人造人間キカイダー全話解説

第5話 イエロージャガーの魔の手が迫る

監督:畠山豊彦
脚本:長坂秀佳
イエロージャガー登場
 冒頭、1人の女性(渡辺美智子)と5人の観測員が小高い丘の上に立ち、地図を前に緑化計画を話していた。計画は女性の亡父の悲願で、東京に緑が戻ることへの期待を膨らませていた。そこへ女性の弟(小松陽太郎)が駆け付け、来客を告げた。
「東京からのお客さん」と聞いた姉は「ミツ子達ね。」と呟く。またこのパターンか(笑)。ともあれ、女性は観測員達に後を託して現場を後にした。
 その直後、長大な石柱が爆破したかと思うと中からイエロージャガーが現れた。イエロージャガーは現場に残って調査に掛かろうとした観測員達に襲い掛かり、これを惨殺した。

 しかし、このイエロージャガー……ただ歩くだけで無意味な不気味笑いを振りまき、ドラえもんの様な髯を持つデカ頭を揺らせる立ち居振る舞いははっきり言ってカッコ悪い(苦笑)。だが、見た目とは裏腹にイエロージャガーは恐ろしいダークロボットで、指先から放った火炎放射は一瞬にして観測員達を白骨死体へと焼き尽くした。
 火炎や強酸・溶解液で人間が一瞬にして白骨死体のされるのは特撮によくあるパターンなのだが、実際に人間1人を短時間で完全な白骨にするにはとてつもない高温か、膨大な量の溶解液を必要とする。リアルに考えるならイエロージャガーは見てくれこそコミカルでカッコ悪いが、とんでもない殺傷マシーンと云える。

 ともあれ、直後の台詞からイエロージャガーの殺害対象は最前の女性−佐久間ミキであることが明らかにされた(←つまり観測員達は巻き添えによる無意味な殺害に曝された)。
 そしてそのミキは、自宅にて弟、光明寺姉弟の4人で亡父が作ったと思われるグリーン計画の完成想像図模型を前に人間と自然が調和する理想を語っていた。
 4人は自分達の父に誇りと敬意を持つ一方で、片や既に死亡、片や未だ行方不明という現状に姉達は互いに気遣い、弟達は互いに父がいなくとも強く生きんとしていた。
 するとそこへ調査員の1人が、4人の調査員達が行方不明であることを慌てて告げに来た。そしてダーク基地ではイエロージャガーが自らの判断で調査員達を始末したことを、褒めてくれと言わんばかりの口調でプロフェッサー・ギルに報告していた。

 イエロージャガーの言によると、彼が率いるダーク第5破壊部隊が開発中のデスボン爆弾は、当時スモッグ問題が深刻だった東京の様な汚れた空気の中でないと研究が不可能とのことだった。きれいな空気じゃないと真価を発揮出来ない機械なら分かるが、汚い空気じゃないと駄目って‥‥‥……(苦笑)
 ともあれ、イエロージャガーはミキ達の緑化計画が自らの行動の障害と見て、その手先ともいえる作業員達を殺害したことを、先見の明による先手を打った物としてプロフェッサー・ギルに褒めてもらいたかったのだろう。
だが、「褒めてやるぞ。」と宣うギルの表情は勿論褒めているそれではなく(笑)、イエロージャガーは杖からの怪光線という形での懲罰を食らった(笑)。

 イエロージャガーの考え自体は自らの行動への障害を排除しようとするもので、それ自体はギルも肯定する台詞を発していた。だが、作業員を100人殺したところで計画のトップが健在では意味がないことを諭し、ギルはイエロージャガーに佐久間ミキ殺害を命じた。
 ギルの言によると、イエロージャガーに「作戦のすべてを任せている」とのことで、いやしくも指揮官たるもの、数多くの歩と王のどちらを取ることが重要なのか判断つかないようでは話にならないことを伝えたいのだろう。そこはさすがに組織のトップともいえる采配と配下への教育を見せていたプロフェッサー・ギルだったが、直後に「殺せ!殺せ!」とヒステリックに連呼していたことが組織の長としての威厳を丸潰れにしていた(苦笑)

 改めて佐久間ミキ殺害の命令を受けたイエロージャガーは早速ミキを襲撃にかかったのだが、どうもこいつの動きは様々な意味で無駄が多い。「計画阻止=リーダー抹殺」の図式に従うなら有無を言わさず、余計な言動を挟まずミキを殺害するのが定石なのだが、相変わらず無意味な下卑た笑いを振りまき、転倒したミキを抑えたのは良いが、件の火炎放射も使わず、彼女の足を踏みつけにするという無意味ないびりを行い、その間にジローが駆け付けることとなった(失笑)。
 勿論、ジローが来たとて、ミキはイエロージャガーの掌中の在ったのだから、構わず殺害することも、人質に取ることも可能だったが、何故かいつものギターの音色に気を取られ、変身したキカイダーに馬鹿正直に対峙し、結局はキカイダーにも、ミキ達にも逃げられたのだった(呆)。

 場面は替わってとある公道。そこにいたのは愛車に搭乗中の服部半平。年季を経てかなり償却していると思われる愛車は今日も不調で乗車中にエンストをこいたのだが、それに対して丸で人に怒るかのように説教を垂れる半平が危ない(苦笑)。
 調子を見ようと後部ドアを開けようとすると爆炎が起こり、顔を煤だらけにした半平は「吾輩を舐めているな?!」といきり立つが、小さいながらも爆発が起こるなんてポンコツ以前の問題だろうが………と思っていたら、半平は「舐められた」ということへの報復と称して、ハンドルを舐め回す始末…………危な過ぎるだろうコイツ……

 そんな半平のアブノーマルさが無意味に披露されたところで場面は佐久間邸に移った。
 イエロージャガーに傷つけられたミキの足を手当てしていたミツ子に、ジローはダーク破壊ロボットに追わされた傷はそれでは治らない、として自分の体内から抽出した液を脱脂綿に含ませ、ミキの患部に塗り付けた。外傷が普通の手段で治らないって、ダーク破壊ロボットの体表面には妙な薬品か細菌でも常在しているのか?
 傷の問題と同時に、ジローがタイミングよく駆け付けたのも謎だったが、これは直後のミツ子とをジローの会話で明らかにされた。ジローは光明寺博士らしき人がこの近くの工事現場にいたという目撃情報を追って来たもので、ミツ子達が佐久間邸を訪れたのも、近くで博士が愛用していたロケットを拾ったからだった。
 だが、件の人物は既に工事現場を去った後で、やつれていたことしか分からず、ロケットも姉弟の写真が入っていなかったので決定的な証は掴めずじまいだった。
 その頃、ダーク基地ではプロフェッサー・ギルが死神ベルトなるベルトを部下に披露していた。謂わば、爆弾を仕掛けたベルトで、サルを使った実験ではベルトをしたしたサルをアンドロイドマンが抱き上げるや、5秒後にアンドロイドマンは木端微塵となった。
 ギル曰く、光明寺博士が作ったロボットに死神ベルトを装着させるか、ロボットが死神ベルトを装着した対象を抱くと5秒で爆発が起こるとのことだった。それに対して「誰につけるのです?」との疑問を呈したイエロージャガー。実は賢いのかも知れない(笑)。
 キカイダーに取り付けるなら「猫に鈴をつける」の論議になるし、ベルトを着けた者を抱かせるならその対象選択は大切だ。果たして、ギルが選んでいたのはミキの弟・佐久間ゲンだった。インターポール・デストロンハンター5号みたいな名前だな(笑)。

 Bパートに入ると、再び半平が登場し、相変わらず愛車の不調に悩んでいたのだが、彼の愛車は踏切を前にブレーキが利かないと云う、日常の足として命に係わる程の劣悪な調子にあった。
 愛車の状態も危なかったが、言うことを聞かない愛車に対して「最後の手段」として半平が取った行動はハンドルを舐め回すというもの…………愛車よりもコイツの方が危ない………。
 取り敢えず、車の方は踏切寸前で停止し、車を降りた半平が愛車相手に文句をぶー垂れてから運転席に戻ろうとすると、そこには1人の男(穂積隆信)がニヤニヤしながら座っていた。状況的に怪しさ丸出しなのだが、半平が訝しがるより先に男は「いいアルバイトを持ってきた。」と言って、財布の中の紙幣を見せた。
 紙幣を前に丸で御馳走か美女の肢体を前にしたかのように生唾を呑み込む半平は、「お引き受けいただけますかな?」と問う男に、「今まだ一度も依頼を断ったことが無い。」と答えて承諾の意を示していたが、コイツの銭ゲバぶりを考えると、「断ったことが無い」というのが大嘘か、「大金を前にして断ったことが無い」というのかのどちらかだな(苦笑)。
 しかし、金が大好きなこと自体は1つのポリシーとして良いも悪いもないのだが、いきなり大金をちらつかせる相手に何の警戒も抱かない半平は名探偵としてかなり怪しいと言わざるを得ないな(苦笑)。

 場面は移って緑化計画の工事現場。そこでは3人の作業員に地図を見せながら説明するミキをジローとミツ子が遠巻きに見守っていた。
文明と緑が共存しない日本にあって、緑化計画を進めるミキを襲うダークを許せないと呟くジローを見て、ジローがミキに好意を抱いているのかと勘繰って軽い嫉妬を見せていたミツ子。すぐに冷静になって、時折ジローが人造人間であることを忘れそうになる我が身を振り返っていた。作品を通じてミツ子は時折、ジローに対して本物の人間の男性を前にしているかのような言動を繰り返すのだが、本物の人間に少しでも近くありたくて良心回路の完成すら拒むジローの身に立つと何とも複雑な話である。

 場面は替わってとある林道。そこではマサルとゲンが愛車に乗る半平を追いかけていた(理由は不明)。
 例によって自分を「はんぺん」と呼ぶマサルに大人気ない怒りをあらわにする半平だったが(苦笑)、状況からマサルの連れがゲンであることに気付き、例の死神ベルトをプレゼントした。
 どう見てもダサいデザインだったが、ゲンは気に入った様で、マサルも「キカイダーみたい!」と絶賛した(←どこがやねん(笑))。その言を受けてゲンは更に喜び、「チェンジ!スイッチオン!1,2,3」と叫んでポーズを取って、走り回っていたが、キカイダーって、作中世界でそんなに有名だったのか??ダークの追跡を交わしながら光明寺博士の行方を追って全国を彷徨うキカイダーがその存在はおろか変身ポーズまで知られているって、ウルトラマンや仮面ライダーよりあり得ん気がするが………。
 ともあれ、そんな様子を見て、依頼完遂にほくそ笑む半平。確かに依頼人の素性や目的を一切不問で依頼遂行と報酬に徹するならベルトをプレゼントしただけで(当時の金銭価値で)5万円も貰えたのだから、半平が喜ぶのも無理はなかった。ま、現実なら裏がありまくりなのだが(苦笑)。

 目的を果たした半平は得意満面で走り去ったが、作戦の第一段階成功を見届けた男は正体を現してイエロージャガーになると配下のアンドロイドマン達と共にゲンを襲った。
 捕らえられたゲンは「放せ!放せ!」を連呼。毎度思うのだが、悪の組織に捕まった子役の台詞は「放せ!」以外にないのか?(苦笑)
 するとそこへ、ジロー・ミツ子・ミキ・マサルがやって来た。腹に一物のあるイエロージャガーはあっさりゲンを介抱。ジローは即座にゲンの保護に出た。
 一連の流れをアジト内のモニターで見ていたプロフェッサー・ギルは、5秒後にキカイダー抹殺が成ることを確信したが、ジローはゲンが身に付けていたベルトを一目で訝しがり、マサルの「はんぺんが(プレゼントした)。」、「(はんぺんが)ゲンの名前を知ってやがんの。」との状況証拠やベルトの発する電子音から即座にベルトが危ないと見て、これを剥ぎ取って投げ捨てることで事なきを得た(←ちなみにこの間、リアルでは5秒どころか27秒が経過)。
 作戦失敗を見届けたプロフェッサー・ギルは「次の手だ!」と称して笛の音を発動してジローは悶絶……………って、死神ベルトが起爆する前の間笛を鳴らしていれば、作戦は確実に成功したじゃんかよぉ!!

 と、そんなツッコミを入れたくなるギルのワンパタ攻撃だったが、ギル本人はかなり本腰を入れており、そのままジローを操って彼にミキを絞め殺させんとし、実際にジローは君の首を締め上げた!
 勿論周囲がそれを放っておく筈はなく、ゲンは必死にジローを殴りつけ、ミツ子とマサルもジローの両腕を引っぺがしにかかった。通常なら人造人間の力に女性と子供の力では抗し得なかったのだろうけれど、ジローの良心回路もまたギルの笛の音に抵抗しており(←だからジローは苦しむんだけどね)、その分締める力が弱まっていたのか、ミキに致命傷を負わせることもなく、ミツ子とマサルの力でも何とか引き離しは可能だった。
 ミキから引き離されたジローは湖に飛び込み、(解説はなかったが)飛び込んだ際の水音と衝撃音が笛の音を絶ったようで、ジローはキカイダーへの変身を遂げ、イエロージャガーに対峙した…………って、今まで何をやっていたんだよ、イエロージャガーよ(苦笑)。

 ともあれ、最終決戦が始まった。
 アンドロイドマン達は当然の様に蹴散らされ(笑)、イエロージャガーもまた格闘能力では明らかにキカイダーに劣っていた。南米大陸ではアリゲーターさえも餌食にして食物連鎖の頂点に立つジャガーの能力を持つ破壊ロボットにしてはなんと低い能力か………(泣)。
 何せ、少し離れた場所でミツ子達が平気で観戦していたのだから、如何に激しからざる戦闘であったかが窺い知れる。例によって然したる活躍も見せられず、ダブル・チョップ大車輪投げの連打を食らったイエロージャガー。このままいつものフィニッシュかと思ったが、最期の最後に幾許かの根性を見せた。
 計画阻害要因排除の為、(浅はかとは言え)自らの判断で作業員を殺害した様に、イエロージャガーには自分なりの考えやこだわりがあった様で、キカイダーに勝てない場合を想定していたのか、その腰には死神ベルトが装着されていた。
 当然、ベルトは大車輪投げにて組み合った際に起動し、イエロージャガーはキカイダーを道連れにせんと図ったが、先にゲンを助けたときの記憶からキカイダーはその存在を察知し、振り解く様に放ったデンジ・エンドを食らって空中に放擲されたイエロージャガーは1人で大爆発を起こして最期を遂げたのだった。

 そしてエンディング。ジローは佐久間邸を辞し、ゲンに促されるように見送りに出たミキだったが、ジローは去った後だった。姉弟の様子からするとミキもまたミツ子同様の好意をジローに抱いていた様だった。
 複雑な感情が残るところだったが、光明寺姉弟もまた父を探し求めて佐久間邸を辞することとなり、姉同士、弟同士それぞれに別れの挨拶が交わされた。
 直後、徒歩で去ってゆく姉弟に車で送るから同道させてくれと申し出る半平だったが、半平に渡されたベルトの為に命の危機に曝されたばかりの姉弟は「自分が何をしたか分かってんの?」と言ってこれを拒絶した。
 当然の対応だったが、ベルトが物騒な物だったと知らずに5万円の報酬しか考えてなかった半平は本当に自分の為したことがもたらした悪影響を知らなかったからチョットだけ哀れだった(苦笑)。直後、そんな半平をおちょくるように愛車は三度エンスト。動けと懇願しながらまたまたハンドルを舐め回す半平……………もう止めろって(毒)



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 最終更新 令和元(2019)年一二月四日