ウルトラマンレオ全話解説

第24話 美しいおとめ座の少女

監督:前田勲
脚本:奥津啓二郎
ロボット怪獣ガメロット登場
 冒頭、MACのレーダーが地球に接近する宇宙船の存在を捕捉し、白川がこれをダンに報告した。
 宇宙船はBX003地区に墜落。中にはサーリン星人ドドル(天本英世)とその孫娘カロリン『仮面ライダー』の死神博士と、font color=green>『仮面ライダーアマゾン』の岡村リツ子が祖父・孫娘役とは面白い配役である(笑)。
 ちなみにこの第24話における松岡さんの客演はこれがデビューで、font color=green>『仮面ライダーアマゾン』におけるレギュラー出演より前である。

 ダンの命令を受けてMAC隊員達は墜落現場に駆け付けたが、サーリン星人達は立ち去った後で、梶田が背負っていた大型の探知機にもこれといった反応はなく、ダンは周辺地域のパトロール強化を命じた。
 BX005地区に異常はなく、BX008地区に向かおうとしていたゲンと佐藤は危うく物陰から飛び出したカロリンを轢き掛けた。カロリンは負傷した祖父の治療の為、病院に往診を求めたが、断られて引き返してきたところだった(←宇宙人ゆえ、保険証を初めとする身分を証明するものがある筈もなく、断られたのは無理なかった)。
 幸い、轢いた訳ではなく、怪我もないことに安堵した佐藤は急な飛び出しを窘めたが、カロリンはこれを黙殺。顔に泥がついていると指摘したゲンが差し出したハンカチは受け取り、顔を拭うとそれを返して立ち去った。
 そんな彼女の反応を見て、「おかしな子だ…。」と呟く佐藤だったが、黄緑を基調とした宇宙服っぽいいで立ちの方こそ「おかしい。」と気付けよな(苦笑)
 ともあれ、直後にゲンは彼女が去った場に宇宙金属の欠片が残されているのに気付いたが、これを訝しがる佐藤にも言葉を濁し、二人してその場を立ち去ったのだった。

 結局その場では何事も起こらなかった見えたが、他の寄る辺の無いカロリンは夜になって、スポーツセンター勤務を終えたゲンの前に再度現れた。
 祖父を助けて欲しいと懇願するカロリンが地球人じゃないことに気付いたゲンだったが、カロリンの要請を受けて彼女に同行し、息絶え絶えのドドルと出会った。
 ドドルの高熱を診たゲンはすぐ病院に連れて行くべきだとしたが、カロリンがこれを拒絶した。つまるところ、カロリンは地球人を信用出来ない存在と見ており、地球人ではないゲンを頼ったとのことだったが、直接的には最前の親切に絆されたようだった。

 結局ゲンはカロリンの懇願を受け、自力でドドルの看病をすることを引き受けた。
 まあ、安静にさせ、額を冷やすぐらいの事しかしてなかったのだが、それでも程なくドドルは危険な状態を脱した。
 一安心したところで宇宙人同士、故郷の話になったのだが、勿論ゲンの生まれ故郷はもう存在しない。一方、カロリンの故郷は乙女座ドドル星で、ドドル星は乙女座で一番美しい星だったとのことだった。
 勿論、過去形で語られている以上現状は異なる。ある日突然、ドドルの造ったロボット−ロボット怪獣ガメロットが反乱を起こし、サーリン星の人々は殺され、星は乙女座で最も醜い星に変わり果ててしまったとのことだった。

 かくして、ゲンが推測した様にドドルカロリンはサーリン星を脱して、地球に避難して来たと云う訳だった。だが、カロリンの推測ではガメロットドドルの技術を必要としており、きっと追いかけて来るとのことだった。
 これに対してゲンは彼女達を守ることを誓い、カロリンはいつか美しく復興したサーリン星に帰還することを祈るのだった。

 カロリンと約束を交わしたゲンはその後も廃工場にドドルを匿い、カロリンの元に通うのだが、念入りにシャワーを浴び、鼻歌を口ずさみ、髪型迄気にし、百子達からの一緒に映画を見に行こうとの誘いもブッチする姿は百子からカロリンに鞍替えした風にすら見えかねない。
 まあ、阿呆な邪推はさておき、意識を取り戻したドドルはゲンが助けてくれたのを孫から聞いており、ゲンに礼を述べるとともに10日もすれば動けるようになるとも告げた。そしてそこへ花を摘んで来たカロリンが戻ると、彼女は明らかにゲンの訪問を満面の笑みで迎えるのだった。そして二人の様子に目を細めるドドル。特撮ファンは天本氏を見ればいの一番に死神博士を連想するが、この話における天本氏は完全に孫娘を可愛がる好々爺だった。

 だが楽しいひと時を打ち破るかのように、MAC本部から宇宙船の襲来を告げる連絡がゲンのシーバーにもたらされた。サーリン星人達は自分達を捜索しているロボット警備隊に違いないと見て、困惑の表情を浮かべた。
 自分はどうなっても良いから孫娘だけは助けて欲しいと哀願するドドルに、ゲンは自分が何とかするからこの場を動かないよう告げて現場に向かった。

 やがて地球上空に宇宙船とも鉄塊ともつかぬ物体が飛来。即座にマッキー2号、マッキー3号が駆け付けたがダンは指示があるまで攻撃しないよう隊員達に命じ、自らは宇宙船に呼び掛けた。珍しい傾向だ(笑)。いつもはすぐに攻撃するもんなあ(苦笑)
 意外にも相手からは回答が為され、自分達を「サーリン星ロボット警備隊」と名乗り、飛来してきた目的は逃亡者ドドルカロリンの逮捕であると答えた。同時に地球に危害を加える意思がないことと、ドドルカロリンの引き渡し要請を伝えて来た。
 これを受け、二人を密かに匿っているゲンは「勝手なことを言いやがって。」と呟くと、ダンの命令に反して自分こそ勝手にマッキー2号による攻撃を始めた。

 サーリン星人に同情する身としては複雑だが、MAC隊員として、ゲンの行動は明らかに間違っている。
 地球の平和と安全をいの一番に考えるなら、地球に害意の無いガメロットを怒らせるのは只の害悪でしかない。地球人とサーリン星人との間に同盟や条約があるのならともかく、ガメロットが言って来た様に、(事の善悪は別にして)ドドルカロリンは異星から来た逃亡者で、地球人がリスクを冒してまで二人を守らなければならない義務も義理もない。
 冷たいことを言えば、「地球の安全と平和」をいの一番に考えるならゲンは二人をガメロットに引き渡して平和的にお引き取り願うのが定石で、最低でもこれまでの経緯をダンに報告するべきだった。
 だが、ゲンはすべてを一人で抱え、結果、地球にリスクが迫り、ダンの命令を無視してガメロットの怒りを買ったのである。

 勿論ガメロットは反撃し、頭部を出すと、胸部の赤ランプから光線を発射し、マッキー2号を撃墜し、ダンもゲンの独断専行に激怒した。
 ゲンと佐藤は何とか脱出したが、ガメロットは自分達の力を誇示して一時間以内にドドルカロリンを連れて来るよう要請した。聞き入れなければ地球を破壊すると宣言したのでもはや脅迫である。

 ダンはゲンの命令違反を詰ったが、それよりも一刻も早くサーリン星人を探すようゲン・佐藤・梶田に命じた。梶田は探してどうするのか?と訝しがったが、ダンを代弁するように佐藤がロボット警備隊に引き渡す、とした。
 ダンは表情こそ曇らせたが、地球の平和の為にはやむを得ないとして暗に佐藤の台詞を肯定した。確かに脅迫じみた要請に応じるのは面白くないが、余所の星のいざこざの為に地球に害が及ぶのを避ける方針を取るのは当然とも言える。

 これに対してゲンは反射的に「ひどい!」と云ったが、ゲン以外の面々はドドルカロリンの境遇を知らないので、佐藤には何が酷いのか理解出来ず(単純に異星人がその星の犯罪者を追って来ただけということもあり得る)、ゲンの難色からダンはゲンがサーリン星人の居場所を知っていることを察知した。
 当然ダンは居場所を言うよう命じたが、ゲンはそれを拒否してその場を脱すると二人の隠れ家に駆け付け、逃げるよう告げた。
 まだ満足に動けないドドルを抱えたゲンとカロリンガメロットの魔手を逃れんとしたが、そこにダンが立ちはだかった。だがダンに二人を引き渡す気はなく、ドドルに自分の身分を告げると、脱出用ロケットが用意してあると告げた。

 このダンの判断が正しいかどうかは判断に迷うところである。
 異星のいざこざに対して「我関せず。」を決め込むなら、逃亡者であるドドルカロリンに同情せず、ガメロットに引き渡すべきである。だが、本来ガメロットとて地球にとって得体の知れない存在である。(先制攻撃を受けたと云うこともあるが)「地球を破壊する」という脅迫をしてくるところも油断ならない。
 ダンにしてみればゲンが匿ったことでサーリン星を巡ってガメロットよりもドドルカロリンに正義があると見て、後々の地球とサーリン星の関係の為にも真に正しき方に味方しなければならないという判断もあるだろう。
 となると、こっそり二人を逃がして、ガメロットに対しては「知らぬ存ぜぬ」を決め込むのも一つの方法と云える。

 結局、ガメロットは攻撃を始め、ゲンはダンに二人の避難を託してガメロット迎撃に出た。だがガメロットは難敵だった。鈍重そうな見た目とは裏腹に空中攻撃を仕掛け、柔軟な動きで素早い攻撃を仕掛けて来た。そして見た目通りに頑丈さと強力さを発揮して来たのだから、何とも狡いと言いたくなる手合いだった。
 幾多の死闘や特訓を経て、この頃のレオは充分な戦闘能力を保持していたのだが、それでも忽ち組み伏せられ、体重の乗ったストンピング攻撃の乱打に曝された。

 そしてゲンへの想いから見るに見かねたカロリンドドルが止めるのも聞かずその場を飛び出し、その身をロボットに変ずるとガメロットの腹部に飛び込んでこれを破壊した。
 これにより動きの鈍化したガメロット相手に反撃に転じたレオは勝負を優勢に進め、ガメロットの右腕をもいでグロッキーに追いやるとレオキックでその首をへし折った。頭部を失い、しばしもがいていたガメロットだったが、やがて地面に倒れ伏して爆発・炎上した。

 結局、カロリンドドルによって作られたロボット、正確にはアンドロイドだった。ただ使役の為に造られたガメロットとは異なり、人を愛する心を組み込まれていた存在だった。だが、それゆえにゲンを想ってその身を挺して彼を庇い、その命を散らすという悲劇を迎えてしまった。
 ラストシーンにて川原に建てられた墓標を前にゲン、ダンは合掌してその冥福を祈り、二人の想いに追随するようにドドルは、例えアンドロイドでも彼女は自分の孫だと告げ、孫の眠る地球に住み続けるとした。
 身も蓋もないことを書けば、この後の話にドドルが出て来ることはなく、彼は人知れず地球に隠棲したことになる。地球を故郷とする意味ではゲンと同じ選択をした訳だが、サーリン星が滅びた訳ではないことを考えると、直に語られなかったとはいえ、既に故郷の滅びたゲンとは立場が異なることが静かな余韻を残してこの第24話は終結したのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新