人造人間キカイダー全話解説

第40話 危しジロー!機能完全停止!!

監督:北村秀敏
脚本:長坂秀佳
キリギリスグレイ登場
 冒頭、山中にて一人の少年(佐藤一臣)が絵を描いていた。少年は春にもかかわらずキリギリスの鳴き声(←人間が発しているのはバレバレだったのだが(笑))がするのに不気味なものを感じて帰宅しようとしたが、既にその背後にはキリギリスグレイの魔手が迫っていた。
 少年は途中で偶然マサル・半平と遭遇し、不気味な声から一緒に逃げることとなったのだが、程なく、三人の前にキリギリスグレイが立ちはだかった。
 この危機にマサルは前話にてサブロー(=ハカイダー)から渡されたデスホイッスルを駆使した。あらゆる機械を停止させると云われており、対キカイダー兵器として渡されたそのアイテムはダーク破壊ロボットであるキリギリスグレイの動きも止めた。
 凄い効果だが、どうやら相手の動きを止めるにはデスホイッスルを向け続けなければならない様で、いつまでもそうしていられないとばかりにマサルはもう一つの機能である呼子機能でサブローを呼び出した。

 前話の宣言通り、即座に現れたサブローだったが、標的がキカイダーでないことに露骨に迷惑そうな態度を取った。とはいえ、一応は味方を装っている手前、サブローは、後は任せろとばかりにマサル達に逃走を促した。
 デスホイッスルから逃れたキリギリスグレイはマサル達を追わんとしてサブローに止められ、「何だおまえは?」と誰何した。直後正体を現したハカイダーは知っていたから、存在は知りつつも、その動きまでは知らなかったのだろう。
 マサルに手を出すことは自分が許さないと告げるハカイダーに、キリギリスグレイがそれでもダークの一員か?と詰問すれば、ハカイダーが返したのは「俺はお前達のように命令通りに動く低能ロボットではない。」との辛辣な台詞だった。
 それでも尚逆らうなら相手すると凄むハカイダーに忌々しさを隠せないキリギリスグレイはこのことをプロフェッサー・ギルに報告するとの捨て台詞を残して飛び去ったが、ハカイダーはダークの首領である筈のプロフェッサー・ギルすらも恐れていない様子だった。

 場面は替わってダーク基地。
完成予想図らしきものに描かれたアンテナの絵を見て、プロフェッサー・ギルキリギリスグレイにこれが市民キチ●イ計画に使うアンテナか?と問うていた。
問われたキリギリスグレイは自分の体から発するマッドサイクルをアンテナに乗せて増幅し、広範囲に飛ばすことで日本全国の国民をキチピーにするというもので、計画自体は恐ろしく、悪の組織に相応しい遠大なもので、プロフェッサー・ギルもそれなりに満足気だったかが、説明の途中で、自分で自分の計画を「見事な計画」と言い、そのアンテナを写生されたことで子供の命を狙いながら逃げられたことを咎められて小さくなっていたところなど、小物感満載だった(苦笑)。
どうもハカイダーの登場以来、ダーク破壊ロボットは引き立て役を兼ねての小物役を振られている感が拭えない(苦笑)。
 ともあれ、写生した少年を逃した責任を(あながち間違いではないにせよ)ハカイダーに押し付ける言を展開するキリギリスグレイの小物振り(笑)はともかく、ハカイダーが独断専行に走りつつあることは、プロフェッサー・ギルにとって明らかに面白くないことだった。

 場面は替わって少年宅。
 デスホイッスルの効果に感嘆しながら、少年がマサルに対して、サブローと共にジローを倒すつもりか?と問うたが、マサルは無言だった。
 少年の言によると光明寺博士殺害事件は新聞に掲載されていたらしく、少年は犯人である(と見做されている)ジローを「ひどい奴」と言いつつ、滂沱に暮れるマサルに対して、「本当はジローのことが好きなんじゃないのか?」と鋭いところを突いて来た。
 視聴者にはマサルの複雑な心境は充分に分かるところだが、当のマサルは、真意はどうあれ、ジローを仇とする旨を繰り返すのだった。

 程なく、少年の口を封じんとして、キリギリスグレイが襲ってきた。
 絵を寄越せ、寄越さぬとあらば殺すと脅すキリギリスグレイに逃げ惑う少年。命に比べれば画き掛けの絵の一枚ぐらいくれてやっても良さそうな気がするが、少年はそうしない。
 扉を閉めてキリギリスグレイの動きを妨害するのに対し、キリギリスグレイは「ドアなど俺には通用せんわい。俺の体にはあらゆる音を三千倍に増幅してキチ●イ音波を作り出すスピーカーが内蔵されているんだ。」と自慢たらたらなところも小物感満載(笑)。
 とはいうものの、「キリギリスマッドサイクル」と称するその怪音波は、一般人、それも子供にとっては充分な脅威で、壁や扉が次々と粉微塵となって行った。
 その間に屋外に逃れた少年だったが、忽ちアンドロイドマン達に取り囲まれ、程なく追い付いて来たキリギリスグレイに絞め上げられることとなったのだが、そこにいつものギターの音色が鳴り響いた。

 「俺の相手になろうと云うのか?!」と凄む程の事はあってか、キリギリスグレイはチェンジ前のジローを圧倒する格闘能力を見せつけた。だが、堪らず変身したキカイダーには刃物として飛ばした羽根をあっさり受け止められ、投げ返される体たらく(苦笑)。
 だが、そこへデスホイッスルを構えたマサルが現れ、さしものキカイダーも狼狽えた。

 デスホイッスルは今度もその性能を遺憾なく発揮し、動きの止まったキカイダーはジローの姿に戻り、キリギリスグレイに言い様にボコられた。
 そんな状況が見ていられなかったマサルは目を背けつつ、サブローを呼んだ。だが、呼び出したサブローに指摘され、マサルはイージーミスを犯していたことに気付いた。目を背けていたことでデスホイッスルが突き付けた相手は調子に乗ってジローをボコっていたキリギリスグレイにシフトしており、当のジローは土手下に蹴り落されて戦線を離脱していた。幸い、転がり落ちた場に現れたのはミツ子で、保護されることになった訳だが。

 場面は替わってダーク基地。扉があるにもかかわらずそれをぶち破ってハカイダーが現れた。驚きつつ、何の真似だ?と詰問するプロフェッサー・ギルに、ハカイダーは呼ばれたからやって来たと答えた。
 プロフェッサー・ギルハカイダーを呼んだのは、ハカイダーキリギリスグレイの邪魔をしたゆえ、それを詰問する為だったのだが、ハカイダーはそんな問答に用はないとばかりに今度は天井をぶち破って去って行った。その傍若無人振りに切歯扼腕するしかないプロフェッサー・ギルであった。

 場面は替わって少年宅。ダークが狙っていた少年の絵を前に、ダークが何故にこれを狙うのか?とミツ子が首を捻っていた。
 一方、少年−直後にやった洋一と言う名前が出たのだが−は、件の絵が自分にとっての最高傑作で、コンクールに出展するためのものであったことを口にしていた。宅配で送ればダークに盗まれる恐れがあると案じる洋一に、マサルは半平の車で東京まで送ると申し出た。
 この一連の会話で、洋一が脅されて尚、キリギリスグレイに絵を渡すまいとした気持ちが明らかになったのだが、となると洋一の画家根性は見上げたものである。まあ、生命危機を察知し得ないお馬鹿さんの可能性も否めないが (苦笑)、マサルの複雑な気持ちを見抜いていたことを思えば、馬鹿キャラではないのだろう。

 案の定、キリギリスグレイはアンドロイドマン達に半平車を襲わせた。だが崖上からの落石攻撃も、橋桁にダイナマイトを仕掛けての襲撃もジローに妨害された。恐らく、ミツ子に保護された直後、マサルの目を逃れるように解放され、つかず離れず光明寺姉弟を見守っていたのだろう。
 一方、キリギリスグレイは単身半平車を襲い、キリギリスマッドサイクルで半平車を走行不能に陥らせた。半平車の不調をいつもの体たらくと見做して半平に「しっかりしろよな!」と詰って、姉と共に車を捨てて徒歩で移動するマサル。その際にデスホイッスルを取り落としたことに気付かないお前こそしっかりしろよな(苦笑)。

 歩いて移動する道々、ミツ子はマサルに、父がダーク基地のどこかで生きていて、その脳はハカイダーに移植されている旨を伝えたが、マサルはジローの虚言として相手にしない。結果を知る立場としてはマサルの分からず屋ぶりに苛つくところだが、同じ立場に立てばマサルの様に物事を捉えるのも無理ないかも知れない。
 程なく、キリギリスグレイが襲って来て、初めてデスホイッスルの紛失に気付いた姉弟は逃げ惑うしかなかった。しばらくして、自分達が逃げてきた場所が洋一の絵と同じ場所であることに気付き、姉弟はアンテナがダークのもので、それゆえダークがこの絵を狙っていたことを悟った。
 見られたからには尚更生かしておけないと迫りくるキリギリスグレイはミツ子に羽根を飛ばしたが、突如現れたジローがそれをキリギリスグレイに投げ返した。

 もんどりうって倒れるキリギリスグレイを無視して(笑)、ジローはデスホイッスルをマサルに渡すと、あくまで自分を父の仇と疑うならそれを使って好きな様にすればいい、マサルに疑われてまで生きているぐらいならバラバラにされた方がマシだと告げた。
 さすがにそう出られてはマサルも「はい、そうですか。」と攻撃に出る訳にも行かず、ただただ呆然とし、ジローと対峙するしかなかったのだが、その間にジローの背後にはキリギリスグレイが迫っていた。
 ミツ子が「志村!後ろ後ろ!」的に警告を発しても動かないジロー。だが、キリギリスグレイの攻撃はサブローによって阻止された。また邪魔をするのか?とばかりに抗議の声を挙げるキリギリスグレイに小剣を突き付けて黙らせたサブローはジローに自分との決闘を促すがジローは動かない。

 そんな状況に業を煮やしたキリギリスグレイは、黙って見ていられるかとばかりにジローに殴りかかり、ジローもこれに応戦した。その展開を見ていたサブローは、戦意を取り戻してチェンジしたキカイダーに対して、「それでいい。」と呟くと、崖上に飛びあがって、傍観し出した。
 いざ白兵戦となると、はっきり言って、キリギリスグレイはキカイダーの敵ではなかった。自力で勝てないと見たキリギリスグレイは早々とプロフェッサー・ギルに助けを求め、悪魔の笛の音が鳴り響いた。
 本来、キカイダーにチェンジした後では悪魔の笛の音は影響を及ぼさないのだが、キリギリスグレイにはあらゆる音を3000倍に増幅するスピーカーが内蔵されており、その増幅を受けた悪魔の笛はキカイダーに対しても充分な威力を発揮した!

 プロフェッサー・ギルはキカイダーにダークへの忠誠を強要し、キカイダーは命じられるままに右手を「ハイル・ヒ●ラー」状に挙げた。次いでギルはキカイダーにサブローを攻撃するよう命じ、崖上に飛び上ったキカイダーはサブローへの攻撃を開始した。
 しばし小剣を振り回して応戦していたサブローだったが、やがてハカイダーに変身。事ここに至って、キカイダーは初めてサブロー=ハカイダーであることを知って、両者は各々の愛車に騎乗して戦った。

 この状況を打開せんとして、ミツ子は岩石を積んだトロッコをキリギリスグレイに追突させ、スピーカーを停止させることでキカイダーを正気付かせることに成功したのだが、これが結果的に裏目に出た。
 自分の戦っている相手がハカイダーであることに気付いたキカイダーは光明寺博士の身を慮って戦えなくなった。一方、妨害を受けたキリギリスグレイはよくもやってくれたなとばかりに光明寺姉弟に襲い掛かり、キカイダーはそれを救わんとするも、ハカイダーがハカイダーショットを構えて牽制するので下手に動けなかった。

 だが、程なく、ハカイダーが光明寺博士の脳を持っていることがキカイダー側に有利に転じた。光明寺博士の脳を持つハカイダーは一定時間ごとに光明寺博士の体と血液交換をしないと絶命してしまうという身体的欠陥を抱えており、時間には勝てずに戦線離脱した。
 この間、光明寺姉弟をあわやまで追い込んだキリギリスグレイだったが、当然危地を脱したキカイダーの逆襲を受けることとなった。序盤こそネックハンギングツリーで締め上げた後キカイダーをさんざっぱら殴りつけて優勢に勝負を展開していたキリギリスグレイだったが、キカイダーが銀河ハリケーンを繰り出すと形勢は逆転。フックの連打を受け、最後に膝蹴りを食らって崖下に追い落とされたキリギリスグレイは爆破炎上して戦死した。

 光明寺姉弟の元に戻ったジローはミツ子からデスホイッスルを受け取ると再度それをマサルに渡し、委ねた。しばしの迷いを見せたマサルだったが、デスホイッスルを叩き壊すとジローの胸に飛び込んだ。
 ようやくにして信頼し合う日々が戻ったことに涙する光明寺姉弟を前にジローはあたかも自分も泣きたいのを見られまいとするようにサイドマシーンに乗ってその場を走り去ったのだった………。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日