人造人間キカイダー全話解説

第21話 残虐!ムラサキネズミの毒牙

監督:北村秀敏
脚本:長坂秀佳
ムラサキネズミ登場
 冒頭、夜中の病院の前を相も変わらずうつろな表情の光明寺博士が歩いていた。
 その光明寺博士の眼前で、ダークのムラサキネズミがコンクリートの壁を齧り削って、中へ侵入しようとしていた。例によってトンズラするかと思った光明寺博士だったが、さにあらず。自分を追うダークを何度も見かける内に、その都度自らの記憶に訴えかけてくるものを感じ、それを突き止めたいという気持ちが湧いたのか、侵入口を覗き込むのだった。

 そのムラサキネズミが侵入したのはとある病院で、目的はそこの伝染病研究室に保管してあるペスト菌で、哀れにも巡回中の警備員が襲われ………って、おい!!伝染病の病原体やウィルスは流出を防ぐだけじゃなく、建物内の人々に感染させない為にも、そうとう頑丈で特別な関係者しか出入りできない場所で厳重に保管される筈だぞ!?!(現実の世界でも、アメリカの研究所で天然痘ウィルスに感染した研究者の女性が死亡している。それも天然痘撲滅後の話である………)
 まして、ペスト菌なんぞ、悪の組織が狙ってなくても危険極まりない菌で、バイオセーフティレベル4の、滅菌シャワーを浴びた上で、防護服を着なければ入室出来ない張頑丈且つ密閉された場でないと保管が許されず、間違っても制服姿の警備員が入れる場所じゃないし、ムラサキネズミにしても壁を砕いての入室では後々への影響が大き過ぎるのだが………。

 ともあれ、ムラサキネズミは棘飛ばし攻撃や、怪発光攻撃、触腕での締め上げで警備員2名を惨殺した。直後、穴を追ってきた光明寺博士もペスト菌を含むガスを噴霧されて倒れた。
 しかしこのムラサキネズミ、「ペスト菌は何処だ?」と恫喝しながらものの数秒も待たずに警備員を殺し、光明寺博士が何者かも知らなかったので、短気で、知識的にもかなり低級なダークロボットと見える……自称「新鋭」とのことだったが………。

 しばしの時間が経過した後に、惨劇の場にやって来たのは半平(何故か眼帯をしていた)。どうも病院からの依頼を受けたようだが、普通警察を呼ばないだろうか?
 しかも半平の案内を務めていた看護婦の言では、「最近各地の病院でペスト菌が盗まれ」とのこと………それって国家レベルでのパニックに相当するぞ!!
 しかもそれに対する対策が「隠しロッカーに入れておいた。」だけなのも驚きだが、それだけで発見出来なかったムラサキネズミの無能振りは疑う余地無しだな(嘲笑)(ちなみに警備員は行方を断ち、光明寺博士は熱を出して倒れていたところを発見・収容されていた)。

 さすがにその無能振りにはプロフェッサー・ギルも呆れていたようで、表情こそ変えなかったものの、珍しくアンドロイドマンを見せしめに惨殺しての恫喝を行ってまでムラサキネズミにペスト菌の入手を再厳命していた。
 それらの会話によると、どうやらムラサキネズミはペスト・パンデミック(感染爆発)を起こす力を持つものの、ダークとしては新型ペストによる更に大規模なパンデミックを狙っているようで、その為にも大量のペスト菌を必要としているとのことだった。

 一方、事件現場で人間以上のサイズのネズミの足跡を発見していた半平は巨大サイズのネズミ捕りを作り、それを見かけたミツ子&マサルと共に病院に運び込んだ。
 その病院では収容されていた中年男性が横たわっており‥‥…………もう、嫌過ぎ……このワンパタ………いちいち触れるのも阿呆らしいが、寝ているのは当然光明寺博士なのだが、姉弟や半平には顔を見せない体勢で寝ていた‥………これでいつもの如く気付かないのもいい加減腹立つが、曲がりなりにもペストに感染した患者を壁に穴の開いた病室に寝かせているのには心底呆れた………さっさと隔離病棟に隔離せんかい!!

 しかしそんなツッコミを入れる間もなくそこへムラサキネズミが再襲撃して来た。
 必死の抵抗を試みんとするも及び腰の半平は自分の用意した折に自分を閉じ込める体たらくで、ムラサキネズミも狼狽える姉弟の会話から二人が光明寺墓性の子であることを悟り、ペスト菌そっちのけで(苦笑)二人を捕らえんとした(←やはり光明寺博士の存在を知っていた訳で、にも拘らず顔を合した本人に気付かなかったコイツは無能確定)。
 院外に脱出した姉弟もアンドロイドマン達の待ち伏せを受けたが、例によってそこにギターの音が鳴り響いた。

 いつもの様に高所から現れたジローはキカイダーに変身し、ダーク一味に対峙するとミツ子・マサルに逃走を促した。そしてその頃、体調の回復した光明寺博士は看護婦に礼を告げると身の危険を感じて遁走に掛かった(←新型ペストに罹患していたのに?!?)。
 だが、逃げる光明寺を半平とプロフェッサー・ギルの双方が目撃し、半平はミツ子・マサルと共に光明寺博士を追い、プロフェッサー・ギルムラサキネズミに昨夜新型ペストに罹患させた中年男性が光明寺博士その人であったことを告げ、追跡を命じた。

 かくして両者に追われる光明寺博士は、ミツ子の「お父様〜!」と呼ぶ声も「罠だ…。」と疑う狼狽振りで、哀れにもミツ子はその叫びの為にムラサキネズミによって新型ペストに罹患させられ、光明寺博士もムラサキネズミに捕まった。無能のくせにやるじゃないか、ムラサキネズミ (笑)。
 もっともミツ子は程なく駆け付けたジローの介抱を受けて、やがて意識を取り戻した。ただその為の手段としてジローは体内に内蔵された熱エネルギー電池を取外してミツ子の悪寒を取り除くのに使用したもので、ミツ子の言によると、それが無い状態ではジローはキカイダーに変身も出来ず、普段の十分の一の力しか発揮出来なくなるとのことだった。
 自分の為にそこまでパワーダウンすることも厭わなかったジローに居た堪れない気持ちのミツ子‥……まあ、その姿勢は称賛こそすれ批判したりしないが、新型ペストって、体を温めるだけで危地を脱することが出来るような甘い病では決してないと思うのだがなぁ(その程度の恐ろしさなら、バイオテロの材料としても全くの役立たずである)………。

 ともあれ、ミツ子はマサル・半平と共にジローを追った。
 そしてそのジローは光明寺博士を拉致せんとしていたムラサキネズミを追っていたのだが、サイドマシーンを駆るのもままならない有様で、何とか追い付いて光明寺博士を取り戻さんとしたが、普段の十分の一とあっては、無能なムラサキネズミ (笑)にも抗し得ず、返り討ちに遭って崖下に叩き落されたのだった。
 だが、幸いに程なくしてミツ子達が駆け付け、何とかジローを修理することに成功した。

 一方のダークでは、ムラサキネズミの意外な善戦(笑)がプロフェッサー・ギルにも嬉しかったらしく、珍しく満面の笑顔でムラサキネズミを褒め、念の為にとどめを刺すよう命じたが、ムラサキネズミ一行が崖下に駆け付けたときには既にジローは回復していた。
 後はいつもと同じ展開(笑)。例によって途中でプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音がジローを苦しめたが、ムラサキネズミの電撃ネズミ花火の燃焼音が笛の音を断ち(苦笑)、ジローはキカイダーへの変身を遂げ、回転アタック→マウント・パンチの流れでムラサキネズミを攻め、一時は触腕で締め上げられるも平凡なチョップ一発でこれを断ち、大車輪投げデンジ・エンドの二点セットで勝負は決した。

 決着後、ジロー・ミツ子・マサルは必死に光明寺博士の名を呼んでその行方を追ったが、その姿は夕闇の中に消えていた。
 ペスト菌の脅威を巡っては穴だらけの第21話だったが、ジローが自己犠牲を厭わずミツ子を助けんとしたことや、いつもよりは父子が肉迫したこと自体はまだ良かったと云えようか?



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日