人造人間キカイダー全話解説

第39話 父の仇ジロー 全国指名手配

監督:永野靖忠
脚本:長坂秀佳
アンコウブラウン登場
 前話の続きでハカイダーと対峙するキカイダー。くどいが、光明寺博士の脳を移植されているハカイダーを倒せば、それは光明寺博士の死を意味するから戦う訳にはいかない。
 そんなキカイダーの葛藤を知ってか知らずか、来ないのならこっちから行くと言い放ってハカイダーショットを連発するハカイダー。となるとキカイダーに出来るのは攻撃をかわすことのみ。
 そんなキカイダーに対して、ハカイダーは銃を収めると、敵に後ろを見せる奴は許せないと云う自分の性分から、キカイダーとの戦いに飛び道具は使いたくないが、逃げるなら容赦なく撃つと宣った。

 ハカイダーは月面宙返りを横向きにした蹴り技・「月面飛行蹴り」、仮面ライダーのライダー返しを五回駆使した様な投げ技・「地獄五段返し」、ルチャ・リブレのコルバタを空中で放つ投げ技「ギロチン落とし」を繰り出し、キカイダーを苦しめた。
 グロッキーに追いやられたキカイダーはエアクラフトの能力で相手の周囲を水平飛行旋回してパンチ・キックの連打を浴びせる銀河ハリケーンなる技を駆使して間合いを取ると、ハカイダー=光明寺博士が大きな怪我を負っていないことを確認して戦線離脱した。
 上手くキカイダーに逃げられたハカイダーは、

 「忘れるなよキカイダー。お前を殺すことの出来る者はこのハカイダーしかいないと云うことをな!」

 と云う彼自身のステータス言動ともいえる、名台詞を浴びせたのだった。

 場面は替わって目白台派出所。何処かへ向かう筈がミツ子の方向音痴によってその前を通ったミツ子・マサル・半平は派出所の掲示板にジローの指名手配が貼り出されているのを見つけた。
 自分達がジローの仲間であることを伏せつつ、派出所の警官二人に半平が探りを入れたところ、既に全国に指名手配されており、また人間ではない故に見つけ次第破壊しても構わないとされていることが判明した。
 ちなみにこの警察官を演じたのは故ポール牧と関武志。つまりコント・ラッキー7の2人である。通常は土方スタイルがこの時は警察官とは珍しい(笑)。だが、コメディアンを配役したためか、どこか間の抜けた風な対応で、途中で転びそうになった折には女学生の太ももに抱き着いて怒られる始末だったが、ストーリーには何の関係もないな(苦笑)。

 場面は替わってとある学習塾。そこで授業を受けいていた少年達が窓の外に光るものを見て、蛍と思い、それを捕まえんとして飛び出した。
 だが光の正体はダーク破壊ロボット・アンコウブラウンの放つ光で、驚いた子供達が逃げようとしたが時すでに遅く、光の持つ催眠効果で子供達は逃走を止め、アンコウブラウンに追随して拉致された。
 ハカイダーとの比較からも、素体がアンコウであることからも見た目に格好良さや知的さが欠片も感じられないアンコウブラウンだったが、意外にも子供達拉致の作戦立案は彼が行ったもので、攫った子供達はダークの戦士に改造することとなっていた。
 プロフェッサー・ギルも、ある程度の人数に達したところで洗脳手術をするよう命じた。命を受けてアンコウブラウンは子供達を拉致し続けた。

 そのころ、夜道で光明寺姉弟が揉めていた。
 半平の車が久々にエンストを起こし、ジローを探す為にもミツ子はマサルと共に徒歩で先行することを提言したが、マサルは半平から離れず、彼の助手になってジローを探し続け、ジローを自分の手で倒すと宣言した。
 マサルも、ジローがプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音で狂わされて光明寺博士を襲ったのは理解しているのだが、その狂ってやってしまった事を許せないとし、その点がミツ子と決定的に異なっていた。
 ミツ子は自分達とジローの絆がそんな軽いものではないとして、とにかくジローを見つけて話を聞くまでは自分達だけでもジローを信じるべきだとしていた。

 突然、自分に師事すると宣言された半平は、意外な嬉しさから悦に入り、マサルの見る目の高さを褒め称えていたが、まだ子供であるマサルにとって生活上、単に頼れる成人が他にいなかっただけだと思う(苦笑)
 そんな姉弟が袂を分かたんとした危機的状況が展開されていたのだが、そこで半平は怪しい光に気付いた。果たせるかな光の正体は催眠状態にした子供達を連行していたアンコウブラウンだったのだが、子供達をアジト迄拉致するのだから、その行動は密なるを要する筈で、それを煌々とランプを点灯させていたのだから、こいつもやはり賢明とは言い難いようだ(笑)。
 ともあれ、半平とマサルが近づいてくるのに気付いたアンコウブラウンは行きがけ駄賃とばかりに二人も拉致せんとしたが、そこにジローが乱入した。

 自分の邪魔をするキカイダーを忌々しく思い、それを愚痴るアンコウブラウンだったが、自分には優先すべき任務があると告げ、ジローと戦うことを良しとせずその場から遁走した。賢いのか馬鹿なのかよく分からん奴だ(苦笑)。
 だが、ジローの方は問題が残った。助けたマサルを介抱せんとするが、マサルも半平もジローを完全に疑っており、聞く耳を持たない。光明寺博士の死体が偽物であることを告げても「出鱈目言うな!」としか返ってこない。最前助けられたことすら(アンコウブラウンの姿を目の当たりにしていないこともあるが)自分を襲ったと捕らえ、鉄パイプで殴りかかる始末だった。
 確かになかなか喋らなかった者が妙なタイミングで喋り出し、確たる証拠もないままただただ無実を訴えても話は通り辛いだろう。年端も行かないマサルが疑ってかかるのは無理もない。大人だって、信じていた者に裏切られたと思い込むと何を言っても信用しない心理に陥る者は珍しくないのだから。

 マサルに殴られ、しばらく抵抗もしなかったジローだったが、鉄パイプを掴んで取り上げ、どうして信じて貰えないのか?と投げ掛けた。するとそこへ聞き覚えのある口笛が響き渡った。
 一行が口笛のする方に目をやると、霧の中から現れたのはサブロー。勿論ジローは初見である。何者か?との誰何に、

 「サブロー。お前の弟とでも思ってもらおうか。」

 と答えるのだが、事情を知らない者が聞けばかなり不可解な台詞だ(苦笑)。
 台詞の内容から相手が光明寺博士に造られた人造人間と名乗っていることを察知したジローはそれに対して「嘘を吐くな。」と言い放った。それに対するサブローの答えは、

「とにかく俺はお前の様なポンコツじゃないってことさ。」

 という極めて挑発的な台詞だった。
 一触即発、不敵に笑い小剣を構えるサブローに、徒手空拳のまま構えを取るジロー。ミツ子が止めたことで衝突は避けられたのだが、ジローは逃げ出し、マサルの気持ちは完全にサブローに向いてしまい、サブローもジローから一行を守ると宣言した。

 Bパートに入り、場面はダーク基地。
 そこではアンコウブラウンの先導で、拉致された少年達が洗脳手術に掛けられようとしていたが、少年の一人が正気を取り戻していたのか、列から外れて逃げ出した。子供に簡単に逃げられるダーク基地って、一体………(苦笑)。  一方、味方に成りすますことに成功したサブロー=ハカイダーは、マサルにデス・ホイッスルなる道具を渡していた。それは光と音を放つ小道具で、光はありとあらゆる機械を停止させる力を持ち、音はどこにいてもサブローに連絡出来るという便利グッズだった。
 もっとも、実験として光を当てたのは半平の愛車(←しかも公道走行中!!)で、光を外すとすぐに走り出したのだから、かなり短時間且つ限定的な能力と言わざるを得ない(苦笑)。

 ともあれ、サブローと別れたマサルは再度ミツ子と行動を共にしていたのだが、そこへ最前のダーク基地を逃げ出した少年と遭遇した。事態を知り狼狽する三人の前にジローが現れ、ジローは少年をサイドマシーンの助手席に乗せて道案内を依頼した。
 ミツ子は今ジローが目立つ動きを取れば警察に捕まり、分解されかねないとして止めたが、ジローは何十人もの囚われの子供達を見捨てられないとしてその制止を振り切った。
 果せるかな、ジローはパトカーの追跡を受ける身となった。飛行能力を駆使してパトカーを撒くも次にはアンコウブラウン率いるアンドロイドマン達が襲ってきた。アンドロイドマン達を蹴散らす中、例によってプロフェッサー・ギルの悪魔の笛の音に苦しめられたジローだったが、今回はぶっ飛ばされたアンドロイドマンがダンプの荷台を上げるスイッチを押してしまい、荷台から滑り落ちた砂利の音で笛の音が遮断されると云う同作品中に在って屈指の無理矢理さだった(嘆息)。

 辛くも変身したキカイダーはアンコウブラウンを無視し、サイドマシーンを駆って戦線離脱した。だがそのサイドマシーンをバイクに乗ったハカイダーが追って来た。勿論様々な意味でキカイダーに戦う意思はなく、助手席に乗る少年−アキラに向かう先を尋ねるやサイドマシーンを加速させた。それを前輪に装備した砲を撃ちながら執拗に追い回すハカイダーだったが、キカイダーはサイドマシーンを乗り捨てることで辛くもその追撃を撒いたのだった。

 ダーク基地内に乗り込んだキカイダーは今まさに一人の少年が洗脳手術されようとしていたところに飛び込んでこれを妨害し、アキラに囚われの少年達を先導させて基地外に逃れた。
 その前にはアンコウブラウンが口から火炎を吐きながら迎撃して来た。火炎攻撃の前にただただ耐えるだけのキカイダーだったが、そんな火炎攻撃は半平の噴射した消火器で防げるものだった(笑)。
 とはいえ、アシストとしてはタイミング的にも効果的にもナイスなもので、キカイダーも素直に礼を述べていた。それに対して加勢料に600円という中途半端な額を求めたり、アンコウブラウンに腕を加えられて逃げ惑ったりしていたのは如何にも半平らしかったが、これは御愛嬌と云うものだろう。

 いずれにせよ、戦いは終息に向かった。アンコウブラウンはアンコウ脳天砕きと言う丸呑み攻撃でキカイダーの体を大口で圧迫して攻撃したが、そこから脱したキカイダーは最前ハカイダーを翻弄した銀河ハリケーンによる連打攻撃でアンコウブラウンを討ち取った。
 直後、マサルに先導されたパトカーがやってきたため、ジローはサイドマシーンに乗ってその場を脱した。疑惑が晴れずに逃げざるを得ない中、助けられた子供達が感謝の声を挙げながら見送り、高所からはハカイダーが殺意を持って見送っていたのだった。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日