人造人間キカイダー全話解説

第23話 キイロアリジゴク三兄弟見参!

監督:永野靖忠
脚本:長坂秀佳
キイロアリジゴク三兄弟登場
 冒頭はダーク基地内から始まった。
 スライドを前にしたプロフェッサー・ギルの説明によると、映し出されていた女性・加東亜矢子(菊容子)、は欧州帰りであるロボット工学の若手権威・横江川ヒサハル助教授と結婚することになっていた。
 5年越しの恋を実らせて家庭を得た横江川助教授が今後益々研究に磨きを掛ければ光明寺博士に匹敵する人物にして、ダークの厄介な敵となるであろうと見越したプロフェッサー・ギルはこの結婚を阻止する為、亜矢子の殺害を命じた…………横江川助教授を殺害(または拉致)した方が早くないか?

 ともあれ、プロフェッサー・ギルの指令を受けて、アンドロイドマン達は白昼堂々亜矢子に襲い掛かったが、逃げる亜矢子は偶然光明寺姉弟と遭遇。供に逃げる三人は山林の方へと…………いつも思うのだが、悪の組織に追われる人達はどうして街中と言った人気のある方へ逃げないのだろうか?アンドロイドマン達が上手くそう誘導しているようには見えんのだが………。
 ともあれ、山林に入った三人には蟻地獄が待ち受けていた。
 蟻地獄の底にはダーク破壊ロボットのキイロアリジゴクが待ち構えており、崩れる斜面を必死に登ろうにも蟻地獄周辺には薙刀を構えたアンドロイドマン達が3人を牽制しており、絶体絶命状態だった。

 だが、お約束通りそこへギターの音が鳴り響いた。
 例によって高所(巨大アンテナの側に設けられた足場)に立ち、「ダーク破壊ロボットキイロアリジゴク!悪のアンドロイドが人間を襲うことは許せない!」と啖呵を切るジロー………否、誰が襲ってもアカンやろう(苦笑)。
 勿論「悪のアンドロイド」がこれで行いを改めるようならお目に掛かりたいもので(苦笑)、地表に飛び出したキイロアリジゴクは「許さなければどうするというのだ!?」と啖呵を切り返した。
 しばし格闘が続いたが、その間ミツ子、マサル、亜矢子の三人は崩れる斜面にへばりついて助けを求め続けており、ジローも途中で蟻地獄に飛び込むと三人まとめて抱えて地表に飛び出し、三人を逃がした。
 当たり前のように展開されたシーンだが、このシーンだけで見るなら、これって変身前の能力としては特撮界屈指のハイスペックではないだろうか?

 ともあれ直後にジローはキカイダーに変身。しばしいつもの戦闘が展開された後にキイロアリジゴクは蟻地獄の中に撤収してその姿を消したのだが、撤収間際のキイロアリジゴクの台詞はかなり変だった。
 少し戦っただけで角を大木を挟む形に抑え込まれる醜態を晒しながらキカイダーの戦闘能力を「噂通り」、「敵ではない」と罵り、亜矢子の結婚式の中止を要求していたのだが、従わなければ亜矢子殺すとしていたが、従うべき論拠も状況も示さない状態で為された要求に従う奴がいればお目に掛かりたいものである(笑)
 しかも、「お前も殺す。」では益々要求に従ってもらえないだろう(苦笑)。そしてツッコミついでにもう一つ付け加えると、「式」を中止させても、「入籍」を中止させないと意味がないと思う(笑)

 そして呆れたことに、キイロアリジゴクは「アルファベット作戦」という作戦名まで口にしていた。さすがに作戦内容まで口走ってはいなかったが、本来機密を要する作戦遂行にあってこのキイロアリジゴク絶望的に口数が多い
 のっけから「ダメだこりゃ。」と思わせる奴である(苦笑)。

 一方、危地を脱した亜矢子は光明寺姉弟を前に式を中止出来ない胸中を吐露していた。
 亜矢子曰く、亜矢子の父は心臓が弱く、そんな父に自分の晴れ姿を見せる為、亜矢子と横江川助教授は病院の窓から見える丘の上の教会で結婚式を挙げんとしており、横江川助教授もその為にわざわざ帰国するのだと云う。
 その言から、待望の結婚式は亜矢子の父を元気付けることが期待される一方で、式に万一のことがあれば父は心臓発作を誘発しかねないことも明かされた。しかも今一度心臓発作を起こせば命が危ない状態にあると云う。
 何とも父親想いな話である………しかしこの亜矢子を演じた菊容子さんは最愛の父上に自らの花嫁姿を見せられなかったんだよなぁ………全く、ブラックサンタめ、何てことをしやがったんだ……………(←詳細はやばい内容なので伏せます。まあ、Wikipediaででも調べればすぐに分かる話ですが……)。

 そんな亜矢子を励まさんとする余り、ミツ子は亜矢子に結婚式を見てくれる父がいることや、好きな人と結婚出来ることの幸せを口にしたのだが、知らず知らずの内に自ら不遇と話を重ねてしまっていた。
 そのミツ子の台詞を訝しがった亜矢子は「結婚出来ない人を好きなったの?」と残酷な質問をミツ子に返した。勿論、ミツ子が人間であって人間でない人造人間を好きになったという実態を知らずにしている質問ではあるのだが、普通に考えてむごい質問とは思わないのだろうか?(←しかも弟の眼前!)
 単純に好きな相手に好かれていないだけの話にしても、聞き返さないのが礼儀だと思う。まあ、そういう意味ではうちの道場主は「(男子力的に)結婚出来ない相手を好きにな」ってばかり……………ぎえええええぇぇぇぇぇぇぇぇ(←道場主のテキサス・ブルドーザーを食らっている)。

 イテテテテテテ……ミツ子がそんな複雑な想いに耐えている中、ジローがやって来て亜矢子にその場を離れて父親の元に隠れるよう諭し、マサルにも亜矢子を守るよう要請した。
 ジロー入室直後、自分の気まずさを覆い隠す様に亜矢子のウェディングドレスを自分の前にかざして似合うかを尋ねるミツ子だったが、この間ジローはミツ子の話し掛けをほとんど無視していた状態で、女心ズタズタのミツ子、いと哀れなり、としか言いようがなかった………。

 とまれ、亜矢子宅を辞し、サイドマシーンを走らせるジローをキイロアリジゴクが襲った。
 突如地面が陥没し、これはやばいと思ったか、走り抜けた次の瞬間にジローはもうキカイダーに変身していた。
 アンドロイドマン達も引き連れずに単身キカイダーに挑んだキイロアリジゴクはジャンプするや羽根を生やしてキカイダーと対峙………駄目だ……羽根を生やしても寸胴気味の体は変わらずでは優れた格闘は期待出来なかった(苦笑)。
 それでも(多少は)素早くなった体を駆使したと見せたキイロアリジゴクが姿を消すと、今度は地中から先程のスタイルでキイロアリジゴクが襲い掛かって来た。訝しがるキカイダーにキイロアリジゴクはサブタイトル通り3体での襲撃を敢行した。
 角&羽ありタイプと、角無し羽ありタイプと、角&羽無しタイプの3体なのだが、僅かに光弾を放つ以外にこれといった特殊能力を持たず、動きも鈍いキイロアリジゴク三兄弟は三体掛かりでもキカイダーを苦戦させている様子は無かった。
 だが、やはりどんな低確率でも数はそれを補うようで、2体のキイロアリジゴクが飛ばした角4本の内、最後の1本がキカイダーの脇腹を抉った。これにはさすがのキカイダーも戦線離脱を余儀なくされたのだった。

 場面は替わってとある河川敷。そこには郊外に残された自然を堪能する服部半平の姿があった(←「郊外は良いなぁ、公害が無くて。」というしょーもない駄洒落をぶっこいていた)。
 例によって弁当のおにぎりを落っことすというドジっ子属性満開の半平がおにぎりを追うとそこにはアンドロイドマン達に追われるキカイダーの姿があった。
 勿論、アンドロイドマン如きに後れを取るキカイダーではなかったが、そこにキイロアリジゴクが追い付くや形勢は逆転した。キイロアリジゴクはアルファベット作戦の名の通りにA、B、C、Dの名の付く波状攻撃を仕掛け、放電や毒ガスでキカイダーをグロッキーに追いやるや、終にはキカイダーの体を溶解させてしまった!
 この間、遠巻きに見ていた半平はキカイダーの身を案じ、何とか加勢したいと思いつつも、明らかにキイロアリジゴクに恐怖し、右往左往する間に溶け出したキカイダーの姿にショックを受けて昏倒した。いつもの情ない姿だが、キカイダーがここまでやられる姿を見ては無理もなかったとも言える。
 そんな展開を遂げつつAパートは終了した。

 Bパートに入るとキカイダーの顔面は益々溶け落ち、中からはアンドロイドマンが‥‥………模擬戦闘やったんかい!!!(笑)(←しかも死んでない!)
 直後、キイロアリジゴク三兄弟は模擬戦闘を見ていたプロフェッサー・ギルに己の力を誇示し、作戦の成功とキカイダー打倒を宣言。プロフェッサー・ギルも本物のキカイダーに効かなくては意味がない、と釘を刺しつつもキイロアリジゴク三兄弟に期待する風は見せていた。

 場面は替わって亜矢子の父が入院している病院。
 そこで光明寺姉弟は、父親を介抱する亜矢子にまだ再会の叶わぬ父を重ねつつ警護に努めていた。そこに怪しい足音が聞こえたのでマサルが出合い頭に竹刀で殴った相手は何と半平。
 知らぬこととはいえ、いきなり竹刀でぶっ叩いたことを詫びながら気絶した半平を介抱しようとしたところへ、今度はキイロアリジゴクの角がぶっ刺さったままのジローがよろけながらやって来た。
 重傷の身を案じるミツ子にジローは、痛みは無いが、刺さった角の影響で動きが鈍くなっていると告げた。この辺り、人造人間であることの設定はしっかり重んじられているな。

 ジローの動きが鈍い原因は角に塗布された、金属を錆びさせる薬品にあると看破したミツ子は角を抜くことを急務とした。万力を用いて何とか角を抜き、内部機械が錆びるのを防ぐことは出来たが、人造人間のメカニズムに対する知識が父に及ばないミツ子は自分ではそれ以上のことが出来ず、自責とジローへの心配に苛まれていた。
 そしてその間、ダークは病院に亜矢子がいることを嗅ぎつけ、その魔手が迫っていた。そのことを半平とマサルから知らされた。

一同はダークの魔手を避けるべく、ジローの修復を行っていた部屋に朝まで身を潜めることとした。
 そして夜が明け、結婚式当日の朝が来たのだが、ウェディングドレスに身を包む亜矢子は横江川助教授が未だ現れないことを不安に思っていた。それに対してジローは結婚式を心待ちにしている亜矢子の父の為にも、自分が新郎の代役となることで父親を安心させんとした。
 遠い病室の窓から見る父親の眼なら欺けるだろうと踏んでのことで、それなら自分が亜矢子の代役を務めるとしたミツ子の申し出をジローは却下した。勿論ミツ子を危険に曝さない為である。
 その言を受けて、自身の身は危険でも良いのか?と抗議するミツ子に、ジローは人造人間である自分の身よりも亜矢子の父の心の方が大切だとした。限りなく人間に近くても、人間の為に造られた人造人間ゆえに、掛かる優先順位を持った考え方をする(ように造られている)のかも知れないが、これは改造人間とはまた異なった悲劇ともいえる

 ともあれ結婚式は挙行された。
 丘の上で神父(植村謙二郎)が待つ中、やって来たのは横江川助教授に扮したジローと、ケープで顔を覆い隠した新婦と、そのドレスの裾を後ろで持つ童子と童女。
 娘(?)の晴れ姿に、感涙に咽ぶ加藤が病室から見守る中、神父から永遠の愛の宣誓を促された新郎新婦だったが、誓いますと答えたのは横江川に扮したジローと、亜矢子に扮した半平!(爆笑)
 そして神父はそれには驚く風も見せず、愛を誓うと宣した二人に「死んでもらう!」と告げてキイロアリジゴクの姿を現し、二人に襲い掛かった……………亜矢子を危険に曝さないという意味では完全に納得出来る作戦だが、こんな場面を見せたら、それこそ加藤の心臓発作を誘発しかねないのではないだろうか?

 ともあれ、キイロアリジゴク三兄弟を誘き出した形で最終決戦が展開された。
 ジローが白兵戦を展開する中、半平は掃除機や扇風機を駆使して毒ガスからジローを守りつつ、自らは吸い込んだガスからダイヤモンドを製造せんと目論んでいた(←臆病者の半平が作戦に参加した理由がこれ)。
 途中、プロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音をガスの影響という理不尽且つ阿呆らしい理由で乗り切ったジローはキカイダーに変身し、キイロアリジゴクの一人目(角無し・羽有りタイプ)を大車輪投げで崖下に投げ落として葬った。
 兄弟の死に怒った残り2体はパラボラアンテナの様なものから発する光線でキカイダーを討ち取らんとしたが、これは横合いから現れた半平がアンテナの向きを変えてアンドロイドマン達に照射させるという、まことに半平らしい活躍(笑)でかわされた。
 そして直後に2体目(角有り・羽有りタイプ)がデンジ・エンドで葬られ、こうなると残る1体に勝ち目は無かった。

 兄弟の仇とばかりにいきり立つ最後の1体(角有り・羽無しタイプ)だったが、回転アタックでマウント・ポジションを奪われ、ボコボコにされた後、大車輪投げデンジ・エンドの二段攻撃の前にくたばったのだった。

 戦後、改めて本物の新郎新婦による結婚式が挙行された。
 横江川助教授の遅参は本当に飛行機が遅れたことによるもので、握手を交わす横江川助教授とジローとの会話から、戦いで傷ついたジローの体は横江川助教授の手で(隅々まで)修復されていたことが分かった。
 修復への礼を述べるジローに笑顔で、「ロボット工学の学徒としては当然の御礼だよ。」と返した。実に心温まるラストで、同時に横江川の優秀さもきっちり示されていた。
 光明寺博士に次ぐ者として、いつかはロボット工学を極め、ジローの良心回路を完全な物にしたいと告げる横江川(←ジローが厳密にそれを望んでいないことを言及するのは野暮かな?)と、一日も早い父との再会を願っている旨を口にする亜矢子。
 設定的にもこういう人物がレギュラー化すると面白かっただが、ジロー一行が放浪しているのにはそぐわなかったかな?

 だが、そんな心温まる会話の中、ミツ子が同意を求めるように振り返った時、例によってそこにジローの姿はなかった。シルバータイタンより野暮なのはジローか?(苦笑)



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日