ウルトラマンレオ全話解説

第20話 見よ!ウルトラ怪奇シリーズ ふしぎな子熊座の少年

監督:外山徹
脚本:阿井文瓶
牡牛座怪獣ドギュー登場
 「見よ!ウルトラ怪奇シリーズ」の第4弾にして、北海道シリーズの第2弾である第20話の冒頭は満天の星空から。
 有名所の星座が紹介され、その中の一つ子熊座から事件が始まったことがナレーションにて語られた。

 宇宙空間を舞台に2つの球体が相争う様がMACステーション内から目視したゲンはその有様をダンに伝えんとしたのだが、ダンは勤務中に居眠りをする体たらく。
 片方の球体が片方の球体をいじめているようで、救いの手を口にしたゲンに対し、ダンは地球防衛を第一とするMACの任務上からも不干渉を宣した。
 だが、2つの球体は札幌に向かったのを確認すると、地球に飛来しては捨てて置けじと思ったか、ダンは隊員達に出動を命じんとしたが、ステーションにいたのはゲンとダンの二人のみ。この第20話が放映されたのは昭和49(1974)年8月23日で、他の隊員達が盆休みだったとも取れるが、100名の人員を擁するステーションに、出勤者が2人しかいない状態が存在するとは畏れ入る組織である(苦笑)
 まあ、ステーション勤務者は通常通り100人いるが、宇宙パトロール隊としてはゲンとダンだけがこの日の出勤者だったと考えるのが妥当であろうし、3週に渡る北海道シリーズの撮影に掛かる費用を考えたら、ゲン役の真夏氏とダン役の森次氏以外の隊員迄北海道に連れて行くのはきついから、他の隊員達が休みとなるストーリー構成だったのだろう(笑)。

 ともあれ、ゲンとダンはマッキー2号にて赤い球体が落下したと思しき札幌市手稲区に着陸した。腕時計型の探知機を頼りに山林を散策していた二人はやがて遊園地を抜け、反応が二つあることから二手に別れた。
 白樺林にて俄雨に遭ったゲンは雨宿りをしようとして木の根元に佇む子熊に遭遇した。子熊は勿論ヒグマで、その愛らしさに満面の笑みを浮かべるゲンだったが、とある書籍によるとこの時、真夏氏は連れて帰りたいと思うぐらいこの子熊を愛おしく思ったらしい。

 ここで少し話を横道に逸れつつも、真面目に捕捉したいのだが、現実世界にて山中で子熊に遭遇した場合、この話のゲンの様に、これを可愛がったり、近づいたりするのは母熊に「殺して下さい。」と表明するに等しい自殺行為なので、絶対に真似しないで下さい

 話を戻します。
 子熊を可愛がっていたゲンは程なく、自分を見つめる人影に気付いた。
 巨大な葉の付いた茎を傘代わりにしていた少年(小山渚)はゲンが微笑めば微笑みを返し、ゲンの質問に対して首肯や身振りで答えるものの言葉は丸で発しなかった。それでも幾許かのコミュニケーションは成立し、子熊の母は空から来た何者かに殺害され、白樺の根元に埋められ、少年が面倒を見ていることが分った。
 結局、少年は傘をゲンに譲って子熊を連れて立ち去り、「ボック」と名乗ったのが、唯一ゲンの問いに言葉で答えたものだった。そしてボックが去った直後に、ゲンの持っていた怪獣(または宇宙人)探知機が反応し、ボックが地球外生命体であることが分った………検知器がそれじゃあ役に立たんだろうが(苦笑)

 その後、探索を続けていたゲンはやがてダンと合流した。ダンの方はこれと云った発見はなく、ゲンが事の顛末を伝えると、ボックが子熊座からやって来た小柄で大人しい種族で、その体格から人間の子供に擬態していると思われることがダンの口から語られた。
 同時に、もう片方の飛来者はおうし座怪獣ドギューである可能性が高いと推測した。ボックが地球人に無害な存在であるのとは対照的にドギューはおうし座に住む「宇宙の嫌われ者(モロボシ・ダン談)」と呼ばれる存在で、ボックが大人しいのをいいことにいじめまくっており、そんな性格だから地球に害を与える可能性も充分としていた。

 片や旧知で、片や地球人に害悪とあっては捜索を続行せざるを得ず、ゲンとダンは再度マッキー2号に登場し、上空から探索した。同時に地上のレーダーも駆使されたがドギューの行方が分からないまま一夜の内に人間・牛・羊が何人・何頭も襲われ、殺された。
 目撃者のゲンによると熊の様な毛むくじゃらの怪物に襲われたとのことで、札幌市民の間には恐怖が走った。誰も普通にヒグマの仕業とは考えなかったのだろうか?

 ともあれ、犠牲者の発生状況を地図に重ねたダンは中心地に手掛かりがあると見て、ゲンと共にクマ牧場に向かった。飼育されている多くのヒグマを目の当たりにしてゲンは「可愛らしいなあ。コイツ等の中に怪獣が紛れ込んでいるなんて考えられない。」とダンに語り掛けていたが、確かに可愛い(←余談だが、シルバータイタン=道場主は登別のクマ牧場に三度も訪れた程熊好きである)。
 勿論、飼い慣らされ、危険のない場所からその仕草を見ているから余裕をもって可愛らしさを愛でていられるが、野生で遭遇すれば全くもって油断ならない猛獣である。
 そのことを捕捉するかのように、ダンは今(←昭和49年)でも北海道では年に5、6件のヒグマによる人身事故が発生していることに触れ、その現状と人々のイメージを隠れ蓑に襲撃者がヒグマに成りすまし、潜んでいる可能性を述べていた(ちなみにダンを演じる森次晃嗣氏は北海道(滝川市)出身)。

 直後、ゲンはボックがいることに気付いた。そのことをダンに告げると、ダンはそれまでの警戒心を忘れたかのように満面の笑みでボックに近寄って話しかけた。
 ダンを「セブン」と呼ぶことからもダンと旧知であることは明白で、ダンもまたボックが母をドギューに殺されていたことを知っていた。
 ボックの母を殺したドギューは、ボックが成長後に自分に報復することを恐れ、まだ小さい内に殺しておこうとし、そのことが一昨日の騒動となったのだった。その際に子熊の母親はこれをボックと誤認したドギューに殺され、それに心を痛めたボックは母熊の代わりに子熊達を育てんとしているとのことだった。

 話が一本の線に繋がったところで、突如大男(大前均)を先頭に10人ほどの一般ピープルが鍬などの農具を得物にボックの元に押し寄せて来た。
 何事だと誰何するダンに大男はMACのくせにそんなことも知らないのか?と逆詰問し、ボックが怪獣だと告げた。勿論ボックのことを知るゲンは「馬鹿なことを言うな!」と反論したが、大男は怪獣が牛を襲い、殺した後に子供の姿に戻り、その子供が熊を連れていたのを確かに見たと言い張って来た。
 そして怪獣に脅える民衆を焚き付ける様にボックをリンチに掛けんとしたが、勿論それを黙って見ているゲンとダンではない。ゲンは少年が怪獣である証拠などない、と主張したが、大男はMACが出張っている事こそ何かあった証拠とした。
 論理的に考えれば証拠とするには極めて薄弱な大男の主張なのだが、恐慌状態にある群衆は不安を煽る言を呑み込み易く、ゲン・ダンが止めるのも聞かずボックを襲わんとした。

 結局ボックは子熊とともに逃げ、民衆もこれを追った。しばらくして民衆の追跡を撒いたボックだったが、逃げ込んだ山林に最前の大男がニヤニヤしながら立ちはだかった。大男が緑色に目を光らせるのを見たボックは相手がドギューであることを察知した。
 元よりボック抹殺が目的であるドギューにとって、ゲンもダンも民衆もいない場で1対1となったのは極めて好都合である。高笑いしながら斧を振り回し、白樺を次々と切り倒して襲い来るドギュー。やがてドギューが切り倒した木の下敷きになって子熊がその命を落とした。

 子熊を殺された怒りか、ボックは逃げるのを止めてドギューに対峙。ドギューは斧を振りかぶってにじり寄って来たが、いざというタイミングでゲンの放ったMACガンで斧を打ち落とされた。
 ゲンの背後にはダンや最前の一般ピープルも追随していた。MACガンを突き付けたまま「勝手なことをするな!」と激昂するゲンにドギューは尚も自分が怪獣退治をしていただけで、せっかく追い詰めた怪獣を今こそ倒すべきだと民衆を煽った。
 それに対し、ボックは「セブン!こいつがドギューだ!」と言い放った(←大勢の前で正体ばらすなよ(笑))。その言を受けてゲンが探知機を見るとそこには怪獣反応が……………だからタイミングが遅過ぎるだろう、その探知機(嘆息)

 ともあれ、証言と機械反応からゲンとダンも大男の正体をドギューと確信し、そのことを民衆に訴えたが、ドギューによる不安煽りの影響はまだまだ大きく、パンピーは完全に暴徒化し、相手がMACでも意に介さない姿勢を見せかけたが、ゲンはMACガンをドギューに突き付け続け、ダンが杖を構えて立ちはだかると彼等の動きは止まった。パンピーのパンピーたる所以だな(苦笑)。
 そしてその騒動が丸で目に移らないかのように、背中を向けたボックは最前殺された子熊の亡骸に取り縋りすすり泣き出した。これにはゲンも、ダンも、パンピーも、そしてドギューまでもが言葉を失い、場は静まり返った。
 一頻り泣いたボックが顔上げると彼の流した涙が地面に落ちるや黒百合の花が咲いた。それに驚くパンピーを尚も煽らんとしたドギューだったが、ボックはこれを見据えると「ドギュー!正体を現せ!」と言い放った。
 これを馬鹿笑いで返したドギューは問答無用とばかりに掴みかからんとしたが、ダンに顎を杖で強打された(←痛そう……)。更にダンは杖の先端からガスを発し、これに巻かれたドギューは遂に巨大化しておうし座怪獣としての正体を現した。

 さすがにかかる展開を受けてまだ本当の敵が誰か分からない程にはパンピー達も分からず屋ではなかったが、勿論驚愕する他なかった。ダンはゲンにパンピーの避難誘導を命じ、自らはボックを救わんとしたが、ダンに促されてもボックは子熊の亡骸から離れようとしなかった。
 結局避難誘導から戻ったゲンはレオに変身し、一騎打ちとなった。

 戦いは一進一退だった。殴り合いではレオに分があるようで、レオは背後に回り込んだり、巨体を支える脚を狙ったり、と組み合いを避けた攻撃を続けた。一方のドギューは見た目に違わぬ剛腕と頑丈さを発揮してレオの猛攻をしのぎ、手数では劣りながらも怪力を利した攻撃を返して来た。
 やがてドギューはレオを押し倒したタイミングでサミング(目つぶし)を連打し、これによってレオは一時的に視力を奪われ形勢不利となった。だがこれをフォローするようにボックは黒百合を手に取ると、「お母さんの形見」とするそれ(←さっき咲いたばかりなのに?)を2本投げると、それ等は空中で巨大化してドギューの両眼に突き刺さってその視力を奪った。
 考えてみれば結構残酷な攻撃だったが、それでも目から花が飛び出している状態にコミカルなインパクトがあったためか、書籍でも、ネットでもドギューの画像はこの時の黒百合が目に突き刺さった後の物の方が多い。

 ともあれ、視力の上では両者これで互角となった。否、ドギューがひたすら狼狽えるだけだったのに対し、第14話で気配を察する特訓を積んでいたのが活きたものか、レオは回転する黒百合の気配を追い、両目の黒百合を突いてドギューをグロッキーに追いやり、最後にはレオスパークドギューの両足を切断して、これを討ち果たし、自分を支援してくれたボックに勝利のVサインを送ったのだった。

 そして最終場面。ボックは子熊座に帰って行った。直前にゲンは獅子座から来た自分も地球に住んでいることを指し、ボックも同様にすればいいと勧めていたが、ボックは自分が地球に来たために熊達が殺されたことを挙げ、地球には辛い思い出が多過ぎるとしてゲンの勧めを断ったのだった。
 ただ、ダンとの友情が失われた訳では当然なく、ゲンとの新たな友情を芽生えさせたボックは、ダンと、次いでゲンと握手を交わすとレオの変身ポーズをまねた後に宙を飛んで今度こそ帰って行ったのであった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新