ウルトラマンレオ全話解説

第13話 大爆発!捨身の宇宙人ふたり

監督:前田勲
脚本:田口成光
透明宇宙人バイブ星人登場
初めに この第13話の解説を開く前に、今回登場するバイブ星人の名前に対してシルバータイタンがどう言及するか、とニヤニヤしながら読み始めようとしている方もいると思う。

 いきなり期待を裏切るが、「全話解説」の趣旨を重んじ、名前については多くの書籍やサイトで言及されていることを踏まえ、バイブ星人の名前については言及しません。悪しからず(苦笑)。

 画面が上空から街を映したアングルが回転するように始まると、次の瞬間街中をゲンが透明宇宙人バイブ星人を追っていた。ビルの谷間を縫ってバイブ星人が逃げる前方からはパトカーに乗った二名の警察官が立ちはだかった。
 追い込まれたバイブ星人は空中に飛び上ると体をでんぐり返しの様に高速回転させ徐々にその姿を透明化した。
 それを追って飛び蹴りを放ったゲンだったが、命中した様子はなく、三人がその行方を訝しんでいたところ、ゲンの腰からMACナイフが抜き取られた。異常に気付いたゲンがナイフを掴もうとしたところ、ナイフはタッチの差でゲンの手を逃れたため、その手の動きはナイフを投げたような動きを辿ったものとなった。
 そして投げられたナイフは警察官の左胸―心臓に命中し、警官は僅かに苦悶の声を残して絶命した。
 警官の同僚は愕然とするゲンに、「君が、君がやったんだ!」と断言。勿論ゲンは否定したが警官はゲンを殺人の現行犯で逮捕した。
 いや、確かにゲンの動きはナイフを投げた様に見えたけど、「ついさっき目の前で姿を消した宇宙人の仕業。」ということを欠片も考えなかったのだろうか?この警官は?
 眼前で同僚が無惨な死を遂げて冷静な判断力を失くしたことを差っ引いてもゲンを逮捕した短絡さはチョット酷かった。

 場面は替わってMACステーション。
 ダン隊長以下、チームの面々が沈痛な表情でいる中、意気消沈したゲンを伴って一人の初老の人物が入って来るとダンは敬礼を示した。ゲンを連れて来たのは初登場となるMACの高倉長官(神田隆)。
 ダンの要請に応じて警察からゲンの身柄を引き取って来たとのことだった。(経緯はどうあれ)殺人容疑者の身柄を警察から引き取って来れたのだから大した権力者である。
 第二期ウルトラシリーズにて防衛組織の高位の地位にある大権力者には鼻持ちならない人物や横暴な人物が多かったのだが、高倉長官は普段悪役の多い神田隆氏の役所と真逆に懐の深い人物で(笑)、何よりダンを深く信頼していた。
 ゲンの容疑が完全に晴れていないことや、そのゲンがダンの推薦でMACに入隊した経緯からもダンの責任の重さを説きつつ(←ダンはこれを全面肯定した)も、ダンのこれまでの輝かしい功績に免じて、会議にて提起されたダンの隊長更迭論が見送られたと告げた。
 つまり、罪や失態をはっきりさせた上で、ダンに対する信頼が上回っていることを明言した訳である。高倉は処分が見送られたことに付け加えて、「しかしモロボシ君、二度と繰り返してくれるなよ。君の様な有能な男を失いたくないからな。」と、忠告とも激励とも取れる言葉を贈った。過去作でも触れたことがあるが、同名のTACの長官とは段違いである(笑)

 おそらく高倉長官は状況やMACの任務を警察に話し、長官やMAC隊長が責任を持つことを約束してゲンを保釈させたのだろう(実際、ゲンの処分は完全にダンに一任された)。ダンは警官殺しがバイブ星人の仕業と弁明するゲンに「そんなことは分かっている。私はお前の迂闊さを責めているのだ。」とした。
 同時にダンは改めてゲンと自分がこの地球を故郷とし、愛するたった二人の宇宙人であることを説き、地球を守る為にもMACに居なくてはならない旨も告げた。そしてゲンにはこの事件から手を引くことを命じた。
 自分が抜けた状態でどうバイブ星人と戦うのかを訝しげるゲン(←その態度が他の多員達の反感を買っていることを忘れたのか?)にダンは自分が倒す、として重ねてゲンには一週間の停職を命じた。


 図らずも休暇に入ったゲンだったが、百子、トオル、カオルと釣りに来ていても心ここにあらず状態だった。自分を殺人罪に陥れたバイブ星人の行動を思い起こす内にゲンの脳裏には先の警察官が殺されたシーンや、高倉長官に責任を問われるダンの姿がフラッシュバックし、悔しさの余りゲンがその名を叫ぶと、丸でそれに呼応した様に当のバイブ星人が現れ、忽ち百子・トオル・カオルを抱きかかえる様にして人質状態とした。

 即座に青島以下、MAC隊員達も駆け付けてくれたが、勿論不用意には手が出せない。一同が切歯扼腕する中、ゲンは発信機の様な物(MACのロゴ入り)を川中に投げ込んで、バイブ星人がそれに気を取られた隙に素早く背後に回り込んで三人を救った(←戦術的にもアクション的にもこの時のゲンの動きはなかなかに見事である)。
 人質を失ったバイブ星人は明らかに格闘ではゲンに劣っていたが、素早さには優れており、直後のMAC隊員達の集中砲火も何とか避けて逃走に掛かった。それに対して怒り心頭のゲンは他のMAC隊員達の呼び掛けも黙殺してバイブ星人を追跡した。

 逃げたバイブ星人がやって来たのは工事現場。そこには四人の作業員達がいたのだが、ゲンは言った、「そいつを捕まえてくれ!」……………2週間前、それでマイティ松本が殺されたのを忘れたのか?
 ゲンに呼応して「おっ!星人だ!殺っちまえ!!」と鉄パイプを構える作業員達も、何だか、であるが(←本作に通り魔的宇宙人が続出したことを考慮に入れても、「星人=抹殺対象」の図式は些か悲しい)、この時もやはりバイブ星人は追い詰められた直後に姿を消し、ゲンの鉄パイプを掴み、それを作業員の首に投げつけたことで初老の作業員は殺されてしまった…………。

 つまり、マイティ松本や警察官が殺されたときと同じ轍をゲンは踏んでしまった事になる…………これは状況的にも警察官殺害時よりもまずい。先の場合、ゲンも警察官も職務中で、任務として通り魔的宇宙人と対峙していた。
 だが、この時のゲンは謹慎中で、職務外である。勿論MACガンやMACナイフも携行していない(警察官だって、職務規定外では拳銃の携行を許されない)。まして作業員達は突然現れた星人とそれを追う男(←状況的にMAC隊員かどうかは分からない)によってなし崩し的に戦闘となり、殺されたのである。
 また、透明化後に鉄パイプを奪われたゲンの動きに「何やってんだ、コイツ?」と作業員達は言っており、狂った男がいきなり鉄パイプを投げつけた様に見える。直後に追い付いてきて、作業員の死亡を確認するや、「おヽとり、貴様なんてことを!」と激昂していたので、それこそゲンは殺人犯になりかねなかった。

 唯一の救いは、直後にからかうような高笑いと共にバイブ星人が姿を現し、ゲンも「あいつがやったんだ!」と叫べたことだろう。バイブ星人が妙なアクションの末に姿を消したのは土木作業員達も見ており、MAC隊員達も知識としては知っていたから、さすがに即座にゲンを嘘吐き呼ばわりすることはなかったが、それでもゲンの対応で死者が出たことと、事態が重大なことに変わりはなかった。
 それにしてもバイブ星人、今現代の視点で見ると名前も相当ふざけているが(苦笑)、その笑い声もかなり人を小馬鹿にした様な聞き心地の悪いものだった(鬱陶しさでは『ウルトラマンタロウ』のライブキングに次ぐとシルバータイタンは思っている)。

 もう許せん、とばかりに尚も単身バイブ星人を追う、学習能力無さ過ぎなゲンだったが、とあるトンネルを出たところでダンの杖に足を払われて追跡を阻止された。
 ダンはゲンの深追いがまた一人の犠牲者を出したこと(と同時にそれでも自分の手で何とかしようと焦るゲン)を激しく詰り、制服を着ていなくてもMAC隊員であることを告げた。
 ダンの言わんとすることを理解出来ないゲンではないのだが、それでもバイブ星人を自分の手で何とかしなくては気が済まない気持ちと、MACに累が及ぶことを懸念する気持ちから遂にはMAC退職を申し出、ダンがそれに驚くのを尻目に、返事も待たずにその場を去った(激昂したダンに杖をぶつけられても、痛みに耐えながらその場を去った)。

 事ここに至って、ダン(及びMAC)はどうあってもバイブ星人を倒さなくてはならない状況に追い込まれた。二度目の不祥事(←例えそれがバイブ星人の罠であることが明白であったとしても)に厳しい視線を向ける高倉長官にダンは星人を倒し、ゲンの無罪を証明すると宣言した。
 一方、山中で一人空手修行に明け暮れるゲンも、これまでの展開(犠牲者の悲惨な最期、高笑いするバイブ星人、自分が倒すと宣言するダン)を思い浮かべては、ダンが死ぬ覚悟であることを悟り、一刻も早く何とかしなくては、との念を強めていた。

 責任問題も重要だが、バイブ星人の透明化能力もそれと同等かそれ以上に問題だった。ゲンは技を磨きつつも、透明化したバイブ星人の姿を捕えられなければそれが役に立たないことに苦悩した。
 一方、立場上冷静に努めているダンだったが、個人としてはゲン以上に焦りと怒りを感じていた。溶融したウルトラ・アイを見つめてセブンに変身出来ない身を嘆き、手にしていた定規を激昂の余りダーツの的に投げつけると云う荒れ振りを見せた(それに悲鳴を上げて花瓶を取り落とす白川が哀れでもあり、可愛くもあり(笑))。
 だが、この自棄糞行為で揺れる定規を見たダンは星人透明化のヒントを得たのだった。

 程なく、東京にバイブ星人が現れたとの報が入り、ダンはMACの名誉の為にも星人を倒さなくてはならない旨を告げ、一同に出動を命じた。
 隊員達は逃げるバイブ星人を四方から包囲したので、バイブ星人は即座に透明化に入った。隊員達が狼狽する中、振動音に注聴したダンはそこにビデオカメラを向けた。折しも、青島のMACナイフが抜き取られ、警官殺害時同様の悪用が為されんとしたが、その刹那ダンの放ったMACガンがそれを阻止した。
 地面に落ちたMACナイフに青黒い血が滴り落ちた次の瞬間バイブ星人がその姿を現した。好機とばかりにMACガンを一斉に発射する隊員達だったが、バイブ星人は逃げおおせ、ゲンの二の舞を避ける為に深追いを禁じたダンはMACステーションに帰投した。

 そして場面は替わってMACステーション。ダンは最前撮影したフィルムを隊員達(及び視聴者(笑))に披露し、バイブ星人の透明化メカニズムを解説した。
 つまり、自転車のスポークや飛行機のプロペラ同様、肉眼では捉えられない振動(バイブレーション)が透明化を為していた訳で、コマ送り可能なカメラのレンズはしっかりとバイブ星人の奸行を捉えていた。
 これは決定的な証拠である。バイブ星人が姿を消し、それを悪用した一連の動きが完全に捉えられ、メカニズムと悪行の双方が一目瞭然となっていたのだから。青島はゲンが嵌められたことが明らかになったことを喜び、すぐにゲンに知らせようと進言した。
 それに対してダンは(事態の重さからも)無罪証明ぐらいでゲンは帰って来ないとしたが、MAC隊員達はそれを振り切るようにゲンのMACシーバーに連絡すべし、としてダンの返答も待たずに連絡に掛かった。

 このシーンは好きだ。
 普段独断専行や隊長からの妙な贔屓にゲンへの不信を口にすることの多い青島を初めとする隊員達がゲンの無実証明を心底喜び、ダンの返事も待たずに即座にそれをゲンに伝えんとする姿も、それを少し控え目な笑顔で僅かに首肯するダンの表情も、得も云えぬチームとしてのMACの良さがあって。

 青島からの通報を受けたゲンは、ダンが予測した様にそれで良しとせず、仲間の優しさを却って心苦しく感じ、通信には答えなかった(←失礼だな(苦笑))。
 あくまでバイブ星人を倒すまで帰れないと激昂したゲンは感情的になって巻き藁を殴りつけたが、それで揺れる巻き藁を見たゲンは、先の定規にヒントを得たダン同様の推測を始めた。
 一方、ゲンが応えないことを些か残念がるMACにバイブ星人が現れたとの通報が入った。先の戦闘で等身大での活動は不利と見たか、バイブ星人は巨大化して暴れていた。
 その容姿はツルク星人カーリー星人同様、等身大時とは大きく変わっており、体の各所からアクリル板の様な物を覗かせていた。

 ビルを壊して暴れるバイブ星人に空と地上から一斉攻撃を仕掛けるMACだったが、例によって機銃掃射はバイブ星人に致命傷を与えるに至らない。ただ、それでも痛みは与えているようで、MACの攻撃を受けるバイブ星人はその場を離れられず、うずくまる姿まで見せると、等身大時とは異なるアクションで体を振動させてその姿を消した。
 またも姿を消され、打つ手を失くして狼狽するMACの面々。だがこれに気を良くした物か、バイブ星人は逃走に掛からず、傍若無人にビルを破壊し続け、マッキー2号も撃墜された。そして明らかに調子に乗ったこの行為は星人の命取りとなった。
 ビルの谷間に暴れるバイブ星人の姿を捉えた機上のダンはゲンに後を託す言葉を呟くと特攻を敢行。激突音が鳴り響いた次の瞬間、口腔にマッキー3号を咥え込んだバイブ星人の姿が現れた!!

 かくしてMACは最初で最後の自力での星人退治に成功した(惜しむらくは、倒したのがセブンの正体であるダンだったため、純粋に「地球人の戦果」としない向きがある)。
 その直前、揺れる巻き藁にバイブ星人の行動原理を掴もうとしていたゲンは、そこに偶然松ぼっくりが落ち、弾かれたそれを掴むことでバイブ星人の動きを掴むヒントを得、レオに変身すると現場に急行した。

 現場ではマッキー3号とバイブ星人の双方が炎に包まれつつあった。勿論機中のダンも一緒である‥……。そして遂にマッキー3号は爆発!それによってバイブ星人は完全に絶命し、その体は炎上したが、ダンは機内から投げ出された。
 だが次の瞬間、飛来したレオが松ぼっくり同様弾かれたダンをキャッチし、地上にいた隊員達も安堵の笑顔を浮かべたのだった。

 爆発する飛行機から投げ出されたさすがに怪我は免れなかった。病院から出たところでゲンに会ったダンは、約束通りバイブ星人を倒したことと、命を救われた礼を述べ、よく投げ出された自分を見つけられたな、と感心する旨を告げた。
 それに対してゲンは松ぼっくりにヒントを得たことを笑顔で告げ、ほのぼのシーンで第13話終結したのだが、それだけじゃあ意味不明だって、ゲンよ(笑)。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新