人造人間キカイダー全話解説

第35話 ジロー デンジエンドの最期!

監督:北村秀敏
脚本:長坂秀佳
クロガラス登場
 冒頭、山道を光明寺ミツ子・マサルの姉弟が歩いていた。カラスの鳴き声がこだまするその雰囲気を不気味がるミツ子に、父がこの先の畑で働いているという半平情報の確認を優先させるべきと告げるマサル…………う〜ん、普段半平を見下している割には情報には頼るのね、君達(苦笑)。
 ま、実の父が九ヶ月も行方不明とあっては、どんな情報に対しても藁にも縋る思いになるのかも知れんが。

 だが、そこの頃、既にダークの魔の手は伸びており、散見されるカラスたちはダークのロボットガラスで、ミツ子とマサルを待っていた半平は数羽に睨まれるや気絶し、光明寺博士も襲われ、負傷する始末だった。そこに駆け付けたジローはカラスを追い払いながら、光明寺博士に逃げるよう促した。
 せいぜい嘴でつついてくるだけとはいえ、執拗に付きまとい、空中から襲ってくるロボットガラスはアンドロイドマン達よりよっぽど厄介だった。程なくジローは光明寺博士が一人で逃げるのは危ないと断じて(←じゃあ、「逃げて下さい!」何て言うなよ(苦笑))、サイドマシーンで博士を追った。

 その後もロボットガラス群は執拗に光明寺博士とジローを襲ったが、やがて群れは旋回し始めると黒い円盤状の物体となってジローの前に立ちはだかり、ダーク破壊ロボットクロガラスとしての正体を現した。

 双方が光明寺博士を追う為に、相手を邪魔として勢い、キカイダーとクロガラスは対峙した。今までダーク破壊ロボットとは「桁が違う」と豪語するクロガラスは初め、空中戦が得意なぐらいを除いて然程格闘に優れている風も見えず、両腕が完全に翼と化した状態では強そうにも見えなかったが、物凄く打たれ強かった。
 多くのダーク破壊ロボットが回転アタック、マウント・パンチを浴びせられた時点で戦意喪失していたのに対してクロガラスは効いた風もなく、続く大車輪投げデンジ・エンドを食らってもケロッとしていた。勿論これはデンジ・エンドが敵を倒せなかった最初の例である
 反撃に出たクロガラスに対し、デンジ・エンドが効かなかったことに狼狽えるキカイダーは珍しく戦意喪失し、サイドマシーンで逃げるしかなかった。クロガラスは空に、地面に、と執拗に追撃し、それをモニタリングしていたプロフェッサー・ギルも満足気だった。
 結局ジローは爆煙に紛れ、サイドマシーンを囮に使う形で辛うじて戦線離脱する始末だった。

 直後、ジローはミツ子・マサルと遭遇したのだが、その時ジローは息も絶え絶えで、程なく襲ってきたアンドロイドマン達にも抗し得ない有様だった。

 だが、正にジローが殺されんとした瞬間、ギターの音色が鳴り響いた!

 いつもギターを弾いて登場するジローは眼前に倒れており、アンドロイドマン達と視聴者の双方が、「一体、誰が?」と訝しがる中、登場したのは何と服部半平(爆笑)!!

 話は前後するが、キカイダーとクロガラスが戦っている間、軽トラックで逃げる光明寺博士は尚もロボットガラスの襲撃を受けており、それを(気絶から目覚めて)目撃した半平が助太刀していた。
 実際、ロボットガラスは車窓をぶち破る攻撃能力を持っており、本当にこんなのに襲われたらと思うとかなり怖い。半平はパチンコを放ったり、鍬を振り回したりして抵抗しながら偶然ジロー達と合流した訳だが、ギターを振り回しつつ、意外な強さを見せてジローの元に駆け寄った(←本人も意外だった様だ(笑))。
 ナイスタイミング且つ、敵の意表を的確に突いて助けてくれた半平に、ミツ子もマサルもさすがに感謝し、半平はジローを庇いつつも、光明寺博士もまた危ないことを告げた。
 ようやく探し当てた父の姿にすっかり発奮したのか、ミツ子はマサルを乗せて光明寺博士の軽トラックで追撃!必死の形相でアンドロイドマン達を跳ね飛ばして父を救う姿は迫真且つ度肝を抜かれた。

 気絶から覚めぬ父を連れてその場を逃れんとしたミツ子とマサルだったが、そこにジローを背負いながら逃げてきた半平が現れた。
 さすがに父親が一番大事でも、これを放って逃げる程ミツ子は薄情ではなく、マサルと半平は協力してジローを荷台に乗せてその場を逃れた。

 危地を脱した一行が逃れたのはとある農家。そこの娘・あき子(千崎ゆか)は例によって光明寺博士が家業を手伝いつつ、居候していた訳だが、彼女達の介抱を受けながら、居間にはジローと光明寺博士が並んで横たわっていた。
 ようやく再会した父−明寺博士の方はなかなか目覚めないながらも、軽い脳震盪で、心配はないとのことだが、目覚めたジローはクロガラスデンジ・エンドが効かず、このままでは勝ち目がないことに狼狽し続けていた(周囲にはその想いを隠していたが)。

 そして次の瞬間、ジローは戸棚に目を発光させる怪しいカラスがいるのに気付いた。カラスはミツ子が半平と合流する直前に怪我してもがいているのを見つけたもので、視聴者的にはクロガラスの存在や、ジロー・光明寺博士・半平が襲われた経緯からも怪しさ爆発なのだが(苦笑)、ミツ子は不憫に思って保護していたのだった。
 果せるかな、カラスはロボットガラスで、発信機能を持ち、その電波はダーク基地内のクロガラスにキャッチされていた。

 クロガラスの魔の手が忍び寄る中、このままでは確実に殺されると見たジローは鉄塔から高圧電流を自身に引き込んでパワーアップを図らんとした。その姿は見た目には丸で感電自殺にしか映らない物騒なもので、ミツ子も止めずにはいられなかったが、ジローそうするしかない、として爆炎を上げながら電流を受けていた。
 翌朝、アンドロイドマン達を率いてクロガラスはあき子邸に突入してきたが、横たわっていたのは半平で、ジロー達はキャンピングカーに光明寺博士を連れ出して保護していた。最近、半平は誰かの身代わりが多いが、或る意味、伊賀忍者の子孫という設定に忠実と言える(笑)。
 そしてその光明寺博士は翌朝、ようやく目覚めた。
 父の覚醒に気付いた姉弟は、自分達のことが分るかを必死になって父に呼び掛けたが、光明寺博士はそれよりも自分も見つめるロボットガラスに気付いて狼狽した。それを見て、ジローは即座にロボットガラスを叩き壊したが、そうなると前日にカラスに気付いていたのに何もしなかったのは、何故なんだ?否、そもそも展開的にカラスなんて真っ先に疑ってかかるべきだろうが(苦笑)
 ともあれ、今の居場所も安全でないと見たジローは光明寺博士を連れて移動せんとしたが、そこにプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音が襲った!

 度々、悪魔の笛を吹く度にプロフェッサー・ギルは「ダークに生まれし者は、ダークに還れ!」と念じており、吹奏の目的はジローをダークの尖兵とすることにあった。勿論、当のジローはそれを望まない為、良心回路の力でもって抵抗するのだが、笛の音の圧力と、それへの抵抗の狭間で毎度毎度悶絶していた。
 そしてこの時、笛の音は本来の目的をいつもに増して重要視され、プロフェッサー・ギルはジローに対して、光明寺博士をダーク基地まで連れて来るよう念じ、この思念に抗し切れなかったジローはとうとう光明寺博士の首を絞め上げるという暴挙に出た!

 人造人間とはいえ、自分達の兄弟の分身で、恋人にも等しいジローが実の父の首を絞めているという悪夢の様な状況に加え、ロボットガラス迄襲撃して来て、為す術がないかのように思われた光明寺姉弟だったが、間一髪、マサルがキャンピングカーのクラクションを鳴らしまくったことで笛の音が断たれ、正気を取り戻したジローは即座にキカイダーに変身してダークを迎撃した。
 光明寺博士を庇いながらアンドロイドマン達を蹴散らすキカイダーだったが、そこへ遂にクロガラスが飛来した。クロガラスはキカイダーの最期が来たと告げ、必死に戦うキカイダーだったが、やはり勝負は不利な展開を辿った。
 姉弟の声援を受けて必死にデンジ・エンドを繰り出したキカイダーだったが、前哨戦同様、数々のダーク破壊ロボットを屠って来た必殺技が今回は全く功を奏さなかった。万策尽きたキカイダーは崖っぷちに追い詰められ、尻尾から発した鎖付き鉞によって絡め取られた。

 クロガラスの猛攻は続き、嘴を回転ドリルに替えて雁字搦めにされたキカイダーを崖下に突き落とした。辛うじて致命傷を逃れたキカイダーは雁字搦め状態のままクロガラスのドリル攻撃に逃げ惑うのみかと思われたが、突如鎖を引き千切り、それを見たクロガラスはキカイダーのパワーアップに驚愕した。

 どうも、高圧電流を流し込んでのパワーアップ効果がようやくにして現れた感じで、そこから先は一方的な展開となった。キカイダーの飛び蹴りが炸裂すれば火花と煙が舞い上がり、一本背負いの要領でクロガラスの体をキカイダー投げなる投げ技で垂直に投げ飛ばすと、キカイダーはクロガラスを追ってジャンプ一番、全身をきりもみさせてキカイダースパークなる放電技でクロガラスを葬った。

 ジローの勝利に安堵する光明寺姉弟だったが、混乱の間隙を縫ってまたも光明寺博士は逃亡し、親子再会は束の間でしかなかった。
 そして逃げ惑う光明寺博士をモニタリングしていたプロフェッサー・ギルは何としても光明寺博士の手で「悪の戦士」を完成させると息巻き、光明寺博士捕獲に執念を見せ、その目的達成の時を想像して、彼には珍しい高笑いの声を上げた。
 そのプロフェッサー・ギルが「悪の戦士」と称して期待のまなざしを向けたシルエットこそは、特撮界屈指の敵役・ハカイダーであった。



次話へ進む
前話に戻る
『人造人間キカイダー全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

 最終更新令和元(2019)年一二月四日