キカイダー01全話解説
第33話 非情 子連れゴリラの涙・涙
脚本:曽田博久
監督:畠山豊彦
ビッグゴリラ、ミニゴリラ、ビッグゴリラ2世登場
冒頭、イチローは何者かに追われて林の中を走り回っており、それをビッグゴリラとミニゴリラが監視していた。
初期の頃の太陽エネルギーを欠いた頃を除けば、一方的な劣勢に追い込まれることの殆んどなかったイチローが逃げ惑っていたのは何とも謎だったが、恐らくは何がしかの罠に嵌められ、状況が見えなかった故と思われる。
程なく、ビッグゴリラが木陰や斜面から大岩を投げつけて攻撃するとイチローは01にチェンジしてこれをキャッチして抵抗。大岩攻撃は防いだものの、やはり地理的劣勢を懸念してか林内から脱線とした01をアジトでモニタリングしていたビッグシャドゥは何としても01を追撃して仕留めるように命じた。
やがて禿山の麓で01とビッグゴリラ・ミニゴリラは対峙した。
ここで01に何者であるかを誰何された両名は名前と共に親子であることを名乗り、「シャドゥの代理」として01を倒すことを宣言した。ところが、名乗りも高々に親子での連携を攻撃を見せるかと思いきや、01と戦ったのは母親であるビッグゴリラだけで、ミニゴリラには明らかに戦意が無く、たまに母親に声援を送るだけで早々と一騎打ちの場から離れた。
離れた場所にはデータを収集する機械と思しき装置があり、恐らくは01の戦闘能力を解析戦としていたのだろう。
一方、01もまた戦意がイマイチだった。
親子連れで挑まれると女子供に甘い一面が出てしまい、自分がビッグゴリラを倒せばミニゴリラが親を失うことに妙な同情を寄せ、矛先を鈍らせてしまっていた(←ビッグゴリラにも指摘されていた)。
だが、さすがに戦いは手抜きで勝てるほど甘くはない。01も途中でそのことを悟り、ゼロワンカットやゼロワンキック、更にはゼロワンドライバーをビッグゴリラに見舞った。案の定、これらの動きはミニゴリラによってモニタリングされ、電子計算機にて解析されていた(それによると一発目のゼロワンカットの破壊力は100t、二発目のそれは300t、ゼロワンドライバーは最大値1000tを振り切った)。
モニタリングに気付いてか気付かないでか、一方的な勝負展開にグロッキーとなったビッグゴリラに再度の降伏勧告を行った01だったが、腹に一物のあるビッグゴリラは左腕からゴリランバズーカを放ってブラストエンドによる攻撃を行うよう挑発した。
こうなっては01も止めを刺さざるを得ず、ブラストエンドにて勝負は決した。勝負後、母親の残骸を前に滂沱に暮れるミニゴリラを見て居た堪れない01。正当防衛なのは理屈では分かっていてもやはりミニゴリラを見ていると辛く、そのミニゴリラも01に対して「顔も見たくない!」という態度で、01はその場を立ち去る他なかった。
ちなみにこの間、全く別の場所でミサオとヒロシは延々とあんパンを掛けてプロレス勝負を繰り広げていた(レフェリーはアキラ)が、ストーリーとは全く関係なく、勝負のどさくさでヒロシがミサオの胸を触ったのが羨ましいだけだった(苦笑)。
一方、母親の残骸を回収してリアカーに積み込むミニゴリラの元にビジンダーが現れ、無言でこれを手伝い、ミニゴリラもこれを拒まなかった。その様子を監視していたハカイダーはそのことをビッグシャドゥに報告して、初めてビッグゴリラが01の戦闘能力データを収集する為の捨て石的存在(『ウルトラセブン』で云うところのアロンやね)であったことを知らされた。
ビッグシャドゥの悪巧みは手が込んでいて、ビッグゴリラの取り込んだデータを元に新たな防御機能を施したミニゴリラに、彼を不憫に思うビジンダーが教育することで打倒01の為の究極ロボットビッグゴリラ2世が生まれることを目論んでいた。
今まで01=イチローの女子供に甘い性格に付け込もうとした作戦はいくつかあったが、ビジンダーの母性を利用しようと云いうのはなかなかに手が込みつつ、悪辣と云えた。
加えて、シャドゥは01がビッグゴリラ=ミニゴリラの母親を殺したことへの罪悪感にも付け込まんとした。
ハカイダーがイチローの前に現れ、子の目の前で親を殺した01を「なかなかに残酷な奴」とし、ビッグゴリラの墓前で(ビジンダーと一緒に)佇むミニゴリラの姿を見せて詰った。まあハカイダーを初めシャドゥの面々がやって来たことを思えば、「お前等が云うな!」としか云い様がないのだが、お人好し過ぎるイチローは居た堪れなくなり、その隙を突いたハカイダーに崖から蹴り落される体たらくだった。
もっとも、緩やかな斜面を転がり落ちただけなので、然したるダメージにもなる筈なく、イチローに気づいたビジンダーは(01とビッグゴリラの因縁を全く知らず)ミニゴリラを弟分として育てると宣言し、イチローに対して「どこかで会ったことがある気がする。」と呟くミニゴリラがイチローと仲良くなれると良い、としていた。
事情を知るイチローはそれをビジンダーに告げられず、何とも複雑な表情をするしかなかった。
すべてはビッグシャドゥの計算通りに進んでいた。
ザダムは01が罪悪感から戦闘能力を低下させると踏み、シャドゥ一味の思惑を知らないビジンダーはミニゴリラを厳しくも暖かく鍛え、育て、最後にはビッグゴリラの記憶回路を組み込む再改造手術まで施した。
結果、ミニゴリラはビッグゴリラ2世として生まれ変わり……………着ぐるみは完全にビッグゴリラのをそのまま流用だな(苦笑)。
かくしてミニゴリラ改めビッグゴリラ2世は親の仇を討つべくシャドゥマン達を率いて01を襲撃した。親を殺したことへの自責の念から厭戦的だった01だったが、さすがに敵意むき出しに襲撃されては、ビッグゴリラを「シャドゥの殺し屋ロボットだった。」として、正当防衛的に応戦せざるを得なかった。
しばしの白兵戦後、そこにビジンダーが乱入。彼女をことなど知らんと息巻くビッグゴリラ2世だったが、「育ての親」を名乗り語り掛けるビジンダーの前に鍛えられた頃の記憶を少し思い出しかけた。
その様子に畳みかけるような説得をして停戦と帰還を促したビジンダーだったが、そこにハカイダーが乱入し、彼女に対して「シャドゥの使命を忘れた裏切り者」と罵ったり、01がビッグゴリラ2世の親の仇であることを告げたりしてその心理を揺さぶった。
うむ、今回のシャドゥ一味の悪辣さは如何にも悪の組織らしいものだ。結局、ビッグゴリラ2世はビジンダーに対して、「お前など知らん」的な態度でマウントパンチを見舞う始末で、説得は通じなかった。
ビッグゴリラ2世の戦闘方法はビッグゴリラと全く同じだったが、01のデータを収集していただけあって、ゴリランバズーカは一撃で01の左腕を方から切断せしめた!
片腕だけではブラストエンドを放てまいと大笑するビッグゴリラ2世に怯まずゼロワンカット・ゼロワンキックを叩き込む01だったが、事前のデータ収集によって完全な防御策が施されていたようで、これらの攻撃は―ましてや片腕を欠いた状態では―全く効果を成さなかった。
だが、勝負は横合いからビジンダーがビジンダーレザーを放ったことであっさり終結した。多大なデータを収集し、それに対する完全な防御を鍛錬を重ねたビッグゴリラ2世も、データベースに無い攻撃には弱かったと云うことだろうか?
ともあれ、ハカイダーはビジンダーの度重なる裏切り行為を罵ってドロンし、危ういところを救われた感謝と、結果的に自分の育て鍛えたビッグゴリラ2世を殺めせた申し訳なさで複雑な想いでいる01に対してビジンダーは「それ以上近付いたらビジンダーレザーをお見舞いするわよ!」と云って、その接近を拒んだ。
ビジンダー曰く、01を助けたのは最前01に助けられた借りを返したに過ぎないことで、育て、鍛えたビッグゴリラ2世を殺めた自分の気持ちなど誰にも分からないと述べてその場を去った。
イチロー(←の姿に戻った時には腕も繋ぎ直されていた)はビッグゴリラ親子や自分達兄弟の様な人造人間が多くの場合は破壊や殺戮を目的に作られた悲しい存在であることを認識し直しつつ、その苦悩を乗り越えて自らの決断で生きることをビジンダーの背中に無言で呼び掛けて第33話は終結した。
尚、この最後の呼び掛けを行っていたのは厳密にはイチローではなく、ナレーションだったのだが、ストーリー展開や性格、イチローの表情からナレーションがイチローの想いを代弁したものと見做しても間違いはないとシルバータイタンは考える。
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最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日