キカイダー01全話解説

第16話 恐怖!ミイラ男のニトロ爆弾

脚本:押川国秋
監督:永野靖忠
シャドウミイラ、シャドウゴーレム登場


 冒頭の舞台はとあるテニスコート。そこにいたのはテニスに励む女性と前回出番のなかった(苦笑)百地頑太。本当にストーリーに絡まないね、この人(嘆息)。
 躍動する被写体を見つけたことを喜んでいるのか、女子テニスプレーヤーのパンチラを期待して鼻の下を伸ばしているのか、果てまたその両方か、頑太は前々回以上に上機嫌だった。一応撮影対象は「脚線美」なのだが、カメラを構えたアングルはスカートの中身を狙っているとしか思えないものだった(苦笑)。

 ともあれ、シャッターを切らんとした頑太だったが、突如女子選手は爆音を挙げて消えてしまった。呆然とする頑太の周囲に機械の残骸と思しきものが降り注いだ。
 これは古いシャドゥマンを使った新たなシャドゥロボットの実験だった。アジトにてモニタリングしていたハカイダーは画面に映った性能を見て、新たなシャドゥロボット−シャドゥミイラも大した戦力ではないとしていたが、シャドゥナイトはしばらく黙って見ているよう述べるだけだった。

 そのシャドゥミイラ、行動力は早い様で、アキラに化けてイチローに接近したが、ソフトボールを右手で投げたことからアキラではないことが露見した(アキラは左利き)。イチローがボールを投げ返したことでシャドゥミイラはその姿を現したのだが、はっきり云って、見てくれはダサダサである(苦笑)
 だがシャドゥナイトが期待しているだけあって、それなりに有能な様で、ゼロワンカットを食らって全身がバラバラになっても致命的なダメージを受けた様子もなく、一部体を浮き上がらせるとアキラとヒロシの秘密は間もなく掴むと豪語(←前話までシャドゥでは「アキラの兄弟」の存在は知っていても、名前までは分かってなかった)。そしてアキラ自身、まさに拉致られている処だった。

 猿轡を噛まされているため特撮番組における子役拘束時の定番台詞「放せ!放せ!」も叫べない(笑)アキラだったが、アキラを運ぶ車の前にはギターをかき鳴らすジローが立ちはだかった。
 すると運転手はシャドゥロボット・シャドゥゴーレムに変身した(どうでもいいが、昆虫っぽい見た目のシャドゥゴーレムよりもシャドゥミイラの方がゴーレムっぽい見た目をしている)。
 1対1の殴り合いは互角か、ややジローに分がある様だったが、シャドゥゴーレムは時折腹部から妙な音波を出し、いつの間にやらシャドゥミイラも加勢したため、ジローはキカイダーにチェンジして尚苦戦を強いられた。だが、程なく01も駆け付け、マンツーマンになると分が悪いと見たシャドゥミイラシャドゥゴーレムゼロワンドライバーを受けたことで撤収した。

 縛り上げられていたアキラを解放したイチローとジローだったが、アキラからリエコも危ないと聞かされたイチローはジローにアキラを託してその場を離れた。
 イチローはアキラを避難させるべくホテルに戻ろうと促したが、アキラはこれを拒否した。というのも、アキラの出生に関してはイチロー・ジロー・リエコの間ではアキラに聞こえないように話が交わされていたものの、アキラ自身自分の背中に時折設計図の様なものが浮かび上がり、それがために自分がシャドゥに狙われ続けていることを感付いていた。
 ただただ追われることのない平穏な日々を求めるアキラは上半身裸になるや地面に背中を擦り付けて背中の設計図を消そうとしたり、シャドゥの手の届かない遠方に自分を連れて行って欲しいとジローに懇願したりした。
 特撮番組を見慣れているとレギュラーの中に悪の組織に狙われる者がいることに視聴者としては慣れっこになってしまうが、この第16話におけるアキラを見れば「狙われ続ける」と云うことは心落ち着かず、恐怖を伴い、辛く耐え難い日々であることが再認識させられた。

 泣いて懇願するアキラを抱いてジローはアキラの願いを叶えるとしたが、それはアキラが懇願した通り「遠くに行く」と云うことではなかった。ジロー曰く、地球上にビッグシャドゥの手の及ばぬところはなく、シャドゥの魔手が及ばないようにするにはシャドゥそのものを滅ぼすしかなく、その旨をジローはアキラに約すのだった。
 まぁ、ダークを滅ぼした実績を思えば、それなりに説得力のある言葉ではあったが。

 さて、リエコの元向かったイチローだったが、フラミンゴショーを見ていたリエコはシャドゥミイラに攫われた後だった(ちなみにシャドゥミイラフラミンゴショーの途中でいきなり現れ、その姿・蛮行を何百人もの人に思い切り目撃されている(苦笑))。
 リエコは縛られた状態で吊るされ、アキラの兄弟について話すよう、鞭や棒での殴打による拷問を受けていた。ちなみに隅田和世さんの体を縛る縄の位置はかなり卑猥である(←道場主「卑猥はお前だ。」)

 勿論簡単に吐くリエコではない。
 業を煮やしたハカイダーはまずリエコが本当にアキラの兄弟の事を知らないかを確かめる為、再度プロフェッサー・ギルの亡霊を呼出し、リエコと対峙させることとした。何か前々話でハカイダーが妙な機械にかけて呼び出していたのが、スクリーン対話が出来ていたのもおかしければ、そんな便利な確認方法があるなら先にするべきだったとも云える。一応記憶を分析していた筈が今話では完全に交霊術である。ツッコミどころの多いシーンだ(笑)

 ともあれ、再度呼び出されたプロフェッサー・ギル(の霊魂?記憶?)はシャドゥナイトハカイダーの質問に答え、リエコを自分がヒロシに就けた者であることと、もう一人の息子アキラはミサオという女と日本のある場所にいることを証言した。
 だが前々話同様、プロフェッサー・ギルは肝心な証言を拒んだ。彼はシャドゥの狙いがヒロシとアキラの背中に隠された設計図であることを先刻承知で、この期に及んで渡すぐらいなら子供の背中に書いたりしないと一喝した。
 一連のやり取りでシャドゥナイトプロフェッサー・ギルのもう一人の息子が「ヒロシ」という名であることを知って驚いていたが、シャドゥミイラが知っていたヒロシの名をして驚いていたのも変なら、ギルの所業に対して「悪魔め!」と喚きながら装置相手にハカイダーショットを構えるハカイダーも大人げない上に、自分の事を棚に上げる台詞が笑えた。本当にツッコミどころ満載だな(笑)

 まあ機械を撃ったところで何も得るものはなく、機材を失うだけで、これはハカイダーよりは冷静なシャドゥナイトが止めた。シャドゥナイトギルの記憶に直接コンピューターの力を掛けることでヒロシとミサオの姿をスクリーン上に浮かび上がらせた。
 これに対してプロフェッサー・ギルは彼とは思えないほど狼狽し、自分を消してくれと懇願したり、二人の姿は見せても居場所は絶対に漏らさないと宣したりした。
 シャドゥナイトは二人の顔が分かったのならこっちの物とばかりに機械を停止させ、プロフェッサー・ギルの姿は冥界の闇に消えた。確かに顔が分かっただけでもかなりの前進である。
 そして否応なしに共にモニターを見ていたリエコは、ミサオが前話の終盤にて車に轢かれそうになったサチコを救ってくれた女性であることに気付いた(勿論口には出さなかったが)。

  一連の流れを見ていたビッグシャドゥは、プロフェッサー・ギル消滅直後にシャドゥナイトハカイダーに太平洋上を飛行中で、水爆実験を行わんとしているツガール帝国爆撃機の奪取を命じた。
 奪った水爆でもって東京を爆撃し、世界を混乱に陥れるのが目的だった。それに対してシャドゥナイトはせっかく人相をキャッチしたヒロシ・ミサオを死に至らしめるのではないか?として異を唱えんとしたが、ビッグシャドゥはまだ見ぬ最強ロボットに頼るより、東京壊滅による目的達成の道の方が早道ではないか、との考えを示して指令実践を命じた。

 早い話、考えられる限りの手を打とうとのことだろう。
 ビッグシャドゥの意を察したシャドゥナイトシャドゥゴーレムシャドゥミイラにアキラ・ヒロシの捕獲を命じ、ハカイダーは自分とシャドゥナイトで水爆奪取に向かう、と宣言した。

 これによってリエコはアキラ・ヒロシ捕獲後に機密を探るための重要な存在として再度シャドゥ基地内に監禁されることとなった。
 だが、リエコは連行される途中でシャドゥマン達が運ぶ強力な爆薬(ニトロ弾)に気付き、それを奪取したことでこれを武器にシャドゥゴーレムシャドゥミイラを脅して基地外に出た。
 頃合いを見てニトロ弾を手榴弾代わりに投げ付けては、シャドゥゴーレムシャドゥミイラ・シャドゥマン達を牽制し、逃走を続けていたリエコだったが、やがてそれも尽きた。とある海岸にて取り押さえられ、連行されんとしたリエコだったが、そこにイチローが駆けつけた。

 少し遅れてジローも駆け付け、二人はほとんど同時のチェンジを遂げると大立ち回りが始まった。さすがにこの兄弟を相手にしては分が悪いと見たか、シャドゥゴーレムは体をバラバラにされた後に、シャドゥミイラはそのまま逃走し、2人の命も長くないとの捨て台詞を吐いて姿を消した。
 イチローとジローはリエコからシャドゥが取り組んでいる2つの目的を知り、イチローはジローに水爆攻撃阻止を命じ、自分はヒロシとミサオの元に向かうとした。

 その頃、ツガール帝国の戦闘機はハカイダーにジャックされており、ハカイダーはハカイダーショットを突き付けて東京上空にて水爆投下を強要していた。この脅しに対して嘘か誠かパイロットは投下機が作動しない、と告げ、業を煮やしたハカイダーは直に爆弾を落とさんとしたが、ハッチを開くやキカイダーが乱入してきて、ハカイダーシャドゥナイトと対峙した。
 一方、まだ見ぬヒロシ・ミサオを助けんとしてホテルに向けてダブルマシンを飛ばすイチローにはシャドゥゴーレムシャドゥミイラが立ちはだかり、二者二様の戦いが展開された。

 キカイダー兄弟は1対2のハンディキャップマッチに苦戦しつつも、それなりに優勢に戦いを勧めた。殊に幹部級の大物を2体同時に相手にしたキカイダーは倒せこそしなかったもののハカイダーシャドゥナイトを機外に叩き落して東京に水爆が投下されるのを阻止し、01もハンディキャップマッチを物ともせずシャドゥゴーレムブラストエンドで破壊した。
 問題はダメージを受けてもバラバラになって行動を停止しないシャドゥミイラであった。だがシャドゥミイラは攻撃能力に優れていない様で、殴り合いは01優位に展開し、ゼロワンカッターゼロワンドライバーブラストエンドの3点セットを食らっては戦死する他なかった。

 かくしてここに勝利を収め、イチローはホテルに駆け付けたが、一足先に駆け付けてアキラを保護したリエコからホテルにはもうヒロシもミサオもいないことが告げられた。
 そして戦闘機から叩き落されながらも命を永らえたハカイダーシャドゥナイトは2人してリベンジを誓うという些か変わった終わり方で第16話は終結したのだった。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日