キカイダー01全話解説

第42話 同志討ち 火を噴く影法師銃

脚本:長坂秀佳
監督:畠山豊彦
影法師ロボット、ゼロワン影、ビジンダー影、ワルダー影登場


 冒頭、とある寺社の境内と思しき場所で数人の子供達が影踏みに興じていた。するとそこへ光線のようなものが照射され、それによって生じた影法師がそのまま立ち上がって襲い掛かって来た。
 子供達の一人、タカシという少年が息せき切って帰宅し、母に助けを求めるもこの手の展開のお約束で、タカシの言を答案を見せない為の誤魔化しとしか捉えず、「この目で見たんだから!」と云っても、「ママもこの目でテストが見たいの。」と返し皮肉振り。
 話にならないと見てか、タカシが出した答案は85点。これを見た母親の反応は「どうしてあなたはこんなに頭が悪いの?」いう酷評だった。

 普段の平均点数や、テストの難易度によっては85点で怒られることは確かにあるだろう。個人的な例を持ち出せば、学生の頃の道場主は80点台で「普通」、90点以上で褒められ、80点を下回ったら叱られた。また同級生の中には100点満点でなければ叱られるという厳しい環境に育った者もいた。
 勿論、野比のび太なら65点で大いに褒められたし、出木杉君なら85点で先生に心配された。それゆえタカシの母が85点に怒ろうと喜ぼうと何とも言えないが、「こんなに頭が悪い」とはかなりひどい表現である。テストの問題数が20問だとすると、後3問正解すれば満点な訳で、少なくとも基礎学力はしっかりしている筈で、「こんなに頭が悪い」は満点以外認めない完璧主義者の当たり散らしでしかなく、こんな育て方をしてはいけないな…………って、それ以前に道場主は独身だったな………ぐえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…………(←道場主の死のティータイムを食らっている)。

 げほげほげほ………ともあれ、この母親は結局タカシの言を信じず、勉強しろの一点張りだった。どうやらタカシを東大にやりたいようで、自分の言を信じてもらえないことを嘆くタカシに辛うじてまともに答えたのは、影法師を捕まえたら信用すると云うものだった。チョット揚げ足を取るが、この母親、タカシが「羆が出た!」といったら「羆を捕まえたら信用します。」と云うのだろうか?俺ならとても「捕まえて来い。」とは云えんな………。

 場面は変わってシャドゥアジト。
 そこではザダムが今回の作戦概要をビッグシャドゥに説明していた。ザダム苦心の照射装置を当てると、そこから生まれた影法師が3分間だけ実体化すると云うものだった。
 たった3分しか活動出来ないロボットだが、影法師ロボットの戦闘能力はオリジナルの2倍で、その性格はオリジナルとは正反対になると云う2点の特徴があった。

 場面は変わって、ミサオ達が寝っ転がっていた寺社。そこに影法師ロボットが襲い掛かって来た。幸い、影法師ロボットはマリに蹴散らされたが、そこへ母親に自分の言を信じてもらうべく証拠の獲得にやって来たタカシが乱入したことで、ミサオ・ヒロシ・アキラはタカシの為に母親に彼の云っていることが事実であることを証言しに行った。
 勿論、これで信用する母親なら苦労は要らない。ただ、ミサオ達の証言を「タカシの嘘に協力している。」と云いつつも、口調や態度は邪険ではなく、せっかく来たのだからゆっくりしていくよう促していた。その際にタカシの勉強の邪魔だけはしないようにと釘を刺していたから、恐らくは教育ママ過ぎて視野が狭くなっているだけで悪い人と云う訳ではないのだろう。

 その頃、シャドゥアジトではワルダービッグシャドゥ影法師ロボットによる作戦を中止するよう要請していた。理由を云えと問われて答えたのは、01抹殺が自分に託された契約故他者にとられたくない、ということと、シャドゥの作戦が卑劣で自分の気に召さないから、というものだった。
 勿論、それを「はい、そうですか。」と聞き入れるビッグシャドゥではない。ただ、それに対する反論は、嫌ならお前が先に01を殺れ、というもので、ある意味正論だった。つまりビッグシャドゥは作戦遂行自体は止めないものの、ワルダーが契約通りに01を倒すのは自由と云った訳で、そう断言されてはワルダービッグシャドゥの御前を辞して01討伐に向かうしかなかった。
 本音と正論がぶつかり合った、悪の組織には珍しいワンシーンだった(笑)。

 場面は変わってミサオ達が寝そべっていた寺社。そこにやってきたイチローにシャドゥマンと影法師ロボット達が襲い掛かって来た。勿論こいつらに不覚を取るイチローではないが、影法師ロボットを交えたシャドゥマン達は普段よりも数が多いこともあってやや手強かった(勿論比較の上でしかないのだが)。珍しくシャドゥロボットもいないのに01にチェンジしたが、それこそがシャドゥの待っていた瞬間だった。
 狙い過たず、影法師ロボット製造光線が照射され、ゼロワン影が誕生してしまったのだった!その容姿は胸部プロテクターが黒一色なこと以外は01と瓜二つだった。
 もしこれが01の偽物を世に放って世間の信用を失墜させる作戦ならショッカーライダー同様、「色でバレバレだろ!」というツッコミを入れたいところだが、純粋にオリジナルを上回るコピーで襲わせる作戦なら、味方の加勢の観点からも納得の出来るスタイルである。
 かくして01対ゼロワン影の一騎打ちが展開されたのだったが、これはなかなかよく出来た殺陣だった。正面からのぶつかり合いでは性能の差でゼロワン影に分があり、01はマウントポジションを取られてしこたま殴られるシーンもあった。だが、他の偽物シリーズにも云えることだが、本物には「場数を踏んで来た」と云うアドバンテージがあり、01は側面攻撃などで急場をしのぐ形でゼロワン影の攻撃をしのぎ続けた。

 その頃、タカシの家では影法師ロボット製造装置が迫っており、母親の影法師ロボットが生まれたことでようやく母親は自分がタカシの言を信じなかった非を認めて謝罪したのだが、そんな母を守ろうとしたタカシは影法師ロボットによって拉致され、母親は泣き崩れてしまったのだった。
 直後、イチローが駆け付けたのだが、ゼロワン影との対決がどうなったのか(←恐らく3分経過したのだろう)?なぜシャドゥにタカシを拉致する必然性があったのか?どうも良く分からない展開を辿りつつAパートは終わった。

 Bパートに入るとビジンダーがシャドゥマンと影法師ロボットの一団と殺陣を展開していた。勿論ビジンダーが不覚を取る訳ではないのだが、かなり披露しており、そのタイミングを見計らったようにハカイダーが現れた。
 ハカイダーが云うには、マリは既に朝から100体以上のシャドゥマン・影法師ロボットと対戦しているとのことで、これによって疲弊したマリを倒しに来たのかと思いきや、ハカイダー影法師ロボットを使った作戦への興味が強く、ビジンダーもまた製造装置の照射を受けんとした。
 だが、そこに割って入ったのはワルダー影法師ロボットを利用した作戦を好まず、自分がビジンダーの代わりに製造装置の照射を受けることで正義の心を持ったワルダー影を生み出し、ハカイダーの作戦を妨害せんとした。
 ワルダーの狙いは半分図に当たり、半分外れた。元よりワルダーハカイダーより強い。それが2倍になっているのだから、ワルダー影によってハカイダーはあっさり撃退された。
 誤算だったのは、正悪の判別がつかないのはワルダー影も同様で、それどころか契約や信念を重んじる性格は正反対だったのだから、勝手気ままな輩と化しており、シャドゥマン達にまで襲い掛かり、遂には製造装置を勝手に動かし、結果、ビジンダー影が生まれてしまった。

 ワルダー影は首から下が黒尽くめ、ビジンダー影は手袋だけがオリジナルと異なっていたが、厄介極まりない存在で、ビジンダーもワルダーも自分の影に敵わず、ビジンダーは投げ飛ばされ、ワルダーは改めて善悪を判別する心が欲しいとの念に身悶えするのだった。

 そしてビジンダー影に敗れたマリだが、気絶しているところをヒロシとアキラに発見された。マリはタカシ宅にてイチローによる修復を受け、母親の懇願を受けて01とビジンダーはとある荒野に向かった(後の台詞によるとシャドゥに呼び出されたらしい)。
 そこにはタカシを小脇に抱えたハカイダー影法師ロボットの製造装置が待ち受けていた。タカシの返還を迫る01に、「お前たちがくたばってからだ。」と云って、シャドゥマン達に攻撃を命ずるハカイダー。勿論、01とビジンダーの敵ではないのだが、ハカイダーはタカシにハカイダーショットを突き付けて抵抗中止を命じた。
 だが、ハカイダーショットは卑劣なやり口を憤ったワルダーに弾かれ、ワルダーは01とビジンダーに味方すると云い出した。ただ、そんなワルダーの思考は読まれていたものか、ハカイダーが指笛を噴くとシェパードが召喚され、忽ちワルダーは無力化された。丸で海坊主と猫だな(苦笑)。余談だが、指笛の音色はプロフェッサー・ギルの悪魔の笛と同音だった(爆笑)

 だが、対ワルダー対策において直後にハカイダーは致命的なミスを犯した。影法師ロボットの製造装置をワルダーに向けて照射したことで再度ワルダー影が生まれたのだが、ワルダーと正反対の性格のワルダー影にとって犬は大得意且つ、即座に倒す相手で、これによってワルダー影がシェパードを蹴散らしてしまい、その間隙を縫って01のブラストエンドで製造装置は破壊された。
 かくして体の自由と取り戻したワルダーワルダー影の一騎打ちとなった。勝負はぶつかり合いではオリジナルがやや不利に見えたが、弾かれた刀を上手く処理したワルダーがそれをワルダー影の胸に突き立てることに成功したことでオリジナルが勝利した。

 かくしてシャドゥの悪巧みは粉砕され、タカシは改心した母の元に戻り、ストーリー的には大団円だったのだが、雰囲気としては寂しかった。ワルダーは複雑な胸中にあったようで、しばしイチロー・マリと対峙すると無言のまま背を向けてその場を去り、マリはマリで自分が作られた存在であることへの悲しみを抱えて彷徨い、ダブルマシンで走り去るイチローを今回はハカイダーザダムも見送っていなかったのだった。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日