キカイダー01全話解説
第40話 脱出!! 冷凍ビジンダー危機一髪
脚本:曽田博久
監督:松村昌治
冒頭、坑道らしき場所で数人の男達がシャドゥマン達に文字通り鞭打たれる形で強制労働に従事させられていた。監視員だけではなく、現場監督もシャドゥマンだったのだが、これを演じていたのは潮“地獄大使”健児氏……………めっちゃ似合っていて(笑)、従業者に愛想良くも鷹揚に声掛けしたり、父親を捜してやって来た兄妹に(二人が見せた父親の写真を見て)「そんな奴はおらん。」として危険な作業場から去るよう追い立てていた演技は、「本当にこんな現場監督いるよな………。」と思わせる見事なものだった。
明らかに作業者を酷使して急ピッチで進めている工事はシャドゥの地下要塞建設で、総指揮者はハカイダーだった。地下要塞そのものはハカイダーのタメ口説明をザダムが窘めても笑顔で聞き流すほどビッグシャドゥにとって完成を心待ちにしているものだったらしく、それだけに坑夫達が反乱を起こしたとの報が入った時には瞬時に怒りを露わにし出した。
直ちに鎮圧に向かったハカイダー。そこで見たのは半狂乱になって坑道から鶴嘴やダイナマイトを得物に地獄から脱出せんとする坑夫達だった。だが、その反乱振りはお世辞にも統率の取れたものでは無かった。
どうも過酷な重労働に耐えられず、自棄糞気味に放棄したもののようで、大造と呼ばれた男(長沢大)は勝算の薄さから乗り気ではなかった(話の展開からバレバレだと思うが、兄妹の父親でもある)。
だが、(現実世界にも云えることだが)暴徒化した集団を止めるのは極めて困難である。大造もなし崩し的に仲間に協力したが、ハカイダーは容赦なくハカイダーショットを放ち、ダイナマイトが残り少ないのを見た大造はダイナマイトを奪ってハカイダーの前に出て跪くと降伏を申し出た。
大造は勝ち目がない以上、これ以上抵抗して犠牲者を増やすぐらいなら、と考えての行動だったが、一人だけこの大造に非難の声を上げた者が現れた。ワルダーである。
ワルダーは遠目から大造のリーダーシップを見て、その奮闘に感心していたのだが、その彼が仲間の誰もが口にしなかった降伏を申し出たのを、「仲間への裏切り」と見做して足蹴にまでした。
この辺り、自分でも善悪が分からないと云っているワルダーの性格分析の困難さが見て取れるが、地下要塞建設を急がせたいハカイダーが止め、作業員達は再度強制労働の場に戻されたのだった。
現場に戻りつつ、大造は二人の子供・大助と美代子の為にも何としても生きて帰ることを決意し直すのだったが、その頃その兄妹は寒空の中、泊まる場所もなく、マッチ売りの少女宜しく、人はこのマッチを擦って一本ずつ交互に使用して暖を取ろうとする有様だった。
勿論マッチはあっという間に使い尽くされたのだが、そこへコートを着たマリが通りかかった。マリは美代子の手を摩って少しでも暖めようとしたが、美代子はかなり馬鹿正直な性格らしく、人造人間であるマリの手から温もりが感じられないことをそのままストレートに吐露した。
その悪気が無くとも痛いところを突く台詞にショックを受けたマリは、何としても兄妹の体を温めんとして、自分のコートで二人をくるんで一夜を過ごした(今度は美代子も「暖かい。」と喜んでいた)。
だが、一夜明けるとコートを脱いだマリの顔色は凍死体にしか見えない程真っ青になって意識を失っていた(ナレーションによると余りの寒さに曝され続けてエネルギー転換装置が故障したとのことだった)。
そしてそこをミサオが通りかかったのだが、勿論そんな状態のマリを見て狼狽えずにはいられなかった。マリの身を案じる大助と美代子に「死んじゃったの?」と問われたミサオはマリが「人間じゃないから」としてその生死が判断し難い旨を告げると、二人はマリを「神様」とした。暖を取らせてくれたことに余程感謝していたのだろう。
ともあれ、何とかイチローに連絡を取ってマリを助けたいイチローだったが、彼が来る前にワルダーが現れ、人事不省のマリを連れ去ってしまった。
直後、辛くもタコ部屋労働から逃れてきた大造の仲間(美代子が云うところの「隣のおじちゃん」)がミサオと兄妹の前に現れたのだが、男は大造が仲間を裏切ったと罵って、その場を立ち去った。
その男は林の中で追跡してきたシャドゥマン達に包囲された。その筆頭は例の現場監督なのだが、彼もまたシャドゥマンだった。この第40話ではシャドゥの破壊ロボットは出てこないのだが、潮氏の様なベテランのギャランティを払ったら、新しいロボットを作る程の予算は残されていなかったと云うことだろうか?(苦笑)
ともあれ、万事休すの隣のおじちゃんだったが、そこにトランペットを吹き鳴らしてイチローが高所より現れた。
勿論、いくら潮氏が演じた個体でも、シャドゥロボットが何人いてもイチローの敵ではなく、現場監督も這う這うの体で、それでも現場には大威張りで(笑)戻って来たのだった。
その現場には警備員に扮したミサオが潜り込んでいたのだが、現場監督をこれを見破り、女でも容赦しないとばかりにタコ部屋に連行し、それによってミサオは大造に接触することが出来た。
互いに情報を交換した大造とミサオだったが、ミサオは大造の生き残りへの信念を認めつつも、幼い子供が父親の名誉を非常に気にすることも説いていた。ダークにてプロフェッサー・ギルの子(=ヒロシ)の教育係を務め、その後スリで生計を立てるような人生を送ってきたミサオの前半生が通常人のそれと同じだったとは思い難い。やはり自らの不遇やまともでない親を持ったヒロシへの想いもあったと見えた。
だが、程なく救いの手は現れた。イチローが現場監督を追って工事現場に辿り着き、ミサオが連行されたのを見ていた大助と美代子によってタコ部屋の場所も判明し、イチローは満面の笑みで兄妹に父親もミサオもマリも助けると約束して避難を促した。
そしてイチローが乱入してくると大造は仲間にも秘密にしていた脱出路の存在を明かし、一挙に仲間の信頼を回復すると思に避難を先導した。
作業員達の避難をミサオと大造に託したイチローはマリの行方を追った。そのマリはワルダーによって改造手術室と思しき場に寝かされていた。ワルダーはビジンダーの身体を分析しつつ、エネルギー転換装置が故障しているのを見つけ、その修理を行いもした。
その様子をモニタリングしていたハカイダーは、マリのブラウスの第三ボタンが外されることで核爆発でマリもワルダーも死ねばいいとほくそ笑んでいたが、核爆弾は01抹殺にこそ使われるべきとしたビッグシャドゥの命令で安全装置が遠隔発動され、結果、ビジンダーは一命を取り留めた。
だが、乱入してきたイチローに対してワルダーは、あたかも自分がビジンダーを分解し、その体を「所詮作られたもの。」と揶揄するような台詞を吐き、怒り心頭のイチローとワルダーは果し合いに及んだ。
一騎打ちは鎖で絡め取られた01が逆にその鎖を盾代わりにワルダーの斬撃を防ぐ形で両者せめぎ合う地味な展開を辿ったが、やがて01が戒めを逃れるとゼロワンドライバー、ゼロワンパンチ、ゼロワンカットを駆使してワルダーに対して優位に立ち始めた。
だが、ゼロワンキックを放ったところにビジンダーが割って入って勝負は水入りとなった。ビジンダーが分解されて死んだものと思っていた01は彼女が生きていたことと、自分を裏切ったのか?との疑念に驚愕したが、さにあらず。
ビジンダーがワルダーを助けたのは、ワルダーが自分の持つエネルギー転換装置2つの内1つをビジンダーを譲ってまで蘇生してくれたことへの借りを返したものだった。
勿論、そう指摘されたのを自慢したり、自己弁護に使ったりするワルダーではない。ビジンダーには余計なことを云うなと述べ、01に対してはビジンダーの体を研究的に観察したに過ぎず、結果、ビジンダーより自分が強いと確信しただけだと告げた。
勿論、敵に対して照れ隠し的に意地を張った台詞であることはモロバレで、それゆえ殺し屋に徹して次こそ01をバラバラにすると宣言しつつ立ち去るフラフラのワルダーを、やはり前回同様01もビジンダーも追撃することなく見送るのだった。
そしてラスト。ミサオの先導で強制労働の地獄を逃れた作業員達を大助と美代子が出迎え、兄妹は父親との再会を果たし、ナレーションは兄妹の心にマリの温かさが生涯残るであろうことを言及していた。
そしてダブルマシンで去るイチローを見送っていたが、今回はワルダーだった。ハカイダー同様、01打倒を誓うワルダーだったが、その趣旨は「殺し屋に徹する。」というものだった。
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最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日