ウルトラマンレオ全話解説

第22話 レオ兄弟対怪獣兄弟

監督:深沢清澄
脚本:田口成光
兄怪獣ガロン、弟怪獣リットル登場
 冒頭、カオルに急き立てられてスポーツセンターの一室に百子が入ると、そこにはゲン・トオル・猛がバースデーケーキと拍手でもって彼女を迎えていた。
 喜ぶ百子に、ゲンが企画したことを指して、照れるゲンをからかう梅田兄妹、とほのぼのしたシーンを経ていざバースデーパーティーが始まろうとしたのだが、大村不在を理由に猛が待ったを掛けた。
 何処に行ったのか?と訝しがる一同にカオルが「知っている。」としたその理由はサイクリング。大村が肝心な時に不在であることに「またぁ?!」と言って呆れる一同だったが、第11話以来、11話振りの登場で、大村の不在振りは尋常ではない(苦笑)。

 少し話は逸れるが、大村正司を好演した藤木悠氏は『ウルトラマンレオ』放映の翌年から『Gメン75』にてレギュラー出演で活躍し、当時既にベテラン俳優として、それゆえに『ウルトラマンレオ』に抜擢され、しかしながらそれゆえに多忙極まりなく、充分な出演が出来なかったと思われる。
 ただ、この第22話が最後の出番となったのは(個人的に大いに不服だが)仕方ないにしても、第40話でスポーツセンターの主要メンバーが数多く落命した際やそれ以降にも大村の存在に言及がなかったのは頂けない。
 大村正司というキャラクター、藤木悠という名優の存在と併せて惜しまれる次第である。
 ともあれ、百子的にはゲンがいれば大丈夫というトオルのからかいを元に、大村不在のままパーティーが始まろうとしたのだが、特撮界のお約束、「東京102地区に怪獣が出現」の急報が入り、ゲンは緊急出動しなくてはならなくなった。
 普段はMACの任務が持つ緊急性に理解のある大人な百子だが、自分の誕生パーティーにゲンがいてくれないことに少しむくれ、ゲンだって大村同様肝心な時に居ないとこぼす丘野かおりさんが良い具合にキュート

 そしてほのぼのした雰囲気は一変、場面は兄怪獣ガロンが口から火花を吐きながら、街中を所狭しと暴れる戦場に移行した。
 例によってガロンはマッキー2号、マッキー3号からの攻撃を物ともせず、両機とも撃墜され、それを見ていたゲンが「チキショー!これで4機目だ!」とこぼす有様だった。「このままでは全滅です!」とダンにゲンが告げている側から更にマッキー3号が被弾し、ダンもゲンに変身出撃を命じた。
 ところが、ガロンに立ち向かう途中、サイクリングしながら街中を逃げ惑っていた大村に遭遇したゲンは彼から塀の向こうから悲鳴が聞こえたと告げられた。そして程なく、「お兄ちゃん、助けて〜れお兄ちゃん〜。」、「あすか!頑張れ!」という声を聴いたゲンは声の出処に急行した。
 ゲンが駆け付けたその場には一人の少年岡村あすか(稲垣善之)が瓦礫に下敷きになっており、それを兄の岡村れお(遠藤義徳)が必死になって助けようとしていた。ゲンは即座に駆け寄り、レオと力を合わせて瓦礫をどけると、瀕死の重傷を負ったあすかを引き出した。

 だが、ゲンの状況を知る由もないダンは、レオが現れず、ガロンが暴れ続ける状況に業を煮やしていた。本部に問い合わせたところ、MACの被害状況は「これまででも最大(白川純子談)。」とのことで、具体的には死者3名、負傷者16名、マッキー2号が2機、マッキー3号が4機破壊されたとのことだった。
 犠牲者数で言えば第14話で報告された8名の方が多いのだが、この「8名」が死者負傷者を含んだものとして言っているなら、ガロン戦の被害が「最大」というのも一応は辻褄が合う。
 ともあれ大変な被害に違いはない。ダンはMACに大ダメージを与えたことでガロンが図に乗ることも懸念して全隊員の出動を命じた。

 場面は替わってとある病院。
 そこには緊急搬送されるあすかにゲンとれおが付き添っていた。あすかが手術室に運ばれたところでゲンはれおになぜあんな危険なところにいたのかを訪ねたところ、れおは、今日があすかの誕生日で、家族で食事に行くため、父親の会社まで出向いたところでガロンの襲撃に遭ったとのことだった。
 その襲撃で岡村兄弟の両親も命を落としており、あすかに万一のことがあれば自分は天涯孤独になるとこぼして項垂れるれお。そんなれおに、自分も炎の海の中で弟と離れ離れになり、両親も弟の失った身であることを告げた。
 だがゲンが弟を助けられなかったのに対し、れおは自分の力で弟を助けることが出来たのだから、あすかは助かるに決まっている、と(根拠は無いが)元気付けた。

 ここで話は一本の線に繋がる。
 既にガロンのために大勢の犠牲者が出ており、ガロンを放置すれば更に大勢の犠牲者が生れることは想像に難くない。となると理屈上は、MAC隊員としてゲンは二人の兄弟よりも大勢の市民の命を救う方に動かなくてはならない。
 勿論、あすかを見捨てていいと言いたい訳ではないのだが、優先順位的にはゲンはレオに変身してガロンを倒すことで更なる犠牲が出るのを防ぐのが先になる。が、そこはそこ、ゲンの性格的にすぐ側で助けを求める声を見捨てることなど出来ない。
 加えて、故郷のL77星でマグマ星人の襲撃を受けた際に実弟・アストラを助けることが出来なかったのもトラウマで、偶然酷似した名前の兄弟が過去の自分達と同じシチュエーションで眼前に現れたとあっては、ゲン=レオが捨て置けなかったのも無理はないことだろう。

 話を戻します。
 ゲンがれおを励まし、その想いに応えるべく戦場に復帰戦としたところで病院にやって来たダンと鉢合わせた。ダンはゲンが変身しなかったことを詰問。
 勿論、ゲンは岡村兄弟を助ける為だったことをそのまま述べたのだが、ダンから返って来たのは、「どうして知らせなかったんだ?子供達は我々に任せるべきだ。」という正論過ぎるまでの正論だった。
 眼前で命の危機に晒された子供達を助けに走ったのは決して責められる謂われはないが、子供の救助はダンを初めとする他のMAC隊員でも可能だが、暴れるガロンを倒すのはウルトラマンレオにしか出来ないことで、それはゲンも先刻承知の筈だった。
 決して怒鳴りつける訳でもなく、かといって不必要に優しい訳でもなく、正論として淡々と述べられるとさしものゲンも力なく詫びるしかなく、それに対してダンは、子供の命は勿論大切であることを認めた上で、それに捉われることでより大きな犠牲が生れかねない事、変身して戦うべき時、というものを切々と説いた。

 そしてこれに続く、「私はMACの隊長としてはレオなどに頼りたくはない…………だが、同じ宇宙人としてはお前だけを信頼しているんだ。」というダンのゲンへの言葉は『ウルトラマンレオ』全体を通して、シルバータイタン的に屈指の好きな名台詞であった。
直後、ダンのレシーバーにガロンが103地区に移動したとの連絡が入り、ダンはゲンに「お前なら必ず倒せる。」、「あの子の事は俺に任せろ。死なせはせん!」といった言葉を掛けて改めての出撃を促した。

 MACカーで駆け付けたゲンは今度こそレオに変身してガロンに打ち掛かった。
 レオ対ガロンの一騎打ちはダンが予測した様に圧倒的にレオ優勢で進んだ。レオの攻撃は次々とガロンにヒットし、逆にガロンの攻撃は丸でレオを捉えなかった。こうなるとガロンも勝負の不利を悟らざるを得ず、逃げに掛かったが、ダンは全MAC隊員達にガロンの退路を断つよう指示し、マッキー2号やMACロディーからの機銃掃射に逃走を妨げられたガロンのレオにあっさり追い付かれ、命運は風前の灯かに思われた。

 だが、次の瞬間、大地を割って地中からガロンにそっくり(大村正司談)な怪獣が現れた(頭部に一本角が有るか無いかだけが異なる)。ガロンの加勢に現れた。
 これを見ていた大村は容姿がそっくりであることをもとに兄弟に違いない、としていたが、親子や単なる同種族とは考えなかったのだろうか?(苦笑)
 まあ、ナレーションにより大村の推測通り、加勢に現れたのは弟怪獣リットルであることが視聴者には明らかにされたし、怪獣退治の目的で言えばガロンリットルの関係など問題ではなく、レオにとっては1対2となったことで勝負が不利に転じたことの方が重要だった。

 対ガロン戦だけに邁進すれば勝利は目前だったのだが、リットルは岡村兄弟のいる病院に迫り、助けを求める声を聞いたレオはガロンを捨て置いて病院に向かってしまった。
 兄弟への情もあったのだろうけれど、ダン気懸念した様に、まずはガロンを倒すという選択肢を放棄したことでレオはガロンリットルの挟撃に遭うや、兄弟怪獣のコンビネーションの前に忽ち劣勢に転じた(←一コマ一コマを見れば、一騎打ちなら充分有利な様子は見られた)。
 おまけに左上腕部に集中攻撃を受け、倒れ伏したままWストンピング攻撃に曝された。
 堪りかねたダンは久々となるウルトラ念力を発動。これを受けたガロンリットルは強烈な不快に襲われ、七転八倒した後に地中に遁走した。
 これによって当座はしのぐ形になったが、当然の様にダンは疲労困憊し、駆け付けた佐藤の心配振りは尋常ではない程だった。

 場面は替わってとある河原。そこに佇むゲンはL77星での最後の時を思い出していた。
 炎の海の中で瓦礫の下敷きとなった弟・アストラを必死に助け出さんとしていたレオの記憶は正に最前の岡村兄弟と同じもので、この回想シーンを見ればゲンが目前のガロンを捨て置いても岡村兄弟救出に必死になったのも分からないでもない。
 そして思わず弟の名を呼んで救いの手を差し伸べるような動きを取ったところでダンの杖がその肩を叩いた。ダンはあすかを見舞った帰りで、あすかの近況を伝えるとかつてのトラウマに捉われるゲンを戒めた。
 だからと言って、弟を助けられなかったゲンのトラウマが消える訳ではなかったが、ダンは故郷を失ったゲンの侵略者を憎む気持ちを再確認し、自分達が第二の故郷と定める地球を守る為にも悲しみに暮れていられないことを暗に諭した。
 勿論ダンの想いや言葉が分からないゲンではない。そこに103地区に兄弟怪獣が出現した報を受け、ダンに促されたゲンは、怪我など構っていられないと告げるように左腕を吊っていた三角巾を川に投げ捨てたのだった(←川を汚すな(苦笑))。

 Bパートに移るや、ゲンは坂道を駆け下りながらレオに変身して出撃した。
 主題歌をBGMに名前の如く獅子奮迅するウルトラマンレオだったが、1対2のハンディキャップマッチと左腕負傷による劣勢は覆らず、そうこうする内にカラータイマーが点滅を初め、勝負はまたも敗色濃厚となった。
 その頃、打つ手なしの状態に焦燥感を募らせていたダンだったが、上空から迫りくる赤い球体に気付いた。その間も自転車で逃げ惑っていた大村が走り寄って来て視聴者の代わりに疑念を呈してくれたのだが(笑)、正体不明の赤玉は地上にて大爆発を起こすや、中から現れたのはレオの弟・アストラだった。
 ちなみにこの間、大村は新たな怪獣が飛来してもう駄目だと嘆いたり、アストラを見てレオの弟が駆け付けたからもう安心と驚喜したりしていた。前述のリットル出現時にも触れたが、容姿の見た目からアストラをレオの味方と推測したのは良いとして、「弟」と断じたのは激しく謎だ(苦笑)。単純にウルトラマンの一人と見てもおかしくないだろうに………。

 ともあれ、アストラの加勢で形勢は一気に逆転した。
 ハンディキャップマッチに乱入したアストラは兄弟怪獣をレオから引き離すとレオを助け起こし、再会の挨拶もそこそこにマンツーマン体勢に入った。
 レオはリットルと、アストラはガロンと対峙し、1対1となると明らかにレオ兄弟が優勢だった。特にレオは片腕を負傷しているにもかかわらず対ガロン戦同様、リットルにも優勢に勝負を展開していたので、一連の展開から、個々の強さとしては明らかにレオの方が上で、それでも二人掛かりなら完全にレオを圧倒していたガロンリットルのコンビネーションは極めて優れていると分析出来る。
 恐らくガロンリットル兄弟のコンビネーションは同じ兄弟怪獣であるブラックギラスレッドギラス達のそれよりも上だろう。そしてレオとアストラの兄弟コンビネーションはその更に上を行っていた。

 マンツーマンでの格闘の後、レオはリットルを、アストラはガロンを背中から押し出して両者を鉢合わせにし、ニードロップ、前蹴りを個々に決めてダウンさせると、レオ兄弟最大最強の必殺技ウルトラダブルフラッシャーでとどめを刺したのだった。

 勝利の直後、レオとアストラは互いに手を取り合い、しばし供に空を飛んだ後両者は別れを告げ、アストラは地球を離れて宇宙に還って行った。今でこそL77星で生死不明となっていたアストラがマグマ星人に捕えられ、ウルトラマンキングに救出され、気ままな宇宙の度に身を置いていたことは有名だが、この第22話ではそれ等の背景は「誰も知らない。」で片付けられた(と言うより、後日への追加設定余地とされたのだろう)。
 ついさっきまで死んだものとばかり思っていた弟が、それもたった一人の肉親との再会とあっては随分あっさりとした再会シーンだが、恐らく手と手を取り合い、共に飛んでいる時間だけでも充分な意思疎通は取れていたのだろう。

 そして事件が解決し、場面は百子の誕生日パーティーの場に戻った。
 ケーキや蝋燭がゲン出動時と同じ状態だったところを見ると、兄弟怪獣との対戦は何て短い時間だったのだろう…………ま、翌日辺りに仕切り直したと見るべきでしょうね(笑)。
 ともあれ、改めて「Happybirthday To You」を一同が歌っているところに、花束を持って大村が現れた。最初は大村が持ってきた花束かと思われ、一同は「良いとこある。」と褒めそやしたが、すぐにダンからの贈り物であることが判明した。
 ダンからは肝心な時にゲンを駆り出したことを詫びるメッセージが添えられており、ダンが優しい男であることをゲンと百子は再確認したのだった(←これ以前の地獄の特訓を持ち出すのは野暮か?(苦笑))。
 同時にダンからあすかが助かったことを知らされたゲンはあすかの病床にもバースデーケーキを送って互いの友情を再確認して第22話は終結した。

 そしてこの第22話をもって、大村正司役の藤木悠氏は降板した。正確にはベテラン俳優として円熟味を増し、多忙極まりない藤木氏がなかなか登場出来ないまま、自然消滅的にこの第22話が最後の出番になってしまったと思われるが、せめて第40話以降の動向に何らかの形で触れて欲しかったものである。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新