人造人間キカイダー全話解説

第25話 ダイダイカタツムリ 殺しの口笛

監督:畠山豊彦
脚本:伊上勝
ダイダイカタツムリ、再生アンドロイド部隊、ミドリマンモス登場
 冒頭、極めて不可解な展開から始まった。
 あろうことか、キカイダーがミツ子とマサルを殺さんとし、断崖に追い詰め、二人を崖下に投げ飛ばした。前話で模擬戦闘があったところなので、偽キカイダーか、何者かの夢オチと考えそうなところだが、次のシーンに映るとその場面を幻燈で見ていた光明寺博士が怒りと悲しみに打ち震えていた。

 奇妙なのは、記憶を取り戻している様子の光明寺博士が2人の我が子の死に憤る一方で、自分が作った筈のキカイダーを「あのアンドロイド」と呼び、全く知らぬ風だったことである。
 記憶喪失にしても、記憶を取り戻しているにしても、ピンポイント過ぎたのである。

 ともあれ、周章狼狽する光明寺博士に今しがた見たフィルムが博士の失われた過去であることを一人の老人(青野平義)が告げた。
 当然の様に、誰が何の為に我が子達を殺し、自分の記憶を奪ったのか?といきり立つ光明寺博士だったが、公開処刑シーンでもないのにミツ子とマサルが殺されているフィルムが残っていることに疑問を覚えなかったのだろうか?(苦笑)

 すっかり冷静さを失くした光明寺博士に、老人はフィルムの凶行がダークという悪の秘密結社によるものであると告げ、その打倒の為に無敵の人造人間を作って欲しいと要請した。
 勿論キカイダーを我が子達の仇と見る光明寺博士が断る筈もなく、協力を決意し、ダーク対策委員会の会長なるその老人と博士は固い握手を交わしたのだった。

 程なく、秘書から会議への出席を促され、光明寺博士に後は秘書に任せる旨を告げて退室した会長だったが、果たせるかな、その正体はアンドロイドマンだった。
 アンドロイドマンとプロフェッサー・ギルとの会話から、どうやら光明寺博士はダークによって騙される形で保護を装った囚われ状態にあるらしく、ダークは光明寺博士のダークを恐れる潜在意識に偽情報でキカイダーを恐れ、憎む心を植え付けることで、敢えて記憶喪失のまま光明寺博士を利用せんとしていた。
 これはこれで面白い発想だな。
 そしてそんな巧妙な罠と気付く由もなかった光明寺博士はダークに唆されるままに無敵の人造人間・ダイダイカタツムリを完成させたのだった。

 完成したダイダイカタツムリは隕石を装ってとある公園に降り立った。そこに自衛隊員と、隕石を博物館に売って儲けようと企む銭ゲバの服部半平(笑)が駆け付けた。
 ダイダイカタツムリは最初、殻の部分がデカい石に見えるような形で園内にあったが、突如その正体を現すと自衛隊員達による一斉掃射を物ともせず、逃げ惑う隊員達を口から発する粘液で足止めし、触覚から発する熱戦で跡形もなく消滅せしめた。

 それを物陰で見ながら脅えていた半平は、くしゃみで居所がバレるという、ベタなピンチの迎え方(苦笑)をし、ポンコツ愛車のエンストに逃走もままならず、自衛隊員同様粘液で足元を固められたが、そこに鳴り響くギターの音色に安堵した(笑)。
 初対面のはダイダイカタツムリジローに「兄弟同様の貴様」として会うのを楽しみにしていた旨を告げた。だが、ジローの方はダイダイカタツムリが光明寺博士の作と知らないので「兄弟同様」の台詞を訝しがり、憎むべきダークの破壊ロボットに自分の兄弟などいないと言い放った。

 だが、ダイダイカタツムリは自分が光明寺博士の手による「最大傑作」であると自称し、ジローの動揺を誘った。
 ジローにしてみれば、ダークへの協力拒んでダーク基地から逃げ、そのゴタゴタの渦中で記憶を失った光明寺博士がダークに協力しているなど、様々な意味で信じ難い話だった。
 ともあれ、戦闘が開始された。初めこそ互角に戦う様に見えた両者だったが、回転アタックで抑え込まれたダイダイカタツムリはキカイダーのマウント・パンチを連打されるのみで、おおよそ光明寺博士による最高傑作には程遠い様に思われた。
 キカイダーもその旨を口にしていたが、ダイダイカタツムリの攻撃手段は身体能力や粘液・レーザーだけでなく、催眠術もあり、それをキカイダーに駆使した。如何なる暗示かは不詳だが、キカイダーにはダイダイカタツムリが何体にも見え、動きもままならぬ風に悶絶し、ダイダイカタツムリが何もしかけていないにもかかわらず「私の負けだ…。」と弱音を吐いて敗走した。

 その背中にダイダイカタツムリはとどめとばかりにレーザー光線を放ち、気を失ったジローは、ダイダイカタツムリと光明寺博士に殺意を投げ掛けられる悪夢の中、ミツ子とマサルに呼び掛けられてようやく目を覚ました。
 気絶したジローを運んだのは半平で、戦闘中もキカイダーにダイダイカタツムリの粘液とレーザーに注意するよう促していた。所々で役に立つ奴である(笑)。
 ともあれ、ジローのうわ言から父のことが気になった光明寺姉弟は、ジローから光明寺博士がダークに協力しているらしいことを聞き、三者三様に信じられない気持ちで項垂れていたが、そこに件の半平が一大事を伝えてきた。

 半平がテレビをつけると、そこでは正午の時報とともに市民が暴徒と化したことを伝えるニュースが流れていた。
 勿論これはダイダイカタツムリの催眠術によるもので、ダークでもその催眠術による暴動激化を目論んでおり、プロフェッサー・ギルは横浜マリンタワーからテレビ電波に乗せて広範囲に催眠電波を流すことを命じた。
 命を受けて警備員達を殴り倒してマリンタワーを占拠・悪用せんとしたダイダイカタツムリとアンドロイドマン達だったが、そこにジローが立ちはだかり、既に送電線をストップさせたと告げた(←何気にとんでもないことやってやがるな(苦笑))。

 だが、ダイダイカタツムリは作戦は何度でも挑めるが、キカイダーを倒せる好機はそうそうはないと戦意を滾らせ、突っ掛かって来た。
 しばしアンドロイドマン達を相手の白兵戦が続いたが、そこへプロフェッサー・ギルの悪の笛の音がジローを襲い、ダイダイカタツムリはその間隙を縫うように催眠術を発し、抵抗を止めたジローに自分をダーク基地まで送るよう命じた。
 送迎役を担わせる形で基地に連行したジローをダークは拘束し、光明寺博士に「ダーク対策委員会の決定」と偽って、キカイダーをダークの手先に作り替えんとした。
 だが、ジローは正気を失っておらず、光明寺博士にダーク対策委員会が真っ赤な偽りであることを告げ、それを否定した会長はパンチ一発で五体をばらばらにしながらアンドロイドマンの正体を露呈した。

 そんな騒動の中、崩れるダーク基地の中から光明寺博士とともに脱出に成功したキカイダーだったが、そこにダイダイカタツムリ、そして光明寺博士の修理を受けて甦ったクロカメレオンシルバーキャットピンクタイガーが襲い掛かった。
 勿論、再生怪人が激弱なのは当時の特撮界の常識で(笑)、キカイダーはクロカメレオンの尻尾を掴んでジャイアント・スイングに捕らえ、ミスミスミスとぶん回し(←「『キン肉マン』じゃねぇ……。」by道場主)てぶん投げるや、再生アンドロイド部隊3体はまとめてがけ下に転落・爆破・炎上した。

 その間、ダイダイカタツムリは光明寺博士を襲い、騙されていたことを完全に理解した光明寺博士は三度の協力を拒んだ。
 そこへキカイダーが駆け付け、ダイダイカタツムリが言うところの、「生みの親の前で兄弟が戦うのも宿命という奴か?」的な格闘が展開された。もっとも、その間、光明寺博士は気絶しており、途中で目覚めるや、「逃げなければ…。」の一念でその場を脱したので、兄弟対決を見ることは無かったのだが。

 ともあれ、最終決戦は敢行された。
 互角の格闘が続いた後、粘液で足元を固めたダイダイカタツムリが優位に立ったかと思われたが、キカイダーは足裏からのジェット噴射であっさり脱出するや、回転アタック、マウント・パンチ、大車輪投げデンジ・エンドの4点セットで勝利した。性能は同じで、ダイダイカタツムリの方が新作でも、経験が勝敗を決めたと云えようか。

 だが、光明寺博士の記憶喪失は悪化しており、自分を探すミツ子、マサル、そしてジローからもひたすら姿を隠すのだった。
 それにしても、ジローがどうしてダイダイカタツムリが横浜マリンタワーを狙っていたのを察したのか?や、催眠術が効かなかったことへの言及は全くないままで、何とも消化不良な第25話だった。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日