人造人間キカイダー全話解説

第7話 怪物ブルスコングが大暴れ

監督:北村秀敏
脚本:伊上勝
ブルスコング登場
 冒頭、山中にて少年少女がキャンプファイヤーに興じていた。
 10名に満たない野外活動団体の様で、途中強風が吹いたのを感じた引率の女性教諭(木村有里)は少年少女達に風に気を付けて就寝するよう促した。
 直後、強風に乗って何かが迫りくる音まで響き出し、不安を覚えた女性教諭はランタンを手に林の中を調べんとして、ダーク破壊ロボット・ブルスコングに遭遇した。
 それにしても、このブルスコング………はっきり言って、カッコ悪い(苦笑)。頭がデカ過ぎて4頭身というスタイルもそうだが、デカい眼と口内を埋め尽くす牙の造詣は「特撮」というより「漫画」に近く、迫力は全くなかった………否、こんな漫画みたいな奴が等身大で眼前に現れると通常の怪物とは異なる迫力があるというべきか(笑)。
 ともあれ、このブルスコングも他のダーク破壊ロボット同様、無駄なお喋りが多く、聞かれもしないのにキャンプに訪れた教諭と生徒達を性能テストの対象として殺害する旨を宣言した。テストならテストで余計なことを言わず、さっさと実践に移ればいいのだが、その辺り、TV番組と言う見世物ゆえ、不自然な説明が伴うのが分かっていても、苦笑してしまうシルバータイタンだった。

 勿論、自分のみならず生徒をも殺害すると云われて「はい、そうですか。」とはいかない。女性教諭はブルスコングの前に立ちはだかりながらも、まだキャンプファイヤーの周囲にいた生徒達に逃走を促し、哀れにもブルスコングの放つ触手に捕らえられた。

 その後の展開が不鮮明なまま場面は替わって渋谷駅前。
 ハチ公像の側で、1人の男性(長沢大)と少年(佐久田修)がビラ配りをしていた。その活動はダークの存在とその壊滅を訴えるもので、少年は「ぼくの母はダークのために殺された!」と大書したプラカードを掲げ、ビラを配る父親とともに道行く人々に協力を呼び掛けていた。
 だが、道行く人々の反応は冷淡だった。関心を抱く者もいなければ、さりとて嘲笑する者もなく、余りの反応のなさに父子は諦めずとも、今日のところは引き揚げようとした。
 父子が去った直後、1人の人物がビラを拾い上げた。その人物は光明寺博士で、ビラにかかれた「ダーク」の名に引っかかりを覚え、記憶を取り戻す手掛かりになるかも知れないと考え、父子の後を追うことにした。

 場面は替わって父子の邸宅。居間にある遺影から父子が訴えていた、ダークに殺された女性が冒頭の女性教諭であることが明らかにされた。夫の独り言によると女性教諭はブルスコングから生徒達を庇って殺されたとのことで、夫は妻を誇りに想うことと、仇討ちの意を口にしていたが、そうなるとツッコミどころが満載となる(笑)
 女性教諭は自らの身を犠牲にして生徒達をブルスコングから守ったのだから、教諭の鏡である訳だが、ブルスコング自身はキャンプに来ていた一同を殺害することをテスト要件としていた訳だから、女性教諭しか殺せなかった時点で性能テストは大失敗と言える(笑)
 また、深読みになるが、義務感とはいえ、自分達を庇って殉職した女性教諭の無念を晴らさんとする父子の活動に生徒達が協力している様子が見えないのも不可解だ。まあ、人1人が殺された訳だから、生徒の親や、教諭の夫が安全重視で協力を断ったとは考えられるのだが、「ダーク」の名前が出ていることから、夫が生き残った生徒達から妻の殺害状況を聞いた訳だから、明らかな殺人事件に警察が動いていないのも不可解だ。
 まあ、昭和40年代の特撮番組に、警察の活躍を期待する方が間違いとの見方もあるだろうから(苦笑)、ツッコミ考察はこれぐらいにしよう。

 そんな物思いに耽っていた夫だが、居間に奇妙なトランクが3つもあるのに気付き、訝しながらそれ等を開けると、中にはブルスコングが3分割して入れられていた。
 驚く男性にブルスコングは例によって視聴者への説明を担う余計なお喋りを始めた。曰く、女性教諭を殺したのは自分で、ダークの名を知る者はすべて抹殺する為に夫達も殺すと宣言したのだ。ん?ダークの名を知るものを殺すなら、キャンプ場で逃した生徒達が先で、そもそも殺害時に自分で、ダークを名乗るから第三者にダークの名前が広まったんだろう?やっぱり、コイツ、三流だな(嘲笑)
 ともあれ、妻‐みつえを殺した張本人の独白を受けて色めき立つ夫だったが、そこはそこ、痩せても枯れてもダーク破壊ロボットに一般ピープルが抗し得る筈もなく、夫は床に叩き付けられて惨殺された。眼前の目的を達したブルスコングは体を6分割させ、トランクに収まると、アンドロイドマン達が室内に入って来て、これを回収した(普通に出て行った方が時間効率も良かったと思うが………)。

 まんの悪いことに、その直後、光明寺博士が夫を訪ねて来てその死体に気付き、そのまた直後に息子が部屋に入って来たものだから、第2話とは異なる形で光明寺博士は人殺しの濡れ衣を被せられてしまった(←ダークにしては期せずして起きた嬉しい誤算)。
 光明寺博士が夫−稲葉徹夫の殺害で逮捕された事件はニュースでも流され、部下からの報告でそれを知ったプロフェッサー・ギルは驚いたが、服部半平も同じニュースでそれを知って驚いていた(この報道で光明寺博士が記憶喪失であることが関係者に明らかとなった)。
 勿論警察では光明寺博士の身元は掴みかねており、報道は手掛かりを知る人は警察へ知らせるよう呼び掛けていたが、半平は警察とミツ子のどちらに知らせるかを迷っていた。
 探偵としての使命感と、一般市民としての義務を秤にかけているのかと思えば、案の定、どちらが金になるかでの迷いだった(苦笑)。

 その頃、警察では光明寺博士への取り調べが続いていたが、記憶のない光明寺博士は自分の身元すら述べられず、事件に対しても「殺していない。」の一点張りで、警察官も「吐けっ!」の一点張りで、不毛な時間が流れていた。
 その折、ふと取調官が気付いたら、室内に例の3つのトランクが置かれていた。訝しがる警官達だったが、勿論中身はブルスコングで、光明寺博士を再度ダークに拉致すべく潜入したもので、哀れにも4人の警察官が犠牲となった。見てくれは悪くても為した被害はデカいな、ブルスコングめ………。

 光明寺博士を連れて庁舎外に出たブルスコングは待機させていた車内に光明寺博士を放り込んで発車を命じたが、運転席にいたアンドロイドマンはそのまま倒れ込んだ。直後、ギターの音が鳴ったことで誰の仕業であるかが一目瞭然になったのは言うまでもない(笑)。
 「光明寺博士を残して、大人しく消えろ!」と吠えるジロー。やはりかかる状況では敵を倒すより、生みの親の救出・保護が最優先となる。
 勿論、そんなことぐらいでブルスコングが大人しく撤収する筈もなく、戦意を漲らせるブルスコングに対峙せんとしてジローも高所から飛び降りた訳だが、人が飛び降りる代わりに落とされた人形の動きは投身自殺にしか見えなかった(苦笑)。
 ともあれ、両者は対峙した訳だが、ジローは変身もせずにブルスコングダブル・チョップを決めると車内にいた光明寺博士を連れ出してその場を離れた。
 肝心の光明寺博士は半放心状態で連れられるままにジローに同行していたが、その途中を稲葉の息子に目撃され、一撃を食らったブルスコングに先回りされ、更にはプロフェッサー・ギルの悪魔の笛にジローが悶絶させられる等して、次々と障害が立ちはだかった。
 だが、要らんことしいのブルスコングはここでも棘ミサイル(←首輪に生えている棘を飛ばした物)を放ったために爆発音で笛の音は断たれ、ジローはキカイダーに変身した。

 かくして2度目の対峙となったが、この戦いでブルスコングは造詣の単純さに似合わない多彩さ(笑)を見せた。
 格闘戦では明らかにキカイダーに劣り、ダブル・チョップ大車輪投げの連続攻撃を食らっていたが、大車輪投げに対して受け身を取って両足で着地することでダメージを防ぐと、口からはガス―効能は不明―を吐き、更には尋常ならざる吸引力でキカイダーを吸い込まんとした。
 この吸引力にはキカイダーと戦っていたアンドロイドマン達も巻き添えを食っていたが、テメーで吸っておいて、「邪魔だ!」とアンドロイドマンを殴りつけていたのだから、やっぱり技は多彩でもブルスコングは三流と言えた(笑)。

 だが、勝負は妙な形で水入りとなった。
 状況に狼狽した光明寺博士がとにかく逃げなくては、と考えてその場を離れた。勿論、キカイダーもブルスコングもそれを阻止せんとしたが、そこに光明寺博士を親の仇と思い込んでいる少年がこれを追わんとして割って入ったものだから、ブルスコングの砲撃が少年を襲い、それを庇ったキカイダーは右肩を負傷し、その場を離脱せざるを得なかった。

 Bパートに入ると、場面は服部探偵事務所に移っていた。
 状況から光明寺博士を親の仇と思い込む少年だったが、決して分からず屋ではなく、自分を庇って負傷したジローのことは心底心配し通しで、自分を責め続けていた。
 服部探偵事務所には半平だけはなく、ミツ子とマサルもいて早速ジローの介抱にかかった。だが、ジローの負傷は深刻だった。ダーク基地内における科学者達の解説によると、キカイダーの右肩の付け根には複雑な電子回路があり、ミサイルを食らうことで配線が何本も切れることで右腕は全く機能しなくなるとのことで、ミツ子も同様に分析していた。
 これを治すには、アスカ湖畔にあるダークのロボット修理工場を利用するしかない、と述べるミツ子だったが、これは普通に考えて危険な行為だった。だが、この話し合いは気が付いたジローに聞かれており、ジローはマサルが懸念した様に単身サイドマシーンを駆って外に出てしまっていた。

 見張りのアンドロイドマン達を蹴散らし、工場内に潜入したジロー。程なく、ミツ子もまたジローを修復せんとしてこれに続いて来た。ジローはジローでミツ子を巻き添えにしない為に単身潜入した訳だが、ミツ子はミツ子で、1人で修復手術はままならないとして追って来たものだった。
 設備の御蔭もあって手術は順調に進んだが、巡回のアンドロイドマン達によって警報装置が破壊されているのが見つかり、2人の潜入は程なく発覚した。最後の仕上げに電流され流せばジローは本復するところまで漕ぎ付けていたが、後一歩のところでブルスコング達が闖入し、ミツ子は取り押さえられ、手術の為に拘束されていたジローも身動き出来なかった。
 プロフェッサー・ギルはこの機を逃さず、ジローから良心回路を取外して再手術することで本来の目的を遂げんとしたが、ミツ子同様に修理工場に潜入していた半平が自棄糞で配電盤を破壊したことで手術台は火を吹き、何故かこれでジローの体に電流が流れ(笑)、ジローはキカイダーへの変身を遂げた。

 作戦失敗を悟ったプロフェッサー・ギルブルスコングに修理工場諸共キカイダーは爆破するよう下知したが、この手の爆破が成果を挙げる筈はなく(笑)、炎上する工場を前に高笑いした途端にギター音が鳴り響いた。
 ギターの鳴らし手を探すブルスコングが高所である崖上に目を転じるとそこには雄雄しく立つキカイダーがいたのだが、この間、ずっとギターの音は鳴り響いていた。誰が演奏していたんだろう?

 ともあれ、決戦となった。
 キカイダーとアンドロイドマン達の乱闘はいつものようにアンドロイドマン達が一方的に蹴散らされたのだが、アンドロイドマン達のアクションにはかなり多彩な殺陣が取り込まれ、スタントマン達の技量の高さが遺憾なく発揮されたものだった。
 残念ながら見た目の華麗さ=勝因とはならず、アンドロイドマン達は蹴散らされたが、ブルスコングはその間隙を縫ってキカイダーに鎖付きの首輪を投げつけてこれをぶん回して苦しめた。
 だが、ぶん回してばかりいて次の攻撃に移らなかったのが災いし(苦笑)、しばらくするとキカイダーは鎖を手刀で切断し、ブルスコングはもんどりうって倒れたところに3度目のダブル・チョップ、2度目の大車輪投げ、とどめのデンジ・エンドを食らい、更には崖下に投げ落とされて戦死した。
 タフネスに優れていたらしいブルスコングを討ち取る為に、キカイダーは過剰ともいえる攻撃を加えた訳だが、破壊された体内からは3つの歯車がこぼれ出ていた。何に使うものだったのかは勿論不明だ(苦笑)。

 そしてラストシーン。海に献花を流し、亡き両親に正義の為に戦うことを誓う少年(←一応、「史郎」という名前は設定されていたが、作中一度も出て来なかった)。それに同じ気持ちであることを告げるミツ子とサマルだったが、結局3人が同じ気持ちであることを確かめ合った後はジローがサイドマシーンで走り去りながらいつものナレーションが流されただけで、光明寺博士の行方は有耶無耶で、稲葉殺害の濡れ衣が晴れたかどうかも触れられないまま消化不良の第7話は終結した。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日