キカイダー01全話解説
第22話 本日の特別授業は殺人訓練?!
脚本:島田真之
監督:今村農夫也
サソリストロング登場
冒頭、シャドゥ基地にてサソリストロング指導の下、ボーイスカウト風の子供達がサブタイトル通りに殺人訓練に勤しんでいた。
イチロー・ジロー型の、01・キカイダー型の的に短筒銃を撃つ少年達を披露し、これを自慢げに報告するサソリストロングをモニタリングしていたビッグシャドゥは、子供達が尖兵とあっては01の戦意は喪失すると見て、サソリストロングと彼を指導したハカイダーを褒め称えた。
ハカイダーは成果を当然の事としつつも、自分だから出来たと強調。あからさまな云い様に自分への当てつけを感じ取ったシャドゥナイトは云いたいことははっきり云え、とハカイダーに詰め寄った。
ハカイダーはその台詞を待っていたとばかりに、アジト内で踏ん反り返って命令しているだけのシャドゥナイトには出来ないことで、01と戦う勇気のない彼にシャドゥ幹部の資格が無く、辞めてしまえとまで云い放った。
更に、ハカイダーはシャドゥナイトを「命惜しさに01と戦おうとしない臆病者」と侮蔑。さすがにここまで侮蔑されてはシャドゥナイトも激昂せずにはいられず、元から抜いていた剣でハカイダーに斬り掛からんとしたが、それを止める様にアジト周辺の異常を知らせる報告が入った。
シャドゥナイトが監視カメラの映像を回させると、理科室前を怪しみながら子供達がうろついていた。
ビッグシャドゥの言によると、工事中の理科室に幽霊騒ぎの噂を流すことで人々を遠ざけた実験場とする狙いがあった様だが、幽霊騒ぎは明らかに人目を集めていたな(苦笑)。
ともあれ、ビッグシャドゥは目撃者を集めるのはまずいとして、シャドゥナイトにその対応を命じ、シャドゥナイトはそれをサソリストロングに命じた。ついさっき、自らが動かないことをハカイダーに揶揄されたのをもう忘れたのか?(苦笑)
命を受けたサソリストロングは人間体=理科の佐々木先生(梅津栄)の姿となり、幽霊騒ぎを暴くべく理科室に潜入せんとした子供達を止めに入った。佐々木(=サソリストロング)は一瞬子供達を叱りつけるかに見せ、次の瞬間には「勉強を教えて欲しくて残ったのだろう?」と温和な理解ある姿勢を見せることで巧みに子供達を懐柔した。
だが、彼の云った「勉強」とは天文学の講義に見せかけた誘因で、蠍座の説明をしながらサソリストロングの姿を現すや、シャドゥマン達に子供達を取り押さえさせた。
この時、子供達はひたすら「助けて〜。」を叫び、何故か定番の「放せ!放せ!」を叫ばなかったのだが(笑)、サソリストロングの放つ怪光線によって催眠状態から囚われの身となった。
たまたま用足しに行って理科室を離れていた少年・ケンジ(小松陽太郎)だけが難を逃れたのだが、級友達が捕まる様子を恐ろしい程の棒読みで説明的述懐をしていたため即座に見つかり(苦笑)、サソリストロングの命を受けたシャドゥマン達に追われることとなった。
屋外の逃れたケンジは偶然リエコ&アキラと遭遇したが、これを追ってシャドゥマンを率いたハカイダーも現れ、好都合とばかりにシャドゥマン達に三人を取り押さえるよう命じたが、そこにいつものトランペットの音色が鳴り響いた。
大立ち回りに入ったイチローは、リエコにこの隙に2人を連れて避難するよう促した。格闘は空中殺法を展開するイチローが、01にチェンジしていない状態でハカイダー相手にやや優勢に勝負を運んでいたが、ハカイダーは特殊なベルトを駆使してイチローをテープ状の金属ベルトでぐるぐる巻きにしてその動きを封じた。
だが、01抹殺への千載一遇の好機は(自らの力を見せんとした)シャドゥナイトの(文字通りの)横槍で妨害された。
手柄争いの間隙を縫ってイチローは01へのチェンジに成功し、力を誇示せんとしてシャドゥナイトが投げ付けた剣をあっさり受け止めて投げ捨てるや、その剣はハカイダーの動きを封じ、1対1となるとシャドゥナイトは情けない程一方的に殴りつけられて撤退。直後にハカイダーも撤退した。
誰の目にもシャドゥナイトの余計な手出しで01を討ち取り得た千載一遇の好機を逃した訳で、これはハカイダーならずとも怒り心頭に陥ったことだろう。
案の定、アジトに戻ったハカイダーはシャドゥナイトを鞭で打ち据え、この折檻にはシャドゥナイトも文句が云えず、ビッグシャドゥが改めて01抹殺を命じることで折檻を中止させた。
ハカイダーは「時間の無駄。」としたが、ビッグシャドゥは、ハカイダーに対しては作戦遂行、特に目撃者であるケンジの口封じを優先するよう命じ、シャドゥナイトには幹部としての地位と誇りを失いたくなければハカイダーより先に01を倒すべし、とした。
この間、一連のやり取りは興味深い。今やシャドゥナイトより上の立場にあってビッグシャドゥの指揮下に入っているハカイダーだが、ビッグシャドゥにタメ口混じりの丁寧語で、絶対的な忠誠でないことが伺え、それに対してビッグシャドゥは決して高圧的ではないものの、各々の立場と任務を重んじるよう、諭すように厳命していた。一枚岩な悪の組織では決して見られない対人関係である。
場面は替わってケンジの自宅。リエコによってケンジは自宅に連れ帰られたのだったが、命からがら逃げて帰宅してきた息子の証言を母親は露骨に疑った(まあお約束ですな)。
そこへケンジを訪ねて佐々木先生がやって来た。視聴者的にはこれがサソリストロングの変身であることは分かり切っているのだが、突然教室を飛び出したケンジが気がかりで級友達と共に訪ねて来た、という佐々木先生を母親は微塵も疑わない。ケンジが飛び出て来て佐々木を怪物と呼ぶも、佐々木に同行している(その正体を見た筈の)同級生達も(催眠状態にあるため)ケンジの言を否定した。
息子は最近おかしいとして詫びる母親に特に何を云うでもなく佐々木と同級生達は去っていったのだが、リエコは佐々木の正体を確かめる為、同級生の一人山下君を尾行することとした。
だが、山下君は何事もなく自宅に戻り、ケンジは彼の部屋まで入ると「本当のことを云ってくれ!」と詰め寄った。だが山下君はひたすら無表情で、ケンジを完全黙殺した。
その佇まいから何もつかめないかに思われたが、ケンジは山下のスケジュール帳に記載されている内容が異様なことに気付いた。通常なら時限ごとに学習科目が記載されいる筈が、「殺人訓練」、「01の弱点は何か?」といった物騒な内容が並んでおり、リエコが内容を詰問したのだが、それに対する回答は山下君の手に握られた拳銃だった。
無言で銃を発射する山下を前にリエコは周囲のものを投げつけつつ、アキラ・ケンジを庇ってその場を脱する他なかったのだが、彼女達が逃走した直後、ハカイダーが現れ、山下を褒めると、これでシャイアントデビルの秘密を握るヒロシ・アキラ兄弟は我が掌中に入ったも同然とほくそ笑んでいた(←何でそうなるのかは全くの不明)。
その頃、噂のヒロシは例によってミサオと街中を彷徨しており、空腹に耐えかねていた。周知の通り二人はスリによる稼ぎを生活の糧としているのだが、ミサオは悪人や大金持ちだけをターゲットとしており、「善人から盗むのは可哀想。」としているため、ターゲットと巡り会えていない様だった。
勿論、どんな筋を通そうと盗みは盗みで、アキラに至ってはそんなミサオのポリシーなど知ったこっちゃないとばかりに「仕事」を求めるのだが、ふと連絡帳らしきものが落ちているの気付いた。落とし主は偶然ケンジだったため、二人は(御礼目当てに)ケンジ宅を訪ねた。
すると、留守かと思ったケンジ宅の庭でミサオとヒロシは突然シャドゥの女性コマンダー(シャドゥウーマンと云うべきか?)に襲われ、これに抵抗して相手が放った手裏剣をミサオが投げ返したところ、手裏剣は女性コマンダーの左胸に命中し、絶命するや残りのコマンダー達は撤収した。
直後、倒れたコマンダーはケンジの母の姿となり、そこにケンジ、リエコ、ヒロシが帰宅した。勿論、三人にはミサオ達がケンジの母を殺した様にしか見えない。リエコはミサオに、アキラはヒロシに、「まさか」の目を向け、ケンジは何故母を殺したのか?!と逆上。
ミサオとヒロシは事を否定するも、シャドゥ一味は姿を消しており、息絶えた母を前にしてはケンジに通じる筈も無かったが、そこにイチローが駆け付け、母は生きていると証言するや、ケンジはあっさり納得してしまった。何だ?この不自然極まりない展開は?!
場面は替わってシャドゥアジト。そこではシャドゥナイトが今までのお返しとばかりにハカイダーの失敗を嘲笑っていた。シャドゥナイトは丸で山下君宅でのハカイダーの独り言が聞こえていたかのように、ヒロシ・アキラ兄弟を掌中にしたも同然としたハカイダーの言が全く達成されていないことを嘲笑っていた訳だが、そもそもハカイダーに兄弟を捕らえようとしていた動きが全く見えなかったから、シャドゥナイトの得意気なのも不可解だった。
嘲笑に対してハカイダーは「まだ打つ手はある。」として、サソリストロングに子供達の洗脳・改造を急ぐよう命じた。
その頃、イチローは工事中の理科室を調べていた。
そこに安置された骸骨標本はイチローを羽交い絞めにしたり、炎を吐いたりして、01への変身を余儀なくさせるほど罠にしては善戦したが、それ以上の効果は望むべくもなく、倒された位置から地下に秘密基地があることが発覚してしまった。
地下探索に出た01だが、突如階段が崩れ、階下に降り立つと、そこには洗脳された少年達が銃を持って待ち構えていた。子供相手に戦意を喪失すると見たハカイダーの推測は図に当たり、銃を構える少年達に「止めるんだ!」を連呼するしかない01だったが、肝心の拳銃は何発当てようと01に重傷を与えるには至らなかった。
そうこうする内に01がゼロワンリバースなる技を放つとあっさり子供達の洗脳は解けて気絶し、次いで放たれたダブルリバースなる技で子供達は完全に元の状態で意識を取り戻した。時間を掛け、緻密なカリキュラムで刷り込んだ洗脳と訓練はあっさり瓦解した。目の付け所は悪くなかったが、こうもあっさり元に戻されるようではなぁ…………。
少年達の洗脳を解いた01は牢獄に監禁されていた未洗脳の少年達とケンジの母を解放。それを逃がさじと挟撃に出たハカイダーとサソリストロングだったが、すぐに01が追い付き、先程の善戦が無かったかのようにハカイダー達は2対1のハンディキャップマッチでも優位に立てず、黄色い煙を放って対抗したサソリストロングはブラストエンド一発で轟沈し、事件は解決した。
改めて解放されたケンジの母は息子との無事再会を喜び、事件は解決した。
だが、消化不良の残る第22話だった。本物の佐々木先生の安否は明らかにされず、これ程満を持した作戦の成否を巡ってビッグシャドゥが何かを云うでもなく、ラストは例によってダブルマシンで走り去るイチローを高所から見下ろしながら、ハカイダーが必殺を誓い、その横で、殺すのは自分だとシャドゥナイトが宣言して終わった。
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最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日