キカイダー01全話解説

第15話 爆発 ジャイアントデビルの秘密

脚本:島田真之
監督:永野靖忠
死神ロボット登場


 前話で得た情報を基に、何としても最強兵器ジャイアントデビルを手にせんと焦がれるビッグシャドゥは亡きプロフェッサー・ギルのもう一人の子供を探し、捕獲するようシャドゥナイトに厳命した。
 命を受けたシャドゥナイトが手掛かりとしたのはかつてプロフェッサー・ギルと友人関係にあったと云われる山形五郎博士(宇南山宏)。彼ならプロフェッサー・ギルの家族を知っていてもおかしくない、とシャドゥナイトは睨んでいた。
 しかも山形博士は物理学者としても超天才で、原子力以上のエネルギーを発見したと云う。プロフェッサー・ギルの家族のことを抜きにしても狙う価値は充分である。

 ビッグシャドゥは早速死神ロボットに山形博士の拉致を命じ、死神ロボットはコンピューター班に山形博士の現状を報告させた。コンピューター班は山形博士が別荘にいることを告げ、次いで家族について問われると一人娘・サチコ(遠藤薫)がいることを回答しようとした。
 だが、その直前、班員は潜んでいたハカイダーに殴り倒され、班員に成りすましたハカイダーは博士に家族はいない、と偽りの回答をすると。シャドゥの目的を横取りせんとほくそ笑むのだった。

 場面は替わって行川アイランドのとあるホテルのプールサイド。そこではシャドゥの面々がターゲットにしているサチコが寂しそうに佇んでいた。傍らにいた二人の女性の言からどうもサチコは長く父と離れているようだった。
 ところがサチコは少し離れた場所にいるアキラに気付くと笑顔になり、普段無表情の多いアキラも笑顔で返すや、彼女はアキラに一緒に遊ぼうと云ってその後を追った。  そしてその様子を見ていた女性の一人(須永かつ代)は「追うのよ。」と云い出す。果たしてこの二人の女性は一体?

 場面は替わって近くと思しき海岸。そこではイチローが銛で魚を捕らえてアキラの食事にせんとしていたのだが、毎度毎度こうやって食糧を調達しているとしたら大変だよな………。
 まあ、そんな背景的な推測はさておき、イチローがアキラの元に戻るとアキラがいない。そのアキラは海岸を駆けており、その後をサチコが、更に後を二人の女性が追っていたのだが、そこにバイクに乗ったハカイダーまで現れた。
 ハカイダーのターゲットは山形博士の娘であるサチコなのだが、そこにアキラまでいたのだから彼にとって千載一遇にして一挙両得の好機到来と云えた。勿論四人は即座に逃げ出し、ハカイダーはこれを追ったのだが、思わぬ邪魔が入った。

 邪魔者は一人の少年(石井聖孝)で、石を投げつけてハカイダーの追跡を妨害していた。情けないことに子供の投げる石に怯むハカイダーは少年に激怒し、それを追い始めた。
 勿論まともに戦えると思えず少年は停泊船の陰に逃げ隠れするのだが、ナレーションによりこの少年こそがアキラの兄で、ジャイアントデビルの秘密を握るヒロシだった。そしてヒロシもまたアキラ同様、ダーク首領の息子としての出自を知らず、弟であるヒロシの事も知らず、全くの偶然と義憤で怪しい者に追われているアキラ達を助けんとしものだった。
 結局、ハカイダーはヒロシを見失い、本来のターゲットであるアキラとサチコの前に立ちはだかった。

 つまるところ、ヒロシの援護射撃はささやかな時間稼ぎにしかならず、シャドゥマン達を率いたハカイダーは四人を取り押さえ、サチコを守らんとしていた女性がリエコの変装であることも見破った。
 ターゲットを一気に三人とも捕らえ、意気揚々と引き揚げんとしたハカイダーだったが、そこにイチローとジローが各々のマシンで駆け付けた。主としてハカイダーをイチローが、シャドゥマン達をジローが迎撃したのだが、それでもハカイダーは間隙を縫って四人の前に再度立ちはだかった。
 人造人間シリーズの戦闘員であるアンドロイドマン、アンドロボット、シャドゥマン達は決して強くは無いのだが、数に物を云わせての時間稼ぎという意味では、仮面ライダーシリーズや戦隊シリーズの戦闘員よりはいい仕事をしていると思うのはシルバータイタンだけだろうか?

 ただ、残念なことに戦闘能力としての雑魚振りは前掲のシリーズと変わらず(苦笑)、イチローもジローも忽ち眼前のシャドゥマン達を蹴散らしてハカイダーの前に立ちはだかった。
 さしものハカイダーもキカイダー兄弟を同時に前にしては敵わず、撤収するしかなかったのだが、二人がかりとはいえ、変身前の二人を相手に負けないで欲しかったな(嘆息)。
 ともあれ、何とかアキラ達をハカイダーの魔の手から救い出したイチローは改めてアキラの単独行動を戒めるのだが、アキラは最前自分を救ってくれた少年が気になって上の空。さすがに聞いているのか?と激昂しかけたイチローだったが、ここで肝要となったのは、ハカイダーが狙っていたのはアキラではなく、サチコだと云うことだった。

 直後のリエコの証言ですべてが繋がったのだが、リエコは偶然(恐らくはダーク関係だろう)知り合った山形博士からサチコを託されて、サチコを護衛すべく行川アイランドで働いていたとのことで、イチローとジローはここで山形博士の存在を知り、ハカイダーの目的を推測した。
 だが、ハカイダーやシャドゥが狙っている山形博士の現在所在地はリエコも知らなかった。ただ、すべての関係資料を焼却処分しようとしていることだけはリエコも知っており、恐らく山形博士は自身と家族の安全の為にダークに繋がる事物を抹消せんとしているのだろう。勿論、それこそはシャドゥ一味が狙っているそのものであろうことは想像に難くない。
 状況を把握したジローは、自分は山形博士を探すとして、イチローに(アキラやサチコを狙って)近辺に潜んでいるであろうハカイダーを追うことを、リエコにはアキラとサチコの保護を要請した。

 そして兄弟が各々の目的を果たすべく出撃せんとしたところ、突如アキラがもう逃げ回るのは嫌だという、意思表示らしい意思表示を初めて行った。
 ハカイダーやシャドゥから逃げたり隠れたりばかりする日々の中、当然アキラには友達が出来ることも無ければ、何かを学んだり習ったりすることも無かった。サチコと知り合ったことをきっかけに、せっかく知り合った友達と別れない為にも逃げ回りたくない、とした。
 無表情であることが多いから忘れがちだが、親兄弟や生い立ちの記憶がなく、イチローや偶に現れるリエコ・ジローしか接する者もおらず、訳の分からないまま次から次へと現れる悪の手先に追われ続けるアキラの境遇は確かに不憫である。
 そんなアキラが初めて示した想いに(シャドゥを壊滅させることで)必ず自分が平穏な日々をもたらすと宣するイチロー。それはいつ?と困ったちゃんな質問を繰り返すアキラが普段ならウザいのだが(苦笑)、ある意味ようやく少年らしさを見せたからまだ許せた気がした(苦笑)。

 結局具体的な約束はしようがなかったから、イチローは自分を信じるよう告げ、シャドゥへの怒りも新たに出撃した。そんなキカイダー兄弟を早々と襲撃してきたハカイダー。目的は山形博士の元へ行かせない為の迎撃なのだが、そのことをべらべらしゃべるハカイダーの迂闊さも「?」だったが、「別荘」の一言だけでイチロー達が博士の所在を掴んだのはもっと「?」だった。
 そんな有名な別荘なら潜伏場所にならんぞ、山形博士(苦笑)。まあ、シャドゥは冒頭の時点で別荘に潜む山形博士の所在を掴んでいたから直後に死神ロボット (ナンバーは死神らしく4(し)・2(に))襲撃を受けたのも無理はなかった。
 怪しい気配を感じた途端に猟銃を構える山形博士。死神ロボットロボットに新エネルギー開発やプロフェッサー・ギルの秘密を求められ、それに断固と抵抗の意を示したことからも、自分の研究やそれを求める存在が危険なものであるのを承知していたのだろう。
 だが破壊ロボット相手に猟銃一丁ではさすがに相手が悪かった。

 かくして当初兄弟が踏んだ様にイチローがハカイダー迎撃を、ジローが山形博士守護を担うこととなった。なかなか変身せずに白兵戦を展開していたイチロー。一方ジローは死神ロボットの魔手を逃れんとして戸外に出てシャドゥマン達に襲われていた山形博士の元にキカイダーにチェンジ済みの状態で現れた。
 キカイダーは忽ちシャドゥマン達を蹴散らし、死神ロボット相手にも回転アタック・マウントパンチで勝負を優勢に進めたが、死神ロボットを投げ飛ばした頃には既に山形博士は拉致された後だった(直後の状況から見てシャドゥナイトが攫ったと思われる)。
 シャドゥナイトは山形博士を電気椅子の拷問に掛けたが、博士は「ギルのこのことなど知らない。」とし、シャドゥへの協力も拒絶した。電気ショックで気絶した山形を見て、シャドゥナイトプロフェッサー・ギルの子については本当に知らないようだと推測し、もう一つの目的である新エネルギー開発に山形を協力させる為にもサチコを拉致してくるよう死神ロボットに命じたのだった。

 一方、イチローとジローだが、ジローは自分がいながら山形博士を攫われたことをイチローに詫びていた。それに対してイチローは自分の研究成果よりも危険性の方を重視して新エネルギーを処分する意志の持ち主である山形博士ならシャドゥの拷問にも耐えるだろうととしてジローを元気付け、そんな博士を服従させる為にもサチコが狙われるであろうと推定してサチコ達の元に戻らんとした。
 そこにハカイダーが迎撃して来たのだが、先程とは逆にジローが迎撃、イチローがサチコ救援に走った。案の定、死神ロボットがサチコ・アキラ・リエコを襲ったわけだが、三人は洞窟に身を隠しつつ逃げた。そんな三人に対して死神ロボットは山形博士を連れて来ていて、サチコが出て来なければ父親を殺すと恫喝した。
 父の身を盾にされて気が気でないサチコだったが、山形博士は出て来るなと叫び、リエコも飛び出そうとするサチコを取り押さえて洞窟の奥部へ逃げた。すると人質作戦をあっさり諦めた死神ロボットは(笑)砲撃による燻り出しでサチコを洞窟外へ誘き出さんとした。

 砲撃によると崩落と爆煙に三人が苦しみ、アキラに至ってはもう逃げ回る事も無いという死への諦観すら示す始末だったが、そこへ01がゼロワンドライバーを駆使して駆け付けた。
 三人の安全を確保した01はそのまま洞窟外へ飛び出し、シャドゥマンを蹴散らして山形博士を救い、死神ロボットに挑み掛かった。くどいが、ダークにもシャドゥにも「人質を使って交渉する。」という発想はあっても、「人質を盾に相手の抵抗力を奪う。」という発想が相変わらずない(苦笑)、。
 そしていざ一騎打ちとなると鈍重そうな見た目で強そうに見えない死神ロボットは見た目以上に弱かった。ほぼ一方的に01に殴られ、ゼロワンカッター2連発とブラストエンドを食らってあっさり戦死。キカイダーと対峙していたハカイダー死神ロボットの討ち死にを見届けるや、「明智君、また会おう!」的な捨て台詞を残して撤収した。

 戦いを終え、助けてくれたイチロー・ジローに厚く礼を述べる山形博士。せっかく友情を築いたのにまたも別れの時を迎え、不服を浮かべるアキラにイチローはいつか流浪の日々も終わると力説し、別れの前にしばしの遊び時間をアキラ達に与えた。
 思わぬ楽しい時間を得てボール遊びに興じるアキラとサチコだったが、その途中でこぼれたボールを追ったサチコが車道に飛び出して車に轢かれそうになった。
 幸い、済んでのところで一人の女性(松木聖)がサチコを抱き止めてくれたおかげで事なきを得たのだが、女性は何事も無かったの様にその場を去った。ただ、その傍らに投石で自分を助けてくれた少年がいることにアキラは気付いた。
 アキラの指摘を受け、思う所があったのか、リエコは女性に声を掛けたのだが、女性は無視して立ち去った。かくしてアキラとヒロシは互いに兄弟であることを知る由もなくまたも離れ離れとなったのだった。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日