアンドロイドマン達にばれ、勇ましく戦うかと思われた半平がゲーム機の下に潜り込んだために、洋太の存在もばれ、二人は囚われの身となった。

 だが、二人を連行しようとしたアンドロイドマン達がホテルを出たところで、屋上よりギターをかき鳴らしてジローがワンパタ登場。アンドロイドマン達に二人の解放を要求して飛び降りたジローにアンドロイドマン達が敵う筈もなく、内一名は傍にあったプールに叩き落されたのだが、報復とばかりにそいつを杖で叩いたり、水をかけたりする半平、セコ過ぎ(笑)
 直後、アンドロイドマン達を蹴散らしたジローは街の人々が浜に連行されていることを半平から聞き、洋太から母親の救出を懇願されたのだが、となると、半平は多くの人々が連行される中、彼一人逃げていたことになる。ま、一介の私立探偵に依頼と関係ない人々のために体を張らなければならない理由はないから、無理も無いし、一応は半平も後々人格的にマシになっていくことを知っているから余りくどくどツッコミはしないが………。

 ともあれ、サイドマシーンに搭乗して人々の救出に向かわんとしたジローだったが、そこにギルの笛の音が襲い掛かった。笛の音に苦しむジローは訝しがって近寄ってきた半平もぶっ飛ばし(苦笑)、ついにはサイドマシーンのシート上に突っ伏して気を失った。その眼前にいたオレンジアントによるとキカイダー打倒の為、音波笛のサイクルを10倍にしたとのことで、満足気に「とうとう光明寺の人造人間の最期だ!」と叫んでいたが、「お前も光明寺博士の作った人造人間じゃないか!!」というツッコミを入れなくてはなるまい(笑)
 ともあれ、気絶した振りをしていたジローは、オレンジアントが満足気に近寄って来るや、これに飛び掛かった。既に笛は止まっており、擬態に騙されたことを知ったオレンジアントプロフェッサー・ギルに笛の再奏を懇願したが、ジローはそれより先にキカイダーに変身した。
 かくして緒戦が展開されたが、結果から言えば痛み分けとなった。
 オレンジアントは団子状の両腕の先端から発する、岩をも溶かす蟻酸でキカイダーを攻撃し、容易に当たらなかったものの、胸部に命中するやその外装を溶かし、悶絶させた。
 一方のキカイダーはバランスの悪そうなオレンジアントを相手に肉弾戦ではやや有利だったが、マウント・ポジションから投げ飛ばされたところに蟻酸を受けると形勢逆転。何とか空手チョップで左腕をすっ飛ばすことで撤収に追いやった。

 Bパートに入ると、横たわるジローに対して、ミツ子が良心回路を完全なものにする処置を施そうとしていた。ミツ子が光明寺博士に聞いた話では、良心回路は配線が1本不足しているだけで、それを補えば完全な人造人間として、エネルギーの消耗も格段に少なくなるという。
 確かにキカイダーを「便利な戦闘ロボット」と見れば手術を躊躇う理由はない。だが、マサルは自分達と人として付き合っているジローの体が開かれ、人造人間としてメス(正確にはドライバー(笑))が入れられるのを見たくない、とし、ミツ子も「私の使命」としながらも辛そうにしていた。

 結局、良心回路を完全な物とすることは当のジローが拒否した。
 ジロー曰く、不完全な良心回路を意志の力で制御することに自分の生き、尽力する意義があるとし、いくら製品として完全になれることでも、ミツ子の頼みでもこれだけは聞けない、とした。元が人間でないが、不完全さも含めて人間以上に人間らしい心を持つ故に、元々が人間だった仮面ライダーとはまた違った苦悩が描かれていると云えよう。勿論、それが無ければそれこそキカイダーは只の「良く出来た戦闘ロボット」でしかなくなってしまう訳だが。

 一方、手術を拒むジローに対し、ミツ子は良心回路の完備は父・光明寺博士の望みだとした。何故そう言い切れるのかと訝しがるジローに、ミツ子はジローのモデルが光明寺博士の亡き長男・タロー(つまり、ミツ子・マサルには兄に当たる)であったこと、ジローには亡きタローの「強い正義漢と平和を愛した意志」を投影せんとしていたことを告げた。
 そのタローは環境警備員のチーフとして、ダークが放火した村から村人達を助ける為に尽力してその命を落としていた。
 当然光明寺一家にとってダークはタローの仇でもあり、そのダークと戦う為にもミツ子は改めて良心回路の完備を要請したが、ジローの意志は変わらなかった。
 「心臓の代わりに動力エンジン、頭脳の代わりにコンピューター」が搭載されていると我が身を振り返るジローにとって、良心回路の不完全さはただ一つの人間らしさで、それを取り去ることが完全に人間と異なる存在になることを意味し、耐え難く思っていたのである。

 程なく、ジローは伊豆シャボテン公園内に点々と残されたオレンジアントの蟻酸を追撃し、父の行方を求めてサイドマシーンの助手席に潜んでいたマサルもこれに追随した(というか、途中一人で帰す訳にも行かなかった)。
 そして近くの森林にてオレンジアントと再度遭遇した訳だが、オレンジアント曰く、点在した蟻酸の後はジローを誘き出す為の罠とのことで、水鉄砲―状況的にオレンジアントの蟻酸を放出出来ると思われる―を装備させたアンドロイドマン達にマサルを狙うよう指示した。
 オレンジアントが目論んだ様にマサルはジローの足手まといとなり、途中で足まで挫いたが、アンドロイドマン達は何故か一度も水鉄砲を放たず、変身したキカイダーがサイドマシーンを駆るや、あっさり逃走を許した。何のための罠やら(苦笑)。

 場面は替わってとある小屋の中。自分が足手まといとなったことを詫びるマサルにキカイダーは何も言わず笑顔で手当てを続けた。そこはそこ、例え人造人間でも立派に「光明寺博士の息子」であるキカイダーはマサルの気持ちが分かるのだろう。
 後年、ドクターケイト戦闘員を素手で蹴散らす力を持っていたマサルもこの時点でアンドロイドマンとやり合うのは無理が有った様だ(←道場主「何の話だそれは?」)。
 ともあれ、程なく追跡して来たオレンジアントはキカイダー達を燻し出さんとし、キカイダーは何故か2人を追って天井裏に潜んでいた半平にマサルの保護を託すと小屋の外に飛び出した。
 二昔前の欧米人が、中途半端な日本知識でイラスト化した忍者みたいなスタイルの半平は「預かり賃は高いが宜しいか?」とがめつさを覗かせていたが、「その前に命が危ないぞ。」と返したキカイダー。そんな状況下でマサルを半平に託すとは、余程の切羽詰まった状況と捉えていたのか、それとも半平の潜在能力を買っていたのか…………。どっちであっても不思議ではないな(笑)。

 小屋を出たキカイダーが吊り橋、空き地でアンドロイドマン達を蹴散らすと、オレンジアントは土中からの奇襲と、投げ針攻撃でキカイダーに応戦。スティレット程の大きさの針は大腿部に刺さったことでキカイダーに苦痛を与え、その動きを鈍らせる効果は有った様だったが、大勢を決める程度には至らず、しばしの格闘後、大車輪投げからデンジ・エンドの連続攻撃でキカイダーはオレンジアントを討ち取ったのだった。

 最終局面にて、洋太が母親と再会し、他の一般ピープル達がそれを微笑ましく見守ることで、伊東市がダークの脅威を逃れていたことが描写されていた。
 自分達も親子の再会を望む光明寺姉弟はその光景に安堵した様にジローの駆るサイドマシーンで伊東を後にし、それを半平が未練がましく追随して第3話は終わった。
 しかし、金にせこい小心者の半平に、この時点でジロー達について行く必然性はあったのかいな?



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 最終更新 令和元(2019)年一二月四日