キカイダー01全話解説

第30話 悪魔?天使?ビジンダー出現!!

脚本:長坂秀佳
監督:永野靖忠
公害ナマズ登場

 冒頭、ビッグシャドゥは過去のシャドゥロボットと01が戦うフィルムを見ながら、自分の組織に01に対抗し得る者がいないことをぼやきながらザダムを呼んだ。
 ビッグシャドゥに気づかれないまますぐそばに侍っていたザダムは、彼の心を察していると云わんばかりに「01必殺作戦」が着々と進行中であるとし、その要諦は「如何に悪には強くとも、女子供には弱い」という01の弱点を突いたものと告げた。
 ビッグシャドゥに自信がある様子を指摘されたザダムは、勝算の確かさを示すように、01の墓場は「緑沼近くの平原」に決まったも同然とまで云い放った。

 ビッグシャドゥはモニターに映った緑沼のきれいな空、きれいな水、きれいな緑を「儂の最も嫌いなもの」として、スイッチを切るように云ったが、ザダムはそこがすぐにビッグシャドゥのお気に召す場となるので、我慢して欲しいと告げ、沼からは今回の作戦を為すシャドゥロボット・公害ナマズが姿を現したのだった。
 名前の通り、鯰が公害の象徴であるヘドロを纏ったような公害ナマズは「ナマズガス」なる毒ガスを口から吐くと、周囲の環境は即座に破壊され出し、それを見ていたビッグシャドゥはたちまち機嫌を直した。
 公害ナマズを「現代文明の権化とも云える優秀ロボット」ととし、「美しい自然など叩き潰せ!」と命じるビッグシャドゥの醜悪な立ち居振る舞いには、心が拗けて、美しいものを嫌悪しているのか?それともハカイダーの様に美醜感覚が人間の正反対と化しているのか?と思わされたが、直後の「自然破壊なくして、文明の発達など在り得ないのだ!」としていた台詞を聞くと、どうやらビッグシャドゥは「新たな創造の為には徹底的な破壊が必要」と考えるタイプの悪党なのかも知れない、との推察を抱かされる興味深いワンシーンだった。

 ともあれ、公害ナマズの自然破壊活動にご満悦のビッグシャドゥだったが、ザダムは主目的を01抹殺にあるとし、公害ナマズの発する液体爆弾は数秒で無色透明となって地面に浸み込み、その場にやってきた者を爆殺する即興の罠と化して、その場を01の墓場にする、と再宣言した。
 その自信にビッグシャドゥは他にも打っている手があるのか?01をどうやってこの場まで誘き寄せるのか?等を問うたが、ザダムは「後のお楽しみ。」と称して回答を保留し、公害ナマズは托鉢僧(富田仲次郎)の姿に変えて行動を開始した。

 場面は変わってとある公園。
 ダブルマシンを走らせるイチローの耳に女の高笑いが聞こえた。声のする上空を見上げるとオーロラがあり、そこから滴形の流星群が地面に落ち、忽ちの内に花々が広がるとその中から一体の女型ロボット―ビジンダーが飛び出した(以後、ビジンダーの登場シーンはこの形で統一される)。
 結局、この時は互いに構えを取って対峙しただけでビジンダーはすぐに立ち去ったのだっが、イチローにはこの対峙だけで、彼女が敵なら恐ろしい存在になると把握したのだった。

 その頃、沼のほとりを一人寂しげに歩いていた少女(志穂美悦子)がいたのだが、同じ場所でミサオ、アキラ、ヒロシがシャドゥマン達に襲われた。慌てて少女に助けを求めるも、適切な人選でないと云い合うヒロシとアキラの兄弟だったが、少女は三人が見惚れる程のアクションで忽ちシャドゥマン達を蹴散らすと、少しだけ微笑んでそのままその場を立ち去った。
 直後、ナレーションが少女の名前がマリであることを語り、彼女が何者であろうか、と投げ掛けたのだが…………普通にビジンダーの人間体だと分かるだろうが!!(笑)

 まあ、顔見世にならない顔見世を終え(苦笑)、場面は公園に移ったのだが、そこには5人の少年が自転車を走らせており、リーダー格らしい少年が掲げる幟には「公害ナマズ生け捕り少年隊」と大書され…………ストーリーが始まる前に正体ばれとるぞ!大丈夫か、シャドゥ!?(苦笑)
 ともあれ、少年達の前に托鉢僧姿で現れた公害ナマズは彼等に死相が出ているとして緑沼に近づかないよう警告したが、かかるストーリー展開で子供達が大人の忠告に従わないのは世の常である。
 ただ、チョット嫌悪感を抱いたのはこの糞ガキどもの態度が悪過ぎたことだ。まだ小学生で取り立てて悪そうにも見えず、忠告に従う振りをしてこっそり緑沼に向かうだけならまだ可愛げもあるのだが、立ちはだかっただけで「何だよ、そこ退け!」と命令口調を発し、停止に従わないにしても、「ばーか!誰が何と言おうと俺達は緑沼のナマズ退治に行くんだ。」と悪態をつき、「糞して寝ろ!」との暴言を吐く者までいた。目上の者に従わないにしても態度が悪過ぎた。
 悪餓鬼を出すなとは云わないが、子供の見る番組であるなら、とんでもない悪役を振るのでなければ、暴言にもある程度の歯止めを掛けて欲しいものである。

 さて、餓鬼どもを止めた公害ナマズだったが、最初は01を倒すまで余計な騒ぎを起こさないために無関係な者が緑沼に近付かないようにしているのかと思ったが、その後アベック見て妙な脅しをかけた果てにナマズガスで殺害して白骨化させたりしていたのだから、餓鬼どもを止めていた意図が丸で分からなかった。
 更には髭を伸ばして10人前後の少年少女達を捕らえんとしていたが、01誘き出しの一環なら分からんでもないが、殺害・拉致・脅しの基準がさっぱり分からなかった。
 ともあれ、かかる事態に駆け付けないイチローではなく、トランペットの音を鳴り響かせるや、シャドゥマン達がその姿を探し始めたころにはもう地面に降り立って子供たちの救出に向かうイチローだった。

 子供達を公害ナマズの髭から解放し、避難を促したイチローだったが、公害ナマズは「ここでは戦わん。」として、01の墓場は緑沼の平原だから、そこに来い、と罠を仕掛けてあることがバレバレな台詞を残して去った。
 入れ替わりに姿を現したのはビジンダー。キカイダー兄弟のお株を奪うように竪琴をかき鳴らしながら高所(樹の上)に姿を現した彼女は地面に降り立つや、竪琴の弦を弓弦の様にして短い矢を放った。
これを躱したイチローの「何者か?」との誰何にここで初めてビジンダーと名乗ったのだが、「シャドゥの一味か?」の問いかけには答えず、代わりにビジンダーレザーなる、乳頭部から放射状に広がると云う、再放送当時思春期前だった道場主を「おっぱい光線」として興奮させた光線を放ったのだが、これはイチローではなく、背後に潜むシャドゥマンに命中し、イチローが振り返った時にはビジンダーはあっさり姿を消していた。
 その謎な言動に、「敵なのか?味方なのか?」と訝しがるイチロー…………いくら何でも襲撃を受けたこの時点で「味方」とはならんだろう?確かにイチローはザダムが見たように女に甘いのかも知れない(苦笑)。

 Bパートに入り、ダブルマシンを駆っていたイチローは今度はマリと遭遇するのだが、勿論この時点ではイチローはマリがビジンダーであることを知る由もない(一応、展開上バレバレではあるが、ストーリーとしてもそのことは明言していない)。
 サイドカーが背後に迫ってもとぼとぼ歩いていたり、公園が危険であることを告げられてもそれを承知で自分のことはどうでもいいと告げるマリの言動は訝しいものではあったが、その場ではそれ以上の展開は無かった。

 一方、ナマズ退治に意気込む糞ガキどもは緑沼に向かう途中で背後にバイクに乗ったハカイダーが迫っていることに気づき、危険を感じたのだが、こいつらは態度だけじゃなく頭の中身も悪いようで、自転車でバイクを振り切ろうと必死にペダルを漕いでいた。
 ガキの一人が「駄目だ、追いつかれちゃうよ。」としたが(←当たり前だ!)、確かに自転車を漕ぐ以外に方法が無いとはいえ、「馬鹿!諦めるな!」しか返せないリーダー格からして本当に考え無しの集団だった。
 幸い、イチローのダブルマシンがハカイダーの前に立ちはだかり、即座の一騎打ちとなったが、しばし格闘した後に01の足元に数本の矢が撃ち込まれた。

 勿論射手はビジンダーで、彼女はここで自らを「シャドゥで生まれたロボット」とし、「私の使命は01、あなたを殺すこと!」と告げた。さすがにこう告げられては01もビジンダーを「シャドゥの手の者」=「敵」と見做さざるを得なかったのだが、殺意を露わにした割にはビジンダーはハカイダーを連れて三度あっさりと姿を消したのだった。
 この間に虎口を逃れたクソガキどもは、さすがに疲れ果てたのか緑沼に付く前のとある原っぱにへたり込んだが、そこをシャドゥマン達に襲われた。だが、即座にマリが現れてシャドゥマン達を蹴散らし、次いで現れたイチローが加勢したことでシャドゥマン達は駆逐された。
 安堵したクソガキ達に「充分な準備もしないで危険に近づくのは本当の勇気とは云えない。」と諭し、帰宅を促すイチローはかなり大人対応で、さしもの糞ガキどもも態度を改めてイチローに従った。
 だが、この間にマリはその場を立ち去っており、すぐにそれに気づいたイチローは彼女に追いついたが、マリは彼女を訝しがるイチローの詰問にも「聞かないで。」の一点張り。
 マリの沈鬱な表情を反映したかのようなBGMが流れる物悲しい雰囲気が漂ったのだが、この雰囲気はミサオ、ヒロシ、アキラが現れたことでぶち壊しとなった。
 マリの手に肩を賭けるイチローを遠くから見たミサオは二人がデキていると邪推して嫉妬と悔しさを露わにし、ヒロシとアキラはミサオがイチローに対する態度をはっきりさせないからこうなったと揶揄し、話は一気にコミカルにシフトした。
 ヒロシ・アキラ兄弟はミサオにお色気作戦でイチローの気を引くことを唆したが、それに唆されて美脚をチラ見させるミサオが呼び寄せたのはイチローならぬ公害ナマズ (苦笑)。「あんたに見せたんじゃない!」と叫びながら逃走するミサオが何だかだったが(苦笑)、逃げる先にはハカイダーが待ち構えていた。

 つまりはここで話はシリアスに復した訳だが(苦笑)、さすがに人間の目で目視出来る距離からの助けを求める声がイチローに聞こえない筈はなく、即座に01にチェンジしてミサオ達を助けに掛かった。その間隙を縫って逃げんとしたミサオ達には別のシャドゥマン達が立ちはだかったが、これはマリが迎撃した。
 だが、シャドゥマン達は二人一組で『キン肉マン』のマッスル・ローリングみたいな技で01に追いすがり、そこに現れた公害ナマズがマリを叩きのめすと、公害ナマズはマリを抱き上げて、01に彼女を助けたければ緑沼の平原に来い、と告げて姿を消した。
 勿論、これを即座に追わんとした01だったが、ハカイダーの抵抗に遭い、まんまと逃げられてしまったのだった。

 緑沼の平原で足元にマリを横たえた公害ナマズは01がここに来れば液体爆弾で木っ端微塵だと大声で叫んで悦に入っていた…………こんな機密を大声でべらべらしゃべって、馬鹿だな、こいつ。
 幸い、距離もあってこの台詞は01に聞かれてなかったが、他の誰かに聞かれる可能性を考慮しないのだろうか?
 ともあれ、目論見通りに01が液体爆弾を浸み込ませた平原に突っ込ませることに成功したのだったが、触れられた液体爆弾が起爆するより早くダブルマシンが駆け抜けたという反則に等しい落ちで罠とした平原はあっさり走破された。

 いきおい、01と公害ナマズの一騎打ちとなった訳だが、鈍重そうな見た目通り、格闘では明らかに01の方が優勢で、髭で絡め取る技もあっさり手刀打ちで切り落とされ、早くも「最後の手段」に走る体たらくだった。
 ただ、「最後の手段」とした「ナマズ地震波」なる技は、動きだけ見れば地団駄踏んでいるだけにしか見えないが、実際には地震を起こし、01の動きを封じ、落石を招くなかなかの技だった。
 だが、それが通じたのも01が地上に立っていたときのみで、ジャンプ1番ゼロワンドライバーを食らわすや戦意喪失し、ゼロワンカット2連発とブラストエンドで勝負は呆気なく決着した。

 公害ナマズの最期は、アジトでモニタリングしていたハカイダーをして、「必殺作戦が聞いて呆れる。」と云わしめるカッコ悪さだったが、共にモニタリングしていたザダムは「いよいよこれから最後の仕上げに入るのだ。」として失敗を認めなかった。
 ザダムの計算では、公害ナマズを討ち果たした01は油断しており、女子供に味方する性格から、マリに気を取られると見ていた。実際、マリは公害ナマズの仕掛けた液体爆弾の染みた場所を踏んだことで重傷を負っていた。
 当然イチローはマリの介抱に掛かった訳だが、それもザダムがマリを人間の味方をするように設計したからだった。そしてそのマリの体には核爆弾が仕込まれてあり、ブラウスの第三ボタンを外すことで起爆する仕掛けになっていた。

 すべてはイチロー・キカイダー01の性格を見越したザダムの深慮遠謀で、ザダムは更にマリの体に激痛を走らせるスイッチを作動させた。激痛にのたうち回るマリに服を緩めるよう懇願されたイチローはブラウスの第一ボタン、次いで第二ボタンを外し、ついに第三ボタンに手を掛けた。
 何も知らないまま絶体絶命のピンチを迎え、シャドゥアジトではビッグシャドゥザダムが事は成れり、とほくそ笑むところで第30話は終結し、次回に続くのだった。
 令和の世である現在なら、「またえげつない引きしやがって………。」と云われかねない終わり方だったな(苦笑)。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日