キカイダー01全話解説

第26話 南紀の死斗!! ザダム超能力発揮

脚本:長坂秀佳
監督:今村農夫也
テングムササビ、地獄河童登場


 冒頭、シャドゥ基地のモニターは洋上のフェリー・サンフラワー号を捉えていた。
 ザダムによると、フェリーには先月亡くなった内山博士の一人娘・内山かつら(半田明子)が乗っており、ザダムは彼女の命を、正確には彼女の持つ小型機械を奪うことをハカイダーシャドゥナイトに命じていた。

 その命令を、ハカイダーはたかが一人の小娘を標的にするなど自分には「役不足」として拒絶。シャドゥナイトもそれに追随して拒んだが、ザダムは三叉槍を交差させて発する光弾でハカイダーシャドゥナイトを折檻すると、かつらを狙う意味を説いた。

 狙いは彼女の父が発明し、彼女が所持する超能力遮断装置にあった。
 ザダムは自分の超能力をもってすれば01も敵ではないとしていたが、内山博士の発明した超能力遮断装置が01の手に渡れば自分の超能力が通じなくなることを懸念していた。
 洋上のかつらは那智勝浦に向かっており、そこで開催される学会にて遮断装置が発表されることになっていた。確かに使うタイミングに疑問が残るとはいえ、ハカイダーシャドゥナイトを月に送ることの出来る程のザダムの超能力は大きな武器で、これが封じられるのは大変な痛手となるであろうことは想像に難くない。

 かくしてかつらはシャドゥに着け狙われることになったのだが、その時彼女はフェリーに偶然乗り合わせていたアキラ・ヒロシ・ミサオと知り合い、かくれんぼに興じていた。  早速、シャドゥ一味がフェリーに潜入し、同じ色のスーツ、帽子、サングラスと云うベタな漫画に描かれるスパイみたいな風体に加えて、風変わりな点として天狗の面を着けた連中がミサオを追い始め、やがては四人まとめて包囲した。
 そこでリーダー格の男が「シャドゥロボット背番号307」を名乗り、テングムササビの正体を現した。
 その風体は「天狗面を被った山伏」で、とてもロボットには見えなかった

 ここで少し話が逸れるのだが、かつて宝島社から刊行された『怪獣VOW』にて、『キカイダー01』は予算に苦しんだ番組と推測されていた。

 まあ、どんな番組だって有り余る予算が頭から支給されることなんてまずないと思うが、キカイダーシリーズは裏番組が『8時だよ!全員集合』だったことからもスポンサー獲得に苦戦したのは想像に難くない。

 同書は「終盤はもういよいよ予算がなくなったらしくまともな怪人すら出なくなった。」と指摘し、本人が「シャドゥロボット」と名乗らないととてもロボットに見えない怪人を数例挙げ、「衣装倉庫にあるものを全部引っ張り出してきたって感じで壮絶だった。」と記していた。

 この推測が正しいかどうかは当時の制作陣に聞くしかないし、聞いたところで、「はい、本当に予算がありませんでした。」等と返って来るとは思えんが(苦笑)、本当に新たな着ぐるみを作る予算に窮していたのだとしたら、この第26話のテングムササビはその先駆けと云えるのかも知れない。
 そのまま『水戸黄門』で黄門様一行を狙う刺客役で出れそうやもんなあ(笑)。

 閑話休題。テングムササビが姿を現したと同時に取り巻きのシャドゥマン達も天狗スタイルとなって錫杖を得物にミサオ達を包囲し、かつらに父親の発明を渡すよう強要した。
 拒めばミサオ達を殺すとしたのだが、どの道シャドゥ一味が自分達を生かしておく筈がないと踏んだミサオはかつらに渡さないよう告げたが、そこにいつものトランペットの音色が鳴り響いた。

 高所でトランペットを吹奏するイチローを見上げるテングムササビが何者かと誰何すれば、悪を滅ぼす使命を伴っていつも以上の啖呵を切るイチロー。忌々しげに「降りて来い!」と命ずるテングムササビに呼応したイチローがテングムササビ達とミサオ達の間に割って入るように飛び降りて来たのだが、相変わらずこいつらに人質を利用して敵の動きを封じるという発想が無い(苦笑)。
 ただ、杖術を駆使して戦うテングムササビ一味と、アクロバティックな動きも多用したイチローとの殺陣はなかなか見応えがあった。しばし白兵戦を展開した後、イチローは01にチェンジしたのだが、その途端にテングムササビ一味は姿を消してしまったのだった。

 程なく、イチロー達は目的地である那智勝浦に着き、超能力学会研究発表会の開催されるホテルながやまに投宿した。勿論テングムササビ一味が付かず離れず尾行しており、その事を警戒していたイチローは部屋に着くや、「皆の力を借りたい。」と切り出し、それを予想していたかのようにミサオが「皆まで云うな。」と答えたのだった。

 しばらくして、アキラ・ヒロシ・かつらが外出するとテングムササビ一味は部屋に潜り込み、家宅捜索(?)を行ったのだが、目的のものは見つからなかった。まあ簡単に見つかる方がおかしいのだが、スーツをケースを探っただけで見つからないことに「くっそぉ〜!あの女め!」と激昂していたテングムササビ、小物過ぎ(苦笑)。

 場面は替わって名所・那智滝。『仮面ライダー』でも舞台になったことがあるが、やはり那智勝浦に来たらここは外せないのね(笑)。
 その壮大さに度肝抜かれるアキラと、133mの高さに信仰の対象となっていることを講釈するかつら。それに対して知ったかぶりするなと云うヒロシの口調が変だと思う間もなくテングムササビ一味が三人に襲い掛かってきた。
 一味の狙いは勿論内山博士の発明・超能力遮断装置である。だがかつらはそんなもの知らないと惚ける。業を煮やしたテングムササビは本体を現し……………こいつ、二弾変身するタイプだったのね…………それにしても、カッコ悪い(苦笑)。ムササビにしては皮膜と云うより羽毛っぽいツバサ(?)を持ち、白髪頭に天狗の出来損ないの様な顔が泣ける。変身前の方がよっぽどカッコいい(苦笑)。

 逃げるかつら達の前に飛翔力を利して立ち塞がり、不気味に笑いながらにじり寄るテングムササビだったが、そこにギターの音色が鳴り響き、高所からジローが現れた。どうでもいいが、お寺らしき建物の頭頂部に立つシーン、絶対過去フィルムの流用だな(苦笑)。
 ともあれ、ジローは飛び降りたときにはキカイダーにチェンジ済みで、テングムササビ一味との殺陣が展開され、その間隙を縫ってかつら・アキラ・ヒロシはその場を脱した。

 一先ず安全地帯にまで逃れたかつらは汗をかいたことで顔を拭い出したのだが、その下から現れたのは何とミサオ。変装がばれたら元も子もないから早く戻せとヒロシに急かされ、かつらの顔に戻したのだが、三人の会話によるとどうやらこれは亡きリエコ直伝で、ミサオにとっては不慣れな物らしかった。
 勿論、シャドゥ一味の目をミサオ扮する偽かつらに向けさせ、本物のかつらの安全を図るためのものだったが、三人の会話はハカイダーに聴かれており、そこから伝わったものか、ホテルに残っていた本物のかつらにもテングムササビ配下の魔手が迫り、かつらはホテル内や温泉内を逃げ惑った。そういや、この温泉も『仮面ライダー』で人質を盾にしての交渉の場となっていたな(笑)。

 だが、本物のかつらの危機にはイチローが迎撃に入った。
 先の前哨戦同様、テングムササビ一味はアクション的には杖術を駆使したなかなかの殺陣を展開し、視覚的にはイチローのアクロバティックアクションと共にそこそこ楽しませてくれたのだが、今回も01にチェンジした途端に姿を消した。
 だが、今回はそれと入れ替わりにザダムが姿を現し、01とザダムは初めて対峙した。

 初体面ではあったが、展開や風体から予測したのか、01は即座に眼前の相手をザダムかと問い、ザダムもそれを肯定した。そして早速超能力を発揮したのだが、地球着任時こそ不用心極まりない移動で阿呆な尻拭いを要したザダムだったが(苦笑)、豪語していた超能力は大したもので、念動力で01をぶっ飛ばすや、テレポーテーションでこれを翻弄した。
 更に強力な念力を発動すると、何と01の左腕がもげ、01は自分の左腕に首を絞められ、悶絶した。このまま01さえ倒せば後はテングムササビで充分と云いつつも、そのままその場を去るザダムは何とも詰めの甘い幹部だが、01の左腕はザダムが去っても01を締め上げ続けたのだから、超能力自体は本当に大したもので、遮断装置を敵視するのも当然と云えた。

 ともあれ、自分の腕に絞め続けられた01だったが、そこは駆け付けたキカイダーに救われた。何とか力づくで左腕を引っぺがし、腕を元に戻すことも出来たが、ザダムの超能力に脅威を抱かずにはいられないイチローとキカイダーだった。
 するとそこへ屋上から様子を窺がっていたかつらがやって来て、腕時計の中に隠していた超能力遮断装置の移植を申し出た。装置を体内に埋め込めばかつらが学界にて父の偉業を発表出来なくなるとしたイチローだったが、かつらはイチローの様なものの役に立つ方が亡父も喜ぶとしたので、イチローは彼女の好意を受けることとなった。

 場面は替わってくじらの博物館。
 テングムササビ一味の魔手を逃れた偽かつら(ミサオ)・アキラ・ヒロシはクジラのショーを楽しんでいたのだが、そこに本物のかつらがやって来て合流した。姿を晒したことを懸念する偽かつら(ミサオ)だったが、本物のかつらは念力遮断装置をイチローの体内に埋め込んだことで、もう自分がシャドゥに狙われる理由はなくなったとした。
 しかし、この認識は甘いとシルバータイタンは思わざるを得ない。確かに装置強奪の危機はなくなったが、その情報を求めてシャドゥが彼女を拉致することや、装置が手に入らなくなったことを逆恨みして危害を加えに来ることは充分考えられる。
 実際、この動きはハカイダーシャドゥナイトに監視されており、ミサオが変装を解いたときには盛況の筈だったクジラショーの場にはミサオ達しかいない状態に変化していた。程なく、四人はハカイダーシャドゥナイト・シャドゥマン達に包囲され、かつらはもう装置を持っていないことを訴えたが、ハカイダー達の狙いはそこではなかった。

 元々ハカイダーシャドゥナイトザダムを快く思っていなかったのは誰の目にも明らかで、テングムササビが遮断装置の入手に失敗したことはハカイダー達にとってザダムを失脚させる好材料だった。そしてそのことをザダムに付き付ける為、ハカイダー達は四人を殺すとした。
 ハカイダーはシャドゥマン達に四人を包囲するように槍を地面に突き刺させた。槍は時限爆弾でもあり、触れれば勿論、触れなくても30秒で爆発する仕掛けとなっており、ハカイダーはそのまま四人の死を見届けると宣った。

 だが、爆発2秒前にイチローが駆け付け、抜かれた槍は爆発することなく、投げ付けられたシャドゥマンの体に刺さったところで爆発した。触れてから爆発するまでに間はあったのね(笑)。

 イチローはハカイダーシャドゥナイトを倒すと宣言して01にチェンジ。例によってこの間にミサオ・アキラ・ヒロシ・かつらは逃げに掛かったのだが、四人はテングムササビ一味に襲われ、ザダムはかつらのみを拉致すると、ハカイダーシャドゥナイトにこの件はテングムササビに一任した筈、として上司権限で二人を退がらせた。
 かくして01とテングムササビの一騎打ちとなったのだが、命令口調からザダムにそれなりに信頼されていると見えたにもかかわらずテングムササビはこれと云った能力や善戦振りを発揮するでもなく、ゼロワンカットブラストエンドを受けて戦死した。

 かくしてテングムササビは倒されたが、かつらはまだザダムの手に落ちたままだった。そしてそのザダムは自分に従わないハカイダーシャドゥナイトを「大法螺を吹く馬鹿者よ!」と詰っていた。
 勿論こんな云われ方をされて激昂せずにはいられないシャドゥナイトだったが、それに対してザダムはそこまで云うならどちらかが死ぬまで01と徹底的に戦わせてやろうとした。望外の沙汰に、嘘ではないな?と問い返すシャドゥナイトに、ザダムは嘘ではないが、シャドゥナイト一人だけでは心許ないので、背番号37番地獄河童と組むことを命じた。

 その名を呼ばれ、海中から飛び出して来た地獄河童なんだが…………河童の被り物を被った潜水夫で、低予算丸出しだった(泣笑)
 ともあれ、ザダムはこの地獄河童と組んで01を「地獄の罠」に落とすよう命じ、かつらはその為に不可欠な小道具としていた。

 勿論、次回を後編として、第26話は終結したのだが、この第26話を最後に、最終回までキカイダー・ジローは登場しなくなる。これは伴大介氏が『イナズマン』に出演する関係で時間が取れなくなったためであるが、前後編の後編にはちゃんと出演して、決着をつけて欲しかったものである。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日