人造人間キカイダー全話解説

第6話 ブラックホースが死刑場でまつ

監督:畠山豊彦
脚本:伊上勝
ブラックホース登場
 冒頭、一台の観光バスがドライブインを発った。前面にダークのロゴを貼り付けた怪しさ丸出しの観光バス(笑)を追いかけるドライブインの従業員が2人。彼等が訝しがったのは、そのバスがドライブインに停まる予定だったからだった。

 そのバスの中では乗客達が予定外の行動を訝しがる声を上げていたが、答えの代わりに返って来たのは車中に鳴り響くプロフェッサー・ギルの笛の音。キカイダーほどではないが、苦痛に悶える人々を尻目に、
 「本日はダーク観光をご利用下さり誠にありがとうございます。只今より予定を変更致しましてダークの実験場にご案内致しします。」との案内を無表情で淡々と述べるバスガイドが不気味(笑)。

 突然訳の分からない変更案内をなされ、抗議の声を上げる乗客にバスガイドが見せた正体はアンドロイドマン。かくしてバスはとあるガソリンスタンドに入ったのだが、そのスタンドは場所も従業員もダークの手先で、バスは給油場に停まったと見るや地面の下に沈み、かくしてあっさりと数十人もの人々が拉致・連行された。

 人々が連れて行かれたのは、アンドロイドマン達の残骸が転がる陰気な牧場。悲鳴を上げながら脱走を試みる人々もいたが、武装したアンドロイドマン達に脅されてはそれもままならなかった(←笛の音も抵抗力を奪う一助になっていたようだ)。
 そして脅える人々の前に姿を現したのは6番目のダーク破壊ロボット・ブラックホース。馬の人造人間らしく、蹴り技を披露していたのは分かるが、巨大な蹄鉄を両手で扱う得物としていたのは何とも不可解だった(笑)

 その様子を基地内でモニタリングしていたプロフェッサー・ギルブラックホースの性能に概ね満足しており、そのデータを世界各国の武器商人に送って買値を付けさせるよう下知していた。ブルーバッファローイエロージャガーよりもカッコ良さそうなブラックホースも最終的には商品なのね(苦笑)。

 直後、別の通話装置が脱走追跡班からの「接触に成功した。」との報告を入れて来た。脱走追跡班が追っていたのは光明寺博士。その光明寺博士は記憶を失っていたことがこの第6話で明らかにされた。
 自分の名前さえ思い出せない光明寺博士だったが、僅かに残っていた記憶の中に自宅の電話番号があり、手掛かりを求めて公衆電話から自宅にコールしていた。
 正直、自分の記憶がないことがどんな心境や衝動をもたらすのか想像もつかないが、混乱の渦中にある光明寺博士は電話に出たミツ子にしばし無言。怪しんだジローが変わると、ようやく光明寺博士は自分が電話した目的を口にし、台詞と声からジローも電話の相手が光明寺博士であることが分かった。
 父からの電話と知ってマサルが受話器を取り、ミツ子も必死に呼びかけたが、そこに脱走追跡班が現れたため、光明寺博士は受話器を放置して逃走にかかり、掴め掛けた手掛かりは途絶えた。

 それにしても、脱走追跡班不自然過ぎ(苦笑)。ダークの手先であることを強調したいのは分かるが、全員黒のスーツにサングラスというギャングスタイルでは追跡する相手に「警戒して下さい。」と言っているようなもので、実際、光明寺博士は反対車線に到着した彼等を見た途端に逃げ出した(笑)。更に脱走追跡班の面々はさして交通量が多い訳でもないのにわざわざ歩道橋を渡って光明寺博士を追跡。悪の組織のメンバーが交通ルールはちゃんと守るとは何とも面妖である(苦笑)。

 ともあれ、逃げる光明寺博士が駆け込んだのは、あの「世界第一級私立探偵服部事務所」の看板を掲げたマンションの一室。当然、2話前に登場した事務所とは別物である。事務所を複数持っているとすれば守銭奴だけあって、服部半平は意外と金持ちなのだろうか?
 その事務所に(無断で)入り込んだ光明寺博士だったが、半平にとっては怪しげな闖入者に過ぎず、杖を突き付けて訊問したのだが、例によって大上段に構える際の物言いが半端ない。「ここをどなた様の事務所だと心得る?シャーロックホームズか、服部半平かと言われるぐらいの大名探偵のところだ。と来たもんだ。本人以外に誰がそんなことを言ったものやら………(苦笑)。
 ともあれ、光明寺博士が助けを求めると、半平は依頼人と知って相好を崩すも、記憶喪失では依頼料は貰えそうにないと表情を曇らせる………忙しい男だ(苦笑)。勿論がめつい半平のこと、文無しは相手に出来ないとするが、幸い光明寺博士は指に高価なダイヤモンドの指輪をはめており、それにより商談が成立すると両者は着物を交換し、半平は屋外に逃げて追っ手を引き付けた。

 それにしても、この追手ども無能過ぎるにも程がある。光明寺博士のスーツを着た半平とすれ違って数歩してからようやくスーツに気付く有様………つまりはスーツに気付くのも遅ければ、着ている主が光明寺博士か半平かの判別すら極めて中途半端なのだ。
 加えて、愛車で逃げる半平を追った後も、例によってエンストして乗り捨てた半平を追うのにも時間が掛かり、取り押さえるのすら数人が掛かりでなかなかままならない稚拙振りだった。何せ数人で追いながら、四方八方から取り囲んだり、挟み撃ちにしたり、といった役割分担が微塵も見られず、只一緒になって全員で追うだけだった(嘆息)。
 結局、ブラックホースが現れたことでようやく半平は取り押さえられたのだが、ブラックホースを一目見た半平が「ダークの破壊ロボット」と口にする一方で、その口から光明寺博士の名を聞いて初めて最前の人物がミツ子とマサルの父と知って驚愕していたのだから、この時点での半平は極めて中途半端にしかジローや光明寺姉弟と情報交換していなかったことが見て取れる。ま、この時点での半平を全面的に信頼するのは相当無理があるのだが(苦笑)。

 その頃、半平の浴衣を着てマンションに潜んでいた光明寺博士はしばし相変わらず戻らぬ記憶に苦悩していたが、ずっとその場に居続けるのは危険と判断してマンション外に逃亡した。
 その直後、光明寺姉弟が半平のマンションを訪ねて来たのだから、タイミング悪いことこの上なかったが、まだ6話という時点で簡単に再会しては感動が薄いだろうし、この時点で半平がブラックホースに光明寺博士がマンションにいることを吐かされていたから逃げたこと自体はあながち間違いとは言えない。

 光明寺姉弟が半平のマンションに来たのも、脱走追跡班に追われる半平を目撃し、ジローに事務所行きを促されたからで、ジロー自身は追われている半平を助けんと駆け付けたので、半平から光明寺博士の居場所を聞き出したブラックホースと鉢合わすこととなった。
 キカイダーがブラックホース達を迎撃している隙を突いて光明寺博士を助けんとして事務所に戻ろうとする半平。脅しに屈して光明寺博士の居場所をあっさり白状した割には責任感が強い(笑)。
 勿論ブラックホースはこれを逃がすまいとするのだが、アンドロイドマン達では時間稼ぎにもならず、半平をブラックホースが追い、そのブラックホースをキカイダーが追うという間抜けなチェイスが展開されたが、結局はキカイダーがブラックホースに追い付き、半平は脱出に成功。一同は半平の事務所に会し、情報交換が行われたのだった。

 この時点でようやくジロー達は光明寺博士が記憶喪失症に苦しみながら、ダークに追われて逃げていること、身体的には無事であることが確認出来た。
 同時に博士が依頼料代わりにした指輪が、亡き妻、つまりは姉弟の母の形見であることが判明。さすがにそう聞いては守銭奴の半平もこれを受け取るを良しとはせず、渋々指輪を返却した。
 だが、1度了承した手前か、ミツ子の気を引くためか、知人の身内と知ったためか、無料で依頼を続行することを宣言する半平。なかなか単純には図れない男である(笑)。

 その頃、ダーク基地ではブラックホースプロフェッサー・ギルに状況の経過を報告していた。コンピューターに光明寺博士の家族に関するデータを出すよう命じると、コンピューターは8月19日という日付を示した。
 後で分かることだが、その日はマサルの誕生日で、プロフェッサー・ギルはこれを使えると判断し、ブラックホースに冒頭に出たダークの観光バスを仕立てるよう命じ、一方で光明寺邸にはマサルの誕生日を祝う偽手紙を送りつけた。
 勿論手紙の内容は罠で、2人に会いたいが、ダークの眼が光っていることを懸念し、同封の切符で誰にも知らせず自分の元に来るよう伝えるものだった。
 「誰にも」とは勿論ジローも含まれるのだが、手紙がジローも一緒に読むかもしれないことを考慮しなかったのだろうか、ダークは(笑)。ともあれ、ミツ子はジローに知らせるべきとしたが、マサルは誕生日への言及から父が記憶喪失でないと喜んだためか、父の指示を守るべきとし、出発時間との間がないことから2人はそのままバスに乗り込んだ。
 考える暇を与えずに罠に嵌めるのは現実の振り込め詐欺でもよく見られる手である。即決を迫る偽身内には現実でも注意しましょう。

 ともあれ、バスに乗り込んだ光明寺姉弟だったが、そのバスにはジローの指示を受けた半平が女装して同乗しており(オエェ…)、更にはジローが尾行した。こっそり2人を連れ出すつもりだったが、ジローが尾行しているのに気付いたプロフェッサー・ギルは、邪魔はさせんとばかりにいつもの笛を鳴らした。
 苦痛に悶えながら、「しまった……尾行に感付いていたのか……。」と呟くジロー……………サイドカーなんかで尾行していたらチョンバレに決まっとるやんけ!!!
 苦しみながらも何とかサイドマシーンを駆ってミツ子・マサルを助けんとしたジローだが、ここにトラックに乗ったアンドロイドマン達がチャンスとばかりに襲い掛かった。だが、これは結果的に余計な手出しだった。言及はなかったが、トラックの爆音がプロフェッサー・ギルの笛の音を遮断した様で、ジローはキカイダーに変身するとトラックに撥ね殺されたと見せ、その底にしがみつくことで尾行を続行した。どうやら、アンドロイドマン達の辞書に「死体を確認する」という文言は無いらしい(苦笑)

 ともあれ、バスは冒頭同様ガソリンスタンドから地下に潜り込んだが、これは同時にキカイダーと半平の潜入も許した。
 行き先の牧場はブラックホース曰く、ダークのアンドロイド実験場兼死刑場とのことで、巨大な蹄鉄状の柱にはミツ子とマサルが縛られていた。勿論、ブラックホースは2人の命をたてにキカイダーに抵抗の中止を命じた訳だが、その頃には倒れたアンドロイドマンに扮した半平が2人の救出に向かっていた。

 その間、キカイダーはブラックホースの要求に応じて抵抗を中止しており、ブラックホースは「たっぷり今までの仕返しをしてやれ!」と命じ、アンドロイドマン達はキカイダーを殺さずに袋叩きにかかった。勿論この無駄な動きは半平に光明寺姉弟救出の時間を与えることになった訳で、悪の組織必敗パターンやね(笑)。

 「途中、ブラックホースに見つかり、締め上げられるも忍術を駆使して免れ、「縄抜けの術」で姉弟の救出に成功した。
 ちなみにこの「縄抜けの術」だが、普通名前だけ見ると自らが縛られた際にその戒めから抜け出る術と断じられるのだが、半平が施したのは姉弟の戒めを解くもので、指一本触れずに印を結んだだけで縄を解くという、摩訶不思議なものだった(勿論実在する忍術はすべて種があり、決して超能力ではない)。

 ともあれ、話は一気に最終局面へ。
 キカイダーとブラックホースの一騎打ちと相成った訳だが、馬のアンドロイドロボットらしく脚力に優れていたブラックホースも接近戦ではそれが活きず、どちらかと言えば、体格に比してデカい頭の為に明らかにバランスの悪いアクションに苦しんでいた(笑)
 ただ、タフネスには優れていたようで、大車輪投げダブル・チョップを食らっても戦意は失わず、巨大蹄鉄を用いて突進せんとしたが、最期はデンジ・エンドに倒れた。

 無事に危地を脱した光明寺姉弟はジローの後を追い、それに対して割増料金を求めて走る半平…………今回本当に色々な面を見せてくれたものである、コイツは。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日