人造人間キカイダー全話解説

第4話 悪魔のブルーバッファローが罠をはる

監督:北村秀敏
脚本:伊上勝
ブルーバッファロー登場
 冒頭、とある海岸にて漁師と思しき初老の男性がプロフェッサー・ギルの笛の音を聞き付け、訝しがっていたところ、海中からブルーバッファローが現れた。
 ブルーバッファローは漁師を締め上げ、光明寺博士が使っている船が何処にあるか白状するよう強要した。男性がうめきながらここにはないことを告げると、直後に逃げ出した彼にバッファローミサイル(角の形をした手榴弾)を投げつけて殺害した。
 このブルーバッファロー、名前の通り牛の人造人間なのだが、異常なまでのデカい双角が如何にもバランス悪そうで、はっきり言ってカッコ悪い(苦笑)。ちなみに設定上、耳の後ろとわき腹に弱点があるらしい。設定者は何を考えていたんだ?(苦笑)

 その頃、海上のクルーザーの中ではジロー、ミツ子、マサルが食事中だったのだが、クルーザーにいるときはいつも一緒だった父が今は生死さえ不明なことを想い、マサルが悲嘆に暮れていた。年齢的にも無理はないよな……。
 ともあれ、ブルーバッファロー率いる破壊部隊が追っていたのは正にこのクルーザーで、ジロー達も、ダークも光明寺博士の行方が掴めていない中、ここにジロー達が現れたと睨み、闇雲に攻撃するのではなく、クルーザーの出入り口を封鎖して爆薬を仕掛けていた流れを見ると、見てくれは鈍重そうでもブルーバッファローは意外に賢いのかも知れない(笑)。
 実際、入り口の封鎖はあっさり破られ、結果的にジロー達の爆殺には失敗するのだが、爆薬を3つ用意し、闇雲にジローに突っかかるのではなく、爆薬にジローが近付けない様に徹していたのも高評価に値する(難をいえば、3つの爆薬がほぼ一か所に固まっていたことやね)。
 やがて、導火線の火は爆薬に迫り、アンドロイドマン達は海中に避難。ジローは姉弟に東京の服部探偵事務所を頼るよう告げて爆薬を抱えて海中に飛び込んだ。

 崖の上に立った5人のアンドロイドマン達は、「これで光明寺の人造人間は破壊したぞ!」と悦に入っていたが、前話の解説でもツッコんだ様に、他の破壊部隊の面子も光明寺博士の人造人間だって(笑)
 ま、このコメントも笑えたが、仲間の1人である4号がいないことを訝しがった直後に、現れたアンドロイドマンを見て、仲間の無事を喜ぶ姿にジローの生存が見え見えなのも笑えた(笑)。


 場面は替わってホテル暖香園。そこではビジネスで来日したと思しき外国人をガイドしていた女性(富山真沙子)が、十河ヒカリなる小学生が交通事故で重体というニュースを見て驚愕していた。ヒカリの名を呟いていたことや表情から彼女がヒカリの姉らしきことは一目瞭然だったが、女性は職務を離脱できない様で、客に促されてその場を離れた。
 直後、場面はとある断崖に移っていた。ホテルのシーンは僅かな時間で、何てわざとらしい伏線なんだ(苦笑)

 ともあれ、断崖ではブルーバッファローに対してアンドロイドマン達が火炎放射器、電撃銃、機銃掃射、鉄球攻撃を加え、ブルーバッファローがそれ等に難なく耐えているのを見ていた外国人達に、ダークの破壊ロボットが一個師団に匹敵する戦闘能力を持つことを誇示してオークションにかけていた。
 つまりはダークが死の商人としての側面を持ち、破壊部隊ロボットは兵器であることが示されていた訳だが、意志を持ち、会話も出来る存在が只の兵器として売買されようとしているシーンは悪に属する存在とはいえ、憐れみを覚えずにはいられなかったな。
 それにしても、死の商人達…………中には国家の手先もいて、身元を隠す必要もあるのだろうけれど、 SMプレイに使うようなアイマスクは怪しい任務を考慮に入れても怪しいぞ(笑) 。アンチショッカー同盟とどっこいどっこいかな?(笑)

 結果、ブルーバッファローには50万ドルの値が付いたが、放映当時のレートだと、1億2000万円ほどで、現在の価値に換算して5億程かな?ただ、プロフェッサー・ギルは売上金よりも、一国が強力な兵器を持つことで、周辺国もそれに負けじと強力な兵器を購入することとなり、それがダークの資金を潤沢なものにすることを人間の愚かさへの嘲りを込めてほくそ笑んでいた。丸で誰かに説明するように(笑)
 するとそこへ、十河幸子なるプログラマーが脱走したとの報が入った。まあ、当然のことではあるが、光明寺博士以外にもダークに軟禁され、意に沿わぬ研究に従事させられている科学者がそれなりに存在する訳やね。勿論、プロフェッサー・ギルは即座に追跡を命じた。そして、姓から最前の交通事故で搬送された少女の母か姉であることが分かる。

 場面は替わって郊外の車道。そこを走るのは服部半平の愛車だが、突然停止するや半平が飛び出してきて傍らの草むらに身を隠した。何者かの襲撃の気配を感じた半平だったが、周囲には何物の姿もなく、愛車のパンクを見つけるや「ポンコツ!」と罵りつつも、妙な忍術で即座にパンクを直し(←これ、便利じゃない?)、車を愛しているのかどうかよく分からない態度を見せていた。
 勿論、異変が只のパンクで済む訳がなく、車に乗り込むと後部座席には一人の女性が隠れていた。訝しがりつつも、相手が女性と分かると鼻の下を伸ばす半平は相変わらずだったが(苦笑)、悪い奴等に追われているので、安全な場所まで連れて行って欲しいと懇願する女性は先程のホテルでガイドを担っていた人物。
 展開的にも彼女が十河幸子であることは一目瞭然だったが、そんな彼女の正体を丸で気にせず二つ返事で逃走補助を快諾する半平だったが、車はブルーバッファローに引きずられ、逆走する始末だった。

 プログラマーでありながらバイヤーのガイドを務める幸子もそうだし、ついさっきまでオークション会場で性能を誇示していたのに十河の追跡を命じられているブルーバッファローもそうだが、ダークとは何とも兼任が多い多忙な組織である(笑)。

 ともあれ、十河は逆走速度が遅い隙を突いて車外に逃れ、伊豆シャボテン公園を抜けて河原近くの林まで逃げた。うーん、前回で伊東市に平和が戻ったのではなかったのか……。
 そしてその林中にて十河はブルーバッファローとアンドロイドマン達に追いつかれたのだが、そこに当然の様にギターの音色が鳴り響いた。例によって何処だ何処だと周囲を見回すブルーバッファロー達だったが、キカイダーはいつもの高所ではなく、アンドロイドマン達の中にいた。
 つまりは、戦闘員の中に潜むという仮面ライダーシリーズにも見られる黄金パターンなのだが、自ら正体を現すまで気付かれないケースは稀だ(笑)。ともあれ、現れたキカイダーにやはり生きていたのかと地団駄踏むブルーバッファロー達だった。
 所謂緒戦だが、キカイダーは明らかに幸子の救出を優先。しばらく幸子を庇いながらアンドロイドマン達をあしらっていたが、美味しい所取りの半平が幸子を救出するや、サイドマシーンにてその場を逃れた。それにしても、自らのすぐ横を通り過ぎてから振り返ってサイドマシーンを逃がしたことに地団駄踏むブルーバッファロー………その鈍重さは見た目以上で、反射神経に重大な欠陥があるとしか思えなかった(苦笑)

 Bパートに入り、場所は半平の探偵事務所。それにしても、看板に掲げられていたのは、「世界第一級私立探偵服部事務所」というもの(爆笑)。「世界第一級」なんて自分で宣うかね、しかし……(苦笑)
 そして事務所内では幸子と半平が、幸子の娘・ヒカリを連れに行ったジローを待っていたが、幸子はヒカリの身を案じて気が気ではなく、半平に対して本当に大丈夫か?と問う状態。些か失礼だが、状況と心情的には止むを得ないか……。
 そしてそこへ、部屋の暗転とともに、娘の身の上よりも自分の心配をしろと言いながらブルーバッファローが闖入して来た。幸子が服部探偵事務所にいることがばれたのも、幸子の服の第二ボタンに発信機が仕組まれていたからで、2人は忽ち絶体絶命の危機に陥った。
 コンクリートの壁を破り、火炎を吐くブルーバッファローに半平が抗し得る筈もなく、ブルーバッファローは命が惜しければ自分の命令に従えと脅迫。ビビり満開の半平だったが、唯々諾々と従うかと思いきや、「無料(タダ)で?」と問い掛ける(笑)。呆れながら、「命あっての物種」と告げるブルーバッファロー「でもありましょうが、そこを何とか……。」と食い下がる半平………守銭奴振りもここまで行けば立派だ(笑)
 そんな半平とは対照的にひたすらヒカリの身を案じ、せめて一目会わせて欲しいと懇願する幸子だったが、ブルーバッファローが冷酷に告げたのは、ヒカリが既に自分の手中にあるとのことだった。

 その頃、件の十河ヒカリ(斉藤浩子)は怪しげな男達に車にて連行されていた。言うまでもなく男達の正体はアンドロイドマンで、母を懸念するヒカリの質問もガン無視で、彼女を黙らす様にその正体を現し、彼女の確保をダーク本部に通報しようとしたが、そこに鳴り響くは例のギターの音色。
 驚いて、車外に飛び出したアンドロイドマン達だったが、考えてみればコイツ等かなり阿呆である。コイツ等の任務がヒカリの拉致なら、(到底敵わないであろう)キカイダーこそガン無視して本部かブルーバッファローのもとに急ぐべきなのに、ジローの姿を求めて全員で(笑)車外に飛び出す体たらく。当然の様に秒殺で全員蹴散らされ、ヒカリは救出された。

 だが、ジローとヒカリが服部探偵事務所につくとそこに幸子の姿はなく、半平が一人寛いだ姿で酒を仰っていた。
 半平の言によると、幸子はここ(探偵事務所)では落ち着かないので帰宅したのことで、ジローとヒカリも十河宅に向かった。直後、半平は懐から出した札束を拝み、悦に入っていた。謂わば、金の為に悪に加担したことを恥じる風もなく、自らの行動が上手くいったことをほくそ笑む嫌なシーンなのだが、後々半平の言動が善化していくことを知る身としては、余りの欲望への忠実振りと、何だかんだ言って利益を生み出すことに成功している姿に何だか笑ってしまうのだった(苦笑)。

 だが、悪銭身に付かずで(←本来の意味とは少し違うが)、半平が金の為にジローを欺いていたことは光明寺姉弟の知るところで、二人は半平の金を採り上げてその卑怯振りを罵った。それを受けた半平は妙なところで悪人になれないものか、金に目が眩んでジローを嵌めるのに加担したのを白状した。本当に金銭欲に関連しては妙に正直な男だ(笑)。

 その頃、ジローとヒカリは十河宅のあるマンションについたが、エレベーターに乗ったところで閉じ込められた。エレベーター内に響くプロフェッサー・ギルの言によるとそのエレベーターは人造人間処刑室になっているとのことだったが、考えてみるとかなり変だ。
 幸子がダーク基地を脱走し、彼女がジローと接触したからこそ、ジローがこのエレベーターに乗った訳で、ダークが前々から(他に一般市民も済んでいると思われるマンションの)エレベーターをわざわざ改造していたとは考えにくいし、幸子が逃げてから改造したのであれば物凄い早業だ(笑)
 ともあれ、こんなエレベーターぐらいぶち破れるとしてキカイダーに変身しようとしたジローだったが、そこにプロフェッサー・ギルの笛の音が襲った。例によって悶絶し、行動不能に陥ったジローだったが、そこへタイミングよくミツ子とマサルにけしかけられた半平がマンションに到着。更にタイミングよくポンコツ車のクラクションが暴走し、その音がプロフェッサー・ギルの笛の音を遮り(笑)、ジローはキカイダーへの変身を遂げ、エレベーターを脱出した(笑)。考えてみりゃ、酷いピンチの逃れ方だ(笑)

 ともあれ、危機を脱したキカイダーは幸子が屋上に連れていかれたことを告げたミツ子・マサル・半平にヒカリを託し、ダーク一味を追った。
 かくして屋上にてキカイダーはブルーバッファローに追いつき、ブルーバッファローは連行していた幸子を人質にするでもなく、アンドロイドマン達ともども通常の戦闘に入った。見た目通りに怪力鈍重なブルーバッファローはサイドマシーンの突進をも止める腕力を武器にしつつも、サイドマシーンが走り回るやその動きには全くついていけなかった。
 結局、ありきたりの白兵戦の後、ダブル・チョップ大車輪投げデンジ・エンドの三連発で勝負は決した。だが、よくよく見てみると、このワンパターン攻撃が実は結構合理的な展開を成していた。
 ダブル・チョップブルーバッファローの弱点とされていた耳の後ろを打っており、大車輪投げブルーバッファローの重い体がそのままダメージとなるようにその体を地面に叩き付けており、最後のデンジ・エンドは炸裂後にブルーバッファローの体を崖下に追い落としていた。鈍重ゆえに頑丈そうな体を持つブルーバッファローを倒すには、その弱点を打ち、体重を逆用し、更には自然落下まで味方につけた攻め方は極めて合理的だったと言える。

 そして最終局面。幸子とヒカリは再会を果たし、互いの無事(ヒカリは左腕を負傷していたが)と再会を涙流して母娘は喜んでいた。それを心から祝福しつつも複雑な表情を見せるマサルだったが、そんな弟にミツ子はその気持ちを汲むような優しい笑顔を向けるのだった。
 同じ親と生き別れになった身としては、ヒカリの気持ちが分かるだけに心からの祝福と、自分達はいまだ親と会えずにいる苦しみとが混在する、何とも形容しがたい複雑な心境にミツ子とマサルがいたであろうことは想像に難くない。
 だが、自らが不幸だからと言って、同じ苦しみにある人間に帰って来た幸福を祝福出来ない人間にはなりたくないことをこの姉弟は教えてくれるのであった。



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 最終更新 令和元(2019)年一二月四日