ウルトラマンレオ全話解説

第21話 見よ!ウルトラ怪奇シリーズ 北の果てに女神を見た!

監督:外山徹
脚本:田口成光
殺し屋宇宙人ノースサタン登場
「見よ!ウルトラ怪奇シリーズ」の第5弾にして、北海道シリーズの第3弾である第21話の冒頭は聖火台の様な物が立つ小高い丘の上に1人の美女(麻里とも恵、現・阿川泰子)が直立し、無表情で聖火を見上げていた。

 美女が見上げる更に上空には、光速に近いスピードで動く赤い宇宙船が日本列島に向けて飛来しており、その報を第4宇宙ステーションから伝えられたMACでは、ゲンと北海道出身の北山隊員(うたた賢)を北海道に派した。
 道中、マッキー2号内での会話から北山の簡単な紹介が為され、彼は一年前に開催されたオーロラ国際スキー大会にて優勝していたことが話された。その北山が忘れられない思い出の地・手稲山が見えたところでダンから、謎の宇宙船がその付近に着陸する模様であることが知らされた。

 直後、北山が赤黒く光る宇宙船を発見。その宇宙船は冒頭の聖火台上空に迫り、それを見た美女は無表情が一変して笑顔となった。彼女は両手を挙げて宇宙船に合図を送り、その様子から宇宙船は彼女を迎えに来たものであるのは明らかだった。
 だが次の瞬間、峡谷の合間から現れた宇宙人−殺し屋ノースサタンが現れて口からガスと共に無数の弾丸を吐き出すと宇宙船を撃墜してしまった。恐らくこの攻撃で彼女の同胞がそれなりの人数命を落としたと思われ、悲しみに暮れる彼女にもノースサタンは迫って来た。
 マッキー2号機上からその様子を黙視していたゲンと北山は、当初宇宙人同士の同士討ちかどうか図りかねていた(もしそうならMACとしては基本不干渉となる)が、ノースサタンが女性を追っているのを見るとこれを救出せんとして着陸した。
 その間もノースサタンは口からガスを吐いて美女を追い続けた。ガスに内包される弾丸は針状のもので、等身大で逃げる美女にとっては無数の槍が次々と降り注ぐに等しかった。まあ、人も宇宙人も見た目で判断してはいけないが、角状の頭部・赤く鋭い目つき・裂けた口に並ぶ牙を持つノースサタンの容姿が名前の通り悪魔然としている上に地球人に見えなくもない女性を追っているシーンを目の当たりにすれば十中八九ノースサタン=敵、女性=被害者、と推測するだろう。

 やがてそうこうする内にノースサタンの吐いた槍の一本が美女のスカートに突き刺さって地面と釘付けにし、振り返った彼女の顔を見た北山は「ニケの女神!」と叫んだ。
 槍を抜く北山の顔を見たニケの女神も彼のことを知っており、二人は旧知であることが伺えた。そんな再会云々よりニケの女神に避難を促し、MACガンにてノースサタンと応戦中だったゲンに加勢した北山だったが、ノースサタンの吐く槍を右大腿部に受けて行動不能となった。
 それを見たゲンがMACガンを撃ちまくると何故か紫色の煙に身を隠してノースサタンは撤収。即座に北山の介抱に向かったゲンだったが、北山は自身の怪我よりもニケの女神の方を気にしたまま気絶した。その北山を心配そうに見ていたニケの女神だったが、ゲンによって宇宙人であることを看破されると逃げ去ってしまった。

 場面は替わってとある海岸。いきなりゲンがダンに殴り飛ばされたシーンから始まった(苦笑)。ダンの制裁はゲンがニケの女神が意味を宇宙人と知りながら逃がしてしまった事を詰ったものだった。そん不手際に対して「何故?」と問われたゲンは、重傷を負った北山を捨て置けなかったから、と答えたのだったが、ダンから返って来たのは、

「言い訳など要らん」…………じゃあ、聞くなよな………。

 少し個人的な愚痴が入るが、うちの道場主は言い訳大魔王で、生来の臆病さもあって苦境に陥るとすぐに自分の事情を述べたり、正当化する言を吐いたりして、苦境から逃れんとする悪癖がある。
 それゆえ、頭から「言い訳はいい!」と封じられた記憶も多いのだが、「どういうことだ!?」と尋ねておきながら、こちらが言い分を述べると「言い訳すんな!」と詰った奴は今でも腹が立つ時がある(内容が通らないものであることを詰るのならまだ分からんでもないのだが)。
 勿論、ウルトラセブンも、モロボシ・ダンも、森次晃嗣さんも大好きだが、「何故?」と聞きながら、「言い訳など要らん。」は頂けない(苦笑)。

 話を戻します。
 勿論ダンとて北山の負傷に冷淡な訳ではなく、それよりは宇宙人を取り逃がしたことで一般人に被害が拡大することを懸念してのものである。それに対して、ゲンはニケの女神は被害者なので(逃がしたとしても)大丈夫としたが、そこは即座に認識の甘さをダンに突き付けられた。
 ダンはノースサタン(←ここで名前が出た)がニケの女神を襲うことで周囲に被害の出ることを懸念しており、彼女のいるところは皆、危険とした(実際、最前の襲撃に際しても2機のロープウェイが巻き添えで襲われた)。
 それゆえ、万人の安全の為にも、最悪北山を見殺しにする羽目になったとしても彼女を確保するべきとダンは言いたかったのだろう(←さすがにそこまで言及しなかったが)。
 ともあれ、さすがにそう諭されてはゲンも納得する他なく、ゲンは当てがないながらもニケの女神捜索に掛かった。

 そして手掛かりは北山に有りと睨んだゲンは、見舞いがてら斗南病院に入院中の北山を訪ねた。
 命に別状はないものの、3時間後の手術如何では右足を切断することになるかも知れないとあってはさすがに北山の表情は暗かった。そんな北山は手術の前に自分の頼みを聞いて欲しいとゲンに懇願し、「会いたい人がいる。」と述べた。
 ゲンはそれがニケの女神か、と返し、北山はそれを肯定した。そしてそこから北山の回想シーンに入り、彼とニケの女神との遭遇が語られた。

 回想によると一年前、オーロラ国際スキー大会に参加するべくフェリーにて大会会場に向かう途中、北山はデッキに佇むニケの女神に気付いた。
 直後、彼女の背後から等身大のノースサタン (←巨大化時とは大きく容姿が異なる)が襲い掛かり、非番・私服で武器一つ持たない北山は徒手空拳でこれに立ち向かた。
 巨大化時同様、口からガスと無数の含み針を噴出するノースサタンだったが、北山は足下に噴出されたそれらを見事な体裁きとステップで躱し、ガスが途切れるや逆襲に転じた。
 北山の攻撃は主に柔道技で、やがてノースサタンは海中に投げ飛ばされて姿を消した。討ち取るには至らなかったとはいえ、 MAC隊員による記念すべき快勝だった(厳密には13話でダンがMAC隊長としてバイブ星人を倒しているが、彼の正体を知る身としてはカウントし辛い)。

 危ういところを救われた彼女は御礼にと言って首飾りを差し出した。勿論MAC隊員としての職務義務からもそんなつもりで助けた訳ではない北山は断ったのだが、彼女は半ば強引にこれを渡し、首飾りにある勝利の女神であるニケの女神像が北山に勝利の栄光をもたらすとした。
 これからオーロラ国際スキー大会に出場するという北山に必ず優勝すると断言した彼女は北山の名前を口にし、初対面の筈の彼女が自分の名を知ることに驚いた北山がその素性を誰何すると、ニケの女神を名乗った彼女は突如発生した白い霧と共にその姿を消した。

 僅かな時間の、夢幻の如き出来事だったが、北山の掌中には先の首飾りが残され、北山は彼女の予言通り大会の覇者となった。
 そんな彼女の正体を知りたがり、彼女と会うことで手術が上手くいくのではないかとの希望的観測に縋る北山との会話で、ゲンは際に彼女を見た聖火台に現れるのではないか、と考えて現場に急行した。

 ゲンの狙い過たず、ニケの女神は聖火台の近くにいた。警戒感をにじませる彼女はその名を呼ばれて逃げ出した。追いかけてきたゲンに追い付かれた彼女は、自分が宇宙人と知るゲンがノースサタンの仲間と睨んでいた。ゲンが北山と同じ服装をしているのは目に入らなかったのだろうか?(苦笑)
 そんな彼女にはゲンは自分がウルトラマンレオであると名乗り、北山からの伝言を持ってきた、と告げるとさすがに彼女も警戒を解いた。というか、厳密には負傷した北山を気に掛け続けていたのだろう(命の恩人だしね)。
 ゲンから北山の容態を伝えられたニケの女神は、二度も命を救ってくれた北山の為に何かしたい気持ちを持ちつつも、二つの理由を挙げて出来ないとした。
 理由のその一は、自分が宇宙人であることとしていた。ここで彼女は自分がアルファ星人であると告げ、四年に一度星の誰かが地球を訪れて地球人に勝利の祝福をもたらす自分達を地球人が「ニケの女神」と呼んでいたことも証言した(←つまり一年前の北山祝福は事前からの決定事項で、それゆえ彼女は北山のことを知っていた訳だ)。
 もう一つの理由はかねてから自分を殺さんとしているノースサタンが、自分を求めてそれにより周囲に迷惑が掛かりかねない、というダンが懸念する内容と同じものだった。

 二つ目の理由は思い切り合理的なものなのだが、ゲンは北山の願いを叶えることに躍起になっており、半ば強引に北山との面会を強要し、彼女もそれに押し切られる形で了承した。
 北山は再会を喜んだが、彼女とダンが懸念した様に病院はノースサタンの襲撃を受けた。これを見るとゲンの行動はMAC隊員失格と言わざるを得ない程私情に捉われたものだが、隊員としての立場や上司の命令に反しても人情を貫くのがおヽとりゲンの長所・魅力であることも間違いないから複雑である。
 また、同時にゲン以上の困ったちゃんと化していたのが北山である。ノースサタンが自分を襲わんとすることで多くの人々が巻き添えを食うことを懸念するニケの女神は自分の素性やノースサタンの狙いを話して、その場を去らんとするが、北山は「そんなことは問題じゃない!僕には君が必要なんだ!」と言って、握った手を離さない。
 まあ、片足切断の危機に直面し、恋愛感情とも、何かに縋りたい一種の信仰心ともつかない北山の尋常ならざる精神状態と思えば多少は同情しないでもない(勿論万民を守ることを使命とするMAC隊員としては許されざる私情先行である)。
 結局、ニケの女神は北山に手術の成功を祈っていると告げると、その手を振り切って立ち去ってしまった。

 病院を飛び出したニケの女神は両手を高く上げて、ノースサタンに自分の所在をアピールした。終始無言だったが、ノースサタンの目的を果たさせる=自分が犠牲になることで北山を初めとする地球人に害が及ばない様にと考えていたのだろう。
 そんな彼女に気付いたゲンだったが、直後にダンの叱責を食らった。ダンはゲンが自分の懸念・指示を聞かず、ニケの女神を求めるノースサタンが町を襲う事態になったことを(「貴様」という二人称で)詰ったが、ゲンは北山とニケの女神の想いに応えることを優先したと述べるや、(またもダンの忠告を無視して)レオに変身し、ノースサタン迎撃に出た。

 だが、勝負は秒殺に近いレオの敗北で終わった。
 恐らく格闘自体はレオに分があったのだろう。作中にては触れられなかったが、ノースサタンは殺し屋稼業の為に宇宙拳法をマスターしているのだが、レオの力量はその上だった。
 しかしながらノースサタンが得意とする含み張り攻撃には全く抵抗出来ず、胸部を針鼠の用にされてダウンした。幸いノースサタンはそれに満足したかのように紫煙を発して退却(←どうもこいつの退却判断基準は良く分からん)したが、さすがにゲンは地面に跪いた状態でぐうの音もなくダンの叱責を受ける羽目になった。

 これはシルバータイタンの推測だが、恐らくゲンには慢心があったのだろう。第15話以降、敗北も特訓も経ず(厳密には第19話で少し特訓したが、どちからというと対策に近かった)、ノースサタンニケの女神を求めてやって来てもその場で返り討ちにすれば問題なく、逆に探さなくて済むという計算もあったかもしれない。
 勿論、それ以上に北山の必死の想いに応えたいという感情の方が強かったのだろうけれど、ともあれ、勝負は秒殺に近い敗北を喫し、目論見が全壊したことにはさすがのゲンも項垂れるしかなかったのだろう。

 ただ、そんなゲンの様子に反省を感じたものか、ダンも一応叱りはしたが、すぐにノースサタン攻略のヒントを与えた。
 ダンはかつて北山がノースサタンの撃退に成功したのも、スキーの回転競技優勝者である彼がその技量でノースサタンの含み針攻撃を躱せたからだとして、ゲンにその習得を命じた。
 これを受けてゲンは無数に並べた旗の間をステップを切って走り進む訓練に挑み、結果、これが『ウルトラマンレオ』における最後の特訓シーンとなったのだった。

 場面は替わって件の聖火台。そこに立つニケの女神は自分が犠牲になればノースサタンが地球を襲うことはなくなるとして、覚悟を決めていた。
 やがてノースサタンが現れ、彼女は目を閉じたのだが、次の瞬間、銃声が轟いた。
 彼女が目を開けるとそこに居たのはMACガンでノースサタンに立ち向かうダンで、ニケの女神は自分さえ犠牲なればいいとしてダンを止めに掛かった。
 勿論そんな自己犠牲論にダンが「はい、そうですか。」という訳はなく、故郷に帰れなくなった(と思い込んだ)ことで自暴自棄になっている彼女に命を粗末にしないよう諭した。
 そしてそんなダンに応えるように特訓を終えたゲンがMACカーで駆け付けた。

 最前の特訓が最後=もうゲンが特訓を必要としない存在に成長したことへの信頼もあってか、ダンはゲンの到着を見ただけで「頼むぞ!」と声を掛け、ゲンもそれに力強く答えるとレオに変身した。

 前述した様に、格闘では明らかにレオに分があった。そして含み針ガス攻撃も訓練を積んだレオには通じず、レオはバク転で針を躱し、バク転を繰り返したままカンガルーキックでノースサタンの懐に入り込むや、近接攻撃を繰り返し、最後はレオパンチ (右ストレート)でそのどてっ腹に風穴を空けて勝負を決した。
 これにて致命傷を負ったノースサタンは風穴から火花を散らし、直立のまま体を横回転させ、やがて爆発・炎上した。

 ノースサタンを討ち果たしたレオはそのまましゃがみこんで右手をニケの女神に差し延べた。その姿勢を訝しがる彼女にダンは、「貴方の星まで届けると言っている。さあ、早く。」、とレオの意を代弁した。
 それを受けて満面の笑みを湛えたニケの女神はダンに礼を述べるとレオの掌中に乗り、アルファ星へと還って行ったのだった。
 余談だが、ニケの女神を演じた麻里とも恵さん(当時22歳)は、実に様々な表情を見せたのだが、彼女の満面の笑みは同番組出演女優さんの中で最もシルバータイタンの好みだった(ポ)(←道場主「気色悪いから頬を染めるな。」)。

 そしてラストシーン。
 無事手術を終えた北山はゲンと共に聖火台にやって来ていた。車から降りなかったので、足を切断せずに済んだかどうかは厳密には不明なのだが、隊員服を着用していたところを見ると、MACの職務に復帰出来たと見られ、足は無事だったと思われる。
 聖火台を見上げていた北山はやがて思い出に整理がついたのか、ゲンに「行こうか。」と声を掛け、ゲンは車を出した。
 かくして第21話は「見よ!怪奇シリーズ」、北海道シリーズと共に終結したのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新