人造人間キカイダー全話解説

第42話 変身不能!? ハカイダー大反逆!

監督:畠山豊彦
脚本:長坂秀佳
アカ地雷ガマ、白骨ムササビ登場
 キカイダーの五体がバラバラになるというショッキングな終わり方をした前話を受けて始まった第42話の冒頭は、半平が滂沱に暮れているところから始まった。とはいえ、展開は決してのんびりしたものにはなり得ない。
 泣きながら、念仏を唱えながらキカイダーの五体を集めた半平はそれ等を担いでその場を逃れた。死んだ人間は決して生き返らないが、人造人間ゆえに修理が可能と言うのは誰しもが考え得ることだろう。
 人造人間ゆえに「破壊」が必ずしも「死」を意味しないことを、整合性が取れていると考えるか、生命危機に対する緊張感が欠如していると考えるかは個々人の価値観によって左右されるだろう。

 ともあれ、バラバラになったキカイダーの五体はアカ地雷ガマ率いるアンドロイドマン達も探し求めていた。岩山の起伏を利して辛うじて身を隠しつつ、自らを叱咤する半平だったが、途中でキカイダーの腕を取り落としたことでアカ地雷ガマ&アンドロイドマン達に包囲され、キカイダーの体を差し出して命乞いをするしかないところにまで追い詰められた。

 絶体絶命の危機に陥った半平とキカイダー(の残骸)を救ったのは意外にもサブローだった。口笛の源を探って狼狽えるアカ地雷ガマの胸部にサブローは小剣を投げ刺し、キカイダーが自分にとっての唯一の強敵で、キカイダーとの戦いだけが自分にとっての生き甲斐であったことを述べた。
 その台詞が意味するところを察しかねるアカ地雷ガマにサブローは、キカイダーを倒したアカ地雷ガマに自分の相手になってもらわなければならないことを告げた。そんなサブロー相手にキカイダーすら倒した地雷を擁するアカ地雷ガマは自信満々だったが、サブローは最前投げ刺した小剣がアカ地雷ガマの地雷を起爆させる電源を断ち切っており、それゆえに地雷は機能しないことを告げた。

 必殺の武器が用を為さないことに狼狽したアカ地雷ガマは、既にプロフェッサー・ギルからハカイダー抹殺の許可が下りていることを告げてアンドロイドマン達に「遠慮は要らん」としてハカイダー抹殺を下知したが、勿論アンドロイドマン達がハカイダーに敵う筈はない(苦笑)。
 パンチ力だけでもアンドロイドマンを残骸に替えてしまう膂力に加え、ハカイダーショットも駆使して、次々とアンドロイドマン達を倒していくハカイダーだった。
 そしていよいよ一騎打ちとなると、最大の武器を封じられた上に鈍重な肉体が祟ってか、アカ地雷ガマハカイダーに全く抗し得なかった。
 そしてもはや用は無いとばかりに立ち去らんとするハカイダーの足下に地雷を転がして最後の抵抗を試みんとしたアカ地雷ガマだったが、腹部から転がり落ちようとしたところにハカイダーが振り向きざまにショットを炸裂させて誘爆したため、自らの武器でもってアカ地雷ガマは落命した。
 振り返ってみれば、ダーク破壊ロボット達は自害したモモイロアルマジロ、父の死に動転して転落死した子ハリモグラ、そしてハカイダーに倒されたこのアカ地雷ガマ以外は皆、キカイダーによって倒されている。
 つまりアカ地雷ガマは味方(?)によって殺された唯一の例で、極めて稀有な存在であることが分る。そしてそのアカ地雷ガマを手に掛けたハカイダーは仲間を手に掛けたことへの悔恨を僅かに滲ませていたから、なかなかに単純な存在ではない。

 一方、両者の争いの間隙を縫う形で光明寺姉弟の閉じ込められた牢獄の上に来た半平は次々とキカイダーの体をロープで降ろしていった。
 だがミツ子はバラバラになったジローの体と動かない父を前に為す術なし、と半ば茫然自失とするしかなかった。
 そして地上では半平がハカイダーに凄まれていた。
 キカイダーに死なれ、元凶であるアカ地雷ガマを討ち取ったハカイダーは生きる目標を失い、生き甲斐の無い自分を生み出したプロフェッサー・ギルを憎むようになり、憎悪の権化と化していた。

 狼狽える半平に自分はギルではないと告げられたハカイダーはダーク基地への襲撃を敢行。岩壁を破って忽ちの内にプロフェッサー・ギルの元へ辿り着き、彼を殺害する旨を宣言した。
 特撮作品における悪の組織の首領には自身の戦闘能力が特段優れている訳ではない者も多いが、プロフェッサー・ギルは自前の戦闘能力を持たない様で、僅かに杖で応戦しただけで後はハカイダーの殺害宣言に狼狽えるばかりだった。
 こんな自分を生み出した相手が憎いと憤るハカイダーを見て一計を案じたプロフェッサー・ギルは、ハカイダーの生みの親は光明寺博士であるとの大嘘をぶっこき、生みの親を怨むなら光明寺博士を殺せと唆した。
 この教唆は急場しのぎであると同時に、ハカイダーを嵌めるものでもあった。周知の様にハカイダーと光明寺博士を声明において切っても切れない関係にあり、光明寺博士の師はハカイダーの死を意味する。
 だが、憤りの余冷静な思考力を著しく低下させているとしか思えないハカイダーは光明寺博士を殺害せんとして、プロフェッサー・ギルに唆されるままに地下に降りて行った。

 その頃、半平によって降ろされたキカイダーの残骸を前にミツ子は途方に暮れていた。父親譲りの機械工学技術を持つミツ子だが、配線図と工具が無い状態では為す術がないのである。
 そしてそこへハカイダーがやって来た。光明寺博士への殺意満々に牢獄室への扉を開けろと乱打するが、勿論ミツ子達が応じる訳がない。ま、応じたくても鉄格子が邪魔していたけどね。
 切羽詰まる中、ミツ子はジローの体内にあるコンピューターに配線図があることを思い出した。勿論肝心のキカイダーは壊れたままなのだが、ミツ子は頭部と胸部の一部を2本の配線を繋ぐだけでも会話は可能になるとして、配線を繋ぎ直した。
 狙い過たず、キカイダーは眼光と発声回路を取り戻し、ミツ子との意思疎通が可能となった。ミツ子はドライバー1本でキカイダーの指示するまま数々の回路・回線を結んでいった。なるほど、過去にも光明寺博士がドライバー1本でキカイダーを修理したことがあったが、充分可能だったんだな(笑)。

 そうこうする内に散々扉を乱打していたハカイダーが到頭扉を破って牢獄内に侵入して来た。ミツ子は父を庇ってハカイダーの前に立ちはだかり、ハカイダーの脳は父の脳で、父を殺せばハカイダーも死ぬ旨を伝え、脳を父に返せばハカイダーを「素晴らしい人造人間」に作り替えることも可能、として父に手を出さないよう懇願した。
 それに対して幾許かの躊躇いを見せたハカイダーだったが、「単なる殺人機械になり下がった」と言う自らの境遇に対する凝り固まった憎しみが優先したものか、光明寺殺害への意志を翻さなかった。

 だが、辛うじて上半身のみ稼働するようになったキカイダーがその足に取り縋ったことでハカイダーの意識は少し変わった。
 キカイダーは自分がまだ生きており、勝負を受ける旨を告げた。そのキカイダーの惨状を見て、勝負にならないとしたハカイダーだったが、キカイダーの尚も繰り返す挑戦に、勝負を受け、光明寺博士に手を出さないことを約束した。
 勿論、ハカイダーが言った様に、五体満足だとしても必ず勝てるとは言い切れない状態だが、勝負に挑まんとするキカイダーにハカイダーは「慌てるな、キカイダー。」と制止した。
 曰く、「俺はか●わ者は相手にせん。」とのことで、あくまで互いにフェアな状態での一騎打ちによる決着を所望した。この辺りが、特撮界に星の数ほど存在する好敵手キャラにあって、ハカイダーが一際大きい存在感を持つ所以だろう
 「まず足を付けて貰え。」と言い放って、五体修復を促すハカイダーだった。そして修理が終わったキカイダーに対して、修理直後の全力が出せない状態の者相手では面白くない、としてサブローの姿に戻った。
 それに対して、こっちもフェアにこだわると言わんばかりにキカイダーはジローの姿に戻った。それがゴングであるかのように両者は激しく殴り合った。

 敵とはいえ、「ジローの弟」を名乗った者がジローと殴り合うのが辛いのか、或いは、父の体が巻き込まれるのを恐れたのか、それとも父の脳が破壊されること恐れたのか、光明寺姉弟は必死に両者に戦いの中止を求めたが、勿論止む筈はない。
 するとそこへ半平が現れて、光明寺博士のベッドを牢獄の外へ引っ張り出さんとした。勿論光明寺博士が巻き添えを食うのを防ぐ為で、正しい判断である。
 半平に気付いたジローは、光明寺博士を手術室へ連れて行くよう促した。

 アンドロイドマン達の捜索の目を逃れ、手術室に光明寺博士を搬送したミツ子・マサル・半平(←途中に壁の陰に隠れただけの三人に気付かなかったアンドロイドマン達無能過ぎ)。一応の無事は確保したものの、ジローが来なくてはここで何をしたいのかが分からない。
 そしてそのジローはサブローとの殴り合いを続けていた。少しの投げ技を交えた以外はほぼ殴り合いだったのだが、サブローは小剣を抜くと、最終決戦だと言わんばかりにハカイダーにチェンジした。
 それを応じるようにチェンジせんとしたジローだったが、変身機能は修復しておらず、キカイダーにはなれなかった!

 それならそれで構わないとばかりに決着に挑まんとしたハカイダーだったが、そこへ両者を討伐せんとしてアンドロイドマン達が飛び込んだことで水入りとなった。
 わざわざ触れるまでもないが、元よりアンドロイドマン達はジロー及びハカイダーの敵ではない。次々と蹴散らされるアンドロイドマン達だったが、ダークも正念場とあってか、次から次へと執拗に新手のアンドロイドマン達が現れては掛かって来た。
 そしてその頃、ダークの首領であるプロフェッサー・ギルは「ダークロボット最後の戦士」に、キカイダーとハカイダーを倒せばダークの再興は可能だとして、両者の抹殺を命じていた。

 抹殺対象であるジローとハカイダーは個々にアンドロイドマン達と戦い、次第にはぐれていったのだが、そこに「最後の戦士」がハカイダーに襲い掛かり、くちばし状の攻撃で忽ちの内にハカイダーをKOした。
 ハカイダーの怒声を聞き付けたジローが駆け付けると、そこにはハカイダーが一人倒れていた。瀕死のハカイダーは相手が自分より強い存在であることと、「どうせ殺られるなら、俺はお前に、お前に殺られたかったぜ、キカイダー……。」という無念の台詞を残して意識を失った。

 勿論、普通に死なれたのでは光明寺博士も死ぬことになる。ハカイダーの名を連呼し、まだ間に合うと判断したジローはハカイダーの体を背負ってアンドロイドマン達を振り切って手術室に飛び込んだ。
 同時に部屋に飛び込んで来たアンドロイドマン達を蹴散らすと、ジローはハカイダーの体をベッドに横たえ、ミツ子にハカイダーの脳を光明寺博士の体に戻すよう促した。
 確かに偶然訪れたものとはいえ、脳を破壊することを懸念しながら恐る恐る戦ったことを思えば、敵の手でハカイダーが行動不能に陥っているのは絶好のチャンスである。
 ただ、素で考えても脳の移植なんて現代の医療技術で考えてもとんでもない難手術である。それも実の父親の脳をいじると来たもんだ。ミツ子が狼狽えたのも無理はない。
 だが、場合が場合なのも確かで、「やらなければ二人とも死ぬ!」と半ば脅すようにジローはミツ子に言い放ち、まずは手術方法を描いた図面の探索を全員に呼び掛けた。
 ミツ子、マサル、半平は弾かれたように、図面を探し、ジローは周囲の道具をかき集めた。やがてマサルが該当図面を見つけ、手術が行われんとした。

 だが、程なく部屋の中が暗転すると、手術を妨害するかのように、最後の破壊ロボット=白骨ムササビが現れた。名乗らなければ何のロボットか判別しかねる程骨に覆われたその破壊ロボットはハカイダーと同じようにキカイダーを破壊すると宣言。

 ハカイダーをも秒殺した強敵を前に、変身出来ない体で光明寺博士を庇って立ちはだかるジロー。否が応でも緊張感が高まる中、第42話は終息し、遂に次回、最終話となるのだった!



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日