ウルトラマンレオ全話解説

第17話 見よ!ウルトラ怪奇シリーズ 狼男の花嫁

監督:山本正孝
脚本:田口成光
狼男ウルフ星人登場
 冒頭、仕事帰りと思しき女性が人気のない道で獣人型の怪物に襲われた。その容姿は直立した狼で、ぬいぐるみっぽい造形(とシルエット)が恐怖シーンの緊張感を思い切り殺いでいた(苦笑)。特にうちの道場主など、狼の遠吠えが迫りくる恐怖描写より、押し倒された女性がもがく際の脚の動きに鼻の下を延ばし………ぐええええええええっっっっっっ……(←道場主のチョーク・スリーパーを食らっている)。

 場面は替わって、城南スポーツセンターそこでは一人の少女・霧島冴子(関根世津子)が新体操の特訓に励み、猛がそれをコーチングしていた。程なく冴子は1つの大技(命名・「風車」)を完成させ、猛も我が事のように喜んだ。
 直後に二人を祝福するゲンの、丸でそれまで気を利かせていたかの様な現れ方や、大会まで猛が冴子宅に泊まり込んで特訓するという説明っぽい台詞(笑)が、猛と冴子が只ならぬ仲であることを暗喩していた。ま、すぐに明らかにされたんだけどね(笑)。

 場面は替わってMACステーション。そこでは冒頭の怪物による若い女性の被害がミツキ市で発生していたことがダンから語られていた。被害者は既に5名で、被害者の体内には一滴の血も残されていなかったと云うから、5名は惨死を遂げたと思われる。
 現場から得た、狼の遠吠えの様な物を聞いたという証言から白土純隊員(←再登場!しかもレギュラー入り!)が「ニホンオオカミは絶滅した筈です。」と訝しがるのもぶっ飛んでいたが(苦笑)、それを肯定したダンが即座に狼男ウルフ星人としていたのも清々しいまでに短絡的だった(苦笑)。

 広い宇宙には狼に酷似した宇宙人が他に居てもおかしくないと思われるが、ダンの説明によるとウルフ星人は普段人間の姿をしていて、血が切れると正体を現して人を襲うとのことだった。
 白川は何故か吸血宇宙人であるウルフ星人の存在を知っており、少し脅えながらその名を呟く彼女にダンは警戒すべき「若い女性」として白川を指差していた。普通に考えれば隊長として隊員へ警戒を促した当然の言及なのだが、本作ではこういう役回りは百子であることが多いから、新鮮に映る(笑)。
 ちなみに会議に臨んでいたMAC隊員の顔触れはまたもかわっており、前述の白土に加えて梶田一平隊員(朝倉隆)が新規参入していた。

 そんな世相を知りつつも、城南スポーツセンターでは冴子が更なる練習に励んでいた(関係ないが、冴子と共にいた練習生の中にはこの9話後にレギュラー・松木晴子隊員となる藍とも子さんがいたりする)。
 そんな彼女にMAC隊員の姿でゲンと梶田は応援しつつも、「命あっての物種」として遠回しに練習を控えた身辺警戒を促した。冴子は夜間外出禁止令を承知しつつも大会までの日数からもっともっと練習したそうにしていたのだが、そこにウルフ星人の吼え声が響いて来た。
 脅える少女達を梶田に託したゲンは単身体育館外へ飛び出し、そこでウルフ星人との格闘となった。数々の死闘を経てきた経験が生きたものか、ゲンは然したる苦戦をすることなく戦いを優勢に進め、程なくウルフ星人は遁走した。
 事前にMACガンを腹部に命中させていたことも有り、逃げるにしてもそう遠くへは逃げられないはず、とゲンは踏んでいたが、結局逃げられてしまった。
 そして逃走していたウルフ星人はエネルギー補給及び潜伏の対象を冴子に求め、帰宅してきた冴子を襲ってその血を吸うと、外の様子を訝しがって出てきた母親(幾野道子)の眼前で冴子に憑依してしまったのだった。
 ウルフ星人自身は母親に目撃されたのを知ってか知らずか冴子本人に成りすまし、娘の身を案じる母親に対して人を呼ぶのを止め、「狼男のお嫁さんになった。」と呟くのだった。

 翌日、梶田と共に昨日取り逃がしたウルフ星人を探索していたゲンは出血量から「死んでいるのでは?」とする梶田とは裏腹に警戒を強めていた。そんな中、冴子に憑依したウルフ星人は新たに女性を襲撃しており、悲鳴を聞いて梶田と供に駆け付けるとそこでは平山と白土がウルフ星人と対峙していた。
 今度こそ逃がすまいとするゲン達だったが、ウルフ星人は跳躍力を活かして追跡を躱し、その際のアクションに冴子の「風車」を見たゲンは驚愕するしかなかった。
 ウルフ星人は当然の様に霧島邸に逃げ込み、ゲンは霧島邸を訪ねた。冴子の着衣に血痕が付いているのを見てMAC本部への同行を求めたが、そこへ霧島邸に投宿していた猛が妨害に出た。
 冴子を疑うゲンに対して猛は半狂乱で、スポーツセンターの先輩にして兄貴分であるゲンに掴みかからんばかりの勢いで、ゲンに冴子の何が分かる?としてゲンを退去させた。「止めろ!」、「許さんぞ!」の暴言・命令形を次々に口にしながらも、門前に追いやったゲンに対して「おヽとりさんの馬鹿!」と叫びながら豪華そうな柱に取り縋って嗚咽する猛の姿が何とも切なく、弟分にそう出られてはゲンもその場でそれ以上の追及は出来なかった。

 場面は替わってMACステーション。風車を前に思案に耽るゲンは当然の様に追及手際をダンに叱責された。最初は二度も眼前でウルフ星人を取り逃がした結果を詰るものだったが、ダンが叱責した主因はゲンが証拠も無しに冴子をウルフ星人として相対したことだった。
 「十中八九(ウルフ星人に)間違いない。」と述べるゲンに、ダンはそのことが如何に猛や冴子を傷付けたかを説き、「お前だって、いきなり百子さんが狼男だと言われてみろ。その時お前ならどうする?」と、実に分かり易い引用例でゲンを諭していた。この辺り、作風も若干の変化が見られる。
 ともあれ、自らの迂闊さを痛感したゲンにダンはすぐに行動に移ることを命じた。霧島邸は白川が見張っているとのことで、交代するよう告げたのだが、この処置を見るとダンもゲンの見立てそのものは信用していることが分る。

 その頃、霧島邸では冴子が恐ろしい変貌を遂げつつあった。
 猛が傷心の(と彼が思い込んでいる)冴子を気晴らしさせようと声を掛けても床から出ず、カーテンを開けると太陽光に激しい拒絶反応を示した。これ現実なら、狂犬病を疑う症状である(←しかもここまでの症状を示していたらまず助からない)。
 唯一人事情を知る冴子の母は、彼女のことを「病気」として猛を部屋から追い出した。母がとにかく恐れていたのは、冴子が狼男として殺処分の対象となることで、皮膚を変色させ、足が剛毛に覆われだし、ひたすら呻き声を上げる娘に自分の血を吸わせてまで助けようとするのだから、悲しいまでの母心である。
 だが、一瞬噛み付く姿勢を見せた冴子は頭を振って床に伏してしまった。母は自分が年老いているから駄目なのか?と訝しがったが、普通に母を傷付けることを厭うたとは考えられんのかな?(苦笑)
 苦しむ娘の身づくろいをしながら、将来は猛の嫁になることを夢見ていた冴子の想いを代弁していた母だったが、鏡に映る娘の姿は完全にウルフ星人のものとなっていた。そしてその一連の会話を部屋のすぐ外で聞いていた猛は居ても立ってもいられず、強引に扉を開けて室内に突入したのだが、そのときには既にウルフ星人は若い女性の血を求めて屋外へ飛び出していた。

 ウルフ星人はダンが懸念していたように、霧島邸を張っていた白川を襲わんとして彼女を組み伏せた(ちなみに白川隊員を演じていた三田美枝子さんは当時24歳)。悲鳴を上げる三田さんがなかなかに‥‥………ゴホン!ゴホン!………即座に猛が、そしてゲンが駆け付け、白川は危機を脱したが、今度こそウルフ星人を逃がすまいとMACガンを構えるゲンには猛が立ちはだかった。
 猛はウルフ星人が冴子であることを認め、MACによってウルフ星人=彼女が殺されるのを必死に防がんとした訳だが、そんな事情を知る由もない平山・白土・梶田が一斉射撃したことでウルフ星人は巨大化した(等身大時との容姿の相違は僅少)。

 平山達はMACロディーからの攻撃に移り、現場にはマッキー2号・3号も飛来して攻撃を加えた。だが例によってMACの攻撃は致命傷を与えるには程遠かった(多少の痛みを与えているようではあったが)。
 更にウルフ星人の正体を知る猛がその足元に駆け付けて上空に向かって攻撃中止を叫ぶわ、ウルフ星人は冴子の能力である「風車」を駆使するわ、でマッキー2号・3号も撃墜されてしまった。
 やりたい放題やっていたウルフ星人だったが、ゲンがレオに変身してMACロディー救出後に本腰を入れてかかると、勝負は概ねレオ優勢で進んだ。
 冴子から受け継いだ跳躍力を除けばウルフ星人の攻撃は頭を振り下ろして長大な牙で襲うもので、その牙の一本を巴投げでもがれ、上空に飛び上ったところをレッド手裏剣ビームで阻止され、更には逆光の位置から太陽光を浴びせられるとはや、グロッキー状態だった。
 そして勝負はレオキックで決し、ウルフ星人は腹部から火花を上げて倒れ、猛が駆け付けると等身大で草むらに横たわっていた。

 ウルフ星人の死骸を抱いて、新郎新婦となって笑いながら走る自分と冴子の姿を想いながら号泣する猛を見たレオは上空を見上げると第2話で百子と黒潮島を蘇生させたレオマスクパワーを発動させ、冴子が意識を取り戻すとその姿は元の少女のものとなっていた。
 ゲンが現場に駆け付けると猛と冴子は無事を喜んで抱き合っていた。次のシーンでは場面はスポーツセンターに移っており、練習に励む冴子を猛は温かく見守り、ゲンもそれに笑顔を向けるのだった‥‥………うん、無理矢理ハッピーエンドだな(苦笑)

 最後にチョット個人的意見を述べると、レオマスクパワーに対して些か不可解感が拭えない。
 フィクションゆえ、死んだ者が生き返る展開に異は唱えないが、軽々しく蘇るのは頂けない。周知の様に、現実の世界では心肺停止直後の蘇生を除けば、死んだ人間が生き返ることはない。命は決して戻らない故に、尊く、かけがえがなく、命が奪われない、失われない為に人は全力を尽くす。それゆえフィクションと云えども簡単に命が戻ってくるのは命の尊厳・尊さを薄れさせかねない。レオマスクパワーの存在意義は否定しないが、どういう力が働いて蘇生されるのか、どれほどのエネルギーが作用して蘇生という絶大な効果が挙げられているのか、をある程度言及されることでその重みを伝えて欲しいと思われてならない。
 加えて、本作ではMAC隊員にも殉職者が何人も出て、終盤ではレギュラーメンバーにも死者が出る。その時に何故レオマスクパワーは用いられなかったのか?
 推測するに、百子を助けたときも、冴子を助けたときも、リライブ光線ギロを蘇生させた時も、死亡直後でないと間に合わなかったり、死亡状況によってはこれらの手段が功を奏さなかったりすることも多いのではないだろうか?


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新