キカイダー01全話解説

第43話 ビジンダーに恋した若者

脚本:長坂秀佳
監督:畠山豊彦
アクアラングマン登場


 冒頭、シャドゥ基地ではシャドゥがエネルギー不足に頭を痛めていた。『キカイダー01』が放映された時代、世界はいずれやって来る石油の枯渇に云い知れぬ不安を抱えていた(勿論現代にあっても完全解決された訳では無い)。
 石油が無くてはシャドゥロボットの製造も出来ないと憤るビッグシャドゥに、既にその対策は出来ているとザダムは答えた。人間が血液を循環させて生命活動を行っている如く、海水を血液代わりに動くシャドゥロボット―アクアラングマンの開発・量産化に成功しているとのことで、海水を石油に代わるエネルギー源にすると云うことが現実世界で出来るなら、画期的極まりない快挙と云えよう。
 ただ、この新進気鋭のアクアラングマン、そのスタイルは黒いフルフェイスヘルメットと黒いマリンスーツを着ただけのもの…………第26話の解説や、それ以降も度々触れたが、キモノドクガ影法師ロボットサタンを見ていても、世界のエネルギー以前に番組の予算の方が枯渇していたとしか思えなかった(涙)。

 ともあれ、量産されたアクアラングマンは町に放たれ、無差別テロを方々で起こした。そんな中、マリは海岸で寂しそうに海を見つめる一人の少年・行夫(宮田真)に出会った。行夫は「海から現れたロボット」によって目の前で父親を殺されており、その仇を討つべく海を見張っているとのことだった。
 そこにアクアラングマンの一隊が現れた。アクアラングマン自体は行夫の父の仇ではなかったが、アクアラングマンは当然の様に襲い掛かって来るし、ロボット自体を忌憎む行夫も子供ながら応戦するので、マリは複雑な気持ちを抱えつつも応戦せざるを得なかった。  シャドゥマンより数段強いとはいえ、数体でもマリに応戦出来ない戦闘レベルではなかったが、無茶する行夫を庇いながらでは苦戦は否めなかった。

 するとそこへ1本の銛が飛んできた。銛を投げたのは一人の青年・峠英介(千葉治郎)で、女子供を襲う奴は許せないとばかりに乱入してきたのだが、アクアラングマンがロボットと知ると更に戦意を燃やし、復讐の為に体得したと云う空手技を駆使してアクアラングマンをちぎっては投げ、ちぎっては投げ…………アカン、どうしても滝和也に見えてしまう(苦笑)

 ちなみに拙房を閲覧下さるような方々に、「滝和也?誰それ?」と仰るような方はいないと思う(仮面ライダーシリーズは全く見たことない方や、昭和ライダーシリーズを見たことが無い若年層にはいらっしゃるかもしれないが)が、もしそうならこんな中途半端な「全話解説」(苦笑)よりも、『仮面ライダー』のDVDなり、Blu-rayなりを閲覧することをお勧めする。

 話を戻し、少し話が先走るが、英介は一介の漁師で、復讐の為に空手を体得したと云え、FBIの匿名捜査官の様な訳にはいかず(苦笑)、時間の経過とともに3体のアクアラングマン相手に劣勢に追いやられた。
 だが、それでも英介はマリ達の助けを拒み、「こいつらは俺が倒す!」としていた。勿論そう云われたからと云って指を咥えて見ているマリではなく、結局英介に加勢し、アクアラングマン達を蹴散らした。
 マリの膂力に驚嘆しつつも、礼を述べる英介だったが(ちなみに名乗ったのはこの直後)、マリの心中は複雑だった。と云うのも、直後に放たれた「俺はロボットだけは許せねぇんだ!」の発言にショックを受けない筈が無かったからである。
 それゆえ、戦闘で負傷した個所(←傷口を見ればロボットであることが一目瞭然だった)を手当てすると云う英介の申し出を頑なに拒み、無理やり行夫を託す形でその場を立ち去った。
 その間、一連の流れを岩陰からワルダーが見ていたのだが…………ストーカーと化してないか?(まあこの当時「ストーカー」という言葉は無かったが、同様の行動パターンを辿る奴は遥か昔からいただろうな)

 その頃、イチローもまたアクアラングマン達と白兵戦を展開していた。が、やはりと云おうか当然ながらと云おうか、アクアラングマン達は「シャドゥマン達よりはマシ」程度の抵抗しか出来ず、撤収した。
 おまけにエネルギー源となる海水を使い果たしたらしく、海岸で這いつくばって海水を補充する有様で、ビッグシャドゥは「これでは強くても役に立たん。」とお冠状態だった。これに対してザダムは原因を「設計ミス」として、本物の人間を拉致・解剖して研究し直させると提言。それを容れたビッグシャドゥはモニターに映っていた英介と行夫を、口封じも兼ねて解剖するよう命じた。

 直後、自宅近くまで来たところで行夫はここで良いとして、英介と互いがロボットを憎んでいることを吐露し合って協力を誓っていたところでシャドゥマン達に襲われた。劣勢気味とはいえアクアラングマン3体と渡り合っていた英介にとって、1対1体のシャドゥマンは然程手強い相手とは見えなかったが、数が多い上に行夫を庇いながらとあっては、程なく断崖絶壁に追い込まれた。だが、そこへ01が乱入。英介は01に助けられる形となったのだが、悲しいかな、英介にとっては01もまた「憎むべきロボット」の例外ではなく、01に襲い掛かった。
 勿論01に人間である英介は攻撃出来ない。ロボットを憎む訳を尋ねても、返って来たのは「貴様がロボットだからだ。」という身も蓋も無い理由。堪りかねた01はダブルマシンでその場を去るしかなかった。

 英介はバイクに乗って01を追ったが、マシンの性能からか追いつけず見失う形となった。悔しがる英介の目に飛び込んできたのはマリとワルダーの格闘。マリが人造人間であることを知らない英介には自分の危機を救ってくれた女性がロボットに襲われている様にしか見えず、マリを助けんとして飛び込んできたが、如何せん相手が悪かった。
 如何に英介が一青年としては屈強でも、殺し屋を生業とする剣豪ロボットには抗し得ず、あっさりと気絶に追いやられた。おまけにマリと英介の最前の様子を見ていたワルダーには嫉妬的な憎悪も垣間見え、ワルダーは既に気絶している英介にとどめすら刺そうとしたが、これはマリがビジンダーとなって止めに入った。

 ビジンダーはワルダーが普段と比べておかしいことを指摘。ワルダーにもその自覚はあり、英介に対して尋常ならざる悪感情を抱き、それに突き動かされる自分に嫌悪してもいた。ただ、嫉妬という概念が無いようで、それゆえに負の感情が如何なる由来の者か分からないことも苛立ちに拍車を掛けていた。これが嫉妬の塊男であるうちの道場主なら原因究明自体は簡単なんだがなあ………何せ片想いしていた女性が彼氏とラブホテルから出て来たところを偶然目撃してしまった時の道場主が周囲の人間が三日間近寄りたがらなくなるほど嫉妬に歪んだ顔を………ぐえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ………(←道場主のセントへレンズ大噴火を食らっている)。

 ぜはぜはぜは………ともあれ、そうこうしている内に英介は意識を取り戻した。意識を朦朧とさせていた状態でマリと見ていた相手がビジンダー=ロボットと気付いた途端、英介は例外はないとばかりにビジンダーに敵意をむき出しにして、マリをどうした?と詰問しつつ殴り掛かって来た。
 勿論ビジンダーに英介を攻撃することは出来ず、マリが無事であることを告げるも、本人の姿が見えない状態では英介が信用する筈が無かった。答えに窮して、マリもまたロボットだと英介に告げるも、これは英介を更に怒らせただけで、結局英介が駆け付けて来た行夫に気を取られている隙に姿を消すので精一杯だった。

 傷心状態で海岸に立ち尽くすビジンダーにイチローが慰める様に、英介にビジンダー=マリであることを明かして誤解を解くよう促したが、ビジンダーはこれを拒み、二度と英介の前にマリの姿で現れないと断言した。
 ビジンダーはマリを初めて好きになってくれた男性の心を「マリ=ビジンダー」と明かすことで傷つけてしまうことを恐れていたが、これは恐らく「マリ=ビジンダー」と判明することで英介がマリをも嫌いになることを恐れたからだろう。そんな思いが昂じて、ロボットは人間に惚れられてはいけないとまで云い出したが…………うーん……このビジンダーの台詞をジローや光明寺ミツ子やミサオが聞いたら何て思うかなぁ…………。

 場面は変わって川良なるホテル。そこに宿泊していた英介が行夫を連れてやって来た。どうやら英介はここにマリンスーツや銛を置いていたようで、武装を整えると自分の父親、行夫の父親、そして殺されたかもしれないマリの敵を討つとして海中に入り込まんとした。
 そこへビジンダーが現れ、英介の潜入が無謀であることや、マリが海中にいないことを伝えたが、英介はその否定をマリが海中にいる証拠とする始末。ロボットの云うことなど信じられないとする英介にロボットにも善い者と悪い者がいると告げるも、その弁明も「正体を現したな?」と捉えられる始末だった。

 だが、勝負(?)は妙な形で水入りとなった。
 ビジンダーと英介が対峙している隙に行夫がアクアラングマン達に拉致され、英介はビジンダーそっちのけでアクアラングマン達を追って海中に入り、海底にあるシャドゥ基地へ潜入した(←恐るべき肺活量だ(笑))。

 少し話が横道に逸れるが、ビジンダーと英介の対峙中、アクアラングマンが行夫を拉致したのを見た時、シルバータイタンは「こいつら阿呆か?」と思った。英介のロボット憎悪によってビジンダーは明らかに精神的に追い込まれており、英介に殺されることは無いにせよ、いずれは進退窮まって英介に抵抗するだろうから、それまで静観して弱ったビジンダーを攻めれば勝算は上がっただろうに、藪蛇なことをするもんだ、と捉えていた。
 だが、海底基地での会話を聞いて合点がいった。現状アクアラングマン達の海水によるエネルギー補給システムは不完全極まりなく、それ故に彼等は「海の近くでしか活動が出来ない。」とぼやき、その解決の為にも行夫の解剖を急がせんとしていた。
 成程、これならアクアラングマン達が空気も読まずに行夫拉致を優先した気持ちも分からないでもない。そこまで考察せず、阿呆と断じていたシルバータイタンもまだまだ読みの甘い男とであることを自覚させられてしまった(苦笑)。

 ともあれ、海底アジトに潜入した英介は解剖されそうになっていた行夫を、水中中で電源部分を壊すことで救出した。照明自体はすぐに復旧され、英介は忽ちアクアラングマン達とシャドゥマン達に囲まれてしまったが、今度は多人数を相手に立派に立ち回った…………やっぱり滝和也にしか見えない………千葉治郎さんごめんなさい(苦笑)。
 かくして何とかアクアラングマン達とシャドゥマン達を蹴散らした英介だったが、そこにハカイダーが立ちはだかり、その姿を見た行夫はハカイダーこそが父親を殺した張本人であることを断言した。そんな指摘に対して、ハカイダーは行夫の父が海底工場を目撃した故に口封じに殺したことを笑いながら話した。
 更にハカイダーは行夫を父親の元に送ると宣し、そんなことはさせんと立ちはだかった英介に対しても、「峠博士の一人息子だな?」と云い出し、驚いた英介が「親父を知っているのか?」と問えば、シャドゥへの協力を拒んだために自分が殺したことも話し、「バレちゃあ仕方ない。」と笑っていたが、問われもしないのに自分でばらしていたな、殆んど(苦笑)

 いずれにせよ、英介にとっても行夫にとっても父の仇が判明し、目の前に現れた訳で、激昂した英介が挑みかかるも、ハカイダー自身直後に云い放っていたように、人間の力では抗し得なかった。いくら最近ビジンダーやワルダーに叩きのめされることが多いとはいえ(苦笑)。
 ハカイダーアクアラングマンに殺されてしまえ、との憎まれ口をたたいて姿を消し、入れ替わりに数体のアクアラングマンが乱入してきた。勿論黙ってやられる英介ではなく、行夫を庇いながらも滝和也以上の大殺陣を演じて必死にアクアラングマン達に抵抗した。
 かなりの善戦後、さすがに多勢に無勢で取り押さえられかけたところで01とビジンダーが乱入。さすがにロボット不信の英介もビジンダーに行夫を連れて逃げるよう促されては否も応も無かった。ちなみにこの時01はアクアラングマン達に対して、「海底工場と一緒に死んでもらうぞ!」と云い放っており、01が殺意を露わにする珍しいシーンを垣間見せていた。

 英介は行夫を連れて地上目指して泳いで逃げ、それを追うアクアラングマン達は01が迎撃した。そして01とビジンダーがアクアラングマン達を蹴散らして程なく、海底工場には雷撃のようなものが降り注ぎ、海底工場は爆破・炎上した(多分ブラストレザーによる攻撃と思われる)。
 かくしてシャドゥの悪巧みは今回も潰された。一足先に海岸に出ていた英介は後から上がって来た01とビジンダーに対してロボットにも善人と悪人がいることを理解したことを告げ、2人にそれまでの非礼を謝罪した。
 さすがに危ないところを救われては認識を改めない訳にはいかなかったようで、それ自体は良かったのだが、次いで問われたマリの行方をビジンダーは答えられず、二度と英介の前に現れないと告げたが、英介は満面の笑顔で探し出す、と宣言するのだった。

 そしてラストシーン。去り行くマリとイチローを今回見守っていたのはワルダーで、01に対して近々決着を付ける旨を宣したのだが、勝利を誓った相手はビジンダーだった。



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 最終更新 令和四(2022)年一〇月二一日