人造人間キカイダー全話解説

第31話 ジローの死を呼ぶタコヤマブキ

監督:畠山豊彦
脚本:長坂秀佳
タコヤマブキ、アオデンキウナギ登場
 冒頭、富士山の見える海岸で定置網漁が行われていた。
 漁師達が網を引く中に妙な塊が見られ、漁師達が訝しがる中姿を現したのはダーク破壊ロボット・タコヤマブキだった。当然の様に驚き逃げ惑う漁師達にタコヤマブキはオクトパス・ブラックなる黒い液体を噴射した。
 黒液体は漁師2人の体を黒く覆いつくした。その遺体を見て、「この馬鹿者めが。」と呟くタコヤマブキ。否、何を指して「馬鹿」としているのかさっぱり分からん……。

 そして海岸ではデカい面していたタコヤマブキだったが、ダーク基地内では責任者として携わっている秘密実験場建設の完成目途が立っていないことをプロフェッサー・ギルに詰問されて小さくなっていたので、どうにも期待と云うものを感じさせない登場シーンだった(苦笑)。
 任務が滞っている言い訳は、観光客=目撃者となり得る者が多く、秘密裏に事を運ぶのが困難、と云う内容的には決して分からないものではなかった。だがそれに対してプロフェッサー・ギルは、目撃者は即座に殺して機密を守りつつも迅速な工事を命じた。
 ただそうなると、20人ほどで定置網漁業を行っている場を襲い、2人殺して「馬鹿者め」とどや顔しているタコヤマブキは益々期待出来ないな(苦笑)。

 場面は替わって米子駅。そこには父親の行方を求めて光明寺姉弟がやってきたのだが、姉弟は塚原茂(轟謙二)・和子(遠藤薫)の父娘と道連れになっていた。
 和子はマサルと同い年か、少し年上に見えるのだが、その年齢にして初めての旅行ということで、海岸ではしゃいでいたのだが、そこで父子はタコヤマブキとアンドロイドマン達に遭遇した。当然目撃者を消さんとタコヤマブキ一行は父子に襲い掛かった。
 襲撃はいつもの様に何の脈絡もなく表れたジロー=キカイダーによって阻止されたのだが、その間に娘を案じて右往左往していた塚原は崖から転落して行方を断っていた。
 ちなみにタコヤマブキ、キカイダーにチェンジしなければ怖くないという強気か弱気かよく分からん台詞を吐き、その割にはあっさりキカイダーへの変身を許し、オクトパス・ブラックも然したる効果を上げず、チョップ一発で触腕の一つを切られるや、「勝負は預けたぞ!」の捨て台詞を吐いて逃げ出す、と云うどうにも「駄目だこりゃ」な奴だった。

 タコヤマブキを撃退したのは良いものの、父の姿を見失い、今にも泣き出しそうな和子を前にバツの悪そうなジローだったが、その頃、光明寺姉弟もある橋の上で父がまだこの街にいるかいないかで軽い口論になっていた。
 新聞記事に偶然移った父の写真を手掛かりに、光明寺博士が米子にいるとの辺りを付けてやってきた姉弟だったが、マサルはもうこの街から出ているかも知れないと悲観的なのに対し、何とか希望を繋ぎたいミツ子は根拠もなく「いるに決まっている!」と息巻いていた。
 その橋の下には、地元の漁師達と打ち解けつつも将来に不安を抱く光明寺博士が乗っていて……………本当にいい加減にしてくれこのパターン………。

 まあ、姉弟が何故に米子に来ていたのか、そしていつになく手掛かりを掴むことに意欲的だったのかは良く分かった。姉弟は(「新婚旅行の予行演習」という訳の分からない理由で)米子に来ていた股旅コスプレの半平と合流し、皆生グランドホテルに戻って来たのだが、そこにはジローと和子も戻ってきていた。
 ミツ子の持つ写真を見たジローは、光明寺博士が作業着を着て空港にいることから空港で働いているのでは?と当たりを付けたが、姉弟同様に、しかしながら唐突に父の行方を失った和子の方を見かねて再度海岸に向かった(結局残りのメンバーは空港に向かった)。
 ジローはキカイダーに変身して海中を探索したが、その頃当の塚原は海面に漂っているところを光明寺博士に発見され、救助されていた。空港でも「二日前に辞めた。」との証言が取れただけで、一向にとって二人の父親の行方は杳として知れない状態が続いた。

 悲嘆に暮れる和子、同様に疲れ果てたミツ子、マサルを励まさんとしてホテルの御馳走を勧めたり、河童踊りを(例によってコスプレで(笑))披露したりする半平の努力は分からんでもないが、完璧に空気が読めてないな(苦笑)。さすがに一行が元気を取り戻していないことに気付いて気落ちしてはいたが。
 そしてこの間、顔を見せない怪しい男が一行を見張っていたり、突如和子が塚原の行方を知っていると叫んだりしたのだが、どうにも脈絡が無さ過ぎるんだよなぁ………。

 脈絡のない展開はこの後も続いた。
 翌朝、港では元気を取り戻した塚原が光明寺博士に礼を述べていたが、そこに目撃者を消さんとするタコヤマブキが襲ってきた。タコヤマブキにしてみれば、抹殺すべき目撃者(=塚原)と、ダークが探し求める光明寺博士が一緒にいたのは勿怪の幸いとして襲い掛からんとしたのだが、そこにジローの妨害が入った。
 いつも思うのだが、ジローがタイミングよく乱入するのは良いにしても、前後の脈絡が無さ過ぎるんだよなぁ、この作品。
 勿論、ジローがダーク一味と大立ち回りに入るとともに光明寺博士は塚原を伴って逃走に掛かったのだが、タコヤマブキにとってはジロー打倒の方が感情的に優先されたようだった。
 直後にプロフェッサー・ギルによる悪魔の笛の音がジローを苦しめたのだが、タコヤマブキは「兄弟分の仇を取る」としてジローを嬲り殺しにせんとし、悶絶するジローを攻撃する際にもミドリマンモスバイオレットサザエアカオニオコゼカイメングリーン達の名前を出していたのだが、少し手前の一ヶ月間に登場したダーク破壊ロボットの名前が「兄弟分」として出たということは、彼等は同時期の製造なのだろうか?
 ともあれ、タコヤマブキの気持ちは分からんでもないのだが、例によってこの攻撃は裏目に出た。船にジローの体をぶつけたところ、その衝撃で壊れた船の立てた音が笛の音を遮断………………もはやコメントする気になれんな、遮断理由………(失笑)。

 ともあれ、変身に成功したキカイダーは戦線を離脱した。ま、妥当な判断である。光明寺博士も塚原もとっくに逃げており、姉弟の為にも和子の為にもまずは両名の保護が優先されることを考えれば至極真っ当な判断である。
 この間、光明寺博士と塚原はバスに乗ったり(←強引に止めてのただ乗り)、ダークのセスナに銃撃されながら砂丘を逃げ惑ったりしていたのだが、ついにはタコヤマブキに(←多分セスナのアンドロイドマンから知らされたのだろう)捕捉された。だが、直後にキカイダーも駆け付け、再度の大立ち回りとなった(勿論光明寺達は再逃亡)。
 だが、前述の台詞や、悶絶していたジローへの攻撃からも類推される様に、どうもタコヤマブキはキカイダーに勝てないと思っていたようで、即座に(ミツ子達を監視中だった)アオデンキウナギにSOSを発した。
 しかし、アオデンキウナギが駆け付ける前にタコヤマブキ回転アタック大車輪投げデンジ・エンドの三点セットの前に戦死。ジローへの殺意を露わにしていた割には弱い奴だった。
 タコヤマブキ戦死直後に駆け付けたアオデンキウナギは放電攻撃をキカイダーに放った。

 直後、場面はミツ子達の方に映った。
 和子の、父親が鳥取砂丘に来たがっていたというだけの極めていい加減な手掛かりを元に鳥取砂丘を駆けずり回っていたミツ子、マサル、半平、和子だったが、ふとしたタイミングで姿を消したと思っていた和子がその両腕に持って現れたのはキカイダーの片腕!!

 視聴者的にも、「キカイダーは敗れたのか?!」と思わせる衝撃的な展開だが、誰よりもミツ子が半狂乱になっていた。
 ジロの−安否、二人の父親の行方が不明のまま話は第32話に続いたのだった。うーん、ここまでやきもきさせながら次回に続いたのは初めてではないだろうか?



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日