ウルトラマンレオ全話解説

第26話 日本名作民話シリーズ! ウルトラマンキング対魔法使い

監督:東條昭平
脚本:大木淳
怪獣人プレッシャー星人登場
 低視聴率に悩む制作陣が打ち出した梃入れ、「日本名作民話シリーズ!」の第1弾だが、それ以上に伝説の超人ウルトラマンキングが初登場した話として名高い。
 長閑なBGMの元、久々にスポーツセンターを舞台に始まったのだが、練習生の一人・哲雄(工藤智彰)がその母(五月晴子)と共に退部の挨拶を行っていた。
 哲雄自身はスポーツセンターを続けたがっていたのだが、母親は哲雄の苦手だった体育の成績が「5」になったことでセンターには感謝しつつも、もはや用は無いとして、次に書道教室に通わせる為にもセンターを止めさせると断言した。
 要するに全科目の成績を「5」にさせんとする典型的教育ママで、この手の人物はまず周囲の意見に聞く耳を持たないのが相場である、リアルでもフィクションでも。だが、この母にしてこの子在り、といったところか、哲雄もなかなかに頑固で、退部を拒絶して強引に練習に戻った。母親が激怒したのは言うまでもない。

 場面は替わってMACステーション。白川が東京103地区に星人が現れたことと、その追討を隊員達に伝えていた。
 廃電車が鎮座する現場に急行したMAC隊員達(←珍しく、ヘルメットをかぶった松木隊員が見れるぞ!)はそこにいた怪獣人プレッシャー星人(公的な正式名称は「怪獣人プレッシャー」ですが、作中の出の呼称を尊重し、拙作では「プレッシャー星人」と表記します)を追った。
プレッシャー星人はこれまでMAC隊員達が直に干戈を交えた等身大の宇宙人達とは大きく異なり、武器や肉弾による攻撃を殆ど行わず、行動の多くを逃走に費やし、厭戦的ですらあった。
 しかし、だからと言って地球人に害が無い訳ではなく、採石場を経由して住宅地へ遁走して来たプレッシャー星人が駆け込んで来たのは哲雄の家だった。

 ある日自宅に突然何者かが押し入れば普通に脅威である。宅内にいるのが屈強な大男ならともかく、主婦と子供しかいないところに正体不明の宇宙人が不気味に笑いながら乱入して来たのだから、母親は息子を庇いながら震えるしかなかった。
 実の所、この後プレッシャー星人が行ったのは、念動力を駆使して本棚の本をぶちまけたり、ガラスのコップを割ったり、と破壊活動には違いないのだが、どこかせこく、結果的に哲雄とその母はかすり傷一つ追うことはなかった。
 ただ、そうは言っても結果として少し宅内が荒らされたという被害で済んだに過ぎず、MAC隊員達が駆け付けてきた際には盾にされたり、念力で空中に浮かせられたりした際の恐怖は尋常ではなかっただろう。

 ともあれ、調子こいて高笑いするプレッシャー星人の隙を突いてゲンが攻撃を仕掛けたことで念力が遮断された様でゲンは松木に母子の保護を託してプレッシャー星人との格闘に入った。
 ここで初めて戦いらしい戦いになり、取っ組み合いの最中に杖で殴られたり絞められたりしたゲンだったが、後で述べられた様に「宇宙の魔法使い」との異名を取るプレッシャー星人は力(←ダンが後述したところによると強いらしい)よりも特殊能力で勝負するタイプの様で、結局は白土と梶田のタッグとやり合った後に逃走した。

 何とか難を逃れた哲雄とその母だったが、突然襲った恐怖心の影響もあってか、母は松木の介抱も拒み、哲雄に自分達を助けてくれたMAC隊員達への御礼言上を促されても、「そんな必要ありませんよ、MACが私達を助けるのは仕事なんざんすからね!」と言って、なかなかの嫌われキャラぶりを発揮していた。
 現実に即するなら、暴漢に襲われたところを警察官に助けられても「職務ゆえに当然」として礼すら言わない性格となり、現実にもそういう人物は存在し得よう。勿論礼を言わなかったからと言って、法的にも倫理的にも問題は無いが、人情的に好ましくない。
 実際にゲンも哲雄の母の態度には大いに不服で、MACステーションに戻っても憤懣やる方ない表情を露わにしていた。心配げに声を掛けた松木に「ありがとう。」と答えていたことからも、理屈的に哲雄の母に怒っても仕方ないことは理解しているのだろうけれど、気持ちは良く分かる。
 ダンもそんなゲンに対して落ち着くよう促しつつも、ゲンの気持ちには充分な理解を示していた。MAC隊員程ではないにしても、現実の世界にも警察官・自衛隊員・消防隊員・警備員の様に、一般ピープルの安全を守る為に時に身体の危険と直面した命懸けの仕事に従事する人達が大勢存在する。
 普通の生業でも、職務に対して「仕事だから当然」という不愛想な態度を取られては面白い筈がないのに、命懸けの職務に対してそれでは誰だって腹が立とう。

 ダンは世の中にMACの職務の大変さを理解する人もいれば、丸で理解しない、理解しようとさえしない人もいることを説いた上で、掛かることに悩むゲンを人間=地球人らしくなってきたとし、そう言われたゲンは満更でもない表情で機嫌を直した。
 ただ、ダンはそれよりも相手の正体がプレッシャー星人であることを明かし、「宇宙の魔法使い」と渾名される彼(?)を侮らないよう促した。力が強いばかりではなく、神出鬼没でダンも知らない不思議な術を使うとのことだった。

 程なく、ダンが懸念した様にプレッシャー星人は再度その姿を現した。東京上空に四色の雲を発生させたかと思うとその中から巨大化して現れた(容姿は等身大時と全く同じ)。
 ただこのプレッシャー星人、如何に不思議な術を持つのかも謎だったが、その行動目的はもっと謎だった
 杖を振り回して爆発を起こしたり、10前後の家屋を空中に浮かび上がらせたり、火の玉を操ったり、それ等をぶつけ合わすことで様々な破壊を行ってはいたが、そこに何らかの目的があるとは思えず、周囲の物を壊して喜ぶ悪餓鬼的愉快犯にしか見えなかった。
 勿論破壊活動を指咥えて見ているMACではなく、マッキー2・号3号、MACロディーがプレッシャー星人に波状攻撃を仕掛けたのだが、最初杖から紫の煙を放って、文字通り煙に巻いていたプレッシャー星人は念動力で反撃に出て、まずマッキー2号が空中で静止させられ、墜落に追いやられた。

 ところが、である。次にプレッシャー星人が行ったのは、地面に建てた杖を支えに空中に真横に寝転がって、ぐるぐる回り出すという妙な行動だった。勿論それで何をしたいのか丸で分からない。
 見かねたゲンがレオに変身し、杖を払っても空中に横たわっていたのだから、杖にもたれた意義もますます謎だった(←その謎っぷりは放映から約20年後に刊行された、宝島社の『怪獣VOW』シリーズにて不可解な存在の宇宙人ランキングにて1位に選ばれていた。地下鉄サリン事件から幾年も経たない頃に刊行された同署では、「空を飛べると言って、教祖になった奴もいたのに…。」と述べていた(苦笑))。
 ともあれ、戦いは続いていた。
 空中横臥(?)から地面に引き戻されたプレッシャー星人は宙を舞ったり、テレポートを駆使したりしてレオを翻弄した挙句、突如姿を現すと杖からの光線2連発で、レオを金縛りにした後、その体を矮小化せしめてしまった!
 狼狽えるレオに対してプレッシャー星人は更に杖から風船を出すとその中にレオを閉じ込め、大空に放ってしまった。

 レオ=ゲンが生死・行方共に不明状態にダンはMACステーションにて、第4話以来の落ち込み様を見せていた。その所在なげな様子は白川も心配そうにしていたほどだった。
 だが当然と云おうか、必然と云おうか、レオは無事だった。厳密には生命の危機には瀕していなかったと云うべきで、偶然にトオルが風船を割ったことから拘束状態を脱し、元ネタとなった一寸法師宜しく、しばし泳いだ後、何故か今時の川を流れていたお椀に乗り、割り箸を櫂に川を下った後、MACステーションに向けて飛び立った。飛行能力が失われていないのなら、お椀での航行に何の意味があったのやら(苦笑)。ま、元ネタへの敬意かな?

 場面は替わってMACステーション。ようやくにしてダンの元に辿り着いた訳だが、勿論ダンは一寸法師と化したレオに驚愕。同時に「お前は2分30秒しか変身出来ない筈なのに…。」と訝しがっていた。
 寸を縮められたことでエネルギーの消耗も僅かで済むことが長時間の変身を可能にしているとレオも推測していたが、いずれにせよ体の大きさはコントロール出来なかった。
 そうこうする内にプレッシャー星人は再び街中に出現。ダンはレオを懐に抱いて(←フィギュアマニアみたい………)MACカーにて現場に急行した。他のMAC隊員達も攻撃を仕掛けるが勿論歯が立たない。
 出現直後は最悪のタイミングで姿を消したり現わしたりすることに翻弄され、星人が現れた・いないで争っていた哲雄とその母も必死子いて逃げ惑う他なかった。
 思考も目的も不可解なプレッシャー星人だが、どうも哲雄達を苦しめる対象と見定めているようで、執拗に追い回して来た。過剰に自分を勉強・習い事で束縛する教育ママと云えども哲雄は親想いで、我が身を囮にしてでもプレッシャー星人の気を引き、それによって母を逃がさんとした。
 さすがにこうなるとレオも捨て置けず、リトルサイズの身も顧みず出撃するや、逆に短躯を利した陽動飛行でプレッシャー星人を妨害した。その姿はさながらまとわりついて離れない蠅と、それを追って苛つく人間の有様だった。
 やがて、両掌で叩き潰したかと思われたが、レオは手を開いた瞬間に飛び出してプレッシャー星人の目にパンチを浴びせた。

 この間、地上では白土と梶田が哲雄とその母を救出し、ダンの仕込み杖がプレッシャー星人を掃射した。だが、ダン特製の武器ゆえに中途半端に威力があったことが災いした。
 杖からの銃撃はマッキー2号・マッキー3号からの機銃掃射よりもプレッシャー星人に痛みを与えたようで(苦笑)、プレッシャー星人はダンに狙いをつけて迫って来た。

 だが、次の瞬間、上空から落雷がプレッシャー星人に降り注いでダンの危機を救った。落雷とそれが巻き起こした煙が晴れると中からはマントを纏った巨人が現れた。
 謎の巨人を見たダンは一言、その巨人の名を呟いた。ウルトラマンキング、と。そしてナレーションによるとキングは、L77星でも、ウルトラの国でも「必ず何処かにいると云われながらまだ誰も出逢った事のない、不思議な力を持った伝説の人」とのことだった。
 ただ、後年の様々な作品を見るに、ウルトラの父やゾフィー辺りは面識がありそうで、ダンも年長者からある程度情報を得ていたからその容姿を一目見ただけでその名を呟けたのだろう。

 キングはおもむろにキングハンマーを取り出すとそれを上下に振り、それに合わせてレオの体がどんどん大きくなり、やがて元の大きさに戻った。どう見ても『一寸法師』にて打ち出の小槌が法師を若武者にしたシーンそのまんまである(苦笑)。
 御都合ながらもレオの復活に哲雄も、その母も、白土も、梶田も安堵の表情を浮かべ、逆に薄ら笑い造詣のプレッシャー星人が明らかに狼狽え出した。
 杖から火炎を放射してレオを攻撃するも軽く躱され、更にレオがキングから渡されたウルトラマントを振り回すとそれがレオブレラ(早い話傘)と化し、火炎攻撃は完全に遮断された。

 レオはレオブレラをたたむとそれでプレッシャー星人を突き刺すという残虐攻撃を敢行(苦笑)。そしてレオブレラウルトラマントに戻った後、一先ずキングに返され、再びキングからレオに送られるとレオの上腕部にブレスレットとなって格納された(その間、プレッシャー星人ウルトラマントではたかれ続けた)。
 直後、プレッシャー星人は背後からキングのキングフラッシャーを浴びせられ、次いでレオのシューティングビームを正面から食らって爆死した。

 そして夕闇の中、レオはキングの差し出した右手を両手で握って謝意を示した。キングによるウルトラマントの授与は故郷を失った孤独の身で、地球の為に尽力するレオにキングが感心したことによるものだった。
 満足気に頷いたキングは飛んで去り、無事に隊員達の元に戻ったゲンを改心した哲雄の母が笑顔と心からの御礼を述べ、皆が笑顔となって伝説と邂逅した第26話は終結した。

 ウルトラマンキングと云う長大なスケールを持つ存在が認識された記念すべき回だった訳だが、その助けを必要とするほどレオ達を苦しめたプレッシャー星人は何をしたかったのだろうか?まあ、『ウルトラマンレオ』に等身大で出て来る宇宙人の中には動機不明な通り魔としか思えない宇宙人も多いのだが(苦笑)、考えてみればその方が怖い気もするものである。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新