ウルトラマンレオ全話解説

第29話 日本名作民話シリーズ! 運命の再会!ダンとアンヌ

監督:山本正孝
脚本:阿井文瓶
超能力宇宙人ウリンガ登場
 「日本名作シリーズ!」の第4弾を担った第29話だが、はっきり言って、元ネタの「狐がくれた子」との関連がどうでもよくなるほど、一人のゲストとダン隊長との絡みが強烈な展開を見せた。
 冒頭の舞台は昭和の情緒が色濃く反映された下町で、大勢の子供達がおしくらまんじゅうで遊んでいた。その中には百子・トオル・カオルのもいただが、やがて百子が遠巻きに見ていた一人の赤衣の、5、6歳ぐらいの子供(清水啓司)に気付いた。
 無表情・無口なその子供は百子に促されて遊びの輪に加わったが、やがて妙な印を結んで奇声を上げるととんでもない怪力を発した。
 子供達の苦悶の声を聞いて満足したのか、輪から離れた童は、何者かと誰何する百子に笑って「ウリーだ!」と答えた。

 ウリーの尋常ならざる怪力振りに、宇宙人ではないかと推測したトオルはウリーを捉えてMACに突き出そうと、数人の子供と共に身構えた。それに対してウリーは目を赤く光らせ、奇声と共に念動力を発してトオル達を突き飛ばした。
 追い打ちを掛けるようにウリーの念動力は石灯篭まで宙に浮かべ、何人もの子供達がその下敷きとなった。何とか難を逃れたトオルが追跡に掛かったが、その時にはダンとゲンはウリーの放ったエネルギー反応を頼りにMACロディーで現場に迫りつつあった。

 現場近くでウリーと遭遇した二人は、後から来たトオルから状況を聞かされ、ダンはゲンに子供達の介抱を命じると自分はウリーを追った。子供体格のウリーの走力は大したものではなく、ダンは杖を突きながらもこれを追跡出来た。追い付かれたウリーは念動力で周囲の物や人を浮かせてダンを威嚇したが、ダンもMACガンで威嚇し返し、やがて両者は念力対決を展開した。
 今回のウルトラ念力は相手の力を封じる方向に働いた。そして恐らくこの時のダンは、相手が子供と云うこともあって、普段ほどの念力を発動しなかった様で、いつものウルトラ念力発動後の見ている方が辛くなる程の疲労困憊ぶりを見せることも無かった。

 やがて叶わぬと見たものか、ウリーはその場を脱し、逃げる先にいる人物に助けを求めた。そしてウリーが「ママ―!」と呼ぶその人物−和服に身を包んだ妙齢の女性(ひし美ゆり子)を見たダンは衝撃を受けて固まった。
 ダンが「アンヌ!」と呼んだその女性は、かつて彼が『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊に所属していた時の同僚・友里アンヌ隊員と瓜二つで、丸で同じ女優が演じているようだった(笑)。
 直後に流された回想シーンは、『ウルトラセブン』の最終話にてダンが自分の正体をアンヌに告げ、それに驚きつつもアンヌは地球人であろうと宇宙人であろうとダンはダンだと受け止めた、特撮界屈指の名シーンがそのまま流された。
 当時の想い出に突き動かされたものか、溶融しかけたウルトラ・アイを懐から取り出して見ていたダンの意識は一種の白昼夢に飛んだ。

 丈の高い草原に立つダンとアンヌ(?)。名前を呼ばれた彼女はダンに笑顔を向けるも、自分がアンヌであることを否定。ダンの問いかけに殆ど答えず、ウリーを呼出して優しく抱く彼女にダンは、子供が宇宙人であることを告げ、あろうことか、「君も宇宙人なのか?」と問い掛ける狼狽振りだった。

 結局二人は走り去り、白昼夢からダンが現実に戻った時にはすっかり日が暮れていた。心ここにあらず状態のダンは追い付いてきたゲンに声を掛けられてやっと通常に戻り、子供は見失ったと偽った。
 MACステーションに戻った後もダンの通常ならざる様子は続き、周囲の隊員達にもモロバレだった。窓辺に2時間も立ち尽くしていたダンはやがて出かけると称してステーションを後にした。

 ウリー・謎の女性と遭遇した場に現れたダンは、何と貴重なスーツ姿。勿論数多くの作品に出演し、俳優の前はモデルの経験も持つ森次晃嗣氏のスーツ姿に違和感は全くないが、ウルトラマンを演じた俳優がウルトラ作品内でスーツとネクタイの姿を見せるのは極めて稀で、シルバータイタンの個人的なフィーリングで例えると、ダンがスーツを着ると云うのは、二階堂マリと会う時のみスーツを着るキン肉スグルの様だった(笑)。ま、キン肉マンのそれほど派手ではなかったが(笑)。

 程なく例の女性を見つけたダンは駆け寄って声を掛け、また地球に住むことになったことや、真っ先にアンヌを訪ねたことを語った。
 だが、アンヌは行方不明で、方々を探すも、周囲の誰もその行方を知らなかったと云う。この話から察すると、アンヌの行方を求めるダンが当時のウルトラ警備隊関係者を訪ね歩いたことは想像に難くなく、そうなるとキリヤマ隊長を初めとする他の隊員達とも顔を合わせている可能性が高い。
 ちなみに『ウルトラマンレオ』放映の22年後となるウルトラセブン30周年記念3部作でダンはフルハシと30年振りの再会を果たしたと云うから、やはり平成ビデオシリーズのセブンワールドはパラレルワールドの話と思われる(平成シリーズのアンヌは地球人の男性と結婚し、「ダン」という名の子を産んでいる)。
 ま、ビデオ作品は『ウルトラマンレオ』よりもっと後の話なので話を戻すが、女性はダンの説明にはほとんど口を挟まず、それでも自分がアンヌであることは否定し続けた。

 尚も、謎の女性をアンヌと呼び続けるダンだったが、そこにMACステーションにいるゲンから通信が入った。KW203地点で異常が発生したとのことで、ゲンはそれをウリーの仕業と断定していた。
 すぐに現場に行く、と答えるダンを不安そうに見つめる彼女に安心するよう告げたダンは現場に急行。現場は遊園地で、ウリーは珍しいものを次々念動力で動かしては悦に入っていた。そこには善も悪もなく、ただただ面白いおもちゃで遊ぶ子供がいただけだった。
 だが念動力による物体浮遊はやがて深刻な破壊にまで及び、捨て置けないと見たゲン達はMACガンを向けたが、それをダンが止めた。
 相手を宇宙人と見て、捨て置けないと反論するゲンに、ダンは宇宙人ではなく、「俺の知り合いの人の子だ!」と一応は嘘のない言で否定したが、ゲンの持つ計器は見事な宇宙人反応を示していた。

 そして念力を発動するにつれ、顔を銀色に変じ、服も破れまくるウリーは更なる破壊をもたらした。当然ゲン達は動かずにはいられなかったが、ダンは「俺がやる!」と言って尚もゲン達を制した。
 駆け付けたダンはいたずらっ子を諭すようにこれを止め、両者は再度の念力対決に入った。ウリーが念力で破壊をもたらせば、ダンは念力でこれを戻した。だが、使用する度に極度の疲労を伴うウルトラ念力を駆使していたダンは、今度ばかりは倒れ込む程の疲労を避けられなかった。
 堪りかねたゲンはMACガンを放ったのだが、銃弾はそれを察知してウリーを庇ったダンの腹部に命中!さすがのセブンも人間体時に腹に銃弾を受けては平気でいられる筈もなく、もんどり打って昏倒した。

 慌てて駆け付け介抱し、謝罪するゲンを咎めず、ダンは同時に駆け付けて来た女性に尋ねた。事ここに至ってようやく女性は真相の一端を話し始めた。それによるとウリーは女性の子ではなく、宇宙人の捨子で、それを放っておけなかった女性は周囲の反対を押し切って育てていたとのことだった。
それを聞き、並々ならぬ決意を持つ眼前の女性がアンヌに違いないとするダンだったが、それでも彼女は自分がアンヌであることを否定、しかしながら直後に「隊長さん、私はあの子をあなたのような立派な人に育てたいと思っていたんです。」と云う、彼女がアンヌであるか、百歩譲ってそうでなかったとしてもダンを元から知る人物としか思えない発言をした。

 だが、そんな得も云えぬシーンは突如終結した。
 感情を暴走させるウリーは念動力を暴走させ、「ママ」と慕うその女性までも岩石を飛ばして昏倒させた。ゲンはウリーに向かい、アンヌの身を案じていたダンも後を追うように昏倒した。
 やがてゲンに追われたウリーは突如巨大化し、超能力宇宙人ウリンガの姿を現した。体の各所に生える棘を手裏剣の様に飛ばすウリンガに対してゲンはレオに変身して対抗した。
 見た目はどうあれ、中身が子供であるウリンガは完全に駄々っ子で、気持ちの赴くまま暴れるだけで、恐らく格闘ならレオの敵ではなかっただろう。
 だが、厄介なことに目から発する念動力にはレオも手を焼く有様だった。その暴れ振りは燃え盛る石油タンクを飛ばして周囲を破壊しまくった。
 そんな中レオは程なくウリンガが念力を発動する際に貯めの時間があることに気付き、その隙を突いた攻撃を敢行。背後にあるパラボラアンテナを利用してウリンガの念動力を彼自身に浴びせるとウリンガをぼこぼこにしてクロッキーになったところでウルトラマントを被せてウリーの姿に戻した。
 この間、レオは強大な力を持つウリンガが無理して子供の小さな体躯にそれ等を収めているために暴走していることを察し、ウリンガの為には広い宇宙でその力をのびのびと発揮出来る場に身を置くことが最善と気付いた。

 ウリー(←肌の色は元に戻っていた)の自分を呼ぶ声に意識を取り戻した女性は傍らに倒れるダンに応急処置を施すとダンの左手を自分の胸に当てていたが、ダンが意識を取り戻しかけたのを見るとウリーの元に歩み寄った。
 程なく意識を取り戻したダンはアンヌの名を連呼したが、結局彼女がそれに応えることはなく、彼女はウリーと供にレオの掌に乗ると地球を去って行ってしまった。

 それを茫然と見送るしかなかったダン。ナレーションは彼女の正体を明らかにせず、それを知る術は永久に失われたとしていた。野暮なことを言えば、ゲンが帰還した後にダンは二人の行方を激詰めにすることになるのだろうけれど、結局この第29話の後日譚が後作にて語られることはなく、アンヌが登場するのは『ウルトラセブン太陽のエネルギー作戦』『ウルトラセブンX』最終回、劇場版『大決戦!超ウルトラ八兄弟』のみで、いずれも本来の歴史とはパラレルワールドと思われる。
 ま、はっきりしているのは後年ダン=ウルトラセブンに息子・ウルトラマンゼロが生れたことだが、母親が登場することはあるのだろうか?そうなるとその女性がアンヌであるかどうかはともかく、ひし美ゆり子さんが演じる可能性は極めて高いと思う。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新