ウルトラマンレオ全話解説

第27話 日本名作民話シリーズ! 強いぞ!桃太郎!

監督:東條昭平
脚本:大木淳
鬼怪獣オニオン登場
 「日本名作シリーズ!」の第2弾で、超有名物語『桃太郎』をモチーフにした第27話は宇宙から始まった。舞台となったのは見た目もリンゴそのまんまの惑星アップル。
 たわわに実ったか樹林に現れたのは見た目一発地球の鬼そのまんまの鬼怪獣オニオン。容姿はともかく、名前は玉葱と間違えられそうだ(苦笑)。ともあれ、オニオンの目的は果実を食すことだった。
 何とも鬼らしくない生態だったが、この後の展開は更に鬼らしくなかった。オニオンがもぎ取ろうとした果実はアップル星人(←作中には登場しない)の所有で、その果実を盗み食うオニオンはアップル星人にとって害獣に等しかった。
 必然、害獣対策が為されていたのだが、果実をオニオンから守るべき見張っていたのは番犬ならぬ番鶏。そう、オニオンはニワトリが大の苦手で、逃げ惑っていた(勿論、普通の白色レグホンが撮影に使われたのだが、設定では惑星アップル固有種で、13mの体長が有るらしい)。

 場面は替わって地球。そこでは一人の少年・桃太郎(吉田友紀)が一人寂しくリンゴを齧っていた。それを見た五人のガキども、見るからに集団で一人をいじめる典型的な悪ガキどもが「一緒に遊ぼう。」と声を掛けて来た。
 仲良くするのかと思いきやさに非ず。クソガキどもの目的は桃太郎の持つリンゴで、コイツ等は「友達」であることをたてにリンゴを自分達に分けるよう強要。「友達」を騙るだけに下手な不良より悪質である。
 案の定、クソガキどもは鬼ごっこをして遊ぼうという桃太郎に対して、食べ終わったリンゴの芯を一斉に桃太郎にぶつけ、桃太郎を小突いたり、はやし立てたりしていじめ倒すのだった。
 数多くのウルトラ作品にて、話の展開から薄幸の少年が描かれる際に、彼等がいじめに遭うシーンは幾度となく展開されたが、この第27話におけるクソガキどもは心底腐っており、からかいの内容は桃太郎に両親がいないことを持ち出し、その境遇と名前から桃太郎を人間ではないと云わんばかりの扱いと囃し立てを繰り返した。
 桃太郎がいくら死んだ両親から生まれたことを主張してもクソガキどもはそれを否定・………いかん………何度見てもこのシーンは心底ムカつく………道場主もかつていじめに遭ったことはあるが、能力の無さや周囲の慮らない言動で(自らの至らなさを論った)いじめに遭ったことはあっても、容姿・家庭環境など(自分の能力や行動でどうにもならない要因)を論ったいじめは受けたことはなかった。そもそも子供に親がいないことを囃し立てることの何が面白いんだ??!!??(怒髪天)
 俺が親ならこんなガキが我が子だったら絶対許さんし、もし幼少の頃の道場主が、孤児を相手にかかるいじめを行ったとしたら、道場主の亡父は道場主の顔面が変形しかねない程の折檻を与えたことだろう。

 さすがに制作陣にもこの展開は酷いとの自覚があったものか、逃げる桃太郎を追うクソガキどもの眼前にMAC隊長・モロボシ・ダンが立ちはだかった(ついでにゲンと百子とトオル・カオルも)。
 MACの隊長を前に「まずい」という顔をしていたところを見ると、クソガキどもにいじめをしている、或いは大人から見て怒られることをしている自覚はあったようだったが、それでもからかいを続けたのだから、コイツ等本当に性根が腐っている………
 ダンはクソガキどもに対して、「仲良く遊ばなきゃダメじゃないか。」と諭していたが、このクソガキどもに必要なのは「仲良く遊ぶ。」という教えではなく、人の心をすさまじく傷つけていることへの自覚と反省で、それ以上にその罪に見合った罰だろう(←それぐらい食らわないと自分達の悪行を顧みるとは思えない)。
 ここで逃げ出しでもすれば可愛げもあるのだが、返す台詞が「だって桃ちゃん弱虫過ぎて面白くないもん。」だから呆れ果てる。確かにうじうじし過ぎるのも感心しないが、そんな「弱虫」と認識した相手を大勢でいじめる正当性が何処にあると云うのか?
 まあ、直後にゲンに「弱い者いじめ」という言葉を投げ掛けられて気まずそうにしていたのを見ると少しは自覚があったかもしれない。が、結局逃げ出しつつもからかい続けたのだから救いがなかった。

 ともあれ、ゲン達の励ましを受けた桃太郎は、喧嘩は嫌いだが本当にみんなをいじめる鬼みたいな奴は許さず戦うと述べ、振る舞いは気弱に見えても芯に強いものがあるのを認めた一同はそれを微笑ましく見守り、桃太郎は祖父母が待っているからとして帰って行った。
 直後、MACステーションの白川からダンに怪獣出現の一報が入った。VX103地点から東に向かっているとのことでダンはマッキー2号の迎撃を命じた。
 通報にあった怪獣とは勿論オニオンである。オニオンは惑星アップルをニワトリに追われ、果物が豊富に実るあろう秋の地球にやってきたとのことだった。うーん…………「どんだけニワトリが怖いんだ?」とツッコむべきか、「いつだって地球のどこかは秋だって。」とツッコむべきか(苦笑)。

 まあ、目的が目的なのでオニオンは果実を前に座り込んだり、それ等がまだ熟していないことに地団駄踏んだりしていた訳で、日常的に会られる怪獣の多くに比べれば人畜無害に近いのだが、そんなオニオンの生態を知る由もない地球人にしてみれば鬼そのまんまの容姿で、54mの巨躯でドスドス動かれるのは充分脅威である。
 桃太郎は果実店を経営する祖父(今村源兵)と祖母(田中筆子)に避難を促し、やってきたオニオンは祖父母の果実店を壊し、店内の果物を貪り食い…………うん、性格的に大人しい目でもこうなると有害な怪獣としか言いようがなくなるな。

 しばし果物を貪ったり、地面に気ままに寝転がったりしていたオニオンだったが、そこにマッキー2号・3号が飛来した。マッキー2号に搭乗していたのはダンとゲンと白土。3号に搭乗していたのは梶田だったが、作中言及されていないとはいえ、一人乗りのマッキー3号に登場することが多いのを見ると、梶田はマッキー操縦の名手とされているのになるほどと思わされる。
 例によってマッキーからの機銃掃射は金棒を持って抵抗するオニオンに致命傷を与えるには程遠かったのだが、痛みは伴ったようで、オニオンは口から緑色のガスを吐いてさらに抵抗した。
 緑色ガスは視界を塞いだだけではなく、何故か窓ガラスで密閉されている筈の機内にまで侵入し、ゲン達の目に催涙効果をもたらした。ナレーションはオニオンが玉葱の匂いのする霧を吐いて(←オニオンだけに?)涙を流させる攻撃をすることを「ふざけてるねぇ。」としていたが、それを「鬼の目に涙」としていたナレーションの方が「ふざけてるねぇ」と思う(苦笑)。第一、オニオン、涙流してないし(苦笑)。

 幸い、オニオンのガスは持続効果も短く、滅茶苦茶目を痛めると云う程でもなかった様だが、攻撃されて激昂したものか、オニオンは益々金棒を振り回して家屋を破壊し続け、見かねたゲンは新兵器の使用を提言し、ダンもこれを容れた。
 その新兵器とは麻酔弾で、ナレーションに「しかし、効くのかねぇ?」と揶揄される悲惨な存在だったが(苦笑)、ある一定の効果はあった。どてっぱらに注射をミサイルにした様な麻酔弾を受け、酩酊状態に陥ったオニオンはダウンして地面に横たわった。
 即座の効果にはしゃぐゲンだったが、本来はもっとゆっくり効果の出るものらしく、ダンは油断しないように告げた。案の定、オニオンは本当に眠っていた訳ではなく、マッキー2号もマッキー3号も接近したところを突如起き上がったオニオンによって叩き落されてしまったのだった。

 Bパートに入り、幸いにしてパラシュートで地面に降り立っていた一同は、これを黙視して追って来たオニオンに踏み潰されかけたのだったが、あわやと云うところで麻酔が効き、オニオンは再びダウンした。
 これ幸いとMACガンを一斉に浴びせたMAC隊員達だったが、これは藪蛇だった。オニオンは上体を起こして緑色ガスを乱噴射して来た。どうもオニオンは麻酔が効くも、痛みにはそれ以上に敏感なようであった。
 幸い、ガスを吐き続けるもオニオンはそこから動かなかった。ナレーションによると半分は効いているらしく、ダンは効果の持続する24時間以内に何とかしなくては、としていた。

 その背後でオニオン襲撃から避難していた人々がいたのだが、その中にいた桃太郎は意を決して鬼退治を決意すると祖父母の元を離れて駆け出した。途中、桃太郎をいじめていたクソガキどもも前非を詫びて鬼退治への協力を申し出、桃太郎もこれを了承した。
 些か御都合で、臭い展開の和睦だったが、もしかしたらこのクソガキどもの家も被害に遭ったのだろうか?クソガキの一人が「リンゴ貰ったことだしね。」としていたから、果物屋が壊されたことでリンゴが食えなくなったのを恨んだものだったりして(苦笑)。
 ただ、ダン達から見れば勢いに乗った無謀な突進でしかなく、忽ち緑色ガスの洗礼を浴びて悶絶した。さすがに殺傷能力がないとはいえ悶絶する子供達を捨て置けず、MAC隊員達はガキどもを連行・避難させた。

 一人、被害が軽微だった桃太郎はゲンに対して前言通り立ち上がったことを主張。ゲンはそれを窘めたが桃太郎は効かず、自分の名前からも自力での鬼退治にこだわった。
 そして桃太郎は鬼退治のため、白い大型犬(子供の桃太郎から見れば暴れれば充分危険)、ペットショップのカニクイザルを随行させようとするも相手にされず(苦笑)、やむなく雉替わりのニワトリを抱いているところでゲンと遭遇した。最初は桃太郎の身を案じていたゲンだったが、祖父母の涙に戦意を燃やす桃太郎の決意を見たゲンは遂に協力を申し出た。

 翌朝、キャンプを張って見張っていたダンの前でオニオンは目覚めた。そこへ現れたゲンは「どこに行ってたんだ?!」と詰問する白土に笑顔を向けると上空を指差した。
 そこには桃型カプセルを吊り下げたMAC特殊ヘリコプターがホバリングしていた(←誰が操縦していたんだろう?)。一連の流れを見たダンはゲンの意図を察したらしく、「大丈夫か?」と言ってが、ゲンは自信ありとばかりに強く頷いた。
 やがて明らかに桃型カプセルに関心を抱いたオニオンに対してヘリはこれを切り離し、カプセルはオニオンの掌中に転がり込んだ。だが、カプセルの中から聞こえたニワトリの鴇の声に驚いたオニオンはこれを放り出し、割れたカプセルからはニワトリと『桃太郎』と同じいで立ちで武装した桃太郎が現れた。
 成程、ダンが「大丈夫か?」と懸念したのも当然だ(苦笑)。普通に考えるなら桃型カプセルの動きは内部にいれば物凄い恐怖だった筈である。

 まあ、そこはそこ子供向けのフィクション(苦笑)、桃太郎は何事もなかったように弓に矢をつがえ、第一矢がオニオンの左目を潰した(次の瞬間何故かオニオンは眼帯をしていた。丸で喧嘩・乱闘直後に絆創膏や包帯が為されている漫画みたいだった(笑))

 続く第二矢も幾許かのダメージを与えた様だったが、ここで遂にオニオンの麻酔が切れた。これを見たゲンは捨て置けじと飛び出し、そんなゲンに「おヽとり!」と呼び掛けた梶田は振り向いたゲンにヘルメットを投げて寄越した。
 ワンテンポ置いてダンは梶田と白土にゲンの援護を命じ、二人も駆け出した。ゲンに独断専行の気があるのは相変わらずだが、ダンを初めMAC隊員達もゲンのそんな性格を理解した上で良い形で受け入れているのが分かるワンシーンで、初期のMACを思えば終盤は本当に雰囲気の良いチームになったものである。

 その間、オニオンと対峙していた桃太郎は最後の一矢を放っていた。その時の桃太郎の心境をナレーションは南無弓矢八幡大菩薩……って、那須与一かーい!!(笑)

 かくして放たれた最後の一矢だったが、この矢はオニオンの虎皮パンツの紐を断ち切り、(実際には見えなかったが)チ●ポロ状態に陥ったオニオンは周章狼狽しながらパンツをはき直し、それがゲンが駆け付けるまでの時間稼ぎとなった。
 パンツを持ち上げながら為す術なくMACガンに打ちまくられていたオニオンは恥の元凶を見つけたとばかりに金棒を拾い上げて桃太郎に襲い掛かったが、これを見たゲンはレオに変身して迎撃に出た。

 ほのぼのBGMが激しい殴り合いの緊張感を殺ぎまくる中、半ケツ状態のオニオンをボコにしたレオはレオスパークオニオンの両角を斬り落とし、オニオンは戦意喪失。次いでレオはチェンジングビームを放つとオニオンの体は惑星アップルにあった果樹と化してしまった。

 かくして街を破壊していた怪獣は退治され、角は祖父母の神経痛の薬となったとのことで、それを手土産に大団円となり、ナレーションが少々悪乗りした第27話は終わったのだが、それにしてもツッコミどころや、言いたいことが山ほどある回だったなあ………。
 一応シルバータイタンの想いを最後に箇条書きにしておきたい。

・大勢で不幸な子供をいじめるシーンを描くなとは言わないが、掛かる悪行に対しては然るべき罰当て、然るべき反省、根拠のしっかりした和睦も描かれるべき。
・鬼の角を薬にしたのは良いが、現実の世界では象牙や犀の角や虎の骨が精力剤になるという迷信の為に密猟されている。薬用にするならしっかりとした根拠を。
・本来果実食で、決して好戦的でもないオニオンを樹にしてしまうって、防衛上止む無く駆除するより残酷じゃないか?
・「桃太郎」に戦わせるなら陣羽織ではなく、洋ラン・鉢巻き・日本刀を携行させなきゃ(←勿論冗談です(苦笑))。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新