キカイダー01全話解説

第39話 強敵宇宙人は空飛ぶ円盤で来る

脚本:長坂秀佳
監督:今村農夫也
宇宙人ロボット登場

 冒頭、夜空に空飛ぶ円盤が現れ、突如町中に砲弾を放ち、建物が壊され、人々が殺されると云うショッキングな始まり方をした。これを目撃したイチローは01にチェンジし、円盤に挑んだ…………太陽電池で動き、日の光が射さない場所では10分の1の力しか発揮出来ないと云う01のアイデンティティとも云える設定はもう完全に忘れ去られているのね(涙)

 ともあれ、01はブラストパワーなる光線を右手から放つも円盤には効き目が無かった様で、ブラストエンドを放たんとするも、到達前に円盤からの砲弾によって撃墜されてしまった。
 重傷を負って橋のたもとに倒れたイチローを見つけたのは湯川一彦(藤田敏美)・ヨシ子(白岩雅子)の兄妹だった。まだ小学生と思しき二人に父は無く、入院中の母を見舞いつつ学業優秀な兄は塾通いをして勉学に励んでいた。
 母親が入院して金が無いため、医者を呼べないとするヨシ子に、半黒焦げ・満身創痍状態ながらイチローは休めば治るとして、ドライバー1本だけを所望した。

 そんな心優しい兄妹の兄である一彦は絵に描いたような優等生で、テストはすべて100点で、順位も当然の様に1位だったが、それゆえに同じ塾生達からの妬みを買っていた。特に2〜4位と思しき少年三人は、一彦がいる為に一位になれず、99点を取っても一彦に負けていることで母親に怒られていたことで、逆恨みとまでいかずとも、「一彦さえいなければ………。」との念に囚われていた。
 三人は塾帰りに円盤が林の中に着陸するのを目撃し、中から宇宙人ロボット 2体が周囲を探り、冷凍ガスや溶解液を発する銃を持っているのを見届けるも、こんなことを大人に話しても信用されないと項垂れていた。だが、その中の一人が「良いことを思いついた!」と云いつつ、とてつもなく悪いことを思いついていた。
 一彦を円盤の着陸した林内に呼び出し、宇宙人の手で一彦を殺させようと云うとんでもない悪巧みだった
 ガキどもの中には一抹の気まずさも感じられないでもなかったが、どうも自らの手を汚さなければ第三者の手で一彦が殺されても構わないと考えており、その動機(?)が「一位になることで母親に怒られなくなる」というものだったのがクソガキのクソガキたる所以だった。
 まあ、クソガキをそこまで追い込む、一位や満点しか認めない教育ママも考え物であることが良く分かる

 結局、翌朝一彦はクソガキの一人に林内に導かれ、円盤を前に息を呑んだ。一方クソガキどもは引き返そうとして宇宙人ロボットを見掛け、次いでワルダーと遭遇して腰を抜かし、土下座して命乞いした。まあ、子供の目には宇宙人ロボットワルダーも得体の知れない怪しい存在にしか見えないが、クソガキどもの小物っぷりが徹底していて、ここまで来ると清々しくすらある(←勿論皮肉である)。
 勿論尋常な果し合いを身上とするワルダーは子供を殺す気など無い。ワルダーを話せると見たクソガキどもは彼を騙し、ワルダーを一彦の元へ遣り、一彦を公園に導いたことで、哀れにも一彦は宇宙人ロボットによって氷漬けにされてしまった。

 この一部始終は、アジトにてビッグシャドゥザダムがモニタリングしていた。円盤及び宇宙人ロボットザダムが主導したシャドゥロボットによる茶番で、ビッグシャドゥの狙いは円盤騒動の調査に来るであろう一流科学者を拉致し、シャドゥの為に働かせることにあった。こんな目立つ円盤騒動の果てに科学者が消えればすぐに官憲による捜査が入ると思うのだがな(苦笑)
 ともあれ、ビッグシャドゥザダムの作戦立案に御満悦だった。

 作戦対象ではないと見たためか、宇宙人ロボットは一彦を用無しと見て、溶解液で溶かさんとしたが、これはビジンダーが阻止した。ビジンダーは宇宙人ロボットがシャドゥロボットであることを見抜いていることを告げ、宇宙人ロボット達は「覚えてろ。」の捨て台詞を残して遁走した。ちなみに宇宙人ロボットの纏う宇宙服の胸部にはシャドゥのロゴが入っていたことを付け加えておこう(笑)。

 その頃、傷の癒えたイチローは(恐らくビジンダーに知らされて一彦の元に向かっていたと思われる)ダブルマシンを走らせていたのだが、そこにワルダーが襲い掛かって来た。だが、イチローはワルダーとの勝負を拒否し、ワルダーの為に一人の少年が氷漬けにされたと告げた。
 自分の為に子供がひどい目に遭ったと知ったワルダーはマリの元を訪れ、心ならずも少年に危害が加えられたことを詫びつつも、自分には何が正義で何が悪か分からないとも告げた。ただ、同時にワルダーが01やビジンダーの様に子供達に一時でも好かれたいと思っていたことも述べていたので、やはり素の心根は真っ直ぐなのが伺える。
 ともあれ、一彦を助ける為には円盤を破壊するしかないとして、ワルダーは自分の命に代えても子供を助けるとしてマリに別れを告げた。

 Bパートに入ると、クソガキの内二人が項垂れていた。やはり目の前で一彦が氷漬けにされたのに罪悪感を全く抱かないと云うのは無理があったのだろう。クソガキの内の一人だけが饒舌に自分達のせいではないことを二人に同意を求める様に口走っていたが、それこそ罪悪感と責任を払拭している様にしか見えなかった。
 そうこうしている内に三人は兄の帰りを待つヨシ子と遭遇し、一彦の帰りを聞かれた際に気まずさもあって、知るもんか的な態度を取った。だが、ヨシ子はそんな三人に気を悪くした風もなく、それどころか一彦が三人に敬意を抱き、三人を良きライバルと見ているから勉学に励めていることを口した。

 自分達が一彦に逆恨み的な悪意を持っていたにもかかわらず、一彦の方ではそこまで自分達を認めてくれていたとあってはさすがにクソガキどもも一彦を助けずにはおれなくなった。どうやら性根までは腐っていなかったようで、三人はワルダーを見つけると彼を呼び止め、騙していたことを詫び、一彦を助けて欲しいと懇願した。
 元より一彦を助ける気でいたワルダーは三人に円盤のある場所まで案内するよう告げ、四人は林内に立ち入った。

 円盤までやって来るとワルダーは三人に先に円盤に向かうよう命じ、拒めば協力しないと告げた。そう云われて恐る恐る円盤に近付いた三人は遭遇した2体の宇宙人ロボットによって忽ち氷漬けにされた。
 新たな得物を得て御満悦の宇宙人ロボット達はワルダーに協力への謝意を述べたが、ガキ三人を宇宙人ロボットに向かわせたのはガキどもへの懲罰の為で、ワルダー宇宙人ロボットに協力する意思が無いことを告げ、一彦を元に戻すよう求めたが、宇宙人ロボットはこれを拒否し、刀の柄に手を掛けたワルダーと一触触発状態となった。

 その頃、氷漬けにされた一彦はイチロー達の介抱を受けていた。
 イチローは自らの機械部分から熱を出して解凍せんとするも、一彦の肉体は危機に曝しただけだった。マリに止められたイチローは一彦を救うには円盤を破壊するしかない、とした。
 だが、先刻承知の様に円盤は頑丈極まりない存在で、これを破壊するには01とビジンダーの力を合わせたブラストレザーなる技しかないと語るイチローと、戸惑いながら同意するマリの表情が難題を伴う技であることを暗喩していた。

 場面は戻って円盤近く。対峙するワルダー宇宙人ロボットとの間にハカイダーが割って入った。ハカイダーワルダーがとても宇宙人ロボットの敵う相手ではないことを示唆して円盤に乗っての逃走を促した。
 当初はハカイダーに手柄を横取りされるのでは?と勘繰っていた宇宙人ロボットだったが、ビッグシャドゥの命令であることを告げられるとあっさり撤収。これを見届けたハカイダーは子供三人を氷漬けに追いやったワルダーを詰り出した。
 ワルダーはガキどもが友人を殺そうとしたことを挙げて罰を与えたものだとしたが、ハカイダーはその友人の危機が(ガキどもに騙されて唆された)ワルダーによるものであることを述べ、ガキどもも改心していたことを告げて、ワルダーを詰った。

 騙されての行動でもあったし、ハカイダーが云っていることを鑑みれば(苦笑)、視聴者的にはワルダーを責める矛先は鈍るところだが、犬の忠実性に恐れを抱くほど自らが善悪を判別出来ない事に苦悩していたワルダーには充分な精神ダメージを与えていた。
 狼狽えるワルダーにもっと苦しめとも罵声を浴びせ、更には背後からハカイダーショットを二撃も見舞ったハカイダーだったが、さすがにここまでされてはワルダーも自分の行いに対する善悪判断を一時置いてでも反撃しない訳にはいかず、頭部のパトランプを回転させて怒りを露わにすると、背後からの銃撃を受けて尚、ワルダーは仕込み杖を駆使してハカイダー相手に優勢に渡り合った。

 場面は変わってとある荒野。
 そこにはハカイダーに促されて逃れてきた宇宙人ロボットとその円盤があったのだが、そこにダブルマシンでもってイチローとマリが追跡してきた。二人は即座に01とビジンダーにチェンジし、2体の宇宙人ロボットとマン・ツー・マンで白兵戦に挑んだ。
 宇宙人ロボットは攻撃の手数も多く、それなりの時間を格闘したが、その攻撃は01・ビジンダーを捉えられず、最期は各々01・ビジンダーに投げ飛ばされたことで鉢合わせとなって爆破炎上する形で戦死した。

 残るは円盤のみだった。だがその円盤にはビジンダーの推察によるとまだ一体の宇宙人ロボットが搭乗していたらしく、上空に逃れると地面にいる01・ビジンダー目掛け、機銃掃射を仕掛けて来た。
 上空から火器で狙い撃ちにされては個人の武技では抗し得るものでは無い。劒桃太郎もヘリからの機関銃攻撃には手も足も出なかったことだしな(←道場主「何の話だ?」)。途中、ワルダーがマシンで体当たりを仕掛けるもダメージを受けた様子は無く、機銃掃射は激化し、01は前述した様にブラストレザーを用いるしかない、とビジンダーに語り掛けた。
 ブラストレザーは謂わば、01がキカイダーと共にはなったダブルブラザーパワーを01とビジンダーのコンビで放つようなもので、ダブルブラザーパワー同様強力な破壊力を持つ一方で、自爆の危険を孕む荒業だった。
 だが他に手段が無いとなってはビジンダーに迷いはなく、二人は腕を組んで合わせた掌から波状の光線を発し、円盤を爆沈すると狙い過たず、宇宙人ロボットによって氷漬けにされた一彦達の体は元に戻った。

 円盤を倒した01とビジンダーは満身創痍のワルダーの元に駆け寄った。半身崩壊状態で試合開始から30分を経たウォーズマンの如く体の各所から煙を発しながら立ち上がったワルダーは介抱を拒むようにしてその場を去っていった。
 ワルダーが自分達の命を狙う殺し屋であることを想えば、満身創痍状態は討滅する絶好の機会と云えるが、常に正々堂々にこだわって来た彼を相手にかかる状態を攻めることなど、01・ビジンダーならずとも好しとはしなかっただろう。
 ビジンダーは体を引きずりながら撤退するワルダーに遣り切れなさを禁じ得ず、二人はただただその背中を見送るしかなかった。唯一の救いは一彦・ガキ三人・ヨシ子が完全に良き友達と化して、楽しげに走り去る姿をイチローが微笑ましく見送っていたことだった。
 さすがにかかる終わり方ではハカイダーのいつもの憎まれ口見送りは無かったのだが、ワルダーとの戦闘はどうやって終わったんだろう?



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日