キカイダー01全話解説

第14話 怪談 ギルの亡霊が地獄で呪う

脚本:長坂秀佳
監督:永野靖忠
お岩フクロウ登場


 冒頭、舞台はシャドゥアジトで始まり、そこではハカイダーが手術台の様なものに拘束され、怪しげな機械に掛けられていた。彼の抗議の声を無視してシャドゥナイトが機械を発動させるとハカイダーは苦悶の声を上げた。
 シャドゥナイトは何をしようとしているのか?その疑問に答えてくれたのは大首領・ビッグシャドゥ。結論を先に書くと、アキラの機密を知るのが目的だった。

 前作では光明寺博士の脳が埋め込まれていたハカイダーだったが、今作ではダークの首領プロフェッサー・ギルの脳を組み込まれて甦った存在で、当然そこにはプロフェッサー・ギルの記憶が残っている訳で、ビッグシャドゥは組織の巨大電子頭脳の解析結果を受けて、それを探ることでアキラの機密を得るべく、シャドゥナイトプロフェッサー・ギルを呼ぶよう命じた。

 シャドゥナイトはシャドウマンに命じて、ハカイダーに記憶呼び戻しビームというご都合的なビーム(笑)を照射。するとハカイダーの姿に重なる様にプロフェッサー・ギル (安藤三男)の姿が現れた!
 これまで故人ゆえに名前が出るのみだったプロフェッサー・ギルが、リアルタイムで3ヶ月2週間振りにTV画面上に現れ、シャドゥナイトの質問に答え、これに手ストーリー的にも重要な事柄が次々と明らかになった。
 それによって明らかになったのは下記の通りである。

アキラの身元 プロフェッサー・ギルの実子
アキラの機密 世界最強人造人間ジャイアントデビルの設計図が背中に特殊インクで描き込まれている。
その他 ジャイアントデビルの設計図が描き込まれた少年がもう一人いる。

 プロフェッサー・ギルは世界最強巨大人造人間であるジャイアントデビルの能力をもってすれば世界征服も可能と自負していた。これにてアキラの身体に描き込まれた機密を得られれば最強兵器の開発が可能となると云う貴重な情報をシャドゥは入手したことになる。
 だが、同時に新たな秘密も浮上した。アキラ同様設計図を描き込まれた少年が何者で、どこに居るのか?特殊インクで書かれた設計図はどうすれば現れるのか?
 視聴者には、太陽光を浴びることで一時的に浮かび上がることは分かっていたが、シャドゥは知る由なく(部下から報告を受けていればハカイダーは知っていたかも)、設計図が何の設計図かも分かっていなかったことを思えば、重要機密に肉薄は出来たものの、肝心な部分が抜け落ちていると云ったところと云えようか。
 勿論シャドゥナイトは新たに生じた機密についてもプロフェッサー・ギルに訊問したのだが、彼は「そいつは云えんなぁ、シャドゥナイト!」と一喝して高笑いするとその姿は消え、ハカイダーの姿に戻った。

 記憶呼び戻しビームの力をもってしても相手が機密に口を割らないことを悔しがるシャドゥナイトだったが、こうなると記憶分析装置と云うより、交霊術装置だな(苦笑)
 ともあれシャドゥナイトはシャドゥのコンピューター・ブラックサタン(←やはり気になる名前だ(笑))でプロフェッサー・ギルのもう一人の子供を探すよう命じた。
 そしてブラックサタンは膨大な数の子供の写真からマユミ(斉藤浩子)なる少女が、年齢や骨相的に90%以上の確率でプロフェッサー・ギルの娘であると算定した。

 目標を定めるとシャドゥは即座に行動を開始した。下校途中で友達と別れたマユミをお岩フクロウが襲い掛かった。
 ただこのお岩フクロウ、どでかい頭の中身はかなり弱いようである。襲われ、母親に助けを求めるマユミに、彼女が呼ぶ母親は本当の母親ではない、と云い放つ……………いちいちツッコむのも馬鹿馬鹿しいが、マユミが父親に助けを求めたのなら、直後の「お前はギルと云う大悪人の娘なのだ!」という残酷な宣告も筋が通るが、差し当たって母親の素性は関係ない(苦笑)。
 更にお岩フクロウはマユミに父親から伝えられた機密を白状するよう強要したのだが、普通の小学生として生活しているマユミがダークの事も実の父の事も知らなかったのなら、アキラ同様記憶を失っている可能性が高く、ひたすら白状を強要するだけのかかる訊問は『北風と太陽』の北風にも劣る。

 お岩フクロウは髪が抜け落ち、容貌を醜くする毒ガスの噴出を仄めかして白状を迫るが、本当に事情を知らない(と思われる)マユミは答えようがなく、業を煮やしたお岩フクロウは毒ガスを噴出した(←容姿は変化せず)。
 気絶したマユミを拉致してアジトに引き揚げんとしたお岩フクロウ達だったが、そこにイチローが立ちはだかった……………脈絡なさ過ぎるだろう、おい!

 罪もない少女に対する暴虐は許さないとばかりに対峙するイチローに対してお岩フクロウ一行はあっさり撤収。マユミを自宅に連れていったイチローは人造人間としての解析能力からマユミに噴射されたのは只の催眠ガスで、すぐに目覚めるとしてマユミの母を安心させた。
 だが、直後に目を覚ましたマユミは先のお岩フクロウの言(容貌を醜化させるガスを浴びせるという恫喝や、自分の親が実の親ではないという宣告)に相当ショックを受けており、イチローに礼を述べるよう促す母親をも自室から追い出す有様だった。

 部屋を追い出された母親の言から、マユミが母親にとっても養女だったことが視聴者にも分かったのだが、そのことはマユミには伏せられていた様で、母親は誰がそれを伝えたのか訝しがっていた。
 直後、イチローは屋外の物音からを追跡。だがこれは陽動作戦で、追い付いた01が手刀打ちを食らわせるや、もんどり打って車外に叩き落されたのはお岩フクロウに変装したシャドゥマンだった。
 当然、マユミにはお岩フクロウの魔手が迫っていた。お岩フクロウはお岩さん状態になったマユミに変装し、その姿をマユミ自身と思い込ませることで彼女を恐怖に陥らせ、精神的に追い込んだ。
 そんな娘を落ち着かせる為でもあったのだろうけれど、母親は寝込んで自分の出自を問うマユミに、自分が本当の母親ではないことをカミングアウトした。ただ、母親は事故で亡くなったマユミの実の両親は立派な人で、プロフェッサー・ギルの様な悪人ではないと告げ、たとえお腹を痛めて産んでいなくてもマユミはたった一人の娘で、自分はたった一人の母親だと諭した。
 しかしショックの大きかったマユミは素直になれず、「実の親じゃないからそんなことを云う。」と決めつける始末。状況的に無理のない展開だが、どうも斉藤浩子さんの演じる子役には事件への衝撃から分からず屋と化す役が多い気がする(苦笑)。
 これに対して平手を放ち、それでもやさしく抱きしめる母親役の女優さんは名演だった(←令和の世なら臭い展開とされると思うが)が、母子の背後には再度お岩フクロウの魔手が迫っていた。

 Bパートに入ると、荒野に立っていたハカイダーが突如リヤカーを引く老女(星清子)を襲った。命ばかりはお助け的な弱者の定番命乞いをする老女に容赦なくハカイダーショットを放つハカイダーだが、老女が引くリヤカーに隠されていたのはアキラ。
 この段階でバレバレだが、老女はリエコの変装だった。そしてハカイダーが二人を襲ったのも、二人を抑えれば必ず01と戦えると踏んだからで、その予見通りイチローがダブルマシンで駆け付けた。
 殴り合いを展開する両雄だったが、そこにジローが割って入った。対峙する兄弟に「1対1では俺に勝てんと見たな?!」と息巻くハカイダーだったが、それに対してジローが反論したのは、「兄さんには助け行かなければならない人がいる。」というもので、イチローはそのジローの言に後事を託して戦線離脱し、リエコもジローの言に従ってアキラを連れて避難した。

 かくして久々にキカイダーVSハカイダーの一騎打ちが展開された。ハカイダーは互いに空中に飛び上がったところでメキシコ殺法コルバタの様な足技でキカイダーを投げ飛ばしたり、ハカイダーショットをキカイダーの腹部に命中させたり、と善戦したが、何故か銃撃すらキカイダーに然したるダメージを与えられず、久々の大車輪投げで投げ飛ばされると完全グロッキーに陥った。
だがそこにシャドゥナイトが現れた。ハカイダーの体たらくや、組織の命令を無視した独断専行を一頻り詰ったシャドゥナイトハカイダーにシャドゥの命令に従うこと、命令以外の勝手な行動を取らないこと、従わねば死あるのみ、とするとビッグシャドゥが直々の話し合いを求めていると告げてハカイダーをアジトに連れて戻った。
 直後、ビッグシャドゥの影を前にしても不遜な態度を取るハカイダーだったが、ビッグシャドゥが一喝するやハカイダーは激しい頭痛に襲われ、苦悶するハカイダービッグシャドゥの命令服従強要にタメ口で応じる程度にしか抵抗出来なかった。
 ちなみにハカイダーは前もってビッグシャドゥからキカイダー兄弟と戦うことを禁じられていたことがここで判明した。ビッグシャドゥプロフェッサー・ギルの記憶に呼び掛けても得られなかったアキラの機密をリエコに求め、アキラとリエコを捕らえてその機密を探る事だけがハカイダーに与えられた任務だった(となると前話で即座にアキラの体を調べんとしたハカイダーは、姿勢的には正しかったことになる)。

 直後、いくばくかの落ち着きを取り戻したマユミ母子にお岩フクロウが襲い掛かった。お岩さんスタイルや幻覚で散々母子を脅すお岩フクロウに脅えつつも何とかマユミを連れて屋外に飛び出した母子だったが、お岩フクロウの攻撃(と云うか嫌がらせ(苦笑))は執拗だった。
 お岩フクロウは屋外で母子が合流したリエコ・アキラ共々火炎でもって襲い、更にはシャドゥマン達も襲い掛かった。そんな中、リエコはアキラを、母はマユミを我が身に変えても守らんとする中、いつものトランペットが鳴り響いた。
 シャドゥマン達がいつもの様に何処だ、何処だと探すの無視するように即座にリエコ達の側近くに降り立ったイチロー(笑)は、体重の軽い女子供ばかりとはいえ、四人を同時に抱えて高所に跳ぶという離れ業で一同を一挙に助け出した。

 イチローはお岩さんにその正体がNo.71であると告げ、真の姿を見せるよう促し、お岩さんは「ばれちゃあ仕方ない」的にお岩フクロウの姿を現した(ちなみに名乗ったのはこの時が最初)。
 忽ち白兵戦が展開。そこにイチローも合流し、お岩フクロウは二人にフクロウ毒矢なる飛び道具を口から吐いて攻撃してきた。これを躱した兄弟は01・キカイダーにチェンジ。シャドゥマン相手にゼロワンカッターダブルチョップを繰り出す暴れ振りで忽ちお岩フクロウを孤立させた。
 さすがにこうなるとお岩フクロウには勝ち目はおろか、為す術がなかった。01はゼロワンカッターゼロワンドライバーを食らわせ、キカイダーが追い打ちに大車輪投げで投げ飛ばせば、とどめに01のブラストエンドを食らったお岩フクロウは秒殺に近い敗死を遂げた。

 戦いが終わり、遂にリエコはイチローとジローにアキラの機密を話した。内容は概ねビッグシャドゥ達がプロフェッサー・ギルの記憶から抽出したものと同じものだったが、ダークにてアキラの教育係を務めていたことをカミングアウトしたリエコの方がより深い情報を保持していた(ちなみにリエコはアキラがプロフェッサー・ギルのような人物に成長することを不憫に思って、一緒にダークを脱走していた)。
 アキラ同様にジャイアントデビルの設計図を描き込まれたプロフェッサー・ギルの子供(つまりアキラの兄弟)の事を、リエコは教育現場が異なるので知らないとしたが、それでも「アキラの2つ年上」、「名前はヒロシ」、「ミサオという教育係が付けられていた」といったことを述べた……………それって、かなり知っていることにならないか?(笑)

 勿論、かかる衝撃的内容はアキラに聞こえないよう、彼から距離を取って話されていた。そしてリエコはアキラの生い立ち・境遇以上にジャイアントデビルの存在に戦慄していた。彼女の言によると、ジャイアントデビルはダークの破壊ロボットが次々とキカイダーに撃破される中、焦りを感じたプロフェッサー・ギルが必死に設計したもので、その存在をリエコは「生まれてはいけない」、「地球を滅ぼす」と形容していた。
 そして話を終えた一同が離れ離れになるのを高所から見下ろしていたハカイダーは兄弟の仇である01を八つ裂きにせずにはおかない旨を宣言していた。要するにビッグシャドゥの停戦命令に従う気は無いのね(苦笑)。ま、その方がハカイダーらしくていいけど(笑)。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日