キカイダー01全話解説

第20話 大狂乱 シャドウ首領の正体判明

脚本:長坂秀佳
監督:今村農夫也


 冒頭、夜道を「自然を守る会」と書かれたバッヂをつけた青年が歩いていた。その青年は、額に「H」のワッペンを貼られたかと思うと次の瞬間には哀れにもハカイダーに惨殺されてしまった(それも投げ飛ばされて、洋館塀の尖塔で串刺しにされるという酷い殺され方)。  犠牲者は青年で4人目で、ハカイダーの頭文字である「H」でもって01に自分の仕業であることをアピールして誘い出さんとしていた。
 それゆえ、犠牲者は複数人に及んだ訳だが、犠牲者の何人かはうら若き女性で、半脱ぎ状態にされて惨殺されていたから、「H」のワッペンが別の意味に見えてしまった(苦笑)
 数ある特撮番組にあって、『キカイダー01』はエロい描写が散見されるが、良いのかなぁ?(苦笑)。

 ともあれ、このハカイダーの蛮行に対して、この第20話から実体を表して配役も八名信夫氏に替わったビッグシャドゥは、殺しっぷりを「目覚ましい。」としつつも、殺害に伴うワッペンアピールを「もっての外。」として叱責した。
 というのも、一連の「自然を守る会」会員惨殺は、ビッグシャドゥの命によるものだったのだが、そこにキカイダー01が介入しては本末転倒だったからである。
会員惨殺は、シャドゥ最強最大の秘密基地・鬼岩城を建設するに当たって、最有力候補地である白鷺ヶ原にて自然保護活動をする会員達が邪魔な存在だったからであり、秘密基地建設を控えていることを鑑みればハカイダーのアピールはシャドゥにとって無駄どころか邪魔でしかないのは分かる。

 加えて、ビッグシャドゥは標的の面子についても言及した。既にハカイダーによる会員惨殺は9人に及んでいたが、ビッグシャドゥは彼等を「雑魚」としていて、いくら数を殺しても、守る会の会長である三田村由美子(宗方奈美)を活かしたままでは意味はないと斬り捨てた。
 この言を受けてハカイダーは即座に由美子を急襲した。彼女が何がしかの気配を感じた瞬間、突然彼女のブラウスが切り裂かれ、驚く間もなくスカートが切り裂かれ、額に例のワッペンを張られるときには訳の分からないまま片肌脱ぎの下着チラ見せしまくり状態で逃げ惑う彼女……ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ………じゃなくて、本当に子供番組でこんなシーン流していいのか?!?(笑)………後年『仮面ライダースーパー1』で草波ハルミ(田中由美子)のブラウスが切り裂かれたシーンが全然問題ない様に思えてしまう(苦笑)。

 ともあれ、直後にハカイダーが現れ、にじり寄って来たのだから、リアルに即して考えればエロ被害を抜きにしても物凄い恐怖だろう。
 彼女を取り押さえたハカイダーは悲鳴を駆け付けて駆け付けて来たリエコとアキラに対して彼女を始末したら次は二人を殺すとして彼女を投げ飛ばしたのだが、空中に飛ばされた次の瞬間、彼女の姿は忽然と消えた。

 よく分からん描写だったが、直後にトランペットが鳴り響き、イチローが助けたのは明白だった。イチローは由美子の保護を申し出たリエコに彼女を託し、ハカイダーとの一騎打ちとなった。
 前話でのパワーアップを意識したものか、両者の殺陣はそれなりの時間が割かれた。しばしイチローのまま戦ったが、01にチェンジ後も互角の戦いが続いた。つまり殴り合いは互角で、互いに小技を繰り出した直後は優位に立つのだが、決定的な一撃は与えられずにいた。  しばらくして、01がハカイダーを投げ飛ばしたことでハカイダーはややグロッキー気味になったのだが、そこにシャドゥナイトが乱入してハカイダーを連れ去ったことで勝負は水入りとなった。

 だが、敗走したかに見えたハカイダーはすぐに現れた。
 場所は由美子を保護して寝かしつけていた寝室で、彼女を見守っていたアキラの元にハカイダーは現れた(ちなみにリエコは薬を買いに行っていて留守)。彼女を殺しに来たのかと色めき立つアキラだったが、ハカイダーが口にしたのはアキラへの協力要請。
 勿論、敵の申し出など受けるものかと端から拒否的反応を示すアキラだったが、ハカイダーは自分の脳―アキラの実父であるプロフェッサー・ギルのものでもある―を駆使し、血筋が功を奏するかのような術でアキラを催眠状態に陥らせた。
 ハカイダーはアキラに、01を敵で親の仇と刷り込み、01がオイル交換する際に使用するカプセルを人造人間の機能を停止させて錆び付かせる薬品の入ったカプセルと掏り替えるよう暗示して姿を消した(描写は無かったが、このとき置手紙を残して由美子も拉致した)。

 アキラはリエコのハンドバッグの中に在ったカプセルをハカイダーに渡されたそれと交換。程なくリエコと共に戻って来たイチローは、「由美子が欲しくば高速X号線へ来い。 ハカイダー」と書かれた置手紙を見つけ、即座に指定場所に赴かんとした。
 そんなイチローにハカイダーとの対決に備えてオイル交換すべしと促すリエコ。つまるところハカイダーの読み通りに事が進んでいた訳だが、催眠状態のアキラがこの間無言無表情だったのには(元々アキラが感情を露わにしない方なので)全然不自然じゃなかったが、そのアキラに前後の事情を全く問わないイチローとリエコが激しく謎だった(苦笑)。

 ともあれ、由美子を裸足・パジャマ姿(嬉々)で縛り上げていたハカイダーは01がなかなか現れないことを訝しがっていたが、様子見にほんの少しその場を離れただけであっさり由美子を奪還されたのだから、戦闘能力が向上してもその他に期待が持てない(苦笑)。
 イチローは自動操縦にしたダブルマシンに由美子を安全な場所まで非難させるよう命令するとハカイダーの望み通り決闘に応じた。チェンジしないままやや優勢に格闘戦を展開していたハカイダーはやがてイチローにハカイダーショットを突き付けると、イチローは01にチェンジ出来ないと告げた。

 チェンジ出来ず狼狽えるイチローを殴りつけるハカイダーだったが、Bパートに入るとイチローはあっさり01にチェンジ。薬の効果を訝しがるハカイダーだったが、遠巻きに見ていたアキラが催眠術にかかっておらず、薬品も掏り替えていないことを告げてハカイダーに投げ付けた。
 そして01は催眠過程で(プロフェッサー・ギルが父であることを告げることで)アキラを傷つけたとしてハカイダーに強い怒りを示し、ハカイダーも逆ギレ的に戦意を示したが、突如地割れが起きるとそれに呑まれ、戦線離脱した。云うまでもなくこれはシャドゥの横槍で、01が駆けつけると地面は既に戻っていた。

 ともあれ戦いを終えた01はアキラの名を呼んだが、アキラは01を避ける様に最前ハカイダーにカプセルを投げ掛けた林の中に佇んでいた。自分がプロフェッサー・ギルという大悪人の子と知って静かながらも衝撃を受けていた。
 するとそこへ背後からアキラの名を呼ぶものがいた。声の主はヒロシで、画面上終に二人が対面を果たしたと思ったら、アキラはヒロシを「兄ちゃん」と呼び、自分達が大悪人の子であることを告げ、それに対してヒロシは「気にすんな。親は親、子は子だ。お前が強い男ならそんなものに負けねぇ筈だぜ。」と云って励まし………えっ?!いつの間に兄弟の名乗りを果たしていたの??!!
 話の展開を精査すると、前話(第19話)の時点ではまだ兄弟顔合わせは為されていなかった筈で、リエコとミサオの間で(或いはジローから)ある程度の話し合いがもたれていたとは思えなくなかったが、ミサオはイチロー・ジロー・リエコを完全には信用せず、一行の元を離れようとしていたから、そんなミサオがヒロシにアキラやプロフェッサー・ギルの事を話していたとは思えない………。
 アキラが自分の父の事を知ったのはハカイダーの催眠術の影響と取れるが(そう云えば、何故術から逃れ得たのか謎だったな……)、そうだとしても兄・ヒロシの事を知っていたのは謎だ。
 実際、イチロー・ジローがヒロシとミサオの存在をリエコから聞かされた第14話の時点では、アキラが自分の出自を知って傷つくことを恐れてアキラから距離を取ってその話をしていた。
 この兄弟が自分達の出自と血縁をすべて先刻承知のように話すシーン、過程を飛ばし過ぎにも程がある……………急展開が悪いとは云わないけど、要所要所の過程はちゃんと触れようね、制作陣の皆様方…………。

 ともあれ、年端も行かないながらも兄貴らしさを見せ、何時でも悪と戦う覚悟があるとしたヒロシはそれを証明するかのように岩にカモフラージュされたシャドゥ基地の入り口を開き、潜入する姿勢を見せた。
 その頃、イチローはジローと合流していたのだが、ジローは独自にこの辺りにシャドゥアジトへの秘密通路が数多くあることを突き止めており、二人は暗に行方不明のアキラが潜入している可能性を推測していた。
 直後、二人は草むらで眠りこけているミサオを発見。寝言の定番である「もう食べられません。」を呟くミサオに苦笑するジローは自分がヒロシとアキラを探すとしてイチローに由美子を守るよう促した。

 その頃、シャドゥのアジトではハカイダービッグシャドゥが口論していた。
 ハカイダーは01との勝負を邪魔されたことに憤懣やる方ない想いを露わにしていたのだが、それに対してビッグシャドゥは由美子抹殺しか命じられていない筈だったハカイダーの独断専行に対する怒りを示した。
 するとハカイダーは堰を切った様にそれまで抱いていた不満をぶちまけだした。ハカイダーにとって、自分を良いように利用し、01を倒したくても行動に散々制約を駆けてくるシャドゥに不満があったのは誰の目にも明らかだったが、首領であるビッグシャドゥが姿も見せずに命令だけしてくるのも気に食わない旨を口にし、終にはビッグシャドゥに対して、自分と戦えとまで云い出した。

 余程腹に据えかねていたのか、ハカイダーは自室に潜むビッグシャドゥの部屋に壁をぶち破って乱入。ついにその姿を見て戦意を燃やすハカイダーだったが、ビッグシャドゥはこれをからかうように頭部をリエコに、そしてドクロに変じて妙な光線を放った。
 その光線を全身に浴びたハカイダーは体にダメージを受けた様子は無かったが、光線の影響で何かを悟ったらしかった。だが、そんなハカイダーを尻目にビッグシャドゥは姿を消し、それと入れ替わる様に壁をぶち破って乱入して来たのはハカイダーだった!?!

 勢い、その正体を訝しがりつつも二人のハカイダーが格闘を始めた。ビッグシャドゥと入れ替わりに入って来たことからビッグシャドゥの差し金かと思いきや、他ならぬビッグシャドゥがその正体を誰何した。
 それを受けて偽のハカイダーが傍らの壁をぶち破るとそこに居たのは最前姿を消したビッグシャドゥで、終にそれを見つけたと述べる偽ハカイダーの声はジローのそれだった。
 ただ、ビッグシャドゥには声だけでは分からなかった様で、その正体を問い、装束を脱いでジローが姿を現すとそこにハカイダーも乱入して来た。
 悪の組織の首領と雇われ幹部に挟まれ、何気にピンチに陥ったかと思われたジローだが、それでも戦意を燃やし、両者を同時に相手にせんとの意欲を見せたが、この時点のハカイダービッグシャドゥに対して相当頭に来ていた様で、「貴様とは後でも戦える!だが!」と述べるやジローを突き飛ばして再度ビッグシャドゥに掴み掛った。

 だが、ハカイダービッグシャドゥに組み付いた途端小爆発が起こり、忽然と両者は姿を消した。悪態をついたジローは、この間ずっと物陰から様子を見ていたヒロシとアキラにもう大丈夫だから出てくるよう促した。
 バツが悪そうに出てきた兄弟に対して、ジローは叱る風でもなく、危ないことは自分達に任せておけばいいと諭してシャドゥアジトを後にした。

 場面は替わってシャドゥアジト別の一室。
 そこではハカイダーが拘束台の様なものに鎖で雁字搦めにされていた。悪態をつくハカイダービッグシャドゥはシャドゥマンに襲われる由美子とそれを守って戦うイチローの映像を見せ、ハカイダーに自分への忠節を尽くすかどうかを問うた。
 ビッグシャドゥが、返答次第では生かすか殺すか決めるとしていた対象が由美子なのかイチローなのかよく分からない問い方だったが、どうやらハカイダーは屈辱に塗れてでも自分の手で01を倒すことを受け入れたようで、自分に01を倒させて欲しいと懇願すると、次のシーンではもうバイクに乗って出撃していた。

 イチローは直後に駆け付けたジローに由美子の護衛を託すと自らはダブルマシンに搭乗してハカイダーを迎え撃った。
 ハカイダーが従来のイチローに対する殺意を露わにすれば、イチローもまた生きている限り人を殺し続けると見たハカイダーに対して「生かしておけん。」と宣い、両者は格闘に入った。
 この様子をアジトでほくそ笑みながらモニタリングしていたビッグシャドゥは「約束通り01殺しに手を貸しやるぞハカイダー。」と云って、ミサイルを搭載したブルドーザー3台を派してイチローを包囲攻撃した。
 この図体もどでかい相手をイチローは01にチェンジすると、ブラストエンドクラッシュ (←ブラストエンドの強化技と思われる)を駆使して撃沈し、由美子護衛をリエコに替わってもらったキカイダーも駆け付け、ハカイダーは1対2のハンディキャップマッチに挑んだ。

 だが、強化した能力もあってか、しばし互角の戦いを見せたハカイダーだった。しかしさすがに二人掛かりでは分が悪く、ツープラトンパンチで空中高く殴り上げられて爆発。炎上こそしなかったものの、白煙を上げつつ五体バラバラになった…………だが、最前の一騎打ち同様、地割れが起きてハカイダーの頭部のみがそこに呑まれたので、これをもってハカイダーが死んだと思った視聴者は皆無だったと思われる。

 案の定、ナレーションにてシャドゥの鬼岩城建設計画が潰えたことが述べられた直後にはシャドゥアジト内の妙なカプセルに置かれたハカイダーの首からビッグシャドゥによって全身が復元されていた。
 ビッグシャドゥは横たわったままのハカイダーにシャドゥの最高幹部となって自分に忠誠を尽くすよう命じた。起き上がってこれに応じたハカイダービッグシャドゥは重ねて、ハカイダーの身がシャドゥによって完全復元されたものであることを告げ、自分の右腕となって存分に働くことを命じる一方で、01を殺すことを許可するとも告げた。

 どうやら01殺しの許可と復元への恩義を基にした契約的な主従関係が成立した様で、ハカイダーもそれまでとは異なって敬語でビッグシャドゥに01を倒すことを誓い、かつて自分が部下に対して行わせていたナチス式の敬礼をビッグシャドゥに披露したのだった。



 全くの余談だが、この第20話で三田村由美子を演じた宗方奈美さん(放映当時29歳)をシルバータイタンが最も印象強く記憶に残している番組は『特捜最前線』の第194話での客演だった(放映当時37歳)。

 この時宗方さんが演じた役所は、やくざ組織のお局様的な立場で、組の起こした事件に厳しい裁定を下すと見込まれる判事(福田豊士)を陥れる為、過去に強姦されて妊娠・出産した悲惨な過去を持つ女性(左時恵)に「息子に出生の秘密をバラしていいのか?」と脅して、判事を誑し込んでスキャンダルに陥らせることを教唆すると云う悪辣極まりない役だった。
 この時の悪女振りが秀逸過ぎて、この第20話における三田村会長役と比較すると宗方さんの演技の幅広さに驚嘆する他ない。特撮番組では他に戦隊シリーズで数回客演しているが、もっと見てみたいものである。

 ちなみに『特捜最前線』で彼女が罠に嵌めんとした判事は桜井哲夫警部補(藤岡弘)の長兄だったため、特命捜査課挙げての徹底捜査の末、特命課を敵に回した組は壊滅的な痛手を被ったのだった(笑)。




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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日