人造人間キカイダー全話解説

第20話 冷酷アオタガメのドクロ計画!!

監督:畠山豊彦
脚本:長坂秀佳
アオタガメ登場
 冒頭、ダーク破壊ロボットのアオタガメはダムを襲撃した。水源地でもあるダムに毒薬を流し、飲料水を通じて大量の人々を毒薬の影響かに曝そうという悪の組織の伝統的破壊活動である(←ちなみに命の源となる水源地に実際に毒物混入などを実践したらかなりの重罰となる)。
 人々の命の源ともいえるダムをしっかり監視せんとする所員達の意識は高かったが、それゆえに次々とアオタガメの被害に遭った。所長(宇南山宏)は足を折られて水中に叩き込まれ、同道していた所員はチェーン付きの両角に絡め取られた。
更には毒液混入に気付いて水門を止めたり、所長に通報したりせんとした所員達はアオタガメスモークなる毒ガスに眠らされた。

 少ししてダムには(何の脈絡もなく)ジローがやって来て足を引きずる所長と遭遇。水に何かが混入されたことを所長に知らされたジローは即座にダークの仕業と判断し、試験管に採った水を体内の分析機にかけ、ドクロ草から採った毒液が混入されていることを所長に次げ、解毒剤の生成を託した……………って、おい!ダム職員は別に科学者じゃないだろうが!!

 場面は替わってとある公園。そこでは光明寺姉弟が必死に探しても見つからない父を思って途方に暮れていたが、園内正反対の位置にはその光明寺博士がいて、父子は互いに気付かないまま博士はその場を去り‥‥……………ワンパタが悪いとは言わんが、この手のしつこいワンパタには正直腹を立てずにはおれんぞ!

 ともあれ、半平が持ってきた握り飯で昼食にかかった姉弟だったが、マサルが咽喉の渇きを訴え、水を求めたことで周辺の水道という水道が断水状態にあることが判明した。
 何とか出る水道を求めた一行はとある水道を使おうとしてその家の子(簾内滋之)に咎められたのだが、その子浅沼一平は最前の所長−浅沼竜平の息子だったことで、関係者が一堂に急接近した。

 その間もダークによる毒物混入は進んでおり、ミツ子達がようやく水が出たと喜んだときには一目で見て分かる緑色で、更には所長が毒の正体を突き止めたことで一同は難を逃れた。
 所長曰く、僅かながら毒物が混ざっており、その特効薬として天女草なる薬草が必要とのことだったが、本当に何者だろ、この所長(笑)
 事を急ぐ所長はミツ子達にも天女草採集への協力を求めたが、そこには既にダークの魔手が伸びていた。アオタガメ率いる一味によって槍衾に囲まれ、あわやという状況に陥ったが、例によってそこへギターの音が鳴り響いた。
 ジローがギターをかき鳴らすのはまず高所に限られるのだが、ミツ子達が危機に陥っていたのはだだっ広い平地で、ジローは何処に?と思っていると立っていたのは一本の杉の木の上……………おいっ!そんなところに登っている暇があったらもっと余裕をもってミツ子達を助けられるだろうが!!(苦笑)

 いずれにしても勝負は多少の白兵戦が展開されただけでアオタガメは得意の角型鎖鎌を返されてほうほうの態で逃走。新ロボット部隊に相応しい多彩さの割には弱く、基地に戻るやプロフェッサー・ギルの叱責を受けたが、毒水計画自体には相当自信があるようで、毒液が飲用水に混入されれば飲んだ者はプロフェッサー・ギルの意のままになることを強調した。
 それは良いのだが、その根拠は先の襲撃で拉致してきた所員に刀を持たせて互いを刺させるというものだった。う〜ん………別段簡単な暗示に従うレベルで充分出来ることなのだが(苦笑)…………実際、プロフェッサー・ギル自身、毒液の量が少なかったため効果は薄いと叱責し、毒液の更なる増加・投入を命じた。
 まあ、アオタガメがヘボいにしても、既に水道水に混入されている毒液を利用しない手はないだろう。

 一方、その頃浅沼所長は採集した天女草を煎じて解毒剤、正確には中和剤の精製・投入を急がんとしていた。何せ後20分で水門が自動的に開き、毒液が水道水に混入されてしまうので、それまでに中和剤を投入して無毒化しなくてはならないと云うのだ。
 しかし、毒物の混入が明らかになった時点で水門を閉じたままにするという処置は採れないのだろうか?また、水門が閉じたままだというなら、浅沼家の水道から出た毒水は何だったのだろうか?
 どうもこの第20話は時系列に穴が有る様に思われてならない………。

 ともあれ、浅沼所長とのアオタガメ双方が己の使命を急いだ。
 進捗速度としては準備の整っていたアオタガメの方に分があり、アオタガメは水源地にどんどん毒液を流しこんだが、その最中に山中に立ち上る煙に気付いた。その煙は浅沼所長が天女草を煮込んでいた炊煙で、中和剤は完成したところだった。
 ちなみにアオタガメが追加投入した毒液はドラム缶数本分で、浅沼所長が煎じた中和剤はドラム缶1本分‥‥…………毒にしても、薬にしてもその分量では拡散して効果が出るとは思えんだが(苦笑)

 一方、浅沼所長が必死になって中和剤の生成と散布に務めていた頃、息子である一平はとんでもない受難に遭遇していた。
 先に投入された毒水を飲んだ地域住民(主婦達)が「浅沼所長の責任」とし、姿が見えない所長に替えて一平を槍玉に挙げていた!
 緑色の水を飲んで家族が腹痛を起こしたことを抗議していたのだが、このシーン、家族の被害に感情的になっていることを差っ引いてもひど過ぎた………そもそも水道から出た水が緑色をしている段階で普通は警戒して飲まないだろう
 加えて、水源地管理者としての浅沼所長の管理不行き届きを(ダークの仕業と知らずに)責めるのを理解出来るにしても、所長の姿が見えないからと言って、明らかに小学生で責任能力を持ち得ない一平を槍玉に挙げていたのは唖然とするしかなかった………。
 勿論それを目の当たりにしていた光明寺姉弟は何とか一平を庇おうとするのだが、オバタリアン達は聞く耳を持たず、所長の姿が見えないことを「逃げた」と決めつけて、丸で所長が毒物を混入した張本人かの様に決めつける始末だった…………思い切り私見だが、この『全話解説』において、『ウルトラマンA』を綴っていた時以来の分からず屋パンピーに憤りを禁じ得なかった…………。

 結局、分からず屋オバタリアン達の槍玉に居た堪れなくなった一平は父親の無実の証拠を見つけると云ってその場を駆け出したのだが、オバタリアン達は一平に逃げられたと見做してミツ子達を拘束せんとする始末。するとそこへギターの音色が鳴り響いた!
 分からず屋のオバタリアンが相手とはいえ、何故キカイダーが?と思ったら演奏の主は何と半平!高所から空転しながら見事に着地に失敗した半平(苦笑)は、ミツ子達に味方して所長の無実を証明すると称して、貯水地の水を飲んで何事も無いことを示さんとしたのだが、これは裏目に出た。
 つまり毒液効果は強化されており、忽ち半平は狂乱状態に陥った……自身が言った様に、「義によって」誰かを助けんとするのは良いのだが、確かな根拠をもってやろうな、半平よ…………。
 ただ、シルバータイタン的には、愚行と云えども誰かを助けようとした半平に対し、毒水による悪影響を「それ見たことか。」と云わんばかりにほくそ笑んでいたオバタリアンの方が、腹が立ったものだっだ………。

 一方、山中に飛び込んだ一平はアオタガメ達に追われつつも、光明寺博士と共に中和剤入りのドラム缶を転がして運ぶ父と再会。勿論ダークの襲撃を受けたため、光明寺博士は逃亡。ま、この流れはしょうがないか(苦笑)。
 そこにジローも駆け付けたことで父子はジローがアオタガメ達を迎撃している間に(怪我に苦しみつつも)何とかドラム缶を水源まで運ばんとした。
 その間ジローは例によってプロフェッサー・ギルの悪魔の笛に悶絶したりしたが、
左右から襲い掛かって来たアンドロイドマンを鉢合わせにしてその爆発音で笛の音遮断というひどい「最後の手段」を用いて変身に成功した(失笑)。

 いざ変身が為されると、前述した様にアオタガメの戦闘能力は大したものではなく、多彩な攻撃手段を持ちつつも鈍重そうな体格もあってか(最後の最後には角一本折れたことで「戦えない!」と狼狽えていた)、少し力押しした以外はキカイダーに対して大して優位にも立てず、幾許かの時間は掛かりつつもダブル・チョップ回転アタックからのマウント・ポジション攻撃→大車輪投げデンジ・エンドで決着した。

 問題はその間の中和剤投入で、動けない父に代わって水源地までドラム缶を転がして来た一平は正気を失っている半平の襲撃を受けた。まあ、素でも大して強くない半平だから(苦笑)、敵意を露わにしていても正気を失った状態で然程脅威を感じさせるでもなかったのだが、小学生にしては充分怖かっただろう。
 ミツ子とマサルが駆け付けてくれたものの、二人も半平に対して積極的に戦意を燃やせるわけではない。結局ミツ子が丸太棒をもって後ろから殴りつけて半平を水源地に叩き落したのだが、迷える状態を考慮に入れても実にリアリティのない殴り方だった。水の江じゅんさんには失礼だが、彼女は憂いを滲ませた演義はピカ一でも、アクションには向いてらっしゃらないのかな?

 ともあれ、そんなもどかしい騒動が展開される中、救いの神は密かに(「志村!後ろ後ろ!」状態で)手を差し延べてくれていた。それは逃げた筈の光明寺博士で、ミツ子達が半平相手の大立ち回り(?)に夢中になっている間にドラム缶の中の中和剤を水源地に投入してくれていた。
 やはり、記憶を失っていても、命惜しさに狼狽え逃げる日々を送っていても、そこはそこ、彼は光明寺姉弟及びキカイダーの生みの親である。心底では我が身の安全よりも多くの人々をテロから守ることを優先する心を持っているのであろう。肝心な再会の機会を前に逃げ出すことの多い光明寺博士だが、密かに浅沼父子に託されたテロ阻止に邁進していた姿は嬉しかった。

 そして半平がミツ子によって水の中に叩き落されたのは中和剤が投入された直後で、勿論これによって半平は正気に戻った。同時にダークによる毒害も解消された。
 直後に浅沼所長も駆け付け、毒が消えたことを確認。父の活躍を喜ぶ一平だったが、所長はそれを否定し、自分が協力を求めた人物のおかげと宣った。勿論、その人物を見ていない光明寺姉弟にはそれが誰なのか確証を持てないのだが、「学者タイプ」のという所長の一言だけでそれが光明寺博士と捉えた姉弟の見方って強引でないかい?そう思いたい気持ちは分かるのだが。

 そしてミツ子が気を取り直したときにはいつもの様にジローが一人その場を去ったことにその名を呼んでいつもの終わり方をしていた。
 この第20話、話の展開は決して悪くなく、浅沼所長の活躍も面白いものだったが、消化不良感は否みようがなかった。善意の人が悪の組織の暗躍から濡れ衣を着せられる展開が有ってはいけないとは言わないが、濡れ衣を被せられた人の名誉回復はきっちり為されて欲しいとシルバータイタンはフィクションに対しても、現実に対しても思う。
 後はテロ(毒)も対テロ(薬剤)もドラム缶単位で行われていたことかな?(苦笑)



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日