人造人間キカイダー全話解説

第32話 アオデンキウナギ 魔の腕が光る

監督:畠山豊彦
脚本:長坂秀佳
アオデンキウナギ登場
 前話で見つけたキカイダーの左腕を抱え、半狂乱になっていたミツ子はジローの名を連呼しつつ、マサル、和子、半平とともに鳥取砂丘を駆けずり回っていた。
 そのキカイダーは前話のアオデンキウナギによる放電攻撃で左腕を切断され、右腕一本でサイドマシーンを駆って戦線離脱戦としていた。だがダークのセスナ機がそれを追い、キカイダーに次々と砲撃を浴びせていた。
 確かにこれは今までになかった大ピンチにして、緊迫した場面だった。やがてセスナに誘導されてアオデンキウナギがキカイダーの前に立ちはだかった。

 手負いのキカイダーを自分一人で充分と見たアオデンキウナギはセスナのアンドロイドマン達に光明寺博士と塚原の追撃を命じ、自分はロクロハンドなるウナギの頭を持つ腕を伸ばしてキカイダーを締め上げた。勿論名前の通りデンキウナギの人造人間であるアオデンキウナギは電気攻撃も一緒に加えたのだが、キカイダーが両足のブースター・エアクラフトを駆使して飛ぶと、左腕はあっさり千切れてしまった…………攻撃力の高さに比して、何て低い耐久力なんだ………(呆然)

 キカイダー同様に左腕を失ったアオデンキウナギは即座にダーク基地で復元手術を施された。この体たらくに悪態をつくプロフェッサー・ギルだったが、ギルによるとアオデンキウナギの腕は多彩ゆえに繊細で、それゆえ急所となっているので、その保護には細心の注意を促していたとのことだった。
 成程、文句言いもっても復元手術を行っていたのも納得である。そしてこの間、セスナのアンドロイドマン達は、アオデンキウナギのSOSを受けてその保護を優先したため、結局は逃げられていたことも判明した。
 その流れにプロフェッサー・ギルは怒りを露わにし、秘密実験場の機密保持の為にも塚原抹殺を声高に叫んでいたが、アンドロイドマン達の判断自体は非難していなかったので、ダークにおける優先順位としては間違っていなかったのだろう。
 この辺り、組織としてのダークが見て取れて興味深い上に、上手く整合性が取れている。

 そしてその頃、ようやく襲撃を逃れて砂丘を彷徨っていた光明寺博士は気絶しているジローを発見した。
 光明寺博士はジローが持つ(アオデンキウナギの)左腕を、別のアンドロイドの物と断じつつも、何とか代用が出来そうだと呟いた。前話にて漁師達との会話で、漁師の家の壊れていたテレビをあっさり修理したことが語られていたのだが、記憶を失っていても、機械物を目の前にすると博士としての衝動に突き動かされるのだろうか。
 第11話と同じ様に、表層意識での記憶を失っていてもロボット工学博士として深層心理に眠る記憶が修復手術を可能としていた訳だが、第11話とは異なって、光明寺博士は「恩返し」という明確な意図をもって施術していた。
 つまり、これまでの話で、ジローのことを自分が作った人造人間であることを思い出せずとも、幾度となくダークに襲われる自分を救ってくれた存在として認識していたからである。毎度毎度同じようなすれ違いと逃走を繰り返しているようでも、その間の出来事が無視されている訳ではなかった事には正直、ほっとした。

 この間、ミツ子、マサル、半平、和子はジロー、光明寺博士、塚原を探して砂丘を右往左往したり、半平が叩く大口に乗せられて出雲大社に祈願したり、土産物屋を渡り歩いたりしていたのだが、この間、アオデンキウナギが尾行していた。
 目撃者を増やしたら意味がないと思っていたのか否か定かではないが、アオデンキウナギはなかなか手を出さなかった。和子が疲れて寝着いたところを見計らい、塚原に化けて一行を襲わんとしたが、実の娘を誤魔化せる変身ではなかった様で、即行で和子に見破られ、最初は和子の言を訝しがっていたミツ子達も、余りの和子の恐慌振りに塚原の方を怪しみ、マサルが背後から棒で殴ったとたんにその正体が露見した………アオデンキウナギ、変身能力は最低クラスだな(苦笑)。

 ともあれ、正体が明らかになったアオデンキウナギはもう皆まとめて殺害せんとしたが、そこにギターの音が鳴り響いた。
 勿論、左腕はアオデンキウナギのそれである。アンドロイドマン達との白兵戦程度なら問題なさそうな戦闘を展開したが、やはりいつもと同じアクションではなかった。そしてキカイダーにチェンジすると、その左腕は完全にアオデンキウナギのものとなっていた。
 しかも左腕はキカイダーの意志ではなく、アオデンキウナギの指示に従い、キカイダーは思い通りに動かない、自分の腕であって自分の腕ではない左腕に戸惑いを隠せなかった。

 ただ、この直後、ストーリーは良く分からない展開を辿った。
 一人その場を逃げた和子はようやく父親と再会し、即座に本物と察知して歓喜の声を上げたのだが、塚原は声を潜めるように命じた。直後、アオデンキウナギがアンドロイドマン達とともに現れ、塚原父子を求めて周囲を虱潰しに探すよう命じた。
 当然、キカイダーとの戦闘はどうなったのだ?との疑問が湧く。しかもこの直後、今度はキカイダーと共にダーク一味と対峙していた筈のミツ子、マサル、半平までもが和子を追っていた。だが、三人が見つけたのは自分の左腕の制御に苦しむジローだった。
 本当に、どうなっていたというんだ?最前の戦闘は?
 無理矢理考えるなら、左腕が効かない状態でアオデンキウナギ相手に勝ち目がないと考えたキカイダーがミツ子達に逃避と和子保護を促し、頃合いを見て自分も逃げたということになるのかも知れないが、そんな状態のキカイダーに簡単に逃げられるとしたら、アオデンキウナギは相当に無能である。

 まあ、推測はさておき、ジローの左腕制御不能振りは半平やミツ子にまで危害を加えかねない程で、ミツ子は半平の車に置いていたキカイダーの左腕をマサルに持ってこさせ、その場で左腕のすげ替えを行った。
 取外した左腕は、ミツ子が投げ捨てると爆発する始末で、本当にアオデンキウナギの左腕が厄介な代物だったことが分かる(笑)。
 ともあれ、手術は成功し、即興でのすげ替えを成功させた裏には、ジローの為に日々ロボット工学の勉強を重ねていたミツ子の努力があったことがマサルによって述べられたのだが、それに対して恥ずかしそうにしているミツ子が本当に可愛い(笑)。
 ともあれ、体を取り戻したジローは塚原父子の探索に掛かった。

 その間、塚原はその場から逃れるために前話同様、道行くバスを強引に止めて(笑)乗り込まんとしたが、それは塚原に化けたアオデンキウナギに阻止された。
 アオデンキウナギは塚原の弟を名乗り、兄が遠慮深さゆえに自分の車に乗るのを遠慮していると告げ、運転手もバスガイドもそれを真に受けて去ってしまった。かくして人目を避けることに成功したアオデンキウナギだったが、機密保持の為、徹底して人目を避ける為、秘密実験場に連行した上で殺害すると宣言した。緻密なのか阿呆なのか分からんな(苦笑)。

 ジローはキカイダーに変身すると、再度海中を探索し、ダークの秘密実験場を見つけるとそこに時限爆弾を仕掛け、塚原父子の救出に向かった。
 アオデンキウナギによって処刑されんとした父子に助けの手を差し伸べるようにギターの音が鳴り響くと、アオデンキウナギはジローの姿を見て、「まだ生きていたのか、キカイダー!」と憤った…………最前の先頭において優位に立っていたのは間違いないが、一体、コイツはどんな状態を以て、キカイダーを死んだと判断したのだろうか?コイツ、本当に有能か阿呆なのか分からん………

 ともあれ、アオデンキウナギはアンドロイドマン達に塚原父子を秘密実験場に連行して処刑するよう命じたが、ジローは時限爆弾を仕掛けたことでそれが不可能となったことを告げた。
 悔しがるアオデンキウナギとアンドロイドマン達を相手に大立ち回りが始まったが、そこにプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音がジローを襲った。だが、今回笛の音を遮断したのは破壊ロボットの攻撃ではなかった。
 事前に秘密基地爆破の為にジローが仕掛けた爆弾が爆発し、その爆発音が笛の音を遮断したのだった……………ジローよ、常に爆弾を持ち歩け!!!(笑)

 かくしてキカイダーは変身に成功したのだが、その後の展開はこれと言ったものが見られなかった。アオデンキウナギはろくろハンドでキカイダーを少し絞め上げたぐらいで、大して苦戦させることなく、回転アタック、マウント・パンチ連打、大車輪投げデンジ・エンドの四点セットを食らっておくたばりになったのだった(チーン!)

 ラストシーンにて、光明寺姉弟と塚原父子は皆生温泉の人々に見送られ、互いに別れを告げた。塚原父子は再会できたが、光明寺父子は再会出来ず、項垂れるマサルに対して、ジローの為にも必ず見つけるとの意を露わにするミツ子が印象的だったが、結局一緒に逃げていた筈の光明寺博士と塚原が何故にはぐれたのかも、光明寺博士がジロー修復後にどういう行動に出たのかも触れずじまいだった。
 脈絡、整合性、ダーク秘密基地、とはっきりしないことが多いまま第32話は終わったのだった。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日