ウルトラマンレオ全話解説

第3話 涙よさよなら…

監督:深沢清澄
脚本:田口成光
奇怪宇宙人ツルク星人登場
 冒頭の舞台は夜の城南スポーツセンター。
 そこでは今話で初登場となった梅田トオル(新井つねひろ)が雲梯に励んでいた。奮闘するトオルを見守るのは第1話から出ているカオルと、二人の父で(二見忠男)、必死の息子相手に興奮を隠せない様子だった。
 悪戦苦闘の果てにトオルは雲梯を渡り切り、父子はこれで今夜からテレビが見れるとはしゃぎ(←成功するまでTV視聴を断っていたのだろう)、そんな父子をゲン初めスポーツセンターの面々が、「本当に仲のいい父子。」と目を細めていた。
 彼等の会話から母は既に亡く、父の梅田が母代わりも務めて来たことも示され、父子はスポーツセンターの面々に礼を述べて帰途に就いた。

 フィンガー5の歌を歌いながら夜道を歩く父子の選曲に時代を感じるが(笑)、そんな平和な日々は突然にして破られた。夜の闇に潜みながら父子を尾行していた怪人が突如高所から梅田に襲い掛かり、手刀でもって梅田の体を横真っ二つにして惨殺してしまった!
 同時に自転車も真っ二つにした切れ味の前に梅田は短い悲鳴を上げて絶命……。襲撃の衝撃から覚めて立ち上がったトオルは見るも無残な父の遺体に愕然とした。
 トオルとカオルはスポーツセンターに引き返したが、二人を前にした大村を前でただただ哀しみと突然の不幸に対する脱力感で会話もままならず、大村が呼んだゲンを前にしてようやく父が殺されたことをトオルが口にし、カオルは号泣した。
 まあ、無理もない。予期していても身内の不幸は物凄い衝撃を伴う。それが突然訪れた上に、ただ一人の親が見るも無残な姿で惨殺されたとあっては年端も行かない兄妹に冷静になれと云うのは無理を通り越して残酷ですらある。
 怒り心頭のトオルは「こいつが父さんを殺したんだ!」と叫んで通り魔が現場に置いて行った金属塊を叩き付けた。それはウルトラマンレオの顔を象ったものだった………。

 下手人探索も大切だが、当面の問題は梅田兄妹の身の振り方である。事件から三日経過した豪雨の夜、ゲンはMACの鈴木隊員(鹿島信哉)とともにスポーツセンターを訪ね、大村達と共に梅田兄妹の今後を話した。
 一先ず兄妹を泊めた大村だったが、彼は独身で子供の世話は思うようにはままならず、猛は弟と同居しているので不可能とのことだった。となるとゲンか百子にお鉢が回ることになるのだが、そこへ鈴木が自分の家に来てはどうか?と申し出た。
 鈴木は妻との二人暮らしで子供は無く、子供好きの奥さんも喜ぶだろう、とのことで、兄妹にゲンとともに泊まることにしてはどうか?と持ち掛け、兄妹もこれに応じた。
 だが、21世紀の視点から見ると、非レギュラーキャラの掛かる善人振りは完全な死亡フラグだった
 土砂降りの中、後部座席に兄妹を乗せてMACカーで自宅に向かっていた鈴木隊員は怪しい人影を見て車外に出た途端に梅田同様真っ二つに惨殺された。
 上半身と下半身が泣き別れにされた鈴木隊員の傍らには、一緒に切断されたMACカーのドアと、例の金属塊が残された。
 梅田兄妹の悲劇に続き、同僚まで殺され、おまけに犯行がウルトラマンレオによるものと仄めかされていた状態にあって、MACと警察による現場検証に立ち会っていたゲンは茫然自失状態だった。だが、ダンは現場に残されていた金属塊が宇宙金属で出来ており、MACカーのドアがきれいに真っ二つにされている状況から、犯人を「容易ならざる技を持つ相手だ。」として、正体が分かるまで手を出さないよう命じた。

 そうしている間にまた犠牲者が出たら?と抗議するように問うゲンに「私に考えがある。」としてダンは重ねて手出しを禁じた。
 場面は替わってMACステーション内。青島・赤石とパトロールを交替し、黒田に一休みしようと促されたゲンだったが、尚も遣り切れなさを漂わせていた。だが、ダンの不在に気付き、白川と桃井からダンが毎晩出掛けていると聞いたゲンは慌ててダンの席に残された地図を見た。
 地図に書かれた印は事件現場で、ダンが単身正体不明の通り魔と対峙しようとしているとゲンは察知した。

 果せるかな、通り魔に脅える人々が外出を控えた夜の街に、杖の音を響かせるダンに誘き出されたように件の通り魔がダンをつけて来た。先の二人を襲った時同様、高所から両腕の凶刃をもって襲い掛かる通り魔宇宙人だったが、ダンは杖で応戦。
 標識・ガードレールといった金属をも鋭利に断ち切って襲い掛かる宇宙人の手刀もダンの杖は斬れず、両者は一進一退の攻防を続けていた。
 するとそこへダンを追って来たゲンが割って入ったのだが、ダンは邪魔だとばかりに背後からゲンの首を杖で殴りつけ、返す刀で星人の顔面に突き立てるように杖を投げつけた。
 くぐもった様な声で妙な悲鳴を短く上げた星人は大きく跳躍してその場を逃れ、後にはおヽとりゲンが丸で良いところなく地面に寝転がっていた。

 場面は替わって城南スポーツセンター。
 目を覚ましたゲンは自室のベッドに横たわっていたことを百子・カオルから知らされると慌てて床から跳ね起きた。
 体育館にダンを見つけたゲンは、隊長を救おうとした自分を殴ったことを抗議したが、逆に殴打が星人の手刀からゲンを守ったものであることを諭された。殴打の意味を知り茫然とするゲンに、ダンは通り魔の正体が奇怪宇宙人ツルク星人であること、父を殺されたトオルが母星を滅ぼされたときの言動様に憎しみに凝り固まっていることをゲンに告げた。
 言われて、悔しさやトオルへの想い、そして自らの浅はかさを突き付けられ、「もっと慎重に行動しろ。」との説諭に複雑な表情で首肯するしかないゲンだった。

 するとそこへ東京BX104地区に星人が現れたとの白川からの連絡がダンのMACシーバーに寄せられた。
 ダンに一撃を食らって撤収したツルク星人はヒューマノイドタイプだった等身大時とは全く異なる姿−例えて言うなら両腕に月光覇月を装備した寸胴気味リザードマンだった(←『魁!!男塾』とファンタジーRPGを知る者でないと分からない表現をするんじゃない!」by道場主)。
 巨大化したツルク星人は等身大時同様に手刀を得物とし、手当たり次第に周囲の建物を撫で切りにして我が物顔にのし歩いていた。それ対してマッキー2号、3号からの機銃掃射が浴びせられたのだが、多少の痛痒を与えている様に見えるぐらいで、致命傷には程遠かった。
 しかも寸胴気味なスタイルに見えても跳躍力を活かした体術は等身大時と何ら変わらず(←設定によると宇宙拳法を習得しているらしい)、マッキーとは異なる戦闘機が切り落とされたのを見たダンは全機撤収を命じた。

 命令降下時に隣席の赤石が戸惑いを見せていたが、ゲンはもっと納得がいっておらず、ダンに掴みかからんばかりに抗議した。
 実際、ツルク星人を打倒せずに撤収したMACに市民は「腰抜け」、「卑怯者」等の罵声を浴びせているとのことだったが、ダンはそれを無視するように黒田に全マッキーの速度を倍にする為のエンジン換装を命じ、黒田は赤石を伴ってチューンアップに向かった………………って、あの〜ダンさん、黒田さん、マッキー1号の速度は光速の98.9%で、倍にするとあっさり光速を越えてしまうんですけど…………
 ともあれ、ダンは他の隊員には次の出撃に備えての休息を命じ、隊員達がその場を去るとゲンは再度ダンに掴みかかった。
 大切な家族を惨殺された梅田兄妹や鈴木の細君(←結局本人は出て来なかった)のことを想うと居た堪れないゲンは「僕達宇宙人にだって涙は有ります!」と憤慨するが、それに対してダンは「私はお前の涙など見たくない。」と言って感情論に取り合わず、現実を見るよう諭した。
 ダン自身、全マッキーの速度を倍にしたぐらいでツルク星人に勝てる訳がないと理解しており、エンジン換装は星人打倒よりも隊員救命の意味合いが強かった(身も蓋もない言い方をすれば「逃げ足強化」である)。そして星人を倒す為にはレオの力が必要だとした。
 それなら何故最前の戦いに自分を投入しなかったのかという想いを滲ませるゲンに、現状のゲン=レオの力では勝ち目はない、とし、この時になって何故昨晩ダンがゲンを殴ったかの理由を告げた。
 詰まる所、両腕を刃物と化した星人に二段攻撃がゲンの首を狙っていて、それからゲンを救うための払い除けだった。そしてそれに対抗するべく、場面は初期シリーズ恒例の地獄特訓に入るのだった。

 空手着に着替え拳技を奮うゲンに、ダンは三段攻撃の習得を命じた。
 杖を奮ってゲンに攻撃を仕掛けたダンはその攻撃がツルク星人の二段攻撃であることをゲンに教え、ツルク星人の両腕から繰り出される二段攻撃を自分の左右の腕で防ぎ、足による攻撃を行うべしとした。まあ、早い話「両腕による二段攻撃」に対して、「両腕+片足による三段攻撃」を命じた訳やね(笑)。
 柱にゴムロープで右足を繋いだ状態でゲンは何度も蹴り上げ、三段目の攻撃を鍛えた。蹴り上げる度に体勢を崩し、道着を泥塗れにして特訓に励むゲンに、ダンは「いいか、自分の命は自分で守らねばならん。しかしその為に多くの人間を犠牲にすることは許されん。ゲン、お前は必ず勝たねばならんのだ。」とのプレッシャーを投げ掛けた。
 その厳命に苦しそうに頷くゲンだったが、ゲンと同等かそれ以上に言葉を発するダン自身もまた苦しんでいた。ゲンにかかる苦しい思いをさせなければならないのも、マグマ星人達との戦いで自分がウルトラセブンへの変身能力を失ったからに他ならない。
 MAC基地で懐から一部が溶解したウルトラ・アイを取り出し、自らの至らなさがゲンを苦しめていることに苦悩するダンだったが、隊員の足音を聞き付け、慌ててウルトラ・アイをしまった。
 足音の主は黒田で、マッキーのエンジン換装が完了したことを伝えるものだった。黒田を労い、出動に備えて休息するよう命じたダンだったが、これもまたダンが苦しむ理由の一つだった。エンジン換装は到底ツルク星人打倒を成し得るものではないのだが、隊長命令に従えば星人を倒せると何の疑いもなくついてくる隊員に対する罪悪感もまた苦悩要因で、ダンがセブンに変身して自ら戦ったり、ウルトラ警備隊時代に平の隊員だったりした時には決して味わうことのなかった苦悩だった。

 だが苦悩するダンと、技習得の目途が掴めず焦るゲンが恐れていた自体は起きた。
 東京BX105地区にツルク星人が現れたのである。現状ツルク星人にMACの力で抗し得ないことなど百も承知のダンだったが、それでもダンを信じて下知を待つ隊員達を見渡したダンは苦渋の決断で出動を命じた。
 エンジンを換装した成果か、ツルク星人の斬撃をかわして機銃掃射を続けるマッキー2号&マッキー3号………う〜ん……やはり光速の98・9%の速度で飛ぶマッキー1号の速度倍化は無理だったか(苦笑)
 ともあれ、次々と波状攻撃を仕掛けるMAC機だったが、やはり与えるダメージは致命傷には程遠かった。そうこうする内に戦闘機(←マッキーではない)の一機がツルク星人の斬撃を受けた。
 室内を火花で充満させたコックピットの中では一人の隊員が悲鳴を上げて悶絶しながら機は撃墜された。乗組員の生死は不明だが、もっと分からんの背番号である。背番号「5」は青島なのだが、悲鳴は明らかに青島の声とは異なっていた。
 モロボシ・ダンが隊長となった時点で隊員達の影が薄くなるのは宿命の様なものだったかも知れないが、整合性ぐらい取って欲しいものである。

 犠牲者が誰にせよ、MACの戦闘機と隊員が撃墜されたのを目の当たりにしたゲンは居ても立っても居られなくなり、特訓が不完全な状態なのを顧みず、ウルトラマンレオに変身し、ツルク星人と対峙した。
 だが、誰の目にも時期尚早なこの勇み足、丸で勝負にならなかった。ツルク星人の二段攻撃による斬撃の前にレオは中途半端なガードを固めるだけで、本来自身が繰り出すはずだった脚による攻撃をツルク星人から繰り出されまくっていた。
 劣勢に次ぐ劣勢で丸で勝機も見えず、そうこうする内にカラータイマーも忽ち赤点滅を始めた。やがてグロッキー状態で港口に追い込まれたレオはツルク星人からの斬撃を為す術なく食らい、もんどり打って海中に倒れた。その後ほんの少しの間は海面にカラータイマーの光を映していたが、やがて光も、タイマー音も途絶えると激しい泡を海面に噴出させてレオはその姿を消したのだった‥‥……。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新