人造人間キカイダー全話解説

第26話 ミドリマンモス 地球冷凍作戦!!

監督:畠山豊彦
脚本:春日憲政
ミドリマンモス登場
 冒頭、とある氷結した洞窟の近くを光明寺博士が彷徨い歩いていた。
 何処の山中かと思いきや、場所は意外にも東京近郊。東京園芸センターなる研究所の近くで、そこの主と思しき、まち子(吉岡ゆり)の言によると、光明寺博士は彼が彷徨っていた場に倒れていたとのことだった。
 まち子は光明寺博士(←「おじさん」と呼んでいた)が散歩できるぐらい元気になったのを祝し、光明寺博士はまち子(←「お嬢さん」と呼んでいた)に礼を述べていたが、このまち子に限らず、光明寺博士と遭遇した人々には、記憶を失って行き倒れている人に救急車を呼んだり、警察に通報したりすると云った選択肢は存在しないのだろうか?

 ともあれ、そこに白衣を着た二人の男が、洞窟の中に保存していた研究材料の西洋植物が滅茶苦茶に荒らされているとの急報をもたらした。
 急遽、洞窟内に向かった四人はそこで滅茶苦茶に荒らされた植物の姿に落胆した。そして程なく、洞窟の奥に氷漬けの生物を見つけた。それを見たまち子と二人の助手はそれがマンモスであると見て驚き、西洋植物のことを忘れたかのような大発見に狂喜していたが、よくよく見るとこのシーンはかなり変だった。

 氷漬け状態なのではっきりとは見えないのだが、視聴者にはタイトルや予告からこれがダークのミドリマンモスであることが一目瞭然で、その見た目が丸でマンモスらしくないこともまた一目瞭然なのである。
 前話でも少し姿を見せたミドリマンモスの体格は、別作品の例を挙げるなら、『ウルトラマンレオ』に出てきた宇宙悪霊アクマニアの巨眼を外したもので(笑)、ゾウやマンモス最大の特徴である長鼻は触腕となっているので、これをみて「マンモスだ!」と叫ぶ眼力は丸で理解出来ない。
 しかも助手の一人は「体長2メートル強」と断じており、象類としてはかなり小さい。勿論マンモスの中にも種類や落命時の年齢では体格の小さい個体も存在し得るだろうけれど、助手は「南方マンモス・アルキドゥスプルンでないことは確かだ。」と断じていた…………おい、あんた!生物学者なのにベルクマンの法則も知らないのか!?! (ベルクマンの法則………生物が北方の種類ほど体が大きくなるというもの。実際、同じヒグマでもシベリアやアラスカに住む個体は北海道に住む個体より巨大になる者も多い)
 ともあれ、センター員達が浮かれる中、光明寺博士だけが変わった出来事に不安の色を強めていた。

 その頃、ダーク基地内ではプロフェッサー・ギルミドリマンモスに覚醒を命じ、「地球冷凍作戦」の開始を下知していた。そしてプロフェッサー・ギルは悪魔の笛を吹くや、洞窟にいたミドリマンモスは覚醒し、まち子一行は悲鳴を上げて逃げ出した(←このときジローは大丈夫だったのか?)。
 だが、2人の助手は忽ち追いつかれ、ミドリマンモスのマンモスドライガスなる技で白い泡とも粉ともつかない物質を噴射されると石膏像の様にされ、マンモスウルトラチョップ(←大層に名付けているが、単なる触腕による殴打)、マンモスキック(←同じく単なる足蹴)の連打でバラバラにされた(←要するに一撃必殺には程遠い破壊力)。
 ウム、ミドリマンモス…………カッコ良さは微塵もないな(苦笑)。

 ともあれ、残る光明寺博士とまち子を追うミドリマンモスだったが、そこに愛車を駆った半平が現れた。直前の半平のデレデレ発言によると、まち子は半平にとっては初恋の人らしく、かかる偶然があって、半平がやってきた訳だが、当然半平はそこで見た光明寺博士に驚きつつ、ミドリマンモスに襲われる羽目となった。
 そして当の光明寺博士は自分の名を呼ばれても頭を振ってその場を去り、まち子の盾になっているような盾にされているような形で危機を迎えた半平の耳にはいつものギターの音が響いたのだった………もっと早よ来んかい!ほなら、光明寺博士を無事保護できたのに!(苦笑)

 例によってアンドロイドマン達を蹴散らし、変身したキカイダーがミドリマンモスと対峙したことにほっとした半平だったが、この間にアンドロイドマン達によってまち子は人質に取られており、抵抗中止を命じられたキカイダーはマンモスドライガスに固められ、更には特殊ガス弾を浴びせられて悶絶した。
 ミドリマンモス曰く、特殊ガス弾には強力な酸化剤・二酸化マンガンが含まれており、その成分によってキカイダーの全身は錆び付き、ジローへの変身が不能になるとのことだった。
 確かに二酸化マンガンは強力な酸化剤なのだが、確かこれって、小学校の理科で過酸化水素水を注いで酸素を作る実験に用いられていた筈…………正義のヒーローが理科室にあるような実験材料如きに苦戦してていいのか?(苦笑)

 ともあれ、キカイダーを戦闘不能に陥れたミドリマンモスは大威張りで、プロフェッサー・ギルも満足気だった。そしてギルはミドリマンモスに地球冷凍作戦の続行を命じたのだが、その第一標的は河上養鶏場、第二標的は太平洋水族館、第三標的は新幹線ひかり…………確かに段階を踏むごとに標的は巨大化しているが、「地球冷凍」を目指しているにしては標的がせこくないか?(苦笑)

 ただ、ミドリマンモス一味が次々と標的を凍結させる過程で現場にいた人たちは次々と巻き添えを食らい、線路と共に数体のビルまで氷結させられていたから、一般ピープル視点では充分に驚異的なテロだった。
 そしてその間、錆の広がりに苦しみ続けるキカイダーと、その身を案じて力なく詫びるまち子‥………ダークよ、ミドリマンモスよ、何故とどめを刺さない!?何故人質を解放している!?
 詰めが甘いどころじゃないな………ともあれキカイダーは東京園芸センターに運ばれ、そこに半平に連れられてミツ子とマサルが駆け付け、治療というべきか、修理というべきか、防錆処理が始まったのだが、その方法とは、「サビ止め」と書かれた瓶の中の黒粉を混ぜた浴槽にキカイダーを漬けるというもの………(苦笑)
 ただ個人的に気に食わなかったのはマサルの態度。丸でまち子のせいでジローが酷い目に遭っていると言わんばかりで、彼女が介抱を手伝うのも拒絶していた。
 確かにまち子が人質に取られたことでジローは抵抗出来ずかかる状態に追い込まれた訳だが、マサルはそれを見ていた訳でもないし、パンピーであるまち子がアンドロイドマン達に取り押さえられたのは不可抗力だろうし、それを責めるならすぐ側にいて彼女を守れなかった半平の方が責められるべきだろう。
 まあ、さすがにそこはミツ子が真っ当な対応をし、四人は協力して防錆剤をキカイダーの体に塗り込んだ。かくして四人の尽力が功を奏し、ジローは元の状態を取り戻した。そしてそれを基地内のモニターで見ていて、「余計なことを………。」と切歯扼腕するプロフェッサー・ギル………おいっ!とどめを刺さず、身柄拘束もせず、放置していた上に、モニタリングしつつもそのままにしている方が問題ありだろうが!!(笑)
 それにしてもツッコミどころ満載だな、この第26話(笑)。

 ジロー本復を快く思わないプロフェッサー・ギルは許さんとばかりに悪魔の笛を吹き、ミドリマンモスに第三作戦を変更して東京園芸センターを襲うよう指示したのだが、本当に恐るべき後手後手、恐るべき泥縄である………。数々の手段を持ちながら、この間、行動不能のキカイダーを放置していた理由が分からん………。

 ともあれ、ミドリマンモスは園芸センター内の花という花を氷結させ、センター員達も支配下に治め、事態に狼狽える光明寺姉弟、まち子を拉致した。
 この間、半平はなけなしの勇気を奮って彼なりの抵抗を試みたが、マンモスドライガスに固められてしまった。初恋の人の眼前ということもあったのだろうけれど、さすがにここまで来て半平は損得以前にキカイダー、光明寺姉弟の立派な仲間と化していた。
 シーンが変わって、三人をジープで連行するミドリマンモスだったが、そのときには既にサイドマシーンに乗ったジローが追跡していた。

 マンモスドライガスで巨岩を動かし、落石でジローの追跡をかわさんとしたミドリマンモスだったが、当然通じる筈もなく、この後は、

 アンドロイドマン達相手の大立ち回り  →  プロフェッサー・ギルによる悪魔の笛攻撃  →  ミドリマンモスの攻撃(マンモスドライガス)が悪魔の笛の音を断つ  →  ジロー、キカイダーに変身  →  両者、しばし格闘  →  回転アタック、マウント・パンチ連打、大車輪投げデンジ・エンドの四点セットという黄金パターンで戦闘は終結し、ミドリマンモスも数多くの破壊ロボットと同じ運命を辿ったのだった。

 事件が片付き、まち子達が園芸センターに戻るとマンモスドライガスを浴びせられた草花は元に戻っていた。これは事件中にこっそり戻っていた光明寺博士の手によるものだった。
 しかし、まち子の案内で光明寺博士に宛がわれていた部屋に姉弟が駆け込んだとき、そこには父の着ていたスーツの上着が残されていただけだった。
 光明寺博士は例によって逃走していたのだが、今回はその思考が保身だけではなく、自分の存在が(ダークに気づいていなかったが)周囲に不幸をもたらしていると考えてのものであることが描写されていた。
 ラストの博士の心理描写は、すぐに逃げ出してしまう博士の心境を端的且つ納得出来るものとして表していたのが良かったが、それにしても本当にツッコミどころ満載だったな、この第26話(苦笑)。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日