ウルトラマンレオ全話解説

第28話 日本名作民話シリーズ! 帰ってきたひげ船長!

監督:山本正孝
脚本:若槻文三
海棲人パラダイ星人、星獣キングパラダイ登場
冒頭、MACステーションにて梶田・白土・白川がレーダーと向かい合っていた。白土はダンに怪しき反応がCポイント6724で消えたと報告し、ダンは対象が潜水艇で、海中に消えたと分析し、マッキー3号でパトロールしていたゲンに捜索を命じた。

 その頃、同じ海域と思われる波止場で釣りをしていたトオルとカオルは通りすがりの男(岡田英次)と遭遇していた。バランスの取れた口髭・顎髭を生やし、パイプを燻らす男は港に停泊している漁船の船長と名乗り、トオルに上手な釣り餌の付け方を教えていたりしていたが、そこに暴徒と化した人々が何かを追っているのに気付いた。
 暴徒が追っていたのは緑の長髪と緑づくめの服を着た宇宙人=海棲人パラダイ星人の子供(神谷信弘)で、必死に許しを乞うのを暴徒達は容赦なく角材などで袋叩きにしていた。暴徒達は漁師の様で、パラダイ星人の子供を「化け物」とし、魚が取れなくなったのはこの「化け物」の仕業として叩き殺さんとした。うーん、何か第19話と似とるのう………。
 暴徒の中にはパラダイ星人の子供を憐れむ者もいたが、ほとんどの者は効く耳持たず状態で、殊に先頭に立つ初老の男(上田忠好)と若者(阿藤海)は頑迷で、殺意に溢れていた。何だかなー(笑)

 真面目に解説したいが、ウルトラシリーズの世界では毎週のように怪獣や宇宙人が出現し、その多くは人類に敵対的で、生態自体が害悪となるケースも多い。まして『ウルトラマンレオ』においては初期にはただ遭遇しただけで殺しに掛かってくる宇宙人も多く、身内を宇宙人に殺されたり、自宅や生業施設を破壊されたりした経験を持つ者がいてもおかしくない。
 それゆえに「宇宙人=悪」と見る者は決して少なくないだろうし、自分達に危害を加えまいか懐疑的になるのはもっと無理もない。令和2(2020)年の新型コロナウィルスによる世界的な混乱を見ると、人類は「我が身に危険を及ぼすかも」と思った存在に容易に攻撃的になり、それが昂じると「それをもたらしかねない。」と思った外的存在を凄まじく拒絶する。
 つまり、偏見一つで互いに責め合う人類の哀しい本質は古今東西全くと言っていいほど変わっていない。
 この第28話におけるパラダイ星人の子供が日本語で泣いて「止めて!」と叫び続けるのを意に介さず袋叩きにしているシーンを見れば眉を顰めたくなるが、シルバータイタン自身もし現実に同じような状況に遭遇すればどう変化するか自信は持てない。
 ストーリーを知り、フィクションを見ている冷静な立場で物申せば、せめて生け捕りにしてMACに通報するのが筋と思われるのだが、簡単ではないのだろうな………。

 話を戻すと、パラダイ星人の子供の危機を救ったのは船長だった。
 梅田兄妹と共に暴動の現場に着いた船長は即座に割って入るとパラダイ星人の子供を抱きかかえてその身を庇った。勿論、暴徒と化した者達が「止めろ!」と云われて止める訳ないのだが、船長は2年前にインド洋でハリケーンに遭遇した時も自分の身を守ってくれたと称するバロック真珠の「お守り」を群衆に提示して、それと引き換えにパラダイ星人の子供を引き取った。漁師達は殺した方が良いとの意見を引っ込めなかったが、取引には応じた。
 まあ、漁師が浦島太郎で、パラダイ星人の子供が亀で、群衆が悪童と置き換えた『浦島太郎』そのまんま展開だった訳だが、動物虐待と未知の存在への偏見襲撃を同列にするのは無理が無いかな?

 ともあれ、一連の騒動を傍で見ていたトオルはすぐにこれをゲンに通報。即座に駆け付けたゲンだったが、船長はゲンをも警戒し、密かにパラダイ星人の子供を海に逃がした。
 船長に礼を述べたパラダイ星人の子供は、ナレーションによると流されて浜辺に辿り着いたものとのことで、海岸に立つと海底に潜むパラダイ星人の潜水艇に向かって救援信号を放った。

 そして夜、パラダイ星人の子供は一人海岸でパイプを燻らせていた船長の元に現れると、「まだ逃げなかったのか?」と呆れる船長に対し、命を救ってくれた御礼に「いい所」に案内する、として2時間後に所定に場所に来てくれと告げて立ち去った。
 直後、ゲンとトオルがやって来たのだが、勿論船長がパラダイ星人の子供の行方を教える筈がなかった。ただ、船長は自分がパラダイ星人の子供を逃がしたことを認め、御礼の招待を受けたことも口にした。それを危険としたゲンだったが、船長は暴徒化した人間の方が余程危険とし、招待を受けるともした。
 結局それ以上の追及もままならなかったが、船長がパラダイ星人の子供を救ったのは単純な正義感ではなかった。先の航海で他国の権利を侵してまでの漁業操業を良しとしなかったため、その不漁の責を取る形で船長を解任されており、その失望からもどこか人間社会に対して虚無的になっていた。
 船長自身、浜の漁師と同じ立場なら星人の子供を助けただろうか?と疑問に思っていた。するとそこへ星人=未知なる存在への不安を立証するかのように、先の漁師(←「何だかなー。」の親父の方)が助けを求めて駆け付けて来た。
 若漁師によると、昼間の星人のビッグサイズが襲って来たと云うもので、漁師は星人の親が報復に来たとしていた。
 船長は「寝惚けてやがる。」と一笑に付したが、MAC隊員であるゲンとしては放っておけない。ゲンはトオルに船長と共にホテルに戻るよう促すと、調査に向かった。

 その後、船長は約束の場所に向かった。
 前言通り御礼の招待を行った訳で、結局のところ、パラダイ星人とは、恩には恩で、仇に仇で報いる主義なのだろう。船長は童話の『浦島太郎』宜しく、幻想的な船内の一室(潜水艇の貴賓室らしい)で空中浮遊する椅子に座し、御馳走の饗応を受けた。

 饗応の初めに船長に差し出されたのは、昼間に船長が暴徒に渡し筈のバロック真珠の塊だった。勿論船長が手放したそれで、地上ではそれを受け取った漁師(←初老の方)が手元から消えたそれを訝しみ、独り占め使用していると疑った若漁師と取っ組み合いの喧嘩になっていた。
 そしてそんな醜い争いを繰り広げる両者の元に、両者を敵と見做した二人のパラダイ星人が現れた。即座に二人が逃げ出したため、はっきりと語られた訳ではないが、まず同胞(それも子供!)を虐待したことへの報復とみて間違いないだろう。
 幸い、通りすがりのゲンがMACガンを抜いて立ちはだかると二人のパラダイ星人は緑の煙幕を張って姿を消した。

 怖い思いをした二人の漁師はただただMAC隊員であるゲンに助けを求め、ゲンもこれを了承した。二人のパラダイ星人の目的が報復なら、非が漁師達にあるのは分からないでもないが、見殺しには出来ない。
 これはシルバータイタンの独り善がりだが、漁師達の非は非で何らかの処罰は必要だが、結果的にパラダイ星人の子供が殺されていない以上、二人の漁師を死なす訳にはいかないだろう(余談だが、死刑存置論者の法倫房リトルボギーでも、どんな酷い罪を犯した者でも被害者を死に至らしめていないのなら死刑にしてはいけないと思っている)。
 二人の漁師も、パラダイ星人の子供を虐待したことへの報復を言及する梅田兄妹に反論出来ずにいたから、自らの行動を全く顧みていない訳ではないのだろう。
 ともあれ、初老漁師が海面上に船の様な物を見たという証言を確かめるべく、ゲンは海岸に向かい、そこに漂着していた船長のパイプを発見した。

 その船長は潜水艇の貴賓室で珍しい料理に舌鼓を打っていた。乙姫様こそ不在(正確には能面を通じて歓待の声を出すだけで、姿は見せなかった)だったが、料理は上手く、船窓からは多くの魚が遊泳するのが見え、正に『浦島太郎』の再現だった。
 船長は大満足で、夢見心地の中一服しようとしてパイプを紛失していることに気付いた。するとその船長の求めに応じたかのように卓上に黄金のパイプが現れた。声の主はそのパイプでタバコを吸わないよう警告すると、何故ここまで歓待してくれるのか?と問う船長に子供を助けてくれた恩返しであることを肯定する一方で、子供を殺そうとした者は断固許さないとの意も示した。

 船長は多くの人間は善良であることを暗に仄めかしたが、結局パラダイ星人達は報復に出た。件の二人の漁師の前にパラダイ星人の子供が姿を現すと二人は即座に銛を振りかざして危害を加えんとした(←懲りねぇ奴等だ)。
 だが、子供は囮で、逃げる子供を二人の漁師が追ってくると忽ち大人のパラダイ星人が立ちはだかり、忽ち二人は周章狼狽した。弱い者に強く、強い者に弱い、最低人間の典型だな(怒)

 結局この騒動は地球人・パラダイ星人の双方にとって不幸となった。
 再度襲われそうになったパラダイ星人の子供はパラダイ星人の女王に地球人は悪であると報告し、女王は二人のパラダイ星人に漁村襲撃を命じた。
 逸早くその場を逃れた若い方の漁師は待機していたゲン・梶田・白土に助けを求め、ゲン達が駆け付けると初老漁師が二人のパラダイ星人に追われているところだった。
 すんでのところで救われた初老漁師はパラダイ星人の女王が村を襲おうとしていることを告げ、自分の子供がいる村を助けて欲しいとゲンに懇願した。ゲンは承諾する前に漁師の方こそパラダイ星人の子供を殺そうとしたことの非を告げ、事ここに至って漁師も自分の非を全面的に認めた。

 漁師の反省を見届けたゲンはMACガンを発砲しながらパラダイ星人に向かって行った。元々好戦的な訳ではなく、襲撃に際しても武器さえ持っていなかったパラダイ星人は戦いが得手な方ではないと見え、顔を見合わせた二人のパラダイ星人は空中に飛び上ると合体して身長60メートルの星獣キングパラダイに変身した。
 巨体と尻尾を駆使して暴れるキングパラダイにさすがにゲンもMACガン一丁では抗し得ず気絶に追いやられ、村を襲わんとするキングパラダイにMACは空と地上から迎撃した。それに対してキングパラダイは口から吐く緑色ガスと耳から放つ光線を駆使して抵抗し、マッキー2号・マッキー3号は撃墜され、少なくない数の家屋も破壊された。

 やがて気絶から目を覚ましたゲンはキングパラダイの暴れ振りを見るや即座にレオに変身した。レオとキングパラダイの格闘は、殴り合いは互角で、時折投げ技を交えた分、レオの方が若干優勢だった。キングパラダイは緑色ガスで身を隠したり、耳光線を放ったりもしたが、優勢に立てず、耳を千切られた上に投げつけられ、球体になって逃れんとするも、レオは両腕を大きく広げるとガッツポーズのような態勢を取り、額のビームランプから放つレオクロスビームでこれを倒した。

 かくして漁村に平和は戻った。
 二人の同胞を失ったパラダイ星人の女王がその後如何なる行動を取ったかは不明だが、船長は無事地上に戻るも、船は新しい船長を乗せて出港していた。それを見ていた船長は禁じられていた黄金パイプで喫煙しており、すると船長の姿は髪も髯もすっかり白い老人に‥‥……って、玉手箱かーい!!
 元ネタに忠実なのが悪いとは言わんが、元ネタが地上より300年の時間を経過させてしまった浦島太郎への整合性の為に玉手箱を送ったのに対し、パラダイ星人が船長を年寄りにした意図は全く分からん………別段そこは無理矢理元ネタに会せなくても良いと思うのだがな………。

 ともあれ、老人と化した元船長は海とは遠く離れた都会の真っただ中で件の黄金パイプを燻らせていた。元船長は語り部の様に子供達を集めて自身の不思議体験を買って聞かせていた。
 子供達は単なるおとぎ話を聞く雰囲気で元船長のコミカルな話し様を笑っていたが、その場に居合わせたゲンは怪訝に思っていた。そして子供達の参加以後、元船長の方でゲンに気付き、名前を呼ばれたゲンは完全に相手が船長であることを察した。
 結局名前を呼ばれた船長の方は人差し指を口の前で立てて、「シーっ!」と言ってゲンの言を制止するとそのまま立ち去り、その背中を見送ったゲンはやがて意味ありげに微笑んだのだが、何か良く分からんラストシーンだった


次話へ進む
前話へ戻る
『ウルトラマンレオ全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和二(2020)年一〇月五日 最終更新