キカイダー01全話解説

第29話 赤鬼 青鬼 恐怖の100億V!!

脚本:曽田博久
監督:永野靖忠
ライジーン・プラス、ライジーン・マイナス登場


 冒頭、初登場時の様な荒野に立つザダムは天空の稲妻に向かって呼び掛けていた。新発明の為に100億Vの電力を必要しており、電圧がそれに近づくとそれに呼応するように赤い星と青い星が現れた。
 ザダムの右側(体色の赤い方)がトライデントを投げるとそれを挟むように二つの星が近づいたのだったが、もう少しと云うところで星は離れ出し、シャドゥマン達が覗いていた計器が示す電圧値も下がり出した。
 この事態に怒り心頭のザダムは、何者かが電気エネルギーを横取りしたと断じて、その殺害を周囲に命ずるのだった。

 場面は替わってとある原っぱ。
 そこにはザダムの求める電気エネルギーを奪ったであろう避雷針が立ち、その下には研究室の一室をも埋めそうな計器類やパラボラアンテナが置かれていた。計器類の前には生意気なインテリを絵に描いた様な若い女性(川口真有美)と少年(多和田聡)が何がしかの実験に取り組んでいた。
 曇天の中、見るからに落雷を招きかねない状況に危険を勧告するミサオ・ヒロシ・アキラ達だったが、女は「学問の無い人はこれだから困る。」と云って聞く耳を持たない。
 一方、ヒロシ・アキラ兄弟と同じ年代っぽい少年はごく普通の態度で雷の実験をしているだけだと答えた。

 そうこうする内に避雷針に雷が落ち、ミサオ達が驚く中、二人は平然としていたので、直後に少年が云った様に装置が雷エネルギーを吸収することに充分な自信を持っていたのだろう。
 だが、二度目の落雷を受けるや避雷針はエネルギー負けしたかの様に火花を上げて半分に折れた。女は即座にこれを雷ではないと判断した点は科学者らしかったのだったが、のほほんとした声で実験を妨害した者への苦情を口にしていたからズッコケた。
 かかる大掛かりな装置を破壊する程の攻撃を仕掛けてくる存在がのほほんとした呼び掛けに応じる筈ないことに想像が及ばないところを見ると、女は世間知らずな勉強だけ賢いタイプなのかも知れない。
 当然、呼び掛けが通じる筈もなく、砲撃っぽい攻撃が連発して一同を襲った。

 砲撃の正体はハカイダーのハカイダーショットで、ハカイダーは女のクレームに反論するように邪魔しているのは女の方だと告げると、ミサオ達が一緒にいるのは行きがけ駄賃とばかりに5人まとめて殺害せんとしたが、即座にイチローが割って入った。
 不意を打たれたハカイダーはろくに抵抗も出来ず、即座に、だがイチローを誘うように戦線離脱し、それを訝しがりつつもイチローもダブルマシンでこれを追った。

 その頃、ザダムハカイダーによる迎撃が功を奏したことにほくそ笑んでいた。
 地上の雷実験が邪魔されている間にザダムは雷エネルギーを当初予定していた100億ボルトまで充填することに成功し、それによってシャドゥの科学が生んだ「雷の申し子」とライジーン・プラスライジーン・マイナスが大音響・大火柱と共にその姿を現した。
 そしてその雄姿なのだが………小さな太鼓7個を後光的に背負い、虎皮のパンツをはいた赤鬼と青鬼で、雷様そのものだった(苦笑)。赤鬼の方が短棒を十字に構えて「プラス」を、青鬼の方が短棒を横一列に構えて「マイナス」を名乗ったが、もうこいつらロボットやアンドロイドとは云えんな………第26話の解説以降度々触れているが、本当に予算に苦しんでいたことが伺えて泣ける………。

 だが、そんな考察の暇もなく即座に01が駆け付け、ザダムライジーン・プラスライジーン・マイナスに01打倒を命じ、二人は即座に01を雷撃で挟み撃った。
 100億ボルトものエネルギー充填を行っただけのこともあってか、この雷撃はかなり強烈で01は全身各所から火花を上げて空中に放擲された。
 そのまま事件に激突すれば一大事になると見込まれたが、何とかゼロワンスライダーなる体術で体勢を立て直して地面への激突を免れるとアキラ達の下に立ち戻った。

 場面は替わって鳴神カミナリ研究所なる研究施設。そこは少年−鳴神ライタの父親の研究所で、ライタは雷の研究で高名な父の後を継ぐことを志していた。
 年端も行かない子供には難し過ぎるんじゃないか?と問い掛けるヒロシだったが、一緒に実験に取り組んでいた女・稲妻ヒカルがライタは知能指数が250もある天才児であると太鼓判を押した。
 さりげない人物紹介を担ったよくあるワンシーンなのだが、ライタの才能を述べるにしても、いちいちアキラ達に「君達とは頭の出来が違うわ。」としたり、「この私が英才教育を施した。」と述べ、自分の事を「鳴神博士の一番優秀な助手」等と自己紹介していた様が鼻についた。
 まあ、フィクションとはいえ、東大卒業後、ハーバード、ケンブリッジ、ソルボンヌ・モスクワの各大学で数学と物理学を極め、博士号を4つも持っていればかかる態度になるのも無理はないかも知れない。
 そんなヒカルとライタ(←どうでも良いが恐ろしく安直なネーミングだ……)は鳴神博士の研究を継ごうとしていた訳だが、その鳴神博士は落雷の多い地に研究所を作って研究していた際に、異常発生した落雷の為に命を落としていた。遺志を継がんとする心意気は立派だったが、博士の死を思えば、その危機意識の無さは酷いと云わざるを得なかった。
 ともあれ、博士は異常発生していた落雷を何者かが人為的に起こしていたと見ていて、イチローはその背後で悪企みをするシャドゥが恐るべきアンドロイドを保有していることに危惧の念を抱くのだった。

 その頃、シャドゥアジトではビッグシャドゥライジーン・プラスライジーン・マイナスに二つの使命を告げていた。
 一つは「電気ショック作戦」なるもので、人間達に名前の通り電気ショックを与えることで無気力な怠け者にするものであった。まあ、作戦や狙いに対してはどうもこうもないのだが、ビッグシャドゥがわざわざ「見ろ」と命じたナマケモノの絵を見て一同が笑っていたのが何とも不可解だった。万人が怠け者になった無気力社会の想像図を見て笑うのならまだ分かるのだが………。
 そしてもう一つは「100億ボルト作戦」なるものだった。内容はライジーン・プラスライジーン・マイナスが100億ボルトの電撃で01を抹殺するという単純な抹殺指令だった。ただ、この攻撃、一度しか使えず、連続攻撃には不向きなもので、ビッグシャドゥはまずは前者から取り掛かるよう命じた。

 命を受けたライジーン・プラスライジーン・マイナスはまず、アーチェリーをしていたヒカルを襲撃した。3つの的を左右から挟み込むように現れたライジーン・プラスライジーン・マイナスの影響で矢が逸れたことで異変に気付いたヒカルだったのだが‥‥‥‥…ボウスリングで腕とハンドルを繋がず、アンカリングもせずに、ロッドも装着していない弓で金的(10点・9点)を逸れたのに驚いていた方が驚きである。第一、ヒカルの矢は初級者が使うアルミ矢だから、電磁力の影響は受けない!まあ、上級者が使うカーボンファイバーアローなら電気を通すが、やはり磁力は無関係…………あっ、すみません、アーチェリーの知識が無いと全然分からないツッコミを入れてしまいましたね………。

 ともあれ、突如現れたシャドゥロボット、それも2体に挟まれてはさしもの高飛車女・ヒカルも逃げ惑うしかなかったが、ライジーン・プラスライジーン・マイナスは電撃でヒカルの脳を麻痺させ、その動きを完全停止させてしまった。
 だが、今度も01が即座に乱入してその危機を救った。ライジーン・プラスライジーン・マイナスは01が死んだと思っていたらしく、彼が生きていたことを意外そうにしていたが、ビッグシャドゥからの01抹殺命令を聞いていなかったのだろうか?
 どうも雷撃攻撃に自信過剰になって敵を甘く見る癖があるのか、二人とも肉弾戦は大したことなく、二人掛かりでも01に対して優位に立てず撤収。案の定、ビッグシャドゥにも01を最後にすべてのエネルギーを叩きこんで倒す為にも無駄なエネルギーを使わずに電気ショック作戦の方を優先するよう叱責される体たらくだった。

 ただ、途中で妨害されたとは云え、電気ショックを浴びたヒカルもただでは済まなかった。
 外傷こそないものの、シャドゥが目論んだ効果通りに無気力人間と化し、食事するのにすら自分の手で持つのを厭う程の面倒臭がりになり、ライタの家庭教師としての役割も、母親代わりの役割も丸で期待出来ない状態だった。
 いきおい、無料で泊めてもらっていることからミサオ達が家事を代行することとなったのだが、その買い出しに出たところでミサオとヒロシもライジーン・プラスライジーン・マイナスの電気ショックに襲われ、自転車も漕げないほどの無気力状態にされた。

 何もかもを無視するように地面に寝込むミサオとヒロシを回収し、鳴神研究所にてヒカルを含む3人を如何にして元に戻すか頭を悩ますアキラとライタだったが、イチローの聴覚は何かを聞きつけたようで、ヘタれこむ3人を捨ておいてまでアキラとライタに屋外への避難を誘導した。
 実際、ミサオとヒロシが襲われたのは偶然で、ライジーン・プラスライジーン・マイナスビッグシャドゥの命令通りに電気ショック作戦を優先し、空には無数の太鼓が浮かんで地上の人々を打ち、人々は次々と無気力人間…………と云うより、ナマケモノ人間と化し、地面にへたれこんだり、寝っ転がったりする他に、木々に登って、ぶら下がる者まで現れ始めた。成程、アジトでの映像はあながち間違いじゃ無かった訳だ(笑)

 ナマケモノ人間と化した人々の中にはミサオ、ヒロシ、ヒカルも含まれ、遠くから双眼鏡で見ていたアキラとライタは町がシャドゥの占領状態にあることを悔しがっていた。しかし、かかる状態が町の人々のシャドゥへの抵抗力を封じているのは分かるが、ナマケモノ状態となった人々がシャドゥの役に立てることは出来るのだろうか?(笑)
 ともあれ、社会的には由々しき状態である。何とかしなければならないとするイチローもライジーン・プラスライジーン・マイナスの雷エネルギーを前に迂闊には手を出せないとの躊躇を覚えざるを得なかった。

 一方、電気ショック作戦は終わったと見たのか、ライジーン・プラスライジーン・マイナスは01を倒さんとして鳴神研究所前で待ち構えていたが、01が現れないことを指して、彼が臆病風に吹かれたと推測していた。それを否定するように現れたハカイダーに続くようにトランペットの音が鳴り響き、決着を付けに来たとして告げてイチローは高所から飛び降りると、そこは何故か研究所を遠く離れたとしか思えないはげ山だった(笑)。

 ハカイダーやシャドゥマン達と大立ち回りを演じるイチローはライジーン・プラスライジーン・マイナスを警戒するように01にチェンジ。だが01を挟み込むように立つライジーン・プラスライジーン・マイナスがサンダー金縛りなる光線を発すると身動きを大幅に封じられ、電気椅子に架けらてしまったのだった。
 身動きもままならず苦悶する01を前に悦に入るハカイダーだったが、それを否定するように「それはどうかな?」と01は態度を変えた。それが気に入らないハカイダーライジーン・プラスライジーン・マイナスに01を処刑すべく、100億ボルトの殺人ビームで01を処刑するよう命じ、二人が電気椅子を挟むように立つと、巻き添えを避けるかのようにハカイダーもシャドゥマン達もその場から散った。

 だが、01の座る電気椅子を挟撃したライジーン・プラスライジーン・マイナスの殺人ビームは電気椅子後方に流れ、そこには巨大磁石と操作装置の様なものを荷台に乗せたトラックがあって、アキラとライタが快哉を叫んでいた。
 何がどう功を奏したのかよく分からないシーンだったが、巨大磁石がエネルギーを吸い取ったとする01の台詞から、避雷針のような役割を果たす装置を用意したということだろうか?
 いずれにせよ、処刑失敗はハカイダーの目にもすぐに判然とし、あっさりと拘束を破った01は反撃に転じた。そしてビッグシャドゥが「一回しか使えない」と危惧していたようにライジーン・プラスライジーン・マイナスは能力の大半を使い果たしていたようで、背中の太鼓を投げてぶつけるという稚拙な技も通じず(苦笑)、元より肉弾戦では01に劣っていたこともあってゼロワンドライバーに翻弄された挙句、ブラストエンドの前に二人まとめてあっさり戦死したのだから、切り札的な技や、発することの出来るエネルギー容量には優れていても、打たれ強さを初めとするその他の能力はイマイチだったようであった。

 ともあれ、無気力状態とされたミサオ、ヒロシ、ヒカルはライタの作ったと思しき機械によるショックで元に戻ったが、ヒカルに無気力時及びそれに遡るしばしの時間分の記憶はなかったようで、両手に持つペロリンキャンディーやガラガラすら「勝手に持たされた!」と怒り出し、ライタに勉強の時間だと怒鳴り散らす嫌なキャラに終始していた。
 ただ、そんな彼女に育てられつつもライタはまともだったようで、町の人々を元に戻せると喜んでいたから、年端が行かないとはいえ、なかなかの人格者だった。

 そしてラストシーン。例によってハカイダーが去り行く01を見送るように復讐を誓うのだったが、それに伴った台詞が、「ビッグシャドゥには怒鳴られ、雷は落とされるし、ろくなことは無いわ。」としていたのがしょぼくて笑えたのだった(苦笑)。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日