人造人間キカイダー全話解説

第22話 シロノコギリザメ 悪夢の12時間

監督:北村秀敏
脚本:島田真之
シロノコギリザメ登場
冒頭、新たな作戦決行を前にして、普段冷静沈着な悪の黒幕として振る舞っていたプロフェッサー・ギルが珍しく感情を露わにしていた。
 説明っぽい台詞(笑)によると、「12時間作戦」なる作戦実行の時が来たとのことで、北緯35度60分、東経139度56分の地点を占領するのだと声を荒げていた。そしてギルの号令一下、アンドロイドマン達は目的地と思しきマンモス団地に潜入し、電柱に地下にとあらゆる電源を断ち切り、警備員を殺害しては団地全域をダーク占領下に置いた。
 その目的は12時間後に団地上空を通過する、特殊液体燃料を搭載したジャンボジェット機を特殊レーザー光線銃で撃墜して10万人の居住者のいる団地を火の海にするという破壊にあるのだが、破壊によるその後の作戦については触れられず、どうもプロフェッサー・ギル自身が大破壊を見たくて仕方ないと云う風な、大掛かりな割には悪趣味且つサディスティック且つ個人嗜好の域を出ないセコイ作戦だった(苦笑)

 ともあれ、作戦遂行の指揮官を命じられたシロノコギリザメは回転鋸をもってマンモス団地のとある一室の壁を破って侵入した。その気配を感じて眠りから目覚めた畑中伸子(松木路子)・畑中正夫(染谷利貴)母子がシロノコギリザメの姿を見て、恐怖し、悲鳴を上げたが、その時のシロノコギリザメの言動がぶっ飛んでいた。
 詰まる所、悪の組織の怪人に在りがちな、自分の姿を見た者を生かしておけないとばかりの啖呵を切るのだが、鋸で壁をぶち破って突入するという「目撃して下さい。」と言わんばかりの強引突入をした者の吐く台詞ではないだろうに。そもそも団地の住人を皆殺しにするつもりだったのだから、実に意味のない啖呵切りだった(失笑)

 ともあれ、母子を気絶させたシロノコギリザメは計画にあるジャンボ機撃墜の為、母子の部屋を狙撃地点とするべく機材搬入を急がせた。やがて気絶から目覚めた母子はシロノコギリザメとアンドロイドマン達の会話を耳にして、このことを誰かに知らせなくてはと話し合い、正夫は母が止めるのも聞かず屋外に出んとしたが、これはシロノコギリザメに阻止された。
 母子の脱出を阻止したのは良いのだが、その際に「今の話を聞いていたな?!」と息巻いていたのだから、やはりこのシロノコギリザメは頭脳的に欠陥があるようだ(苦笑)。団地全体の破壊と住人皆殺しが目的なら、作戦遂行の都合からも母子をさっさと殺しておけばよかっただろうに、中途半端に気絶させたに留めておきながら、話を聞かれたことに激昂していたのだから、御世辞にもコイツが聡明とは言えまい(苦笑)

 シロノコギリザメの阿呆振りというか、行き当たりばったり振りはその後も続いた。  正夫を魚釣りに誘わんとして、五人の友達が部屋を訪ねて来たのだが、シロノコギリザメは正夫の縄を解き、母親の身柄をたてに余計なことを言わずに友達を追い返すよう命じたが、正夫は室内に怪物がいることを友達に告げた。驚いた子供達が逃げようとするのをアンドロイドマン達に取り押さえさせて人質にせんとしたのは良いのだが、ゴタゴタの隙を突いて肝心の正夫に逃げられる体たらく
 その間抜けな報告を受けたプロフェッサー・ギルに激昂されたシロノコギリザメは業を煮やして日の出団地の全住民に外部との接触を禁じ、逆らえば人質の命はないと脅迫したが、その通達手段はテレビ放送…………そんな通達網を密かに構築する余力があるなら、全住人を拘束する方が早くなかったか?
 否、それより居留守に徹した方が確実かつ容易に機密は保持出来たと思う

 案の定、住人達はテレビ放送で初めて自分達がダークの占領下にあることを察知し、ある者は外部に助けを求めて、或る者は人質にされた我が子を救わんとして自室を飛び出し、次々とシロノコギリザメの手に掛かったが、団地の広さや住人の数を考えるとやはり無駄な労力としか言い様がなかった。

 ともあれ、団地を抜け出した正夫は、タクシー運転手のあやふやな証言を頼りに偶然団地を訪ねて来た光明寺姉弟・半平と接触した(実際に車との接触事故だったわけだが)。

 結局そこに正夫を追って襲ってきたシロノコギリザメとアンドロイドマン達をいつもの様に高所から現れたジローが迎撃するというワンパタを辿ったが、シロノコギリザメには逃げられ、助けを求めようにも近所の交番巡査は殺害されていた。
 重傷を負い、高熱にうなされる正夫を助けんとして光明寺姉弟は団地に正夫宅を訪ね、半平は医者を呼びに走ったが、団地の人々はダークに脅えて姉弟に対して何も聞かず帰れと云わんばかりの態度を取り、半平は半平で医師(陶隆)に化けたシロノコギリザメを連れて来る体たらくだった。
 ただ、半平に医者を呼びに行かせたのはジローで、それゆえかシロノコギリザメの襲撃は察知していたようで、正夫の口封じに掛からんとしたシロノコギリザメは即座にジローの迎撃を受けた。

 ジローに攻撃されるや即座に室外に逃れたシロノコギリザメだったが、これは団地住人を人質としてジローに対して優位に立つのが目的だった。
 室外に飛び出したジローが目にしたのはアンドロイドマン達に強制連行される住人達で、シロノコギリザメに彼等を解放する条件として胸部の集積回路を開くよう要求された。勿論それは人体で言えば心臓部か大脳、謂わば、急所を晒す行為である。
 人質達の為に止む無く胸部を開いたジローだったが、それでも回転鋸が迫れば抵抗しない訳にはいかなかった。だがそこへ追い打ちをかけるようにプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音が襲った。
 常日頃、悪魔の笛を吹く際には、「ダークに生まれし者はダークに還れ。」と念じ、ジローに対して服従を強いる為に苦痛を与えていたプロフェッサー・ギルだったが、今回の話ではシロノコギリザメにジローを殺害させるための補助を目的とし、裏切り者は殺される定めにあるのがダークの掟としていた。

 いつもと組織理念が異なるのが気になったが、悪魔の笛の音から脱出した要因のくだらなさは変わらなかった(苦笑)
 苦痛にのたうち回り、必死に回転鋸攻撃をかわすジローを仕留めんとして、駆使したシロノコギリザメ回転鋸が誤爆してマンションの壁に食い込み、その掘削音が笛の音を遮断するというひどいものだった。

 この間隙を縫ってジローはキカイダーに変身。通常戦闘に突入したのだが、何故かこの間、シロノコギリザメはせっかく人質に取っていた住人達を利用せず、やがて12時間作戦発動の5分前に至ったことにシロノコギリザメと伸子が狼狽えだしたことで局面は変遷した。

 戦線離脱して3分前には畑中宅に戻り、ジャンボジェット機に照準を合わせたシロノコギリザメ。一方のキカイダーは伸子から事態の深刻さを告げられ、畑中宅に急行せんとするも、アンドロイドマン達の妨害に遭って1分前になっても辿り着けずにいた。
 ところが、アンドロイドマン達が駆使する2本の薙刀で押し合いになっていた筈のキカイダーはタイムリミットギリギリに何の脈絡もなく空中から現れて照準器の前でジャンボジェットと交差して敵のタイミングを外すというひどい展開で12時間作戦は阻止された

 返す刀でレーザー光線銃も破壊され、12時間作戦は完全に瓦解。こうなると後はいつもの最終戦でしかなかった。
 回転アタックでマウント・ポジションを奪ったキカイダーはシロノコギリザメの腹部に数発のパンチを入れると、シロノコギリザメ得意の回転鋸も空手チョップの一閃で両断(←最初からそうしろよ)。
 半ば戦意喪失状態となったシロノコギリザメは申し訳程度の抵抗の後、回転投げデンジ・エンドの連続攻撃で落命したのだった。

 危機を脱したことを抱き合って喜ぶ畑中母子を遠巻きに見つめ、母子を心から祝福しつつまだ見ぬ父との再会に思いを馳せる光明寺姉弟の横合いからいつもの様に走り去るジローだったが、シルバータイタン個人的には、マサルに「きっと見つかるよね、ハンペンもいるし、ジローもいるし。」と言われた際の半平のチョット嬉しそうな表情が印象に残ったラストだった(笑)。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日