キカイダー01全話解説
第28話 狂った町 恐怖の人魚姫大逆襲
脚本:曽田博久
監督:今村農夫也
人魚ロボット登場
冒頭、異常はとある学習塾から始まった。
ん?この講師(轟謙二)、前話でウォータージェットの船長をやっていた人………第9話でもリエコの恩師・湯山博士を演っていたし、第5話にも出ていたし………もし轟氏を複数回出演させる契約で、一回当たりの出演単価を値切っていたとしたら………『キカイダー01』って、本当に予算に苦しんだ番組だったんだなあ(泣笑)………深読みも良いところだと思うが(苦笑)。
ともあれ、この講師、地球の自転・公転を否定し、とんぼの標本を手にして「これは蝶だ!」と云うなど、無茶苦茶なことを云っていたのだが、おかしいのは講師だけなので、当然児童達は不審の声を挙げた。
場面が替わってとある家庭では、夕飯の御代わりを求めた子供達に母親が無表情に「一膳で充分です。」と冷たくあしらい、父親もそれに追随した。
そしておかしな言動を取る大人達は、子供達がいない場ではシャドゥマンにその姿を変じていた。
街中でもおかしな大人だらけとなっており、子供を轢きかけて逆ギレしたトラック野郎などまだいい方で、そこにやってきた警察官に至っては、まだ子供達が何も云っていないのにいきなり拳銃を抜き、「おまわりさんに反抗する奴は殺してやる!」と息巻く始末だった。
このポリは直後にやって来たイチローに対しても、「俺の顔をじろじろ見る奴は誰だ!」と拳銃を突き付ける始末で、こうなるとシャドゥも何をしたいのか分からん(苦笑)。
さすがにイチローもここまでぶっ飛んだ相手には笑うしかない様で、透視光線でもって警官の正体がシャドゥマンであることを看破した。正体を見破られた偽警官はバイクでもってその場を走り去り、イチローはこれを追ったが、珍しく逃げられてしまった。
そんな街中の様子をモニタリングしていたザダムは、計画により、街の人々を総ロボット化が出来ると豪語していた。
それに対してハカイダーが最前01に見抜かれたばかりであることを指摘したが、ビッグシャドゥは既に次の手を打っていると告げ、この作戦に従事するシャドゥロボットは馬鹿ではないとした。するとその言を受けたハカイダーは何故かブチ切れた。
「馬鹿ではない。」と云う台詞を自分への当てつけと捉え、亡きシャドゥナイトより幾分優位に立った時点で見せた忠誠を忘れたかのように暴言口調で作戦従事者は誰かと詰め寄るハカイダーの態度はどこか不自然だったか、ビッグシャドゥはそれに動じた風もなく、今話の登場怪人である人魚ロボットを呼び出した。
ザダムに呼ばれ、背後のカーテン越しに置かれたシャコガイの中から現れたのはビキニの美女(小林千枝)。背景証明はピンク色で官能的なBGMに人造人間である筈のハカイダーが眩暈気味だった。うん、やっぱり『キカイダー01』は他の特撮番組に比べてエロ描写が多い(笑)。
ただ、ハカイダーは現れた女を「ドブス」とし、「心臓回路がショートしそうだ………。」とうめいていたいたので、その本音は判然としない。いずれにせよ、こんなのが何の役に立つのか?と暴言口調でビッグシャドゥにまくしたてるハカイダーだったが、ビッグシャドゥに替わってザダムが、ハカイダーの目に彼女がドブスに見えるのは当然と云い放った。
何でも、ロボットの目には美醜・善悪が人間とは正反対に映るらしく、ザダムは彼女を「人間の世界では大変な美人なのだ。」とし、「人魚姫」と呼ぶようハカイダーに強要した。
「人魚姫」の名に驚くハカイダーを尻目に、女は本体である人魚ロボットに変身したのだが、例によって人間体の方が見栄え良く、本来美女の容姿を担う筈の顔面は象の出来損ないに近かった。
だが、それを見たハカイダーは「美しい………。」と感嘆の声を漏らした。本作におけるハカイダーの脳って、プロフェッサー・ギルな訳だが、彼の美醜感覚もぶっ飛んでいたのだろうか?
ただ、色香に迷い、人魚ロボットの容姿を褒めつつも、ハカイダーは自分の本来の目的を思い出して必死に理性を保とうとした。自分の目的は01打倒のみ、として自我を保とうとするハカイダーに、ザダムは「刺激が強かったようだな。」とからかい、人魚ロボットは「無理しなくていいのよ。ハカイダー、あたしは強い者が好きよ。」と挑発した。
それに対して、「俺が強いのは当たり前だ!」と尚も強情を張るハカイダーだったが、そこにザダムは人魚ロボットの任務に協力するよう命じた。
色香に翻弄されているハカイダーが本音では人魚ロボットについて行きたがっているのはバレバレだったが、ハカイダーはそんな弱みを見せたくないらしく、彼女への協力命令を「それはビッグシャドゥ様の命令か?」と尋ねた。
ついさっきまで暴論口調で、呼び捨てにしていたビッグシャドゥを「様」とつけて呼んでいるところからもハカイダーが平静を欠いているのは明らかだったが、ビッグシャドゥがこれを肯定すると、「それならば仕方ない。」として、01が現れた際に備えなくてはならないという態で命令に服従することを承諾した。
当然、ビッグシャドゥとザダムはハカイダーが「痩せ我慢している。」と嘲笑っていたが、彼のこういう人間臭さ、シルバータイタンは嫌いではない。
場面は替わって、とあるアトラクションショー会場。
人魚ロボットは人間体で舞台上にビキニ姿を披露し、鼻の下を伸ばす大人達を催眠術に掛け、ハカイダーはシャドゥマン達に放心状態の大人達を次々とトラックに放り込ませた。こうして大人達をすべてロボットと入れ替えるのが今回のシャドゥの計画なのだが、とんぼと蝶を間違える不自然さを露呈するロボットで大丈夫かいな?(苦笑)。
ともあれ、そこへ鳴り響くいつものトランペット。トランペットの音色は人魚ロボットの催眠術を阻害したらしく、イチローが会場に飛び降りると観客達は蜘蛛の子を散らす様に逃散した。
そして人魚ロボットはシャコガイの中に姿を消し、ハカイダーとシャドゥマン達がイチローと白兵戦を展開した。
いつになく戦意を燃やすハカイダーと、ここ最近アクロバティックな殺陣も見せるイチローが好勝負を展開したが、途中で、今までシャコガイの中に身を潜めていた人魚ロボットが「ハカイダーも強いが、01も強い。」として勝負に横槍を入れんとした。
イチローは01にチェンジして、ロボットである彼女の正体を見極めると宣したが、人魚ロボットは01の透視能力は通じないと返すや、体を回転させて舞踏による催眠に掛かった(水着を着ているとはいえ、バストや股間がもろにアップになっていた。本当にこの作品、子供番組にしてはエロいな………)。直前にハカイダーが止めようとしたのだが、この舞踏、ロボットにかなりダメージを与えるようで、01も苦しんだが、ハカイダーも苦しみの余り撤収した。
01は眼から煙を吐き、肉体的ダメージもさることながら、イチローの名を呼びながら迫る人魚姫の幻影にも苦しんだ。そして人魚姫が宣言したように、失明状態に陥らされた01は気が付けばイチローの姿に戻って幻覚の中でアキラの首を締め上げる始末だった(すぐに正気に戻ったが)。
場面は替わってシャドゥアジト。
ビッグシャドゥは01を失明状態に陥らせた人魚姫の報告に上機嫌だったが、普通そこまで追い込んだのなら、何故とどめを刺さなかったのかを詰問しないものだろうか?
一方カプセルの様なものの中でダウン状態のハカイダーは軽い故障状態で、「修理すればすぐに治る。」程度のダメージだったが、ビッグシャドゥが少し心配気にしていたのが興味深かった。好悪の情は別として、まだまだハカイダーを利用したい気持ちが強いと云ったところだろうか?
ともあれ、人魚ロボットは本来の目的である大人とロボットの入れ替えを着々と進め、ロボットに取って代わられた本物の人間達は奴隷としてこき使った。そしてイチローは修理を試みるも、01に変身すれば忽ち目から煙を吐いてイチローに戻ってしまう有様で、状況は深刻な状態にあった(修理するには太陽のエネルギーでも補え切れない状態だった)。
その頃、冒頭で出て来た、偽の両親に御代わりを拒まれた兄妹がヒロシと合流してミサオを頼っていた。ヒロシ一人を(スリで)食わせるのにも四苦八苦しているミサオは冗談じゃないよ、という態度を取り、「一肌脱いでよ。」とせがむヒロシにも「脱げだなんて、エッチ!」との大惚けをかまし…………いやいや、エッチなのはアンタと作風だって(苦笑)。
ともあれ、しばし悩まし気だったミサオは急に気が替わった様に「一肌脱ぐか!」と云って、四人の子供達と共にホテルながやま(←まだ那智にいたのね)の土産物屋やゲームセンターを徘徊していたが、そんな彼女達もシャドゥの監視が光っており、前触れもなくシャドゥマン達に襲われた。
ミサオも、シャドゥマンの一人や二人ぐらいならあしらえる力はありそうだったが、数が多い上に四人の子供を抱えていては逃げ回るのが精一杯だった。やがて海岸の一角に追い詰められ、そこに人魚姫まで現れた。
人魚姫はヒロシとアキラを名指しし、シャドゥへの協力を強要したが、ヒロシは死んでも設計図は渡さないと返した。と云う事はシャドゥはまだジャイアントデビル再建に未練を持っていると云うことだろうか?
ともあれ、ピンチ状態の五人だったが、そこに瞑目状態のイチローが現れた。
イチローを「ろくに目も見えないくせに。」と嘲りつつも、今度こそ完全に失明させてやると息巻く辺り、この人魚ロボットも他のシャドゥロボット同様、どうもやることが中途半端だ。
一方、イチローは状況を恐れているようではシャドゥと戦えないとし、01にチェンジするもやはり抱えていたダメージに悶絶した。人魚姫は追い打ちをかける様に例のバスト・股間ドアップ回転ダンスで01のダメージに追い打ちをかけたのだが、01はそのエネルギーを吸収して視力回復装置を作動させると云うご都合主義とも反則とも云いたくなる強引展開で視力を取り戻した。
いよいよ話も終盤になるが、視力を取り戻した01にまずハカイダーが迎撃した。自らを「01殺しの切り札、無敵のハカイダー」と称し(←人魚姫へのアピールがあった様だ)、ハカイダーショットのみならず、多彩な足技で01と激しく打ち合うハカイダーだったが、勝負は若干01優位に展開した。
それを見ていた人魚姫は、自分が01をやると宣言してシャコガイの中に一旦身を隠すと人魚ロボットの姿になって01と一騎打ちを展開した。
だが、この一騎打ち、最前の01VSハカイダーを「パワフル」とするなら、「コミカル」に近かった。人魚ロボットは余り肉弾戦を行わず、鱗を爆弾代わりに飛ばすも、弾かれるか、然したるダメージも与えずじまいだった。
頭頂部から発するアンコウレーザーなる光線技が少しは01を苦しめたが、ゼロワンドライバーからの手刀打ちで鼻を折られると完全に冷静さを欠いた。
鼻が折れたことを「辱め」として01を痛罵するも、「黙れ、化け物!」と返され、侮辱の上塗りと捉えた人魚ロボットは怒り心頭、「お前を倒す為に恥も外聞もない!」としたが、その為に取った攻撃は、胸部を外し手投げ付ける「人魚ボイン爆弾」と云う、そのまんま且つ下品な技だった(苦笑)。
勿論、この手の飛び道具が功を奏する筈なく、右胸部はゼロワンキャッチで受け目られて放擲され、左胸部は蹴り返された。そして01は返す刀でブラストエンドを放った。致命傷を負った人魚ロボットは自分の最期を誰にも見せたくないとして、シャコガイの中に引き籠ると01への呪詛を宣して爆死したのだった。
人魚姫のロボット且つ、女性らしく容姿や美貌にこだわった描写は面白かったが、戦闘能力的にはイマイチだったな(苦笑)。
かくして第28話は終結。
イチロー・ミサオ・アキラ・ヒロシはフェリーにて美しさと危険さの相関関係に惚け・ツッコミをかましながら那智を離れ、ハカイダーは01打倒を誓っていたのだが、今回は01に対してではなく、人魚ロボットの墓標に誓っていたのが印象的だった。
ビッグシャドゥ達は思い切りからかい、人魚ロボットもハカイダーを重く見ている風は無かったが、ハカイダー自身はいざというときには人魚ロボットと共に死ぬ覚悟だったようで、彼女が安らかに眠る為にも必ず01を殺すと誓い直すのだった。
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最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日