ウルトラマンレオ全話解説

第19話 見よ!ウルトラ怪奇シリーズ よみがえる半魚人

監督:外山徹
脚本:田口成光
半魚人ボーズ星人登場
 冒頭、舞台は洋上のフェリーにて始まった。
 輪投げに興じたり、白いシーツを被るという子供の悪戯レベルのお化け変装でゲンが百子を脅かしたり、これから向かう北海道の味覚を語ったり、と笑顔の絶えない平和なバカンスが展開されていた。

 だがゲン達が到着する直前の夜。北海道の海岸では一つの事件が起きていた。もう10日も獲物が取れずにいた地元の漁師が突如大きな引きに当たり、必死の格闘の末に一頭の半魚人を釣り上げた。
 その容姿は、『キン肉マンU世』を愛読する方には、右手を鞭状にしたデーモンシード・ゲッパーランドと云えば分かり易いかも知れない(笑)。あ、勿論、『ウルトラマンレオ』の放映の方が何十年も前であることは言うまでもないと思いますが(笑)。
 ただ、いずれにせよ猟師にとっては突如現れた化け物にしか思えず、彼は傍らにあった棒を棍棒代わりに謎の半魚人―半魚人ボーズ星人を散々に打ち据えた挙句に逃げてしまった。

 そんな事件を知る由もなく海水浴場に辿り着いたゲン達だったが、早々と小さなトラブルに遭遇した。地元の貸しボート屋・横山(守田比呂也)がトオルとカオルを取り押さえて、盆の間は当地にて殺生をするな、というのである。
 地元の伝承ではお盆に殺生をすると海坊主の祟りがあるらしく、かつて山ほど獲れた秋鰺=鮭も今では年に数匹しか獲れなくなったと云う。そんなジモティの憤りにトオルは、もし本当に海坊主が現れたらMAC隊員であるゲンがたちどころに退治すると返していたが、その口調からすると横山の警告に真面目に取り合っている風には見えなかった(苦笑)。
 だが、その様子を物陰から見ていた一人の少年(小山梓)が、怪獣退治の専門家であるMAC隊員の来訪に期待の眼差しを向けていたのだった。

 程なく、海岸で胴馬に興じるゲンの前にその少年−和男が現れた。もし海坊主が現れたらやっつけて欲しいと要請する和男だったが、直後に横山が現れて何故そんなことを口にするのかと難詰した。
 横山は、「海坊主退治を依頼する」→「海坊主が現れる身の覚えがある」→「和男の父親が掟を破って漁をしている」と類推し、詰問を強めたところ、和男はそれを否定しつつも逃げ出してしまった。
 横山も最初こそ喧嘩腰っぽかったが、どうも地方に有り勝ちな迷信を心底信じているタイプの様で、後々になるほど掟の遵守を懇願する様子だった。

 一方、その場を逃げ出した和男はしばし海岸を走っていたところ、昨夜釣り上げられて撲られたボーズ星人に遭遇した。驚く和男の眼前で轟く雷鳴に気付いたようにボーズ星人は息を吹き返し、これを見た和男は海坊主と思い込み、助けを求めて物陰に隠れ様子を伺った。
 やがてボーズ星人は徐々に足取りもしっかりとし出し、居た堪れなくなった和男は自宅に逃げ帰った。その自宅には和男の両親がいた訳だが、父親は昨夜ボーズ星人を打擲した猟師で、妻(つまり和男の母親)に昨夜のことを口止めしていた。
 帰って来た和男の言から自分が撲殺したと思っていた海坊主が生きていたことに狼狽える父親だったが、程なくボーズ星人が乱入して来て、夫婦は和男の眼前で撲殺された。いきなり釣り上げられた上に殺意をもって打擲されまくったことを思えばボーズ星人の報復感情も分からないでもないが、やはり人間としては和男が哀れだった。

 すっかり恐慌状態に陥った和男は助けを求めて逃げ惑ったが、地元の人々は「海坊主」の名に脅え、皆自宅に避難してしまった。唯一ゲンだけが助けに駆け付け、激闘の果てにボーズ星人は海中に逃亡。だが自宅に戻った和男は物言わぬ骸となった両親を前に泣き崩れるしかなかった。

 Bパートに入り、現地にはMAC隊員達が出向いていた。来村したのはダン隊長、白土、梶田、そして本話初登場の、三代目副隊長格佐藤大介隊員(手塚茂夫)である。
 梶田が地元の寺から借り受けて来た巻物には百年前に「海坊主」が残したとされる足跡が記載されており、百年前にも今回と同じ事件が起きていたと梶田は述べた。
 白土は百年も生きるような生き物の存在に懐疑を示したが、ダンは史料と証言から海坊主の正体がボーズ星人であることを断じた。

 ダンが隊員達に巻物の足跡と現場の足跡の称号を命じるとそれと入れ替えにゲンがやって来た。ゲンはボーズ星人以上に不幸に見舞われた和男に同情すら示さない村人に憤懣やる方ない想いを露わにしていたが、ダンはゲンの村人に対する怒りに取り合わなかった。
 勿論ダンにゲンの気持ちを察しったり、和男に同情したりする気持ちがない訳ではない。百年以上も前から伝承の形で村人の心に潜り込み恐れられる存在となっているボーズ星人を容易ならざる相手とし、伝承を信じ切っている村人の反感を買う行為を厳に戒めればこそ、である。
 その為にMACの潜水艇出動すら反対されたゲンは、伝承に潜り込んだボーズ星人の狡猾さに切歯扼腕し、ダンに落ち着くよう言われたのだが、そんなゲンに「おヽとり、隊長の言う通りだ。」と言って宥めたのは白土だった。
 かかる描写を見ていると、ゲンと白土の当初からの対人関係を重んじつつ、初期のMACには見られなかった隊員関係が伺える。視聴率は安定しなかったが、隊員の流動は安定し出したことからも、同番組における配役は一応の成功を見たと言えるのかもしれない。

 結局、ダンによって海岸パトロールが強化され、海岸は立ち入り禁止となった。だが、漁師ではなく、貸しボート屋ゆえに殺生を生業としない自分達は大丈夫と見ていた横山は商売を続けていた。
 迷信を頑迷に信じる割には御都合解釈なのを笑いたくなるところだったが、直後にボーズ星人が現れ、横山の妻が殺されてしまった。
 即座にゲン以下MAC隊員達が駆け付け、ゲンの格闘、和男の投銛、MAC隊員達の銃撃を受けボーズ星人は再度海中に遁走した。
 伝承を恐れ、それゆえ一切の協力を拒んだことが妻を死に至らしめたこと、「海坊主」が殺生とは関係なく村人に牙剥く存在であったことを思い知り、激しく後悔した横山はMACに全面協力を申し出つつ、妻の仇討ちを懇願した。
 元よりMAC隊員達はそのつもりで横山のボートを借りて追撃に出んとしたが、ダンはそれを止め、佐藤・梶田・白土に村民達の非難を命じ、ゲンに対してはボーズ星人が次に現れる時には必ず巨大化すると読んで、特訓を命じた。
                         
 久々の特訓となると、第1クール時代の殺人的なものを想像しそうになるのだが(苦笑)、要は触腕を主要武器とするボーズ星人の対処戦略を授けるのが目的だった。ただ、ボーズ星人の攻撃を模す為、ダンが鞭を振るってゲンを攻撃したのだから、初期の過酷さが一時的に甦ってしまった(苦笑)。
 ただ、やはり全体として作品雰囲気が穏健化したためか、それでも過酷さは大分軽減されていた。最初、ゲンはダンの振るう鞭を躱すのみで、やがてダンに絡め取られたが、次にダンはゲンに鞭を振るわせ、わざと絡め取らせた上で自分から突進して逆手に取った攻撃方法を示した。
 結果、ゲンがヒントを得るのに然程長い時間は必要とせず、佐藤から星人出現の報がもたらされたこともあって、特訓シーンは短時間で終わった。

 ダンが予測した様に、再々度出現したボーズ星人は巨大化して現れていた(ちなみに容姿は等身大時と全く同じ)。触腕を振るって家屋を壊して回る姿は星人と云うより怪獣で、何の為に百年も潜伏していたのか全く不可解だった(苦笑)
 MACもマッキー2号、マッキー3号が出撃し、機銃掃射を浴びせたが、マッキー2号が触腕で絡め取られ、地面に叩き付けられた。ちなみに地上では佐藤・梶田・白土がMACガンで応戦しており、機上には誰が乗っていたのだろう?

 いずれにせよMACの攻撃ではボーズ星人を倒すには至らず、ゲンはレオに変身。いきなり触腕に首を絡め取られているという不利極まりない姿で現れたのだが(苦笑)、すぐにその不利は脱し、時にマウント・ポジションを奪うなどして概ね優勢気味に戦いを進め、やがてダンのヒント通りに絡め取られたと見せて急接近するとハンドスライサーボーズ星人の触腕を肩から切断した。
 こうなると勝負は見え、レオは斬り取った触腕をもってボーズ星人の体を連打した後、レオリフトボーズ星人の体を持ち上げると脳天を地面に叩き付けて勝負を着けた。

 口から深緑色の煙を吐いていたボーズ星人の体は首から下が白骨化し、そんな体で尚も立ち上がらんとしたが、『ウルトラセブン』のプラチク星人の様な訳にはいかず、完全に立ち上がる前に力尽きた。
 そしてウルトラマンレオによって家族の仇を取ってもらった横山と和男は伝説から解放されたことへの謝辞をゲンに述べ、今後は二人で過ごすことを告げた。
 それに対して新しい父が出来た和男を羨むカオルに、トオルが自分達にも父母がいることを述べると梅田兄妹の想いを反映してか、ゲンと百子は少し老けた感じの姿がオーバーラップされた。
 第5話でもゲンと百子を両親とする描写はあったが、今回カオルは「嫌だわ、おヽとりさんがお父さんだなんて!」と返し、それに対してゲンも「言ったな!」と言って一同に笑いが漏れたのだから、4ヶ月近い時を経て兄妹の傷心も軽減されつつあるのが見て取れるのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新