キカイダー01全話解説
第19話 キングインデアン必殺の呪文!!
脚本:今村文人
監督:畠山豊彦
キングインデアン登場
冒頭、荒野を走るトラックの荷台に7,8人の人間が揺られてながら山本リンダの「狙いうち」で盛り上がっていた。
中にいたのは百地頑太、ミサオ、ヒロシ、何故かウェスタンスタイルの若い男、他普通の格好をした男女で、一行が何を目的に、何処に行こうとしてトラックに揺られているのか皆目分からなかったが、程なく一行はインデアン(はやみ竜次)の襲撃を受けた。
ここで少し話は逸れるが、「インディアン」とは、欧州人が新大陸と見做した北米大陸の先住民をインド人と思い込んで呼んだ呼び方なので、昭和の後期には不適切とされ、現在では「ネイティブ・アメリカン」又は「アメリカ・インディアン」と呼ばれる(意味合いから云えば前者の方が適切と思われる)。
この様な呼び方の変遷も、昭和の特撮番組を地上波で再放送し辛くしていると思われるが、ともあれ、本作では作品を尊重して、「インデアン」と表記させて頂くことを御了承下さい。
馬に乗り、弓矢を得物とするインデアンは忽ち同乗者を射殺し、二挺の拳銃で抵抗する保安官もどき(←何故か本物を持っていた)の銃撃を物ともせず、逆に彼を射殺した。
次々と人が殺されるのを見て、「もう駄目だ…。」と弱音を吐く頑太だったが、何故かそこでインデアンは追撃を中止。だが、妙な呪文を唱えるとトラックは爆破・炎上したのだった………。
ヒロシ、ミサオ、頑太の安否が、配役的に死なないことが分かっていても(笑)、懸念される展開だが、場面はシャドゥアジトにシフトし、そこではシャドゥナイトが一連の流れを満足そうに笑い、ビッグシャドゥもそのインデアン−名はキングインデアン−を「新しいシャドゥのエース」、「すべての科学を超越する強力なテレパシーの持ち主」として、キカイダー01の破壊を命じ、シャドゥナイトにもキングインデアンに「死の谷の祈りの儀式」なるものを受けさせるよう命じた(ちなみにその場にはハカイダーもいたが、最後にチョット顔を出しただけで台詞も無かった)。
儀式は、祭壇の様なものに横たえた女性を生贄にするものかと思いきや、実際に生贄にしたのは三宝に載せた鯖で(笑)、凄まじい形相で藁の様なものを咥えつつ鯖の血を女性の体に塗りたくると云う‥‥‥……まあ、「人心を惑わす」系ですな(苦笑)。
恐らくシャーマニズム的な、戦闘能力かテレパシー向上を目的とするものと思われるが、気合を発することで立ち合いのシャドゥマン達を爆破していたのが、「なんだかなー。」としか云いようがなかった(苦笑)。
ともあれ、儀式を終えたキングインデアンはビッグシャドゥの檄を受けてシャドゥナイトとともに出撃したのだが、それを苦々しく見ていたのが蚊帳の外に置かれていたハカイダー。よく分からない新参者に01退治を任せてなるものかとばかりに、密かに01打倒の為にパワーアップを図った。
その方法は、自らの頭脳の元の主であるプロフェッサー・ギルの死霊を呼出し、パワーアップして貰うと云うもの。
前2回の呼出しと比しても完全な交霊術と化していたのだが、ハカイダーは妙な機械に自らを掛け、召喚されたプロフェッサー・ギルの死霊はハカイダーを「我が愛しのハカイダー」と呼び、彼の願いは自分の願いで、彼の恥は自分への恥辱でもあるとして全面協力の意を示した。
ギルはいずこからかユニットの様なものを取り出してハカイダーの体内に内蔵するとハカイダーのパワーは3倍になるとした。そんな便利なものが最初からあるのに死霊を呼出して初めて出てくる展開、謎過ぎ(苦笑)。
ともあれ、物凄く安直なパワーアップを遂げたハカイダー (笑)だったが、その彼が次に行ったことは頑太を拷問に掛けると云うものだった。
最前、キングインデアンの念力の様なものでトラックごと爆破されたようにしか見えなかった頑太がどのようにして無傷で助かったのかも謎だが、その頑太を縛り吊るして殴りつけるハカイダーも謎だった(苦笑)。
ともあれ、山小屋の前を通り掛かり、頑太の悲鳴を聞き付けたイチローはハカイダーの暴虐を「相変わらずの弱い者いじめ」と称し、呆れながらも両者は格闘に入った。
しばしの格闘において、然程強くなったように見えなかったハカイダーだったが、一瞬の隙を突いて屋外に出ると四方から鉄格子が山小屋を覆い、イチロー・ヒロシ・頑太は監禁状態となった。
ハカイダーは01に出て来て勝負しろと挑発するも、イチローは鉄格子を破壊出来ず、これを破壊するハカイダーにパワーアップを感じて驚愕………って、何のために閉じ込めたのやら(苦笑)。どうも戦闘能力はアップしても頭脳がアップしたとは認め難いな。
ただ、改めて展開された一騎打ちではハカイダーは確実にパワーアップした能力を見せ、アクロバティックな動きから繰り出す拳や蹴りが時折01の体を捕らえ、空を切った拳も背後の岩石を破壊した。
その様子を遠巻きに見ていたシャドゥナイトも「いつ新しい技を…。」と驚きつつ、相変わらずの独断専行を忌々しく思っていた。その横で一緒に観戦していたキングインデアンは自分が01を倒すとしたが、直後にその場を去ろうとした。
どこに行くのか?と問うシャドゥナイトにキングインデアンが答えたのは、今が自分の出る時間ではなく、日没後が自分の出番とするものだった。
Bパートに入ると何の脈絡もなく現れたキカイダーが加勢し、しばし善戦したハカイダーだったが、1対2の不利を感じたものか、勝負を預けるとして戦線離脱した。
加勢前にヒロシとミサオを無事保護していたジローは、すぐ二人を連れて来るとしてその場を去ったのだが、それと入れ替わりにトラックに乗ってリエコが現れた。どうやらアキラの身を案じて駆け付けた様だったが、イチローからアキラは無事で、ヒロシとミサオもジローが連れて来ると聞かされたリエコは珍しく満面の笑みを浮かべたのだった。
だが兄弟再会は先送りされた。
ジローを(と云うより他人を)信用出来ないミサオはその場を動くなと云われていたにもかかわらず、従わずにヒロシと共に放浪に出ていた。まあ、ダークにいた経緯を思えば人間不信も無理ないか。
当然ジローは二人を探して、イチローの元に戻れずにいたのだが、先の山小屋でリエコ・アキラ・頑太と共に食事を採っていたところをキングインデアンが襲撃して来た。
矢を射込まれながら、その矢に弾き飛ばされた頑太の大ボケ振りも何だかだが、気づけば山小屋はキングインデアン配下のインデアン達に包囲されていた。
キャンプファイヤーの周囲を踊り回りながら雄叫びを上げるインデアン達の姿は、普通に見るなら「戦い前の踊り」で、悪意的に見ればやはり「人心を惑わす行為」だった(苦笑)。ともあれ、意を決したキングインデアンは部下達に次々と火矢を放たせ、燻されたイチローが脱出口を求めて屋外を伺うと直接襲撃に出た。
まあ、頑太を絞め上げるも、リエコのフライパン殴打一撃で気絶するインデアン相手にイチローが遅れをとる筈も無かったが、トマホークを振るい、次々と襲い来るから厄介だった。
夜明け頃にはいったん敵は撤収したが、その後も遠巻きに包囲し続け、水筒に見せかけて毒ムカデを放つなど、せこくも悪辣な襲撃を繰り返した。そして恐怖がピークに達したか、頑太はシーツを白旗替わりに敵意が無いことをアピールしたが、そのときにはインデアンによる直接襲撃第二弾が始まろうとしていた。
周章狼狽する頑太や、柱の陰で固唾を飲んで見守るリエコとアキラ、そしてそれなりに鍛え抜かれた肉体を駆使して次々と襲い来るインデアンとイチローの格闘がそれなりの臨場感を見せていたが、やっていたこと自体は先の殺陣と変わらず、やがてインデアン達を討ち果たしたイチローは屋外に出た。
そこではキングインデアンが馬に乗ってイチローに一騎打ちを呼び掛け、イチローもいつものトランペットの音色をBGMに高所に立った(トランペットはイチローが吹いていないにもかかわらず鳴っていた)。
一騎打ちの申し出に、敵に背は見せないとして応じるイチロー。
それをいい度胸として見届け人を申し出るシャドゥナイト。
槍を投げて決闘開始の意を示すキングインデアン………うーん、それまで何人ものインデアンが次々と襲撃したり、日没を戦闘開始の時間と述べていたのは何だったのだろうか? ともあれ、一騎打ちは展開され、開戦直後は馬上から繰り出されるトマホーク攻撃に劣勢気味だったイチローはダブルマシンに登場して間合いを取ると01にチェンジした。
チェンジした01に馬から降りて一騎打ちを続けたキングインデアンだったが、変身後の組打ちは01有利に展開し、それを見ていたシャドゥナイトは今がキングインデアンの最大の武器である死の谷の念力を発揮するときで、01の頭脳コンピューターを破壊せよと命じた。
その念力は勿体ぶっていただけあって強力な様で、キングインデアンが短剣を構えながら念力を発動すると忽ち01の体から白煙が上がり、01は試合開始から30分経過したウォーズマンと化した。
人間体とロボット体をだぶらせながら念力を発揮し続けるキングインデアン(←例によって人間体の方が余程カッコいい(苦笑))の前に悶絶するしかない01はそのままでは本当に敗れかねなかったが、そこに都合良過ぎるタイミングでキカイダーが乱入。
危ういところを救われた01はここまで追い込まれたことが余程悔しかったのか、無理しないよう促すキカイダーを制して反撃を開始し、シャドゥマン相手にゼロワンカットを駆使する程の戦意で、キングインデアンにもブラストエンドを放った。
あらゆる科学を凌駕する念力を持つキングインデアンも耐久力は特別優れていた訳ではない様で、この一撃に他のシャドゥロボット同様の末路を辿ったのだった。エースを名乗るなら、もっと打たれ強くないとね。
ともあれ、最期は呆気無かったキングインデアンだったが、シャドゥナイトは本当に期待していたらしく、残されたトマホークを拾い上げて悔しそうにしていた。直後、崖下を走り抜けるイチロー・ジローを見下ろすハカイダーに気付き、「追わぬのか?」と問うと、ハカイダーは不気味に笑ながら「じっくりとな。」と答えた。
直後、一人でイチローを見送っていたハカイダーはいつもの様に自分が01を倒す、と呟いていたのだが、それに加えて01の弱点を掴んでいるようなことや、01は倒せるのは一匹狼の自分だけとの見解も述べていた。
一匹狼と01打倒可能性にどういう関係が有るのだろう?ともかく、新たな展開を感じさせつつ、何かと整合性の付かない第19話は終結したのだが、前話まで散々脅威を醸し出していたジャイアントデビルに関する言及は全くなく、また本話をもって、百地頑太は理由なくこの番組を降板したのだった。
新たな展開も良いけど、それまでのストーリー展開や、設定も大切にしてね(泣)。
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最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日